2009年1月30日金曜日

為替操作国呼ばわりされた中国と偽ドル工場呼ばわりされた北朝鮮

●為替操作国と名指された中国、米国新政権に対して、最大級の非難-欧州外遊中の温総理(1/29FT)
ダボス会議出席をはじめとする欧州各国歴訪で、自国に次ぐ世界2番目の輸出大国ドイツを訪れた温家宝総理。メルケル首相との対談後の記者会見で「人民元政策は市場のニーズに合致したものであり、柔軟性に富んでいる。

先週、ガイトナー米財務長官が、長年の“タブー”を破り、中国に対して、輸出を保護するために人民元を人為的に操作していると批判したことに対する声明。世界の為替相場がジェット・コースターのようなボラティリティに晒されているが、それが中国のせいにされるとはけしからん、と。

ところで、温首相が訪ねたドイツは、ほんの20年弱前までは半分は共産圏でした。2月号のFACTA(月刊:ザ・ファクタ)で、人気コラムを連載中の手嶋龍一さんは、東ドイツ出身の欧州中央銀行(ECB)政策担当者をベルリンまで訪ねてきた北朝鮮高官が、

「わが朝鮮民主主義人民共和国が偽ドルを刷っていると中傷するものがいる。笑わせてはいけない。偽ドルというが、ニクソン・ショックで金とドルの兌換をやめてしまったドル紙幣のどこがホンモノだと言うのか」

と語ったという話を伝え聞いたと書いておられます。偽物のようなホンモノ、ホンモノのような偽物。このテーマは、昨年来、当ブログで追っかけていたものですが、北朝鮮高官の「不換紙幣自体が偽物」発言はさすがに詭弁。しかし、通貨とは何ぞや?不換紙幣とは何ぞや?基軸通貨とは何ぞや?なかなか痛いところを突いた、見事な詭弁です。

西側社会への意外にも太い地下水脈、贋金作りという大罪を平然と弁護する詭弁能力。勿論、皮肉で申し上げているのですが、北朝鮮の国力はあなどれないと感じます。

【本日最大のニュース】
わが処女作「“為替力”で資産を守れ!」(アスキー・メディアワークス、1,260円)が、いよいよ本日発売開始となります。昨日今日のブログの土台となっている、深くてわかりやすい経済その他の読み解き術が満載の書籍。

今日の東京はあいにくの雨ですが、傘をさしてさっそく「書店へGo!」

ついでに、

外国為替証拠金取引をやるなら、フェニックス証券。主要通貨ペアのスプレッドが「2銭でGo!」
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2009年1月29日木曜日

意外とミーハーな私【号外】

只今、打ち合わせ先から銀座線で会社に戻ったのですが、日本橋で地下鉄から降りたところ、福井日銀前総裁が乗り込んでこられました。先方は、高島屋の買い物袋を持っておられ、当方は、フェニックス証券謹製のエコ・バックを偶然持っていたので、「これからはコチラをお使い下さい」と差し出そうかと一瞬考えましたが、どうしても直ぐにトイレに行きたかったので諦めました。

福井前総裁を間近に拝謁するのは実に17年振り。初回である前回は、福井氏が日銀理事として金融制度審議会に出席されていたとき。大蔵省(当時)の一室で、色んな人が色んなことを言うのですが、その中で福井理事(当時)の発言は断トツに切れ味があったのを今でも覚えています。

果たして、グリーンスパン氏が五番街で買い物をしたあと、地下鉄で家に帰るでしょうか?細かいことを言うときりがないですが、日本は良い国だと一瞬思った、夜の一こまでした。速水総裁の時期の議事録が公開され始めています。そのうち、福井総裁時期のも詳しくわかるわけで、とても楽しみですが、そのころは日本は景気が回復しているのでしょうか?わたしは、日本の景気回復は、中国より遥かに遅く、米国にすら先を越されると見ています。短期=円高、長期=円安。そのココロは、是非、『“為替力”で資産を守れ!』を御笑読ください。
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2009年1月28日水曜日

FX業者は絶滅するのか!?(其の参)

昨年の日本経済新聞、今週の読売新聞、NHKの報道にもありました

「FX会社の顧客資産に、《証券会社並みの》全額信託保全を義務付けへ」

の話。いよいよ来週にも、内閣府令改正案が金融庁から公表され、同時にパブリックコメント募集となりそうです。

改正のポイントは3つ。

①FX顧客から預った証拠金(=顧客資産)は、全額、信託銀行で区分管理されなければならない。

これまでの区分管理ルールは、預金(但し別名義口座)、一部信託(残りはカバー先の外国銀行等への差入証拠金)という方法が許されていたのが、今後は駄目になるということ。

最大の論点だったLG(Letter of Guarantee=信託銀行がカバー先の外国銀行等に差し入れる保証書)方式が認められるかどうか、の結論も、原則駄目ということになりました。原則に対する例外は、債務不履行時のLG実行の際、カバー先債権が顧客返還債権に劣後する信託保全のみ。

LGに依存して《全額信託だぁ!》と顧客保護をアピールしていたFX会社にとっては、茫然自失となるルール改正なのです。

②ロスカットルールが存在しない業者、または機能していない業者に対する取締り。

対面中心のFX会社に該当業者が存在するらしく、当然のルール改正だと思われます。

③極端な低スプレッド、極端な高レバレッジを標榜しているFX会社に対して、適正なリスク=リターンのビジネスになっているのかどうか監督監視を強める

最後のポイントは内閣府令改正ではなく、監督指針改正で対応するそうです。

金融庁としても、上記のうち特に①が、FX業界に凄まじい激変をもたらすことは承知のうえです。すなわち、
①’LG方式は認めるが、全額信託は義務付け
①”一部信託(+カバー先預託)は認めるが、預金は認めない
という比較的緩やかな規制強化案と比較検討していたものの、まさしくリーマンショックにより、LG方式を特別扱いする道理は消えた。よって最も厳しい規制強化案に落ち着いたと考えられます。

今後の猶予期間中に、増資等により自己資本規制比率を増やせる業者がどれだけあるかにもよりますが、現時点では、区分管理に関して①”に落ち着いていたとしても、業界の3分の1以上が、①’であれば3分の2以上が廃業または業務停止に追い込まれるという意見があります。

ましてや、今回の結論①では、生き残れるのは健全経営の極々僅かなところに留まってしまう
でしょう。パブコメで大手を含む殆どの業者からの反論-特に《LGだけは全て認めろ》等-が予想されますが、逆に、「有事でのカバー先優先のLG」は認められなくなるぞ、と金融庁に指導され、わざわざ高コストな区分管理方法に変更した優良業者にとっては中途半端な妥協は許されないでしょう。

