2014年12月29日月曜日

アベノミクスとレーガノミクスと三つ子の赤字

七転び八起きブログのご購読者のみなさんの間では、ほとんど知られていないと自虐的に申し上げるのですが、わたくしがいま勤めている外国為替証拠金取引会社のアヴァトレード・ジャパンでは、アベノミクスに少しくらいは肖(あやか)りたいと思って、大盤振る舞い過ぎると評判の(←これはほんとうだと思います)、キャッシュバックキャンペーンの副(サブ)タイトルとして、

“アヴァ”ノミクスで日本を取り戻す

と言わせていただいております。

思えば入社して間もないおよそ二年ほどまえ、このキャッチコピーを意思決定するのにずいぶんと手間取り、手間取っているあいだに、もともとのアベノミクスが終わってしまいはしないかとドキドキしていたものでした。

ところがどっこい、アベノミクスというBUZZWORDは流行語大賞を連覇してしまいそうな勢いですらあります。

それは、

(農協、医療、労務などの岩盤規制改革という)三本目の矢がなかなか飛ばないからなのか?

それとも、

黒田バズーカ砲による金融緩和が、驚きをもって市場に迎えられたからか??

ついでに、

(誰のためかいまだによくわらかない)衆議院解散総選挙が、驚きをもって野党に迎えられたからか???

理由はともかく、アベノミクスという用語の寿命は、当初誰もが予測していたよりも長くなっていて、まもなく、レーガノミクスに追いついてしまうのではないかと思われます。

ここで残念なお知らせですが、レーガノミクスに追いついてしまいそうなのは、アベノミクスという用語だけではない点を指摘しないわけにはまいりません。

まずは、直近のニュースで、

家計貯蓄率、初のマイナス 貯金崩し所得上回る消費

(12/25付 日本経済新聞)


これには、お前が言うなと言いたくなりそうな「ロシアの声」というラジオメディアの追随記事がございます。


(12/28付 ロシアの声(ラジオ))

これは極端にしても、あの勤勉国だった日本が何故ここまで落ちぶれたのか!?という反応は、日本国内よりも海外でのほうがセンセーショナルだと感じられるのは、年間の経常収支が29年ぶりに赤字に陥ったことを(担当キャスターの強烈なキャラもこれありで)大げさに扱っていた英国国営放送の国際放送を彷彿とさせます

ここで年間というのは暦年であって日本の会計年度ではありません。その後は、石油価格の急落もあって、経常収支ベースでは若干の改善が見られています。ただし貿易赤字ベースではまだまだ恒常的な赤字です。詳しくはこちら。

(時事通信)

そして最後に、言うまでもなく、財政は赤字であるわけですから、今日の日本は、上から順番に言うと、

家計
貿易(+貿易外+移転)
財政

これらみっつがすべて赤字に陥ってしまっている。つまり、日米貿易摩擦の問題で、日本製の自動車がデトロイトで工場労働者に打ち壊しに遭っていたころ(プラザ合意前)の米国と同じようなマクロ指標になっているということです。

ついでですので、レーガノミックスと違う点にも触れておくと、自国通貨を引き上げる政策(レーガノミクス)と自国通貨を引き下げる政策(アベノミクス)、、、これは見た目にもわかりやすい違い、というよりは真逆であります。

もうちょっと言うと、わたくしも決してアベノミクス・ウォッチャーではないし、ほんとうは年末を締めくくるにあたって、人気のあるアベノミクスの話題よりも、その影で実は今年より重要だったと思っているロシア・ルーブルやビットコインと言った

《通貨の安定性とは何か?》

《通貨(=為替)の適正価値はどこにあるのか?》

という問題を掘り下げたかったのですが、、、そしてアベノミクスの政策担当者に直接聞けるほどの人脈もセレブリティもないのですが、、、おそらくたぶん、マクロ経済政策としては、アベノミクスは総需要政策であり、レーガノミクスは総供給政策(を意図していた)のではないかと思われるところが、見た目ではわかりづらい違いということになるでしょうか。

ところで、わたくしのブログの左上のほうにある《検索窓》に、わたくしの数学(線形代数)の恩師である塩沢由典先生のなまえを入力して検索ボタンを押していただくと、関連する過去の記事がドドドッと出て参ります。わたくしは、ほんとうにこれらは自分が過去に書いたのか信じられないほど、内容が深くて、よく書けていると自画自賛したくなるものばかりです。それだけわたくしが以前の会社ではちゃんと仕事をしていなかったことを露呈しています。それはともかく、このブログがご縁で、というのもまた、インターネットの時代、ソーシャルメディアの時代であったればこそだと微笑ましく思えるのですが、塩沢由典先生からお声がけをいただき、勉強会に参加し、きょうのブログで触れようと思って触れなかったロシア・ルーブルやビットコインを切り口とした為替決定のメカニズムについて相対市場の現場からという溝板的アプローチでプレゼンテーションをさせていただくことになりました。正月返上で勉強してみたいと思っております。

