2008年11月28日金曜日

不思議の国の株価とワーキングプア

●ムンバイのテロ、人質解放へ(11/28WSJ、NYTなど)
犯行声明が出ていない。インド首相も国外犯だと指摘しているが、印パ問題なのかどうかもよく判らない。13年前の地下鉄サリン事件を外国人目線で見たら、日本の何処がどう危ないのかよく判らず、何となく空恐ろしい国だとしか思われなかったのではないでしょうか。本件については、「七転び八起き」流の分析をするにはまだ私には勉強が足りません。

昨日、大阪で長年お世話になっておるお客さまがフェニックス証券を訪ねてきてくれました。話題はFXから日本株にまでおよび、特に株価について最近最も気になっている点を指摘させていただきました。

日本株の弱さについては、当「七転び八起き」ブログでも一度浚いました。ここに来て我が国の上場株の特徴と言えば、株価利益率(予想利益/株価)では主要先進国のなかで意外と割高である反面、純資産倍率(純資産/時価総額)では悲しいほど割安であるという事態ではないでしょうか。

前段の株価利益率については、株価がどんどんさがっても予想利益の下方修正が追い討ちをかけるので、割安感が出てこない、むしろ割高であるということ。それと関連しますが、減益体質や赤字体質が改善されない限り、純資産では株を買えないというのが、後段の純資産倍率の話となります。

しかし、純資産倍率を「トービンのQ」だと看做せば、純資産倍率が1を(大きく)下回る企業は廃業なり赤字部門撤退なり資産売却なりすれば良い(言い換えれば、その企業が属する業界に参入を検討している経営者は事業を立ち上げずその会社を買収したほうが安くつくので、然るべき水準=純資産倍率1近傍まで株価は戻る筈です。

景気後退期(デフレ期)の金融業や不動産業のように潜在的な不良債権や不良在庫が処理または減損されておらず純資産の数値が疑わしいという要因は、時価会計が米国流にせよIAS流にせよあります。日本特有の問題は、終身雇用従業員の過保護が、廃業や赤字部門撤退や資産売却のような思い切った経営を阻んでいる点にあります。資金の出し手ではないにもかかわらず、終身雇用従業員(俗に言う正社員)が事実上“株主”になっているのです。かつて「会社は誰のものか?」という議論が喧しい時期がありました。「会社は株主のものだ」と当たり前のことを言うと、「オマエはハゲタカ(擁護)か?」などと苛められたものです。しかし、日本においては、事実、会社は株主(だけ)のものではないのです。

そして問題の核心は、終身雇用制度を批判すると、「日雇い派遣」制度を擁護している立場だと短絡的に烙印を捺され、そのような金儲け主義は米国流資本主義と同時に終わったのだと地上波を中心とするマスコミが洗脳していること。雇用の調整―マクロの需給だけではなく、衰退産業から成長産業への再配置も含む―は既得権益にしがみついた、その多くの場合、固定給の将来価値に見合う創業精神を伴わない安住型ホワイトカラーが大勢のさばっている分、すべて日雇い派遣またはそれに類する雇用体系の人たちに皺寄せされています。横断面に留まず、多くの愚かな大企業は終身雇用社員の新卒採用を、凝りもせず毎年、景況感という名のドタ勘に基づいて人数調整しているものだから、時系列的に見れば、深刻かつ理不尽な世代間の不平等をもたらしています。

「日雇い派遣」制度を生み出したとして小泉・竹中改革をマスコミが批判するのは、マスコミ会社自身が既に崩壊しているビジネスモデルにしがみついている終身雇用役職員を多く抱え込んでいるからに他なりません。ワーキングプアの理不尽さは大企業に温存されている終身雇用制度の裏側なのです。

ところで、雇われ社長というのは、究極の日雇い派遣であると、私は会社法上の解釈をしております。ときどき普通のサラリーマンに戻りたいと思ったことも過去にはありましたが、お蔭様で今は元気一杯です。
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2008年11月27日木曜日

ボルカー元FRB議長が現役復帰

●オバマ次期大統領、元FRB議長のポール・ボルカー氏を経済回復諮問会議の議長に指名(11/27WSJ)
グリーンスパン氏の前任者である御歳81歳のボルカー氏。レーガン政権のもとで、FRBの独立を守る数々の施策と発言が記憶に新しい。

さて、昨日ブログをお休みさせていただいたのも、またまた地方出張が言い訳。金融庁幹部の皆さんからのお話は主に証券行政がテーマでしたが、驚いたのはやはりFX業者の話。自己資本規制比率をわざと高い数字で申告していたが実際は債務超過。破綻後はもちろんお客様への預託金返還が不能という事態がここのところ頻発している。FX業者を監督している立場として「情けない」というご発言までありました。

それを言うなら、私は同業者の立場としても「情けない」し「腹立たしい」気分。FX業者のビジネスは真面目にシステム設計をし、忠実にFX注文をカバー先にヘッジしている限り(カバー先がリーマンブラザースのような事態にならない限り【注:但しリーマン日本法人は破綻したものの資産超過】)、大儲けも出来なければ大損して自己資本を毀損するビジネスではない筈。なのに、ドル円で1銭だのゼロ銭だの、レバレッジが300倍だの400倍だのと競い、異業種からの参入が絶えず、気が付けば130社を超える業者が蠢くのは、証券会社の(上場株式の)信用取引においては決して許されない、、、

×××信託銀行による「全額区分管理」が義務付けられていないこと×××

×××お客様の注文に対する「向かい呑み行為」が禁止されていないこと×

この「車の両輪」を悪用し、失敗すれば「破綻⇒顧客資産返還義務不履行」を覚悟すれば、大儲けできるという算段に基づいている点を指摘せざるを得ません。インターバンクのドル円のスプレッドをどんなに忠実に「良いとこ取り」をしても、エンドのお客さまにゼロ銭やら1銭を提示することは無理。「向かい呑み行為」という、《業者が勝つには顧客が負ければよい》という利益相反の発想を前提としているからこそ、FX先進国の欧州アジアで考えられないスプレッド競争とレバレッジ競争が我が国で過熱してしまったと見られます。

