2013年6月25日火曜日

破綻寸前のネズミ講と揶揄された中国のシャドーバンキング

脱税幇助では稼げなくなったから、今度は相場操縦で行ってみようという魂胆なのか?スイス系銀行の幹部らしきひとが、アベノミクスで日本経済は崩壊するという論調を、気さくな媒体に載せています。

UBS銀行最高投資責任者 最悪の場合は日本経済クラッシュも


確かに、一理あります。しかし、中央銀行のマネタリーベースの匙加減が経済成長やら国家破綻やらに良くも悪しくも直結するような考え方はそろそろ卒業したほうが良い時期です。

きょうは、ポジショントーク(自分が投資をしている資産が値上がりするように世論を誘導すること)の臭いがプンプンする話を、ほかにも紹介します。

まったく同じスイス系銀行の顧問で独立経済コンサルタントのジョージ・マグヌス氏は、アベノミクス批判(アベマゲドン予想!?)の記事に比べると気さくとは言えない媒体に、6月後半の中国株の大暴落・続落について、バーナンキ発言や季節要因などいろいろあるが、シャドーバンキングが制御不能なレベルにまで肥大してしまい、中国人民銀行としても荒療治せざるを得なくなった点を指摘しています。

市場への洞察=中国のネズミ講的な信用創造ブームが収縮に転ずる

何につけても、中国は古くから日本にとって教師でもあり反面教師でもあります。シャドーバンキングについては、サブプライム・ショックとリーマン・ショックの後に関しては、最も派手に奔放にのさばったのが中国で、その真逆が日本だったのではないでしょうか。この違いは、金融政策ではなくて、金融監督のあり方の違いです。

わたくしがやっている商売も含めて、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資顧問業すべてシャドーバンキングに当たります。しかし、わたくしの感覚では、銀行だけが日向で、それ以外は日陰と言われるほど、普通は後ろめたいことはしていないし(笑)、またやろうと思っても出来ない程度に規制監督をしていただいており、良くも悪しくも、金融商品取引法に書かれているようには簡単に登録が出来るものでもないという事情があります。

「貯蓄から投資へ」なんて、口先だけじゃないか!!と会う度に怒りを顕にされる同業他社の先輩社長さんがおられますが、まったくその通りでして、日本の金融当局が見事にブレないので、市場もそう簡単にはブレないのであります。

もうひとつ、同じ英フィナンシャル・タイムズ紙からの引用です。

勇敢なバーゲン・ハンターなら、今こそ新興国に投資すべきである

先日書きましたように、バーナンキ発言の影響をもろに受けているのは、ドル円相場よりもむしろ、南アフリカランドなど新興国の通貨やオーストラリアドルなど資源国の通貨です。

オリンピックやワールドカップ、コンフェデレーションカップなどに、経済危機と暴動は付き物です。
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2013年6月13日木曜日

「バーナンキは何を考えているのか」問題とユダヤ系アメリカ人

5月の下旬以来、「日本の」金融市場で起こっていることは、株価の急反落とドル円相場の戻り売りだとまとめられることが多いです。そのきっかけを与えたのがバーナンキFRB総裁の量的緩和終結を示唆する発言だったともされています。

黒田日銀総裁の異次元緩和の直後の「日本国債の利回り低下、株価の急激な続伸、ドル円相場の更なる急伸」は矛盾を抱えるバブルであり、「日本国債の売り、日本株(とくに不動産株)の売り、ドル円の売りの、どれかをやっても、すべてを組み合わせても、合理的な投資戦略だ」という話を、このブログで4月5日に書いております。

予感が的中したことを自慢するのが本題ではありません(外れることのほうが圧倒的に多いので)。

なぜ、バーナンキ議長がアベノミクスに水を差したのか?という怒りや疑問に、臍曲がり七転び八起き的角度から答えてみるとすると・・・

そもそも、バーナンキ議長はアベノミクスに水を差そうなどという意識で「空気を読めない」発言をしたのでは全くなく、米国内のバブル退治を念頭に置いているだけであって、きょうのブログの冒頭の「ドル円相場の戻り売り」というのは為替市場全体から見たら副次的に過ぎません。

もっとたいへんなのは、南アフリカランドなど新興国の通貨やオーストラリアドルなど資源国の通貨に対して米ドルはむしろ劇的に上昇しているという現象です。

「金融緩和さえとことんやれば景気が良くなるのに」と無知蒙昧な批判に晒され続けて最後辞任に追い込まれた白川前日銀総裁よりも更に不人気的な言動を毅然ととるバーナンキ議長のセントラルバンカーとしての矜持の背景にある人となりを探ってみる価値はあると思います。

まず、彼は、同じくユダヤ系アメリカ人で、自由の国アメリカを代表する経済学者であるミルトン・フリードマンの信奉者でした。

大雑把に言えば、20世紀のアメリカ社会は、世界中で最も、ユダヤ人(の移民の受け入れ)に寛容だった国だと思われますが、それでもミルトン・フリードマンも、ポール・サミュエルソン同様、1940年代には大学社会で理不尽なユダヤ人差別を受けてきたという記録があります。

経済学界に限らず、アメリカですらあったユダヤ人差別と闘いながら、それぞれの分野で頭角をあらわしたユダヤ系がいかに多いかは、ウィキペディアの「ユダヤ系アメリカ人」の記事の末尾の写真一覧を御覧ください。

スポーツと政治(ロビー活動は措くとしても)はそれほどでもないですが、よく知られているように、映画・音楽・自然科学(理数系などと呼ぶべきか・・・もちろん経済学を含みます)・金融(投資・詐欺を含むorz)・コンピュータ製造・ソーシャルネットワークの世界での活躍ぶりは驚愕的でもあります。

わたしが尊敬している広瀬隆さんに言わせれば、これは偶然ではなく、陰謀ではないかと上手にこじつけられるかも知れません。それは話としては面白いのですが、すでに引用したユダヤ系アメリカ人の記述をお読みいただくと、(アメリカの)スポーツ界における黒人の台頭と同じで、貧困と差別から逃れるために人一倍努力した人が比較的多いと評価するのが妥当でしょう。

バーナンキその人についても然りで、「景気が悪い」「人々が全体的になんとなく不幸である」「プータロウの比率が高まっている」などなど世界中の先進国≒オールド・エコノミーで見られる現象が、通貨をばら撒くだけで治癒されるわけがないと、心の底では思っているはずなのであります。

こういうひとたちは、失業の原因は(ケインズが言うように)有効需要の不足ではなく失業者本人の努力の不足だと思っているのです。

これには重要な限定条件が付けられるべきではあります。

5月22日アベノミクスと貧困の連鎖をご参照ください。

この限定条件が無視されて、弱肉強食の思想だけが各経済圏で独り歩きしてしまうと、有史以来繰り返されてきたユダヤ人迫害の一因になってしまうのです。
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