今日のブログはフラッシュニュース。本来はもう少し背景なり、区分管理の意味合いや重要性、そして上記③の「向こう見ずなスプレッド競争やレバレッジ競争」への影響について解説をしたいところです。私自身は、幸いにも、こうした動向を相当適度予見することが出来て、FX会社を経営してきたつもりです。

おかげさまで、明後日発売の『“為替力”で資産を守れ』で、今日のフラッシュニュースと同時に解説申し上げたい内容を、一章を割いて、たっぷり書かせていただくことが出来ました。FX取引に関わりのある皆様、どうぞ書籍をお手にとってご覧になってください。

参考過去記事:
FX業者は絶滅するのか!?(其の壱)
FX業者は絶滅するのか!?(其の弐)
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2009年1月27日火曜日

為替だけではない米中の保護主義合戦の火ぶた

●ガイトナー氏を財務長官に正式指名、米国上院(1/27WSJ)
先週、中国に対して経済「冷戦」の宣戦布告をし物議を醸した同氏。オバマ陣営の閣僚人事のなかで最もトラぶった財務長官ポストがこれで解決したとWSJ紙はブレイキング・ニュースで伝えました。

●人民元問題で論争を避ける、IMF長官(1/26FT)
「為替操作国」だとレッテルを張るかどうかが問題ではない、とドミニク=ストラス=カーン長官。しかし、「中国政府は為替操作を自覚しているのは明らか。人民元が実力以下にしか評価されておらず、より柔軟な変動相場に晒されるべきだとIMFは繰り返し主張してきた」とFT紙とのインタヴューで答えた。

人民元を巡っては、IMFは2007年に「米国政府寄り」に政策転換をしているが、それ以前のIMF首脳は、米国政府の代弁者としてIMF自体が人民元引き上げを扇動する動きを批判している。

●化石燃料依存からの脱却を-オバマ新大統領(1/26FT)
自動車の燃料効率の基準をより厳しくする一方、米国内各州に対して温暖化ガスの削減目標を設定。

温暖化対策を怠っていたブッシュ政権から大きな政策転換だとFT紙は報じるが、新大統領は「中国とインドも同調することが必要。全世界の協調なしに、米国がひとり温暖化対策に踏み切ることはありえない」とも語っている。

真面目な車作りを続けてきたメーカーにとっては、燃料効率と温室効果ガスの基準厳格化は買い替え需要を煽るのでプラスの材料の筈。しかし、旧ビッグスリーにとっては、肺炎患者が乾布摩擦を処方されるようなものかも知れません。

ブッシュ政権と異なり、原油高政策を採る必然性のない(?)オバマ政権としては、必ずしも中国とインドを牽制することなく、自国完結型の環境政策をぶち上げても良かったのではないかと思うのですが、、、政権発足後、まだ1週間足らずで、米中は為替と環境と両面で軋み始めております。
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2009年1月26日月曜日

第8回オンラインセミナー、今夜8時

先週金曜日のブログ、人民元の記事は、アクセス数が倍増しました。

米中の経済「冷戦」は予想通りというよりは、オバマ新政権発足の週にいきなり口火が切られるとは寧ろ意外。米国経済の問題を、オバマ新大統領が(1兆㌦の)需要不足と断言していることに大いに関係がありそうです。

自国の首相を叩きまくっている日本の殆ど全てのメディアが手放しで歓迎し期待を膨らませているオバマ氏ですが、米国経済の課題を需要側に求めるのが正しいのかどうか、私には疑問があります。

売れない自動車を作り続けようとしている過去形となったモノ作り、金融の技術革新や自由化に合わせたビジネスモデルの進化を実現できなかった金融業界、そして何よりも、家計においては借入枠と可処分所得をごっちゃにした過剰消費。

持続可能な筈がなかったこれらの矛盾が破綻したと考えれば、米国の経済の問題は、需要側ではなく供給側にある。あなた方、米国民が住むべき家は、もっと貧粗で狭い部屋だ。これこそ、新大統領が演説の中で用いた「現実(real)」という言葉であり、選挙民につきつけなければならなかった現実でしょう。世界経済のなかで、需要側に課題があるから内需刺激策が功を奏しうる国は、貿易黒字と財政黒字という糊しろを持つ中国以外にない、というの私の持論です。

しかし、正論を吐いては民主主義国家では政権をとれません。結果、米中は保護主義路線に突き進まざるを得ない。世界最大の外貨準備高、特に米国債という首根っこを押さえている中国の人民元政策こそ、米ドルの信認のカギを握っているという点こそ、2009年の為替相場を見通すうえで、最重要ポイントとも言えそうです。

先々週末の日経CNBCアジアマネーでのお話と重複しますが、今夜のオンラインセミナーをどうぞお楽しみに。今夜はすでに予定が・・・とおっしゃる皆様は、31日発売の「“為替力”で資産を守れ!」もご参照ください。昨年からずっと注目している中国のことを色々な角度で書かせていただいております。
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2009年1月23日金曜日

人民元が鍵を握るオバマ政権下の為替相場

●ガイトナー新財務長官、中国の為替操作を非難(1/22FT、IHT)
ポールソン氏の後任財務長官としてオバマ大統領が指名しているガイトナー氏。米国上院での質疑で「外交上も“強硬な”手段で中国政府と立ち向かう」と意思表明。

前任のポールソン氏も、これまで時々、中国の「自国通貨安」を批判してきたが、中国を「為替操作国家」と正式に告発しろ、という議会からの圧力には抵抗してきた(FT)。勿論、これは米国にとってのジレンマ、即ち中国政府を怒らせて、その大量に保有されている米国債を堂々と売却されては堪ったものではないという事情があるからです(IHT)。

中国が人民元のドルペッグ制を廃止したのは2005年。管理された変動相場になって以来、人民元はドルに対して約20%増価しています。

ところで、上述の「米国にとってのジレンマ」の裏返しとして、先週金曜日に日経CNBCで喋りました「中国にとってのジレンマ」があります。リーマンショックで加速したドル安は、オバマ政権によるバラマキ政策と、既に始まっている連邦準備制度による米国債に限らない形振り構わずの市中資産買い入れによる未曾有(みぞう)のマネタイゼイション(ハイパワードマネーの供給)で、再加速する恐れがある。但し、只今現在は米ドルは(対日本円を除けば)寧ろ堅調で小康状態。今のうちに米国債を損切りしたいが、損切りするにも、米国債の保有割合(米国債の発行残高に対する割合でもあり、外貨準備高に対する割合でもあります)が高すぎて、自ら動くことが自らの首を絞めるというジレンマです。