リーマンショック後の2ヶ月で金融庁の幹部の皆さんは上記指摘を迅速にご理解していただけたのだと拝察します。これから急速に起きるといわれるFX業者の淘汰が、どのような物差しで実現するのか、大きなヒントになると思われます。
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2008年11月25日火曜日

シティグループ救済

三連休、既に多くの内外メディアが扱っているシティグループ問題。当ブログならではの天邪鬼な切り口で今週も始めたいと思います。私が注目していることは、

①このブログで9月から主張している、《良い銀行と悪い銀行の分離》が採用されていること
②ポールソン財務長官主導の金融安定化法案7000億㌦の使われ方が二転三転した末の処理案であること
③シティグループは、GMに代表される米国自動車産業に対する最大かつダントツの債権者であること

更に、政治的な背景として垣間見られるのは、
①現財務長官のポールソン氏も、次期財務長官のガイトナー現ニューヨーク連銀総裁も、立場の違いこそあれ、モラルハザード(平たく言えば「やり逃げ」)は許さない主義主張が引き継がれていること
②オバマ次期大統領のGM等に対する言い方が「自動車産業は米国の魂だ」という労働者を意識した言い方から、暫くの沈黙を経て、「再建の見通しが無いのなら、政府は白地の小切手a blanc checkを切ることは出来ない」と豹変していること。

どう足掻いても火中の栗を拾わざるを得ないオバマ氏にとって、自動車産業に従事する労働者まで裾野が広がる金融問題は、ばら撒き政策というポピュリズムに走るか、モラルハザードを断固として許さないと言い切るか、どちらにしても叩かれることから、1月の就任までに現政権で片付けておいて欲しいというのが本音だと思われます。一方、良い銀行(good bank)を「摘出する」値打ちがもともとなかったかも知れないものの、リーマンを切り捨てたポールソン氏とガイトナー氏としては、80年代のコンチネンタル・イリノイの先例や自動車産業問題を参照しつつ、これ以上の最適解は無いという結論に至ったのだと推察します。

小口の預金者や真面目な借り手の保護は絶対に大切。結果として、大西洋の両側とも、商業銀行業務(バランスシートを経由して預金者から借り手に資金の融通が行なわれている金融業)が人質に取られている限り、政府から可能な限り身代金は奪えるという慣習が成立したと見られます。真面目に汗をかく投資銀行やブローカーに徹する独立系証券会社にとっては悔しい面もありますが、FXに関しては、銀行間市場の安定に大きな一歩を踏み出したとも言えます。

それにしても、先週末が山場だったシティグループが、FX業界で数少ないプライムブローカーを前向きに営業している業者であったのは不思議(今日からは堂々と営業してくださいませ)。それに、我が国において最初で恐らく当面最後の三角合併の例として、旧日興コーディアル証券株が東証とニューヨークと《ダブル上場》しており、去る金曜日の東証ではストップ安なのに買い注文しかないという目を疑うような板だったのは写真に収めておく価値があったかも知れません。
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2008年11月21日金曜日

原油が暴落してもアメ車は売れない

●シティグループ、金融株への空売り規制を再開するよう議会とSECに求める(11/21WSJ)
金融株を標的にした「借株の手当てのない空売り(naked short sales)」は、撤廃済み。同時に、更に厳しい空売り規制=我が国でもお馴染みのアップ・ティック・ルールの復活も求めているらしい。米国ではアップ・ティック・ルールは2007年7月に撤廃されている。

シティグループの株式は、今週過去4日間で40%下落。

●ダウ平均445ポイント下落、原油価格50㌦割れ(11/21WSJ)
シティグループ株が26%下落したほかJPモルガン・チェース株も17%下落。金融株だけでなくエネルギー関連株が大きく足を引っ張る。

その原因が、原油先物の大幅下落。昨夜だけで1バレル当たり4ドル(7.46%)下げて、2005年5月以来の低水準に戻る。

今年7月3日に史上空前の1バレル145.29ドルを付けた原油価格。大手金融機関のエコノミスト達の大半が更なる高騰を予想し、中には200ドル突破まで嘯いた意見さえありました。しかもその根拠は原油値上がりの原因が投機ではなく実需だと。今週、昨夜の下落幅の大きさを実需の減少で説明するのは無理。FX同様、ヘッジファンドや個人がレバレッジを掛けて買い上がっていた分、強制決済が強制決済を生むという実態以上の下落にならざるを得ない現象に間違いがありません。逆に言うと、存亡の危機にある多くの大手金融機関は原油バブルを演出するためにエコノミストをして相場操縦に加担させていただけのことに過ぎないと言えます。

さて、実態以上に原油価格が下落しているのなら、ガソリンを無駄遣いしながら走るアメ車の需要は復活するでしょうか?ガソリンを電気プラグに替えてもエントロピー増大の原則にかわりはありません。

●米国上院の超党派議員、自動車業界救済措置で合意(11/21ロイター)
超党派と言っても、たったの3人。250億㌦の貸出について妥協すると発表。

一方、

●米国民主党幹部、自動車業界救済法案の決議を来月まで延期(11/21WSJ)
GM、フォード、クライスラー3社に対して、公的資金が如何に活用され事業再生し返済可能となるかについて、具体的な再建計画の提出を求めた。

救済か?破綻か?ハッキリしないことにはドルも株式も買いづらいのは当然の心理。オバマ政権発足が来年1月なのに対し、GMの資金繰りが厳しいのは来月。この間、特に週末は要注意ですが、今月末は28(金)が新月、29(土)が三の酉で火の用心だそうです。
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2008年11月20日木曜日

広告宣伝する余裕があるなら借金を返せ!

