2010年9月30日木曜日

半歩先を行くこと

以前、勤務しておりました米国系投資銀行で、メガバンク担当の投資銀行マン(注①)が、金融機関担当のクレジットアナリスト(注②)に吠えていました。

「あなたの意見は過激すぎるんですよ。三歩先を行くと誰もついてこない。半歩先を行きましょうよ。そうしないと商売になりません。」

注①:増資や株式公開、証券化などをして資金調達しませんか?企業を買収して事業を拡大しませんか?などなどを営業する仕事
注②:何処そこの発行する社債は買いだ、売りだ、と推奨する仕事

発行部数は決して多くないけど、珠玉の情報が詰まっている、そのコピーこそ「三歩先を読むビジネス情報誌」月刊ファクタに対する皮肉ではありません。むしろ、エールです。

朝一、WSJ誌が速報で伝えた「人民元安で対中制裁法案、米国下院が可決」という記事を見て、わたくしが昨年春出した「『為替力』で資産を守れ!」も、やや先を歩き過ぎたなと当時を振り返りました。

リーマンショック後、緊急出版に至った『為替力』では、米国経済は、永年封印されてきた通貨安戦争を仕掛けること以外に根本的な治癒の方法は見つからないだろう。80円を目指す円高ドル安になるだろうと、「あとがき」で書きました。

また、同じころ、日経CNBCに出演させていただき、人民元VS米ドルという、非常に難しい演題をもらったものでした。ここでも、ダーティーフロート(汚い変動相場)というキーワードを用いて、米中の通貨安戦争の勃発は時間の問題だと説き起こしました。

実際はどうだったかというと、リーマンショック後、FRB(など)によって大量に供給された米ドル資金は、中央銀行預け金や現金(総称してマネタリーベース)として滞留するに留まり、マネーサプライの急増やインフレ期待の醸成には至らなかった(流動性の罠の疑いが強い)一方、米銀に対するストレステストは思いのほか効果的な茶番劇となり、昨年3月以降、1年と1四半期の間、米国経済は雇用なき回復を謳歌してしまったわけです。

つまり、三歩先を読んだわたくしは見通しが外れてしまったのでした。

しかし、今朝の米国下院決議(野党共和党も大多数が賛成したらしい)や、昨日のブログの代表的ヘッジファンドの解約殺到や大量解雇などを見ていると、この1年と1四半期というのは所詮時間稼ぎに過ぎなかったのではないか、そのような思いに駆られる、中間期末です。
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