中国政府にとっても、外貨準備の評価損をこれ以上大幅に拡大したくないという命題と、人民元の対ドル高基調に戻したくないという命題は、両立が困難な難問なのです。

フェニックス証券のホームページに先週末の日経CNBC「ラップトゥデイ」における人民元の話をアップしました。動画ソフトのダウンロードが少々面倒臭くなっておりますが、お時間のある方、どうぞ本日のブログと合わせてお楽しみ下さい。
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2009年1月22日木曜日

ポンド危機、再び

●2月のG7会合、ポンド安について討議へ=G7筋(1/22日本語ロイター)
ロイターの独占報道で、珍しく情報源が明かされていない。

●ロイズとRBSは国営化されるべき=英国下院財務委員長ら(1/21FT)
ロイズ(旧ロイズ+旧TSB+旧スコットランド銀行+旧ハリファックス)とRBS(旧スコットランド王立銀行+旧ナショナル銀行+旧ウェストミンスター銀行)だけでなく、バークレイズ銀行まで国営化されるのではないかという噂もあり、今週に入ってからの英国ギガバンク各行の株価は大暴落。

ポンドは、対米ドルで7年半ぶりの安値、対円では14年ぶり最安値更新で、昨年ピークの半値に。

主要銀行が概ね国営化されることを社会主義と呼ぶのではなかったでしょうか?今週月曜日に、

《オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。》

と書きました。次いで、翌火曜日には、

《昨夜の為替相場は、円>ドル>ユーロ>ポンド、です。銀行救済⇒量的緩和は、これまで米ドルにおいては買い材料だったのが、昨日は逆だったという点、全てのFX投資家は注目するべきでしょう。》
と続けました。リーマンショック後、マッチポンプのように繰り返されてきた金融機関救済を代表格とする政府の大胆な市場介入が、当該国の通貨の信任として直ちに反応してきた幻想が遂に終わりかけているのが、今回のポンド危機です。

ギガバンクのエコノミストに洗脳された多くのFX投資家は、

★物価指標が予想よりプラス⇒買い材料
★マネーサプライが予想よりプラス⇒買い材料

と長年思い込まされてきました。もともと貯蓄不足であった国において、国外に依存していた資本が引き上げられる信用収縮の局面においては、この大前提が逆転する。というか、金融バブルという特殊な状態が意外と長く続いただけのこと。貯蓄不足だから物価があがる、地下鉄の初乗りが千円以上する国の通貨を喜んで買い続け、更なるインフレ期待でそれを買い増すという大衆心理こそ馬鹿げていたというべきでしょう。詳しくは、昨年5月のフェニックス証券オンライン・セミナーをご覧下さい。
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2009年1月21日水曜日

100年に一度の“言い訳”

そう言えば、一昨昨日の日曜日、テレビ朝日の田原総一郎さんの番組に、自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相が出演されていたとき、「100年に一度の危機なんですから・・・」という表現を頻発されていたのを観て、《そこまで繰り返さなくても良いのに》と思いつつ、今週も仕事生活に入って早や3日目。私自身も「100年に一度だからさぁ・・・」という前置きが安易だが便利だと気付き、繰り返し使うことの誘惑についつい負けてしまっています。

以下、具体的な使い方。

★今週月曜日の取締役会。毎月、75歳のオーナーさんがご機嫌よくいらっしゃってくれるのですが、雇われ社長曰く、

「さすがに、100年に一度の危機ということで、年度後半は減益を覚悟しています。」

★従業員に対しては、

「残念ながら、100年に一度だからねぇ。。。年度末の業績賞与は余り期待しないで貰いたい。」

★更には、広告代理店さんに対して、

「広告を続けたいのは山々なんですが、さすがに100年に一度の津波でしてねぇ、、、月々の契約金額を何割程度に減額させてもらえませんか。」

などなど、です。ちなみに、この表現の便利さと切れ味(?)を教えてくれた渡辺喜美氏は行革担当大臣を福田内閣で務められる直前は、安倍内閣で金融担当大臣でいらっしゃいまして、同内閣末期に全国証券大会でスピーチを聞かせていただく機会に恵まれました(2007年9月のこと)。秘書が用意した原稿を無視して、浮かぬ顔また顔、の証券会社社長陣を前に、空気を読みながら笑いを取りつつ本音が炸裂するトークに、渡辺氏の高い能力と志しを感じ取った証券会社社長は私だけでなかったと思います。

★本日発売のマネージャパンMONEY JAPAN(角川SSコミュニケーションズ)で、私の連載コーナーKnowledge Cellarにて大阪大学社会経済研究所のチャールズ・ホリオカ・ユウジ教授との対談が収録されています。取材時期は、ポール・クルーグマン教授がノーベル経済学賞を受賞した直後の昨年10月15日ですが、内容は全く古びておりません。是非お買い求め下さい(取材場所提供:四谷三丁目「チェルト東京」)。
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2009年1月20日火曜日

紳士の国と情熱の国

オバマ大統領の就任式を控えた昨夜は、米国休日のため、そうでなくても注目が欧州に向かうところ。RBS(スコットランド王立銀行)の巨額損失とスペイン格下げが金融市場を震撼させませた。

RBS巨額損失は、ロンドン市場が開く以前に報じられており、日曜日夜FT他が報じた「イギリス政府が、銀行救済の追加策を月曜日に発表か!?」との因果関係が推定されます。

2008年のRBSの損失額は280億ポンド(約4兆円)。これは、銀行業界だけでなく、イギリス全企業の年間赤字記録を更新するものだそうです(ちなみに、抜かされた記録はボーダフォン)。

RBS株は月曜日一日だけで67%下落。3ヶ月前には780億ポンドあった株式時価総額は、月曜日終値で、たったの45億ポンドに、と皮肉たっぷりにFT紙は報道しています。

インターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙によれば、ブラウン首相はRBSに対して怒りをぶちまけ「損失の殆どは米国のサブプライム関連の運用と、ABNアムロ買収の失敗(暖簾代なんと200億ポンド)だ。」ということは、「イギリス国民の預金を預かっている銀行が取るべきではない、無責任なリスクだったのではないか!」と語っています。