「債務超過で余命幾許かと噂される自動車会社が新車を発表したのか?」と勘違いさせるようなバナー広告がウォール・ストリート・ジャーナル紙オンライン版に出ていました。

広告担当を兼務しているFX会社の社長としては、このメディアのトップページのこの場所の広告料が莫大なものであることが想像できます。自動車に電源コードがくっ付いている写真をクリックすると、GMを救済しないと大変なことになるというYouTubeの動画などが出てきます。

ユーチューブですので、コメント不可の設定にも出来るのですが、あえてコメントを開放し、スパムメール、無関係な話題、名誉毀損以外は削除しないとGM側は書いております。それにしても、名誉毀損とまでは行かないとGM側が判断したのか、閲覧回数やコメント件数が多すぎて削除が追いつかないのか、米国経済を人質に取ったかのようなGMの態度に露骨な怒りを表しているコメントが消されず目立つのは皮肉です。

我が国なら、ネトウヨ(私も実名を明らかにしていなければ主張的には近いかも^^;)、チャネラーの如きと一笑に付されてしまうのかも知れません。日米ネット文化の違いをちゃんと理解せずに申し上げるのは危険ですが、この期に及んでGMが行なった広告投資の効果と反響を、米国国会議員たち(特にオバマ次期大統領を含む)がどう受け取るか、資本主義陣営の長年の牽引役としての矜持を示すのかどうか、大いに注目です。

今朝のブログで、GM破綻で株安ドル安と書きましたが、GM救済でも結局ドル安なのではないでしょうか?

最後に、先週末から今週にかけて2度にわたり書かせていただいたFX業者は絶滅するのか!?が大変反響を頂いております。FXのお客さまからもお客さまでない方々からも応援のメールや電話を頂いております。案の定誤解を招いてしまった部分が廃業する勇気を持つ社長の件。謙遜のつもりで書かせていただいております。決して廃業する予定はございませんし、現状ではFX会社130社のなかで8割が廃業または倒産したとしても残りの2割のなかに入ろうとずっと努力してきており、また勝算もございます。ご心配をお掛けし申し訳ございませんでした。
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GM、フォードの末路は

●アルカイダ、オバマ次期大統領のイスラエル支持姿勢を批判(11/19FT)
偽善的なイスラエル支援、イラク撤兵後はアフガニスタンに兵力を配置という戦略は破滅すると。
人種問題、宗教問題という内憂外患の打開に期待が掛かるオバマ氏にとって、アルカイダからのメッセージは重い挑戦に聞こえます。

●ロンドンAIM市場、新規上場がなくなり輝きを失う(11/19FT)
我が国の東証マザーズや大証ヘラクレスもびっくりの規制ゆるゆるの新興市場。特にここ2年間はこの取引所の急成長と上場基準の甘さを米国当局者は「カジノと一緒だ」と揶揄してきた。世界中からベンチャー企業を集め、各国ライバル金融市場から羨ましがられてきたAIMは1995年の開設以来、最大の試練の年を迎えた。

ところで、私のブログのタイトルは今更ながら「七転び八起き社長のFXダイアリー」。本来は(?)、円高なのか円安なのか、早く教えろ!何処に書いてあるんだ?というご要望が多くて当然。尤も、過去6ヶ月、話が脱線しまくっても益々多くの読者の方々にご愛顧いただいているので、読者の皆さまの期待内容も進化してくださっていると推測されるのですが(汗;)。

気がつけば、米ドル円で95円から98円前後のレンジに「落ち着いてきた」為替相場。9月、10月に比べると、マクロ指標に素直に反応するようになりました(昨夜の例で、住宅着工や消費者物価)。しかし、現在の為替相場の最大の特徴は、株価指数⇒為替相場という因果関係の強さ。昨夜、FT紙が皮肉っぽく「未だにビッグスリーとして知られている」と報じた米国自動車産業が破綻か救済かが大きな波乱要因になるでしょう。

ニューヨーク・タイムズ紙が「破綻寄り」である理由が未だによく判らないのですが、勿論、このブログは破綻寄り(⇒自動車株・銀行株その他一層下落⇒米ドル安)。これは予想というよりは、そうあるべきだという政策論の話です。

今朝の日経新聞3㌻に出ていたGMワゴナー会長の発言「ある時期に景気が回復すると断言してくれるなら、追加支援は不要と約束できる」って、何様なのでしょうか?我が国証券会社の経営者は皆「相場が回復すると断言してくれるなら・・・」なんて、言いたくても言うべきでないとじっと堪えておられると思いますが。
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2008年11月19日水曜日

少数精鋭の農業国家と教育国家

1日半もブログの更新をサボりました。この間、地方出張(何故か今月は頻繁)、台湾製PCを持ち歩きたかったのですが余りに荷物が多く、置き去りにすることとしました。くどい言い訳は以上です。

昨夜は、前職、前前職の時代に大変お世話になった大手ガス会社の資源調達の責任者の方とお会いすることが出来ました。オーストラリアへのご出張回数では恐らく我が国最高頻度でいらっしゃるのではとお察しする方です。

鉄鉱石やボーキサイトなど鉱物資源は勿論、石炭、天然ガス等のエネルギー資源にも恵まれる同国は、リーマンショック前夜までの商品市況バブルで大いに沸き、1豪ドル=100円を超える通貨バブルと不動産バブルを併発していました。不動産バブルについては、従来から経済の中心地であったシドニーやメルボルンなど東海岸の諸都市だけでなく、むしろ次々と鉱山開発が続いた西オーストラリアの州都パースが特に異常だったとのことです。

オーストラリアで最も美しい街と言われるパースには発掘ラッシュで人口がどんどん流入し、水不足が生じているほど。鉱山労働者の時間当たり賃金もあれよあれよと上昇し、半日働いたら、残りはワインとビールに浸って大騒ぎという状況。一方、資源を分けて下さいという日本人インポーターであるお客さまにとっては、駅前でサンドウィッチを買うにも1個1500円という馬鹿にしたような値段。

日本とオーストラリアを頻繁に行き来されているお客さまから見ると、1豪ドル=60円台前半というのは妥当な水準だとのことです。

勿論、私のブログでも何度か取り上げておりますように、為替は「妥当な水準」にスッと収まるものではなく、振り子のように行き過ぎから行き過ぎへ振れやすいことを忘れてはならないのですが。

オーストラリアのついこの間までの非常識なバブルで苦労されたお客さまも、商品市況バブル崩壊によるオーストラリア経済の痛手より、円安バブル崩壊による日本経済の痛手のほうが辛いのではないかというご意見でした。勿論、お客さまの会社自身は、仕入れ単価が安くなることは歓迎すべきニュースなのですが。

借金漬けの消費者に不要不急のモノを売り続け外貨を稼いできた日本。外需と金融が我が国経済の背伸びをしていた部分だとすると、背伸びをせずに生きていくためには、やはり国民ひとりひとりの衣食住をいかに賄うかという原点に立ち返る必要があるでしょう。消費税増税予約付きの給付金で個人消費を拡大するのではなく、農林水産業の生産性を向上させつつ、一人当たり耕地(可能)面積を食料自給率の観点で「妥当な水準」になるように(江戸時代とは言いませんけど)少子化による人口減を受け入れる政策の転換・発想の転換が必要です。少子化の過程でどうしても高齢化が併発しますが、終末医療の問題は措くとして、農林水産業の分野にこそ高齢化に応じた労働年齢引き上げのヒントがあるのではないでしょうか(ちなみに金融分野で定年延長が押し付けられるのは絶対無理)。政府主導で投資すべき分野は今こそ農林水産業、そして教育です。

こういう意見は、少数派を通り越して天邪鬼かも知れません。が、少数精鋭の農業国兼教育国にならない限り、いずれはまた円安だと私は思っています(恐ろしい円高の後かも知れませんが)。
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2008年11月17日月曜日

FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)

●ロンドンでは12人に1人が失職(11/17FT)
2010年末までの約2年間で、370,000人程度が職を失うと予想されるロンドンこそが、イギリス全体のなかで景気後退recession(2連続四半期経済成長がマイナスになること)の影響を激しく受けると、英地方自治協会the Local Government Associationの分析。

首都ロンドン以外の都市、例えばニューキャッスル、リーズ、マンチェスターは意外と景気後退の影響をうまく凌げるのだそうです。イギリス全体は1,700,000人が失職すると予想される中、地域格差は相当のものだと同レポート(失職率ではロンドンの7.9%が最悪で、次いで北西部6.7%、南東部6.3%、南西部5.1%)。

朝のブログにもありますとおり、ここでは地域格差は都市部が金融で潤い、地方が汗と油と土に塗れて働けど働けど・・・じっと手を見るという意味とは逆だということに注目です。

またこれまで、当ブログやオンライン・セミナーで繰り返し申し上げていたイギリス(ロンドン)こそが金融危機(信用収縮)の悪影響を最も激しく受けるということを反映したレポートではありますが、当然、日米とも他人事ではありません。国民所得に対する金融業の貢献度はイギリスが9%で最も高く、次いで米国8%、日本7%ではあります。この数字、素直に五十歩百歩だと認めるべきでしょう。

話が逸れるようですが、先週金曜日に選ばれるFX会社とは、社長が廃業する勇気を持っている会社だと書かせていただきました。勿論、自分が経営する会社の寿命は業界のなかでは相当長いほうだという自信を背景に言ってはいるのですが、外部環境次第でどんなに努力しても廃業せざるを得ない、業界全体が絶滅するという可能性はなくはないからです。そのときに《悪あがきして倒産》ではなく《潔く廃業》というのが望ましいという考えです。

で、その万が一の場合に貴方はどうするのですか?この答えは、一緒に働き戦ってきた従業員の仕事を最大限確保し、自分を含めた全員にとって働き甲斐のある職業、きっとその場合は金融以外の仕事となるでしょうが、それを築くことだと考えています。その心構えや準備まで出来ているというと、本当に廃業してしまうのかと心配されるので具体的には書きません。繰り返し申し上げますが、フェニックス証券程度の自己資本規制比率がないと、FX業務を継続できないかも知れないくらいに、規制を含めた外部環境は厳しくなっています。

すみません。結局、またまた宣伝になってしまいました。
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言論クーデターと自爆テロ

日頃親しくさせていただいている方が最近南アフリカ共和国に出張されました。週末お会いできる機会があり、いかがでしたか?とお聞きすると
「白人と黒人が同じ場所にいるのを見たことが無い。白人が農園主⇔黒人が農奴という関係に変りは無く、アパルトヘイトは“実質的に”無くなっていない、と感じた」
「治安の悪さ-やはり日本人観光客は集団行動しか許されない雰囲気だった。人口5000万人の国で一日に50人が殺されているのだから・・・」
と言いつつも、人口1億2000万人の某国の自殺者が一日当たり90人というのも悲しい比較対象だと知人。
「殺人や強姦などの被害者は決して白人ではない。ハイパーインフレに悩む周辺国ジンバブエやレソトからの不法移民が南アフリカ共和国で定職に就けず自暴自棄になり犯罪や麻薬密売に走っている」
・・・
「が、兎に角、大変な思いをしたが、もう一度行きたいかと聞かれれば、答えはYESだ」
それと言うのも、FXに携わっていらっしゃる方々なら良くご存知の通り、豊かな天然資源と、うまく組織化されれば名実共に世界の工場となるに相応しい良質な労働力がこの国には備わっているからです。この中で、金や白金、ダイヤモンドの需要は世界的な景気後退とともに著しく減退するでしょう。しかし、経済の破綻や戦乱の末に最後の拠り所となるのは「食べるものがある」ということではないでしょうか?先の大戦に破れ挑戦動乱の特需で復興するまでの間、我が国の生命線となったのは農村に他なりません。翻って、東京一極集中が金融危機で或る意味逆流したとしても、脱ホワイトカラー族を養うには一人当たりの耕作(可能)面積が狭すぎるのが実は我が国の弱みだというのが持論。付和雷同して少子化問題なんて言っている場合ではないのです。