ブラウン首相の怒りの「中身」が本当であったとすれば、RBSはイギリス国内の不動産関連の損失は処理できる能力が既に無いということを意味しており、実質破綻していることはほぼ疑いないと推定できそうです。アイスランドやアイルランドのような小国の真似をして、100%国家管理という選択肢を避けたい為政者の気持ちも伝わりますが、かつてのイギリス4大銀行のうちのひとつナット・ウェスト銀行を飲み込んだスコットランド地方の発券銀行は、そのバランスシートにおいて、もうひとつの問題銀行HBOS(ロイズTSBにより買収済-株価はこちらも月曜日34%下落)同様、世界最大規模となってしまっていることを考えると、破綻を放置するわけにはいかないでしょう。

日米と比べ、ユニバーサルバンキングの国々では、モラルハザードを気にせず金融システム保全という大義名分で銀行救済策が取られやすい。と当ブログでは皮肉たっぷりに繰り返してきました。預貸金業務を人質に取りつつ、投資(銀行)業務のハイリスク・ハイリターンの損失のつけを血税に回すというやり方にも限度があることを理解する必要があります。

ちなみに、昨夜の為替相場は、円>ドル>ユーロ>ポンド、です。銀行救済⇒量的緩和は、これまで米ドルにおいては買い材料だったのが、昨日は逆だったという点、全てのFX投資家は注目するべきでしょう。

もうひとつ、当ブログで批判を繰り返してきた格付機関。EUに属し、ユーロを採用している故、財政規律に縛りがあり、一国家として通貨供給量の調節も出来ない。つまり、スペインに当て嵌めれば、スペイン国債を乱発してスペイン中央銀行に買い切りオペをさせて勝手にユーロ通貨を市中にばら撒くということは出来ない筈なのに、格下げとはどういうことでしょうか。通貨危機や金融・不動産危機により、ユーロ採用を拙速に検討しはじめたデンマークやハンガリーのような国々がある一方、全く同じ理由・背景なのに、ユーロ圏に(下手をするとEUにすら)留まれない恐れがある国々も出始めており、これまた新たな地政学上の歪みとして注目です。
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2009年1月19日月曜日

バイアグラが売れない!?

●ファイザー製薬、営業部門2400人の雇用を削減(1/17WSJ)
全米のセールスマンsales repの何と三分の一に相当。先日の研究部門800人削減に続く発表。

景気が悪くなると勃起薬が売れなくなるのか?と想像しては行けません。米国の製薬業界の雇用のピークは2006年第一四半期の105,000人。現在そこから1割以上減少しており、ファイザーに至っては2007年1月以上、累計で15,000人雇用削減している、その最大の理由は、後発医薬品との競争で利益率が落ち込んでいることなのです。

ちなみにこの勃起薬ですが、インターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙によりますと、スポーツ選手の成績との因果関係が強く疑われる(可能性が強い)。つまり、バイアグラを服用した後だと、速く走れる等の効能が認められるのだそうで、研究が進められている一方、ドーピング検査の対象にするべきかどうか喧々諤々の議論があるのだそうです。

●日興コーディアル証券、売却へ-シティグループ、急遽路線変更(1/18WSJ)
たった3日前には、ほかの個人向ブローカー事業(スミス・バーニー)をモルガン・スタンレーに売却する計画のなかに、日本のブローカー業務は含めないと発表していたのに、直近四半期83億㌦の赤字決算を発表した直後後、方針を変えたと。

ウォール・ストリート・ジャーナルが日曜日夜(日本時間)に報じたニュースは、日本においても注目だと思うのですが、ことの真偽がハッキリしないせいか、どういうわけか、日本のメディアの追随報道は妙に区々です。それにしても、この動き、日興コーディアル証券に対しても、モルガン・スタンレーに対しても、影響力が大いにある筈の三菱UFJは主導権を握っているのでしょうか?

●イギリス、金融機関への追加支援策を今夜発表へ(1/18FT、WSJ)
一発目は昨年10月の4000億ポンド。造反やら再可決やらで物議を醸した米国の金融安定化法案の7000億㌦と比べても、国民所得の規模を考えれば、全く遜色のない乾坤一擲だったが、血税を湯水のように使っているという世論の反動を余所目に、ブラウン首相もダーリング蔵相chancellor of exchequerも、公的資金受け入れ後も貸出を伸ばそうとしない銀行業界に対する怒りと不満を表明すると見られている。

●米国も、銀行救済策を練り直しへ(1/18WSJ)
銀行危機は当初想定よりも酷いとして、財務省、連邦準備銀行、預金保険機構の首脳が次期政権の経済閣僚と議論に入ったと。不良債権買い上げを目的とした「政府系銀行」を設立も。

ゴールドマン・サックスの試算によると、世界中の銀行が米国向けに保有している不良債権のうち、既に2兆㌦は損失が実現しているが、含み損がまだ同規模あるそうです(住宅関連で1.1兆㌦、企業向け貸出と社債で0.4兆㌦、商業用不動産、クレジットカード、自動車ローンで0.6兆㌦・・・)。

●アイルランド最大の銀行を国営化へ(1/17FT)

後半3つの話題、オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。
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2009年1月16日金曜日

日経CNBC生出演でパニック

今朝のブログでお伝えしたとおり、本日午後4時から日経CNBC「ラップトゥデイ」に生出演させていただきました。記念すべき私のテレビ初出演となったのは日経CNBCの看板コメンテーターである中嶋健吉さんと対談する「アジアマネー」というコーナーでして、本日の御題は、2009年の為替相場-特に米中の経済対策とドル人民元の相場についてです。残念ながら外国為替証拠金(FX)では人民元は取り扱っていません(これはある意味で人民元に対する中国政府の管理のあらわれでもありますが・・・)。

しかし、リーマン・ショック後の為替の世界は、米中を軸に展開されるという番組の意図は我が意を得たり。ディレクターの井上さんと事前に打ち合わせと資料作りをさせてもらい、簡単な台本も用意されてはいたのですが、番組直前の中嶋健吉さんとの打ち合わせでは、「丹羽さん、台本を無視してやろうよ。そのほうが丹羽さんの面白さが出るよ」と唆され、いざ本番。中嶋さんからは突っ込まれたりフォローしてもらったりで、結構タジタジ。《ただいま、自分は意味不明のことを喋っているなぁ》と思った瞬間も数箇所ある、その再放送は今夜9:00から(再々放送が10:30から)です。

分刻みで動くスタジオが初体験だったこともあり、伝えたい内容の50%程度にとどまったと反省していますが、伝えられなかった部分は、今月末出版の私の著書「『為替力』で資産を守れ」にしっかり書いてございます。

日経CNBCの視聴者プレゼントの対象にもなっております。抽選で10名様にプレゼント。この機会を是非お見逃しなく。

残念ながら当選しなかった皆さんは、是非書店でお買い求めください_m(。。)m_

ちなみに、コメンテーターの中嶋健吉さんは、私にとっては興銀証券時代の大先輩。しどろもどろの私を助けて下さり有難うございました。今後はより厳しい突っ込みにも耐えうるよう、精進致します!
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人民元の偽札がインターネットで購入可能!?