金曜日夕刊で伊藤忠商事の丹羽会長のブレトンウッズ体制云々という話を引用したら、金融サミットで新ブレトンウッズ体制を云々と来ました。ブレトンウッズ体制に蜂の一刺しとなったのは、現在のユーロ圏の諸国家がベトナム敗戦後に米ドルから金の現物への交換をせがみ取り付け騒ぎとなったことであるのを忘れてはなりません。銀行の金庫には我々が預けた“お金”(紙幣や補助硬貨)が全て詰まっているわけではないことが取り付け騒ぎの可能性を孕むのと同様、米国もまた発券済の米ドル紙幣greenbuckと同額の金の延棒を用意していたわけではないのです。

それでも、サミット参加国のなかで、ひとり麻生首相だけが、米ドル支持で米国の歓心を買おうとするのは、ひとり日本円だけが対米ドルで高いからでしょうか?確かに、通貨切り下げ競争dirty floatの口火は既に切られつつあります。それとも、そもそも経済力とは別次元の、独立国家と言うには相応しくない独立した軍事力を持ちえていない我が国の弱みに由来するのでしょうか?

田母神論文を言論クーデターと呼ぶならば、村上談話は日本社会党の自爆テロだったのではないか・・・
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2008年11月14日金曜日

海図なき航海

伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長が米国発金融危機の分析をブレトンウッズ体制崩壊後の大局観に立ち見事に説明をしておられます。ちなみに丹羽会長は私と何ら血縁関係はございません。

丹羽氏曰く、1971年スミソニアン協定でドルの金兌換が停止、1973年から変動相場制に移行したことで、「ドルに対する金の担保がなくなり、世界経済は、“海図なき航海”に乗り出すことになった」と(11/14マイコミジャーナル)。以降は、実体経済と乖離したバブルが発生してもそれが崩壊するまで続くという現象が繰り返されたと論じます。

固定相場制よりも変動相場制のほうが景気循環が激しいとか、(機軸)通貨が兌換紙幣よりも不換紙幣のほうが過度なバブルが起きやすいという論旨には疑問が全くないわけではないです。が、続けて主張されている国民所得と株式時価総額のバランスのお話、すなわち

★1970年代の米国の国民所得が1兆㌦⇔株式時価総額が6000億㌦(10:6)
★1995年~99年のITバブル時(10:12)⇒崩壊後(10:7)に戻る
★2006年が住宅バブルのピークだとして、世界の国民所得総額50兆㌦に対して、株式時価総額は70兆㌦(推計)⇒再び(10:14)までバブルが膨らんだということ・・・

したがって、株価資産がこの先35兆㌦程度まで下落するという試算は妥当だという件は説得力があります。

無論、私がブログで書かせていただいているとおり、「為替相場が実体経済を表すならば購買力平価に近づく筈」とは必ずしも言えない事象もあります。世界の国民所得総額自体も、虚業としての金融業が弾き出していた上澄み部分がまだまだ調整余地を残していることを考えると、国民所得と時価総額のスパイラル的な縮小はしばらく続くと見るべきでしょう。それでも、丹羽氏の言う「底はあるのだから、あたふたしてはいけない」というのはその通りで、残滓を素早く拭い去り、個人も企業も新たなスタートが切れるワクワクした時代が一日も早く到来したほうが健康だと思うのです。
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FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)

「日本株は駄目、投信は売れない、外国債券では客に損をさせた。。。」、というわけで証券会社が絶滅危機種であることは既に述べました。FX業界をも震撼させたのが、先週の日本経済新聞の1面記事「顧客資産の区分管理を《全額》信託保全に・・・」週刊東洋経済の特集記事「FX130社に迫る大量淘汰の足音」です。

伝統的な金融ビジネスモデルが次々と頓挫する中、FX業者は独り勝ちだと周囲から思われ、安易な新規参入が近頃まで続いてきていました。しかし、リーマン前夜の時点で、FX後進国だった我が国のFX委託者の裾野は、FX先進国の欧州やアジアよりも広がっていたとも考えられます。先週から今週に掛けて、欧米アジアの名だたるプライム・ブローカー(以下、PB)の方々の訪問を受けましたが、皆さん異口同音におっしゃるのは

★欧米やアジアの主戦場でPBの主たる客層はヘッジファンドと富裕層個人。日本のようにリテール市場で何百倍ものレバレッジが提供されてきた市場は世界で類を見ない。

★解約と消滅に歯止めが掛からないヘッジファンド。彼等にレバレッジを提供してきたPB業界の上位2社だったゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが銀行持株会社として生き残りレバレッジを落とさざるを得なくなった。ヘッジファンドに対するレバレッジ解消のあおりを喰う形で、これまで一生懸命我が国のFX大手にPBやらせてくれと営業に来ていた大手外銀の中には「いついつまでに他さんでPBをやってもらい、自分達はカバー取引をギヴアップする形にさせていただかないと流動性の供給を続けられない」と方針の大転換を迫られているところが出現。

クロス円ロングのお客さまの損失や解約よりも、FX業界にとって、リーマンの影響は上記の点において深刻なのです。

日経新聞の記事は現時点では観測記事に過ぎないかも知れません。しかし、顧客資産と最大同額の資金繰りをカバー先銀行に対して捻出しなければならない。信託銀行からのLG(保証)は認められない。PB契約もままならない。そして、多くのFX業者がこれまでは大儲けが出来た「お客さまのFX注文をカバーせずに向かい呑む」という(上場株式の信用取引では法律違反に該当する)利益相反行為に規制が掛かるとすれば、生き残れるFX業者は数えるほどしかないと考えられます。

勿論、金融庁もリーマン直後矢継ぎ早にアンケートをとられ、この点十分理解をされております。お客さまのFX注文に自己で向かわず銀行間市場で直ちにカバーを取る経営方針。LGに頼らずに《全額》信託保全が可能な財務体力。FX業者の正常化に必要な自己資本規制比率はざっくり800%以上必要と考えられることから、当局としても内閣府令の改正を急ぎすぎると大半のFX業者を廃業・倒産させてしまうことでかえって投資家保護に悖るということもあり悩ましいところなのだと思います。