●中国政府、ネット販売されている人民元の偽札の根絶で苦慮(1/16FT)
贋物の高級ブランド品の世界最大の供給基地として長いこと知られてきた中国。それが、今は偽札-それも中国自身の(!)-の供給販売においてグローバル・リーダーに躍り出た、とFT紙。

今月26日から始まる旧正月は、中国にとって米国のクリスマス商戦に相当する消費シーズン。これを目前にして中国政府が不正ネット販売を弾圧しようとするのは偶然ではないとFT紙は分析するが、効果は上がっていないと。

人民元の偽札は、偽札の額面の1割から3割程度の価格で取引され、指定された銀行口座に振り込まれると宅配されるというのが通常だそうです。中国最大の検索エンジン“Baidu"で「人民元の偽札販売」と検索すると、取り扱っているサイトは簡単に沢山見つかるとのこと。

中国の“ネット警察”によってブロックされているサイトも増えてはいる。しかし、昨年、ネット販売による不正薬物が被害をもたらした事件がそうであったように、法的措置を全国一律に講ずることが難しく、撲滅キャンペーンのようなものを仕掛けること以外に有効な手段が見出せないのが中国の特徴だと、FT紙は締め括っています。

人民元の偽札がこれほどまでにネット上で蔓延するということですが、偽札の製造元は上記末端価格よりも安い原価で輪転機を回しているのだから、何故自分で使おうとしないのか?人民元の紙幣のセキュリティの低さは以前から問題だったのが、何故ここに来てネット販売という分野で問題が深刻化したのか?中国経済や通貨管理、為替相場に与える影響は?などなどと疑問点や腑に落ちない点が多々ある中、実は本日午後4時から、日経CNBCで「米ドルと人民元の相場を占う」というテーマで私自身喋らなければなりません。その前に、このFT紙の“スクープ”消化するのは難儀です。
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2009年1月15日木曜日

ボインねたの翌朝

●加ノーテルが破綻-負債3200億円超(1/14WSJ、FT、日経ほか)
一時はカナダの株式市場で最大の時価総額を誇った通信機器超大手。日本だと、NECと富士通を合わせたようなイメージだが、マイクとスピーカーが一体となって手放しで通話が出来る技術はポリコムと並ぶ特許で、なかなか真似が出来ないものだという話を、以前に松下電器産業(現 パナソニック)の幹部の方から伺ったことがあります。

WSJ紙によれば、部品調達先の協力を取り付けており、事業継続のまま再生が目指せるとのこと。債務超過額はGMよりも遙かに「まし」。連邦破産法11条の威力-モラルハザード防止と事業継続に欠かせない取引先債権者の協力取り付けとの調和-を米国自動車業界に見せつけて欲しい試金石か。

●オバマ次期大統領の景気刺激策に43%の米国民が賛成-WSJ/NBCの最新世論調査(1/14WSJ)
しかし、連邦政府はカネを使いすぎだとして、財政赤字の拡大を懸念する声も少なくない、とWSJ紙は報じています。

●米政府、数十億ドルの追加支援をバンカメに約束へ(1/14WSJ)
メリルリンチ買収により、米銀最大規模となったバンカメ。

●JPモルガンチェースのCEO、2009年超悲観論を語る-フィナンシャルタイムズとのインタビューで(1/14FT)
米国では、クレジットカードその他の消費者向け貸付の焦げ付き、失業が通年で増え続ける。米国、欧州とも2009年中の景気回復は無理と、ジェイミー・ダイモン氏は語る。

●アップルCEOのジョブ氏、今年6月まで病欠(1/14WSJほか)
●リオ・ティント会長、退任へ(1/14FT)

ボインねたの翌朝につき、暗いニュースをまとめてお送りしました。
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2009年1月14日水曜日

DINKsとボイン

今月末に書店に並ぶ予定の『為替力』で資産を守れ!の最終校了が昨日午後。私自身が印刷工場で缶詰となり誤植がないかどうか一字一句見直すこと凡そ5時間。「お疲れ様でした。これ以上は、泣いても笑っても修正は効きません」と言われ、新宿の寒空の下に解放されました。

この時点では通常大きな加筆修正はないものなのですが、長時間お付き合いくださった編集長から、「“DINKs”という言葉が、編集部内で意味不明との声が多かったので、括弧書きで(共働きで子供の居ない夫婦のこと)と挿入したいのですが?」と聞かれました。“DINKs”が登場するのは、少子化高齢化と年金問題を取り扱いつつ、日本と中国の比較をした部分です。少子化と年金問題が『為替力』に関係あるのか、ですって?それは大ありなのですよ。

「語釈の挿入は全く問題ないです。しかし、“DINKs”と言われて(書かれて)意味が判らない読者が少なくないとなると、同じ意味を表すコンパクトな別の表現が出てきたということですか。“DINKs”は随分と寿命の短い《死語》になってしまったものですねぇ・・・」と私が訊ねると「少なくとも出版事業という立場では《死語》認定せざるを得ないですね。でも、(共働きで子供の居ない夫婦のこと)を簡潔に表す別の表現があるわけでもないので、語釈の挿入以外に方法はないですね。僕自身は、数年前に“DINKs”のための節税法という記事の編集に携わったことがあるので、僕個人の中では《死語》認定はしていないのですが」と編集長さん。

《死語》と言えば、現代「死語」ノート(小林信彦著、岩波新書1997/1)の中に、“ボイン”が《現代の死語》だと紹介されています。大橋巨泉さんが11PMの司会者としてコンビを組んだ朝丘雪路を指して発した言葉がbuss wordになったものと記憶していますが、ご存知の通り、⇒巨乳⇒爆乳⇒スイカップ、などと置換されてきています。一方、“DINKs”は別のbuss wordに取って代わられたわけではないのに何故死語になったのか?昨夜、校了が終わった後も気になって仕方がありませんでした。

少子化が「深刻化」(?)する中、“DINKs”が増えこそすれ減っているとは思えません。昨夜、テレビ東京「ガイヤの夜明け」で中国の寒村に初めて全自動洗濯機が入るという場面。家族の月収の2ヶ月分で手に入れた夢の機械は農作業と洗濯に明け暮れ、長年、“しもやけ”と“あかぎれ”に悩まされた奥さんを喜ばせたというシーンでした。温暖化のおかげもあるでしょうが、現在の日本の多くの地域では“しもやけ”と“あかぎれ”は死語に近いのではないでしょうか?「現象やモノが無くなった」ことによる《死語》では、“DINKs”は違うようです。