はっきりしていることは、FX先進国を驚かせるような低スプレッドや高レバレッジを宣伝文句につかう業者は長続きしないということでしょう。

ちなみに、フェニックス証券は、来年1月を目処にPBをバークレイズ銀行、スポーク銀行(カバー注文をギヴアップして決済と証拠金のやりとりをPBに集約させる銀行)としてゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーという体制に練り直す予定です。

珍しくフェニックス証券の宣伝にしてしまった今日のブログ。でも、FX業者選びで一番大事だと思っていることは廃業する勇気のある社長の会社を選ぶことです。社長という職業はどんなに努力してもうまくいかないことがある。それを素直に認めて、悪あがきせずに堂々と撤退する。これがなかなか出来ないものなのでしょう。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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2008年11月13日木曜日

救済か?倒産か?運命の日が近づくGM

民主党寄り、労働者階級寄りとして知られるニューヨーク・タイムズ紙が意外な解説記事を載せました。
●窮地のGM,倒産か救済かの疑問を掻き立てる(11/13NYTimes)
ワシントンでは、GMの倒産を回避するために、救済パッケージを自動車産業にも広げようという動きが加速しているが、連邦破産法11条(いわゆるチャプター・イレブン)は皆が恐れるほどの悲劇を招くものではないという論調もある、と同紙が紹介。

オバマ新大統領、ペロシ下院議長等、民主党幹部をはじめ、当然のことながら、ワゴナーGM会長や自動車労連は破産回避の言い分として、自動車産業の裾野の広さを強調しています。が、「倒産で良いのだ」派の論陣は、航空業界や鉄鋼業界、小売業界の場合は、倒産こそ新たなスタートをより競争力のあるコスト構造とともに提供するものだと主張。また、倒産の壊滅的な影響を緩和する方法として「プレパッケージ」(保全状態での銀行借入枠や新しいスポンサーを予めこっそりと決めておいて倒産法の申し立てをすること)を提案するファンドマネージャーの意見も紹介されています。

もしかしたら、そのファンドはトヨタ株に投資していたのかも知れませんが(笑)。

米国から市場開放と自由主義経済を押し付けられてきた我が国で気を吐いてきたトヨタ自動車(の株主-と言っても米国籍の方々も大勢いらっしゃる筈ですが)の立場から、競争相手が自由主義のご本尊に救済されるかも知れないというのは納得がいかない話でしょう。

今では鳴りを潜めつつあるハゲタカが我が国に啓蒙してきたのも自己責任原則でした。つぎ込まれた公的資金が銀行を経由して次々と債務免除に流し込まれて、本来なら倒産を通じて新しいスタートか否かという選別過程に移るべき企業群を非効率のまま生き残らせてしまった我が国の90年代。前述のプレパッケージや保全状態での銀行借入(DIPファイナンス)など、自己責任原則と自由競争原理、すなわち真面目に健全経営してきた競争相手が馬鹿を見ない制度として会社更生法が改正されたのはその直後。これこそ、失われた10年の最大の副産物のひとつであり、今すぐGMに提要されるべき制度インフラなのではないでしょうか。
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2008年11月12日水曜日

金の生る木はありませぬ

●原油価格、60㌦割れ-20ヶ月来安値(11/12NYTimesほか)
今年7月の高値から何と59%下落。OPECによるカルテル(産出削減合意)も、世界経済の成長鈍化に勝てなかったとニューヨーク・タイムズ紙。

金も下落。WSJ紙は、「ありとあらゆるインフレ再燃政策を駆使しているのに、商品相場が低迷しているのは、金融機能が相変わらず壊れていることを証明している」と論じています。

●GM、韓国での操業を停止(11/12FT)
ウォン安は関係ない!

●ファニー・メイとフレディ・マック、住宅ローンの条件変更プランを公表へ(11/11WSJ)
9月に国有化された米住宅ローンの巨人。何十万契約にものぼる住宅ローンの条件を債務者寄りに見直し、住宅供給が再び経済成長を引っ張るようにしたいのが趣旨だとのこと。詳細はこれからだが、昨年までに実行されたローン(要保険付、自己破産案件は除外)につき、毎年の元利金弁済が年間所得の38%以内になるように利率を緩和したり、場合によっては元本も一部帳消しにするとの案が出ている。

●7000億㌦の金融安定化法案、実効性に疑問が(11/11WSJ)
アメリカンエキスプレスが銀行持ち株会社となり、GSやモルスタと同様、金融支援対象となったほか、GM等自動車産業についても民主党新政権が既にプログラム適用をと鼻息が荒い。駆け込み寺に次々と殺到する「それなら私も助けてよ」という声・声・声に対して、政治は収拾をつけられるのか?

最後におまけ。
★アーバン転換社債の仮装払込はインサイダー取引の可能性あり-BNPパリバの外部検討委(日本語ロイター、日経)
楽して儲ける方法はありません。その一言に尽きる。
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2008年11月11日火曜日

ニューディール政策とモダン・タイムズ

●DHL、大リストラ-ドイチェポストが米国事業を抜本縮小へ(11/10WSJ)
正社員は現在の13,000人から3,000~4,000人へと大幅削減。過去15年間、数十件にものぼる企業買収を繰り返し、ドイツ国内の郵便屋からグローバルなロジスティック企業に変貌したドイチェポスト。その米国での橋頭堡が5年前に買収したDHLだった。が、この5年間で数十億㌦が投資され費消され、それでもUPSやFedExのシェアを奪うことは出来なかった。これらライバル2社も業績修正を発表済みだが、損失が最も酷いのはDHL。

米国内の地上ハブを18箇所閉鎖、集配所を現在の412箇所から103箇所に大幅に削減すると発表。

●ノーテル・ネットワークス、赤字転落。雇用削減へ(11/10WSJ)
第3四半期の損失が34.1億㌦。1,300人の雇用削減を発表。

●AIGへ“新”救済案、第3四半期の純損失244.7億㌦で(11/10WSJ)
AIGと言い、GMと言い、我が国の生保業界や自動車業界で汗水垂らして働いていらっしゃる方々、どうお思いでしょうか?