夜、寝る前に思いついた答えは、「現象やモノが《ありふれた》」ことによる《死語》もあるのではないか、という仮説です。温暖化のおかげで、という話をしました。もし、温暖化が更に進み、関東以南の太平洋沿岸の冬は毎日ポカポカ陽気になったとします。「小春日和」が常態化すれば、「小春日和」という言葉は死滅してしまうのではないでしょうか?エスキモーの言葉には「雪」に相当する言葉がないのだそうです。そのかわり、細雪、粉雪、牡丹雪、吹雪、・・・など7種類の言葉があるが、日本語や英語と異なり、●●雪とか●●snowみたいに、語幹に雪(snow)を伴わない。つまり、部分集合に対する全体集合としての雪という概念が存在しないのだそうです。天から降ってくるものは雪以外にはない世界が常態であれば、なるほどと思います。

対立概念があるから、言葉(意味するものと意味されるもの)が存在する、というのが言語学者ソシュールの構造主義。“DINKs”は、エスキモーにとっての雪のように当たり前の存在になりつつあるということかも知れません。
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2009年1月13日火曜日

ガザ危機と商品相場

「七転び八起きブログ」をご愛読くださっている皆さまのなかには、当ブログがガザ危機についていまだに取り扱わないことが不思議だと思われているかたも少なからずいらっしゃるのでしょう。無視を決め込んでいるわけではありません。イスラエルとパレスチナのいずれかに利害関係があって、書きづらいという事情があるわけでもありません。むしろ、ご想像の通り、我が国で入手可能な大手マスコミの情報から導き出される「図式」

少数民族パレスチナ人が被害者⇔イスラエル人が加害者←国連安保理決議でアメリカが棄権

という、勧善懲悪の歴史観に、大国主義の国連が機能しない(米国の政権が「ユダヤ人」票なり「ユダヤ人」の資金力を無視できない)姿が加わる「図式」は、確かに我がブログが従前から忌み嫌っている一方的な見方かも知れません。しかしながら、この一方的な決め付けに対峙できるような情報もまだ入手できておらず、我がブログ独特の天邪鬼なものの見方をご紹介できずにいるというのが本音です。

グルジア問題や北朝鮮問題を通じて、マスコミ等が喧伝する一方的な勧善懲悪を信じてはいけないと繰り返してきた「七転び八起きブログ」。これらにも増して「ユダヤ人」についての関心は、昔から深かったのですが、これまた書籍を含めたメディア全般において、日本において十分な客観的な情報を手に入れることが極めて難しい分野。「ユダヤ人」と鍵括弧付で書いてきたのも、民族の定義からして問題含みであるという指摘がこれまでにも随分されてきました。ここでは、「ユダヤ人」の全てがシオニスト(ユダヤ人は独自の国家を持つべきである《イスラエルを建国すべき》という立場)ではない。シオニストの全てがガザ侵攻に賛成なわけではない。という点だけお伝えし、引き続き私の独自の調査と勉強を続けて参りたいと思います。

宗教問題、民族問題、そして政治について「あっけらかん」としているのが、(例外は多々あれど)日本人の美徳だと申し上げてきましたが、この点逆に、「日本人は外国人相手に宗教、民族、政治の話題をしてはいけない」などと注意が繰り返されることがあります。私自身がこの注意書きを無視して大変なことを招いたことがあるのです。約13年前、イタリアはフィレンツェの料理屋で米国から旅行に来たとおっしゃる中年のご夫妻と席が一緒になりました。職業は、旦那様が大学教授で、バッハ以前の音楽を研究されていらっしゃるとのこと、一方、奥様はお医者様だとのこと。ここでピンと来るべきだったのですけど、音楽の話を徹底的に聞きだしている間に、例の注意書きを忘れてしまいました。名物のTボーン・ステーキを食べ終わる頃、お住まいを聞くと、ボストンだとか。既に酔っ払っていた私は、余計なことを口に出します。「ボストンと言えば、キッシンジャー元国務長官をはじめ、米国在住のシオニストが多く住んでいるところでしょう・・・」。当時の私のユダヤ人に関する知識は、シオニストのユダヤ人とそうではないユダヤ人はもともと民族の出自が異なるという「説」でした。「それは違う!、シオニズムは立場であり(建国)運動である」と、旦那様が興奮気味に語ると、奥様はそれは微妙に違うのでは云々と、旅行気分を台無しにさせる夫婦喧嘩のキッカケを与えることになってしまったのです。締めは「あなたは最初からお判りのとおり、わたしたちはユダヤ人だ。しかし、僕はシオニストだが、妻は違う。立場が違うんだよ」と。

「あっけらかん」と異文化を学ぶのは好奇心を満たすには良いのですが、随分な迷惑を掛けてしまったと今でも申し訳なく思っています。同一宗教(同一「民族」?)だが立場(時に「宗派」?)が違うということが、しばしば日本国外では大きな意味を持つという現象を、わたくしたちは、何何原理主義云々を待たずして垣間見ることが出来ます。何となく仏教徒の子孫という程度の意識の我々の多くが、恋愛や結婚をするときに、宗派は何処かなどと気にすることは一部の例外を除きないのではないでしょうか。

恐らく二度と会えないであろう、あのときのご夫妻に、おふたりそれぞれの立場でガザ問題について伺ってみたいような、万万が一再会してもその話題を避けて、「Tボーンステーキ、味は忘れたけど、美味しかったですね!」という当たり障りのない会話に終始したいか、複雑な心境に陥らせている今日の状況です。

パレスチナ地域を囲み、イスラエル=米国と対峙するアラブ諸国の立場も、決して一枚岩ではない点、最後に申し添えます。ガザ地区で修羅場と向き合うパレスチナ人に同情しつつも、難民流入は困るとして、支援に消極的なエジプトとレバノン。その両国を非難し、反米・反イスラエルを強硬にアピールするイランとシリア。

それにしても、原油価格は上がりすぎても下がりすぎても、紛争の火種になります。18年前の湾岸戦争も、その直前は商品価格が歴史的な安値圏だったことを忘れてはなりません。
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2009年1月8日木曜日

FXで夢を叶えよう

今日のタイトルは、珍しく、フェニックス証券の宣伝コピー。年初から2月いっぱいまでのキャンペーンです。口座開設をしていただき、どの通貨でもいいので、一回取引をしていただくと3000円のキャッシュバックというもの。宣伝コピーは、東欧通・中央アジア通で知られる(?)フェニックス証券の外国為替部長が考えたものです。

プレスリリースもしました。

プレスリリースでは、同時に、毎日お読みいただいているこの「七転び八起き社長のFXダイアリー」が1月31日に書籍化され出版されることもアナウンスしています。書籍の題名は、

『為替力』で資産を守ろう~世界を見る、経済の先を読む力がつく~

というものです。ブログの内容を抜粋し、現時点でも古びていない記事を中心に、テーマ毎に整理しつつ、日々ブログを読んでいただくときと同様の臨場感や緊迫感を失わないように、原則加筆訂正は殆ど行なわっておりません。森永卓郎さんや宋文洲さんとの対談、『為替力』が身につく用語解説など、書籍ならではの構成をお楽しみいただければと思います。

書店やネットでお買い求めいただければとても嬉しいですが、ちなみに冒頭のキャンペーン「FXで夢を叶えよう」の特別プレゼント企画にもなっております。どうぞご活用下さい。

今週は書籍の準備作業が大詰め。ブログの更新が順調ではなくて、まことに申し訳ございません。
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2009年1月7日水曜日

バーレーンの格付けと米財政赤字

●バーレーンを格下げ方向で見直し、ムーディーズ(1/6FT)
イスラエルのガザ侵攻で中東情勢流動化を受けての措置かと思い、記事を読んだら、全然逆でした。
原油価格の暴落による国家財政の負担増が原因とのこと。ガザ侵攻で原油が50㌦まで戻しているのはむしろプラス材料なのか。

バーレーンは中東諸国のなかでは、原油輸出以外の収入源の多角化が図られているほうだが、それでもピーク時の三分の一程度に低迷する原油価格では財政状態の維持は困難と見られている。ムーディーズの現在の格付けはA2。

もっとも、当ブログでは、格付機関はもとより信頼しておりませんが。

●アルコア、15,000人雇用削減(1/6WSJ)
期間社員含む全従業員の15%に相当。

●米財政赤字、2009年度は1兆㌦へ(1/7Reuter)
財政赤字の天井がなくても、さすがに自動車やアルミそのものを公的資金で買い上げるわけにはいかないでしょう。
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2009年1月6日火曜日

天然ガスと集団的自衛権

●ウクライナに対するロシアの天然ガス供給制限に対し、EUは中立を保つ(1/5IHT)
ロシアとウクライナの間の天然ガス価格に関する条件闘争は3年前にも起きていた。前回はウクライナ側を支援したEUだが、今回は仲裁役を務めず中立を決め込む、とインターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙。

EU圏は、そのガス需要の25%をロシアに依存しており、更にそのうちの80%がウクライナ経由。月曜日ロシアが通告した更なるウクライナへの締め付けはヨーロッパを打撃する。特に、ブルガリア、ルーマニア、チェコ、ハンガリーは直ちに緊急事態に陥るとの報道も。

それでも、今回は、

★ロシアはエネルギー価格の暴落に直面していること

★ウクライナは経済危機に直面しており、ロシアが要求しているガス価格を支払うとなると、IMFが合意した経済援助資金(約160億㌦)相当分が一挙に枯渇すること

紛争当事者双方に弱みがある点が、2006年の同様の紛争と異なる点だと指摘。

昨日発売の「週刊ダイヤモンド」。長期連載中の櫻井よしこさんのコラムのなかで外相・陸奥宗光の言葉「兵力の後援なき外交はいかなる正理に根拠するも、その終極に至りて失敗を免れざることあり」を取り上げています。櫻井氏は「日本が、米中合同管理体制への従属を避ける道はたったひとつ。外交と軍事は一体であることを認識し、自衛隊を国軍とすること」と説きます。

その先、一足飛びに「集団的自衛権の行使を可能にする」ということに結びつける。または万能の切り札としての集団的自衛権が先ずありき、という議論をするから、非現実的な抵抗に遭うのだというのが個人的感想ですが。自衛隊はソープランドと同じだ、違憲だが合法だ、という解釈改憲の泥沼からはそろそろ卒業しなければならないのは事実。しかし、自衛権と集団的自衛権の差は著しく、そこに歯止めを掛けて、大国の論理で自衛隊派遣について日本国独自の裁量を奪われるようなことがあっては絶対にならない。余計なおせっかいであったイラク介入で力尽きた米国が、もはやイスラエル対ハマスに実効的な介入が出来ない状況に陥る中、前掲の天然ガス紛争。世界が多極化すると思われる中、与野党論客には大国の利益代表ではない立場で議論をしてほしいものです。

陸奥宗光の言葉「兵力の後援なき外交」。「兵力」と並べて、エネルギーなど天然資源も加えておくべきと、前掲のインターナショナル・ヘラルド・トリビュン紙は物語っているようです。
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2009年1月2日金曜日

明けましておめでとうございます

今朝も外国為替部の職員に混じって元気に出勤。御屠蘇を飲んでいる場合ではありません。

日頃お世話になっている日経CNBCのスタッフの皆さんも恐れる(!?)テレビ酷評家の七転び八起きは、年末年始の地上波番組の大半は無視しつつ、お決まりのNHK「紅白歌合戦」、テレ朝「朝まで生テレビ元旦スペシャル」、最後にNHKスペシャル「激論2009 世界はどこへ そして日本は」を観“戦”。

紅白歌合戦で天邪鬼の私がじぃ~んと来たのは、前川清さんがクールファイブを背景に懐かしの名曲「東京砂漠」を歌ったところ。2008年ヒットしたかどうかに拘らず選曲することが目玉だった2008年の紅白。前川清さんに「東京砂漠」を歌ってもらうことは先月のダイア建設倒産よりも以前に決まっていたのでしょう。

かつて民放局名自体タブーであったNHK。近年は著しく態度が柔らかくなってきているのは読者の皆さまもお気づきの通り。それにしても、懐かしの名曲以外は殆どCM楽曲。崖の上のポニョにしてもあそこまで大仰に宮崎アニメに時間を割いて日本テレビにエールを送る必要があるのか?七転び八起きブログの10倍以上読まれているから嫉妬しているわけではないですが、羞恥心+PABOに混じって出てきたフジテレビの旗は一体何なのか?地上波民放各局が構造不況の傷を舐め合うべく、お互いがお互いの番組を取り上げる品の無い相互乗り入れの動きに、NHKが同調する必要は全く無い筈。