今年のノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマン教授がニューヨーク・タイムズのコラムをオバマ氏当選後はじめて更新しました。フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策が馬鹿の一つ覚えのように比較対象とされる昨今、オバマ新大統領はルーズベルト大統領の成功体験より失敗体験により学んで欲しいと忠告。曰く、「1932年の米大統領選挙では、従来から経済の自由放任を主張する共和党のフーヴァーに対して、ニューディール政策を掲げる民主党のルーズベルトが、変化を求める国民の支持を得て当選した。・・・公共工事による失業救済、金本位制離脱(インフレ政策)で輸出促進、食管制度、最低賃金制度・・・北部の労働者や黒人の支持を広く獲得し、3選ばかりか4選を果たし、第二次大戦を戦い抜いた(山川出版社『詳説世界史研究』)」という通説は正確ではなく美化されすぎた伝説だと。むしろルーズベルトはフーヴァーと同じように本音では財政均衡論者で、政権初期段階では政策を小出しにし過ぎていて効果が出ず、中間選挙では負けたこともあると。ルーズベルトがアメリカを救ったとされるニューディール政策の本命は第二次世界大戦に他ならないと論じています。

オバマ氏に対して、「出し惜しみはいけない。とことんばら撒け」という忠告が正しいかどうかは別として、世界恐慌後の各国の対応として、ドイツ・イタリア・日本が全体主義に陥り、イギリス、フランスは保護主義に陥ったが、アメリカはケインズ政策で立ち直ったというのは、確かに拙ブログで再三非難している“勝てば官軍”史観かも知れません。

ところでチャールズ・チャップリンは私が最も尊敬する映画人のひとりで、子どもの頃は彼の映画全てが好きだったのですが、今では「モダン・タイムズ」をダントツに評価しています。つまり、例えば「独裁者」は最後の主人公の演説は素晴らしい内容だけど、やはり映画を製作した国の国益を背景に、ドイツ全体主義に対する勧善懲悪の色が濃い。この点、モダン・タイムズは「“持てる国”アメリカにもファッショはあった。不当労働行為、人間疎外はあった。“持たざる国”ドイツ、日本と五十歩百歩なのだ」ということを暴露しつつ、国益を超えて、世界中の弱者に勇気を与えてくれる作品だと思うのです。
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2008年11月10日月曜日

求人広告-東京・八重洲で働ける方を急募

フェニックス証券では、業務拡大につき「経理・財務の業務経験のある方」を1名、採用することに致しました。勤務地は東京・八重洲となります。

証券会社・FX会社での業務経験は必ずしも問いません。知的好奇心の豊富な方、数字に強い方ならOKです。

報酬等、委細は面談にて。フェニックス証券はFXの注文を銀行間市場に直結させており自己ディーリングを行なっていない堅実なビジネスモデル。大儲けは出来ません。したがって、報酬については大きな期待をしないでください。働く環境、働き甲斐については大きな期待をしてください!

是非フェニックス証券の面接を受けてみたいとおっしゃる方は、履歴書と職務経歴書を、

recruit@phxs.jp

宛、ソフトコピーでご送付下さい。
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公的資金でGMは救済されるのか?

●中国、4ヵ年で5860億㌦の景気刺激策(11/9WSJ)
米国の金融安定化法7000億㌦に迫る金額だが、これまでの税収により概ね賄える(但し、財政赤字は必至)。

●米国下院議長ナンシー・ペロシ女史、ポールソン財務長官に書簡(11/9WSJ)
金融安定化法7000億㌦の適用範囲を拡げ、自動車産業の救済にも使うべきだと。

モラルハザード抑止(自己責任原則の貫徹)は銀行救済においてのみ妥協が許され、事業会社への公的資金の直接投入については我が国自民党でも意見をまとめることは出来ないでしょう。しかし、例えば新銀行東京の不良債権の取立て不能と、不良融資先に対する都税による補助金ばら撒きと実態的に何処が違うのかと聞かれうると皆さん答えに窮しませんか?

さて、はじめてブログのお休みをいただいた先週金曜日、近畿財務局の金融監督官さまに弊社のむさ苦しい事業所までお越しいただき、事前に聞かれる予定になっていた株券電子化問題について話す暇もないくらい、世間の情勢につきお話をすることが出来ました。
★折しも米国の政権交代が決まり、従来どちらかと言うと、米民主党政権は対日強硬の傾向が強いが、外交・経済についてどのような変化が予想されるか?
★サブプライム、世界金融危機は何だったのか?
★これからのフェニックス証券のビジネスモデルについて?
これらの話題について、驚く勿れ、私がこれまでブログに書いてきたことそのままお話しました。私のブログは権力批判や官僚批判のオンパレードだという印象をお持ちの方が多いと思います。ある意味、それはその通りですが、表裏の無い私の意見を受け取っていただける懐の深いエリート官僚もどっこいいらっしゃるという嬉しい事実もあるのです。

ちなみに、FXに関しては、「顧客資産の区分管理を全額信託に」という法改正。賛成である。が、市場リスクが現行では自己資本規制比率の計算上反映されない「向かい呑み」行為も同時に規制しないと、今まで以上にカバー先にヘッジも預託もしないほうが金繰り上楽だという誘因が働き、かえって顧客保護に悖る。この点をしっかり主張させていただきました。悪徳な比較サイトやアフィリエートによって異常なスプレッド競争やレバレッジ競争が巻き起こされた我が国のFX業界ですが、もうそろそろパーティはお開きでしょう。これからは真の意味での財務と技術が勝負の世界です。
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2008年11月6日木曜日

オバマ新大統領はドル高政策を転換するのか?一夜限りのハネムーン相場

●南北戦争が遂に終わった(11/5NYTimes)
ニューヨーク・タイムズ紙のトマス・フリードマン氏のコラム。147年前にバージニア州で勃発した米国の内戦は、まさに同じ場所での激戦をオバマが制したことで終結した。これほど象徴的なことがほかにあろうか、と。すべての子ども、すべての市民、そしてすべての新しい移民の人たちに、今日この日からthis day forwardアメリカはすべてのことを可能に出来るんだと知らしむべきだと。