さて、ここからが本題。テレ朝とNHKの討論番組はいずれも派遣切り問題に時間が割かれていました。派遣切りが終身雇用と年功序列の既得権益にのさばる正規雇用(家族としての正社員)の犠牲であるとか、非正規雇用を法律で禁止したところで失業率が上がるだけ(敢えて私が補えば、旧法借家を定期借家に根こそぎ置き換えるのを旧社会党が拒んだ結果、家賃利回りが高止まっただけで社会厚生に何ら貢献していないのと同じこと)という規制緩和論者の主張は多勢に無勢で針の筵に立たされていました。製造業の非熟練労働(単純労働)の分野においては直ちに同一価値労働同一賃金を適用すべきだし、ワークシェアも可能で、企業経営者がそれを厭う理由はないでしょう。

問題は、非熟練労働分野において日本はアジア諸外国に比べ圧倒的に比較劣位にあるということ。熟練労働の分野においてはワークシェアは不可能であるということです。私は自民党政権の肩を持つ義理もへったくりも無い人間ですが、非正規雇用の範囲を拡大したこと、自動車が売れなくなったのは有効需要(≒公共工事)が足りないからだという自民党に対する失政批判は的を射ているでしょうか?自動車が売れないのは景気循環よりも石油価格急騰(今はピーク時の半分なのに売れないのですから!)よりも多機能化・高性能化の行き詰まり(これはエレクトロニクスにも当て嵌まる)と(特に若年層の)生活様式の変遷でしょう。

バブル世代以前に新卒採用され終身雇用と年功序列が未だに当たり前だと考えている既得権者の多くは、自動車は若い頃の夢でありステータスシンボルであり、より短視眼的には女性にモテるための道具だった。それが現在は携帯でのコミュニケーション能力に置き換えられた。違うでしょうか?

私は民主党枝野議員や日本共産党穀田議員の人道的な視点は嘘ではない、政治家にありがちな票田を目の前にした偽善ではないと信じて疑いません。しかしながら、両先生の派遣切りへの対応:「正社員ですら倒産寸前では解雇できる。内部留保をシコタマ溜め込んだ企業が一期赤字くらいで派遣切りは許されない」(枝野氏)、「非正規雇用の範囲を製造業分野に拡大させてしまった以前の法律に直ちに戻すべき」(穀田氏)は間違いです。むしろ改革が不十分で正規雇用分野における終身雇用と年功序列が解体されていないことが問題なのです。

今世紀初頭のITバブル崩壊時に我が国を襲ったデフレで、メガバンクがあと一つでも少なければ、銀行員正社員の数をもっと減らせられていれば、日本の銀行はサブプライム関連商品をはじめとする運用益に頼らずに済む経営体質を手に入れていたかも知れない。ポールソン財務長官がリーマンを破綻させたのはゴールドマンサックスのOBとしてかも知れないが、ビジネスモデルが臨界点に達していた投資銀行の間引きは避けられないという判断が根底にあったと思われます。本日報道されているバンカメによるメリルの買収完了。ここでも、買収側の筈のバンカメ職員にも解雇の波は容赦なく打ち寄せているのです。

若年層の生活様式については、アルコールを飲まなくなった。特に麹臭漂う日本酒が敬遠された。よって全国の酒蔵がどんどん消滅し、杜氏さんの数が過去5年で半分以下になった、という話を当ブログでしました。中小零細企業の廃業や倒産は、派遣切りと全く同じ扱いであり、大企業にのみ許された終身雇用・年功序列と対をなすものです。しかし腕利きの杜氏さん達は、現実を受け入れ、異業種異分野に活路を求め再就職を志していらっしゃいます。決して彼等からは、日本酒が売れないのは有効需要が足りないからだとか、飲酒運転の規制強化はやり過ぎだとか筋違いの言い訳は聞こえて来ないのです。

規制緩和論者の鬼の首を取ったかの如き「会社は株主の物ではない」という議論。日本株の下落幅が金融危機発祥の地米国よりも酷いのは外需頼みだったからという議論。このような感情論が横行する風土そのものが日本株の低迷(純資産倍率1倍を割り込んだ上場企業の多さ)の原因なのです。「赤字に陥ったからといって、内部留保が枯渇するまでは首切りや配置転換や業態転換をしなくても良いんだよ。法律が守っているから」と民主党や日本共産党に応援していただければ雇われ社長の仕事は随分楽になります。でも、そうしたら起業家や株主は日本から益々ソッポ向くでしょう。失業者の再雇用に最も必要な資源は、公共事業でもなければ社会保障でもない。新たな産業を生み出し育てうる優秀で果敢な起業家や経営者なのです。

最後に、誤解のないように所得再分配と雇用のセーフティネットについて申し添えます。派遣切りに遭遇している人達の殆どが、生まれ育った境遇が原因(親が貧しく教育機会に恵まれなかった)だとすれば、つまり格差の“拡大”だけでなく、格差の“固定化”(貧困の再生産)も、現在の日本では進行してしまっているという客観的データがあるのであれば、所得再分配(累進課税強化と生活保護強化)と雇用のセーフティネットを応急的に強化し、格差逆転可能な社会インフラを築くべきです。確かに、東大生の親の収入が、慶大生のそれと同様、全国大学でトップクラスという現状は打開しなければなりません。ちなみに私は中学生時分から進学塾や予備校は、教育の機会均等を保障した憲法に違反すると彼方此方で主張し、同級生達からそこまで言うなよと咎められたものでした。

しかし一方、世の中悪いことばかりではない。「コネ採用」という言葉、今では死語だと信じたい。カネ+コネ+学歴がないと大企業には入れないという時代が終わったのは、失われた10年の米国からの外圧やらグローバル競争のお陰ではないでしょうか。東大卒だから企業パーソンとして優秀な筈だと思い込んで採用する大企業の経営者や、重役や大株主や大口顧客の子息だから面接で特別待遇しなければと考えている人事担当が未だ現存したとしたら、そんな会社はこれから数年の不況のなかで間違いなく滅びるでしょう。

公教育の充実(含む貧困層への教育バウチャー制度)だけで格差逆転可能な社会が実現するとは言いません。が、“良い学校を出て一流企業や一流官庁に入れば死ぬまで安心”という戦後長く続いた日本社会が瓦解したことは決して悪いことではない。むしろこのガラガラポンはもっと進めるべきであり、人生の節目節目に逆転可能なチャンスがある制度設計こそ、グローバル化の正の遺産。この側面を忘れて、規制緩和論者を罵倒する堰を切った声・声・声に騙されてはいけない。

やはり長くなってしまった年頭所感。どうか今年もよろしくお願い致します。
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