一方、
●米国の未曾有の借金がオバマ新大統領の手かせ足かせに(11/5WSJ)
2008年最終四半期で5500億㌦、来年第一四半期で3680億㌦におよぶ国債発行の計画を米財務省が発表。専門家の予想では米国の借金は1兆5000億㌦を超え、この1年で25%増だと。このような借金急増がオバマ氏の積極財政路線にとってジレンマになると同紙。

●選挙当日の株価高騰は一日で帳消しに(11/5WSJほか)
米ダウ平均:▲5.1%、S&P500:▲5.3%、ナスダック:▲5.5%、、、
一方、原油先物:▲7.4%(⇒65.30㌦)、金先物:▲2.0%(⇒741.30㌦)

「フェニックス証券チャリティ・オペラ・コンサートのチケットが売れたから、代金を回収にいらっしゃい」と日頃お世話になっている社長さんに呼ばれ、その席で昨夜、日本銀行国際局の方を紹介してくださいました。国際局の方曰く、「為替の介入、しそうでしないですね。しないんですかねぇ?」。対して小職曰く、「それは僕が聞きたい質問ですけど・・・」で、苦笑い。このブログを紹介し「主要先進国中央銀行が協調して米ドルの資金供給をするというのは、スポット相場という点では逆介入の効果。逆に、トムネクが安定してしまったら、介入が必要になるくらいドルが底抜けするかも、と書いてます」と伝えたら「随分、先を見ておられますねぇ」と呆れられました。
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2008年11月5日水曜日

オバマ氏当選、初のアフリカ系大統領の誕生

「黒人大統領の誕生は、米国がすべての人に機会がある国であることを証明する素晴らしい出来事だ」とは敗軍の将、マケイン氏の演説。かつてセオドア・ルーズベルト大統領が黒人補佐官をホワイトハウスに招いたときに米国民は大きく反発したというエピソードを示し、米国が大きく変ったことを強調。ライバルの勝利を称えていました(日本時間13:00於アリゾナ)。

経済問題、イラク問題での具体的な手腕は実のところ未知数ですが、予想以上の圧倒的勝利に加え、議会との“ねじれ現象”の解消を背景に、思い切った変革が期待されるのは間違いないでしょう。

それにしても、敗者マケイン氏のタイムリーな演説。控え室のスイートルームでじっくり考え抜かれたものでしょうが、我が国の政治常識からは考えづらい、わたしにとっては感動的な演説でした。
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米大統領選、いよいよ開票

ウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズのWEBサイトの開票速報の見やすさに感動。思想信条は兎も角、速報性と一覧性で両紙は争い、紙媒体は何処へやらという印象。勿論、いずれのオンライン・サービスも原点は紙媒体。有料サイトの料金設定とサービスの質と紙媒体のリストラの絶妙なバランスは、日経ネットの建て直しで苦慮している日経新聞の幹部も参考にされている筈。

七転び八起きブログは、速報性で米紙オンラインサイトと争っても詮方無いので、相変わらず天邪鬼なマイナーニュースをお伝えします。

●JPモルガン、プロップデスクを縮小(11/4FT)
金融混乱以降、自己売買部門およびヘッジファンド部門が儲からなくなったとしている。そうすると、金融混乱以降自己売買で大儲けしているのはいったい誰なんでしょう。フェニックス証券ではありませんので、念の為。JPモルガンは、ベアスターンズおよびワシントンミュウチャルの救済買収後、4100人の人員削減を既に発表している。

●韓国の中小零細企業、FX損失で銀行を告訴(11/4FT)
韓国の中小零細企業96社が、スタンダード・チャータード銀行やシティバンクを含む13の銀行に対してFX絡みのデリバティブで総額15億㌦の損失を強いられたとして訴えた。

●デンマーク政府、ユーロ導入の可否を問うべく、国民投票へ(11/4WSJ)
理不尽な為替の変動が実体経済を混乱に陥れるくらいなら、固定相場のほうがましだ。とか、いっそのこと金本位制に戻るべきだ。とか、ある種の酔っ払い的議論にも一理あると思います。世界中が固定相場になるとFX業者はすべて廃業となりますが(笑)。FXをやりながら、変動相場のメリットとデメリットを自分の言葉で語れるようになりたいものです(言うは易し・・・)。
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2008年11月4日火曜日

怪我の功名

●原油価格、月間の下落幅が記録更新(10/31FT)
1983年にニューヨークで原油先物が創設されて以来。原油に限らず、穀物など商品先物全般が急落中。連休中の日経新聞でも大きく取り上げられていました。

●米銀、貸し渋りは続く(11/3WSJ)
連銀調査で明らかに。家計向けも企業向けも貸出基準を厳格化。とくにクレジットカードについては、借り手の信用力にかかわらず、信用枠を削減して行かざるを得ないと。理由として、経済の先行きが不透明であることと、銀行が資本の毀損でリスクに耐えられないという2点が挙げられている。

●GM、10月売上高が前年同月比で約半分!(11/3WSJ)
フォードは30%減、トヨタは23%減。人口増を調整した数値で見ると、第二次世界大戦以降で最悪の月間記録とか。

歴史に残るかも知れない2008年も6分の5が経過しました。まだ、1年を振り返るには早すぎますが、私にとっての2008年の個人的キーワードは「怪我の功名」ということになりそうです。これまでにない激動の一年のなかで43歳の誕生日を向かえることになった雇われ社長4年目突入の今年は、「怪我の巧妙」と呼ぶに相応しい出来事のオンパレードでした。そのエピソードは年末上梓予定のデビュー本に譲らせてください。

本日の記事でひとつだけ言わせて貰えば、エネルギー価格や食料価格のバブルが弾けたのは(予想通りとか当然のこととか評価はさておき)世界金融危機の副産物《怪我の功名》なのかも知れません。
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