みなさまもどうぞ良いお年をお迎えください。

2014年12月9日火曜日

アベノミクスが争点だと言うけれど

まいどブログの更新のたびに、お久しぶりですという状態で、恐縮しております。ネタ切れも言い訳にならないほど、国際社会もこの国の政治も異常気象など天変地異も相場変動も多々あるなかでであります。ブログを更新していなかっただけでなく、管理すら怠っていたことで、本来コメントをいただけるような方ではない雲の上の存在の方から貴重なコメントをいただいていたことに1ヶ月も気づいていなかった、、、したがって公開していなかった、、、という事態が発覚し、愛読者のみなさまをはじめ、何かと関係のある方々全員にお詫びを申し上げたいと思います。

その雲の上の存在のコメントの主とは、わたくしが大学の一年生だったときの数学の担当教官であった経済学者の塩沢由典氏です。

これは特別なケースだとは思いますが、あたりまえのこととは言え、誰に読んでもらえるかわからない公開ブログという媒体で何を書くかということの重大さを感じます。コメントによれば、塩沢先生は中央大学を二度目の退官をなされたとおっしゃってますが、それでも何かと精力的にお仕事や研究をされているはずなので、わたくしのすべての記事をお読みになって、理論的な間違いを指摘していただくようなことはないと思っております。しかし、わたくし自身(とグーグル)が削除しない限り、この先もずっと残っていくものですから、十分に用心しなければならないと思います。

実に、わたくしのブログの特徴だと思うことがあり、もうかれこれ3ヶ月もブログを更新していないので、読者の数も減ってきているだろう、ページビューも桁違いに下がってきているだろうと思ってチェックしたところ、そこで塩沢先生のコメントが未公開コメントとしてペンディングされていることに気づいたのですけど、意外とページビューが下がっていないことを観察し、驚いてしまいました。

こんな調子ですと、以上の前置きと、年末のご挨拶だけで、きょうもまた終わってしまいそうな勢いです。

本日のお題、アベノミクスが争点だと言うけれど、、、で書こうと思っていたわけです。そこで、塩沢先生の今日の活躍ぶりをチェックさせていただかなくてはならない気分になりました。

塩沢由典先生のサイト
http://www.shiozawa.net/

このブログへのコメント(もとの記事は直前(とは言っても9月11日)のスコットランドとは何か、、、です)のなかで紹介(宣伝!?)していただいている最新刊の著書
リカード貿易問題の最終解決--国際価値論の復権

値段をご覧になって、どうかビックリしないでください!!

この本には、未定稿の論文「リカード貿易理論の再構成--国際価値論に寄せてII」においては未解決の課題とされていた部分も最終決着したということです。

そうでなくても、このテーマは、政治家のみならずわれわれ国民がついつい安易に口にしがちな(日本の)国際競争力という問題に、重大な影響をおよぼす議論です。

これを読まずして、TPPを語る勿れ、アベノミクスを語る勿れ、ということでしょう。

したがって、以下の数行も未定稿とさせていただくしかないのですが・・・・

わたくしは、三本目の矢を伴わないアベノミクスには両手を挙げての賛成は出来ません。

しかし、その不完全さをあげつらう野党がほぼほぼ異口同音に言う、家庭ノミクスとか、実質賃金上昇とか、中間層の復活というのは、、、鎖国政策でも採用しない限り、、、不可能であるということです。

少なくとも、「これまでの」アベノミクスの本質である財政政策と金融政策に限れは、これを緩和するか引き締めするかという選択肢のなかで、貧富の格差や中間層育成という答えを出すことは出来ません。

議論を端折りますと、塩沢先生は、賃金率(実質賃金とほぼ読み替え可能)を決定しうるのは(その国の)技術だけである、と論じておられます。

ここでいう技術は、日常会話の技術とはかなり異なることに留意しなければなりません。例えば、我が国の樵(きこり)の方々の技術は、恐らく世界のトップクラスだと思うのですが、これは日本の林業の技術(平板な言い方をすると労働生産性とか資本生産性)の高さを意味しない、むしろ現実は低い等々、です。

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更に、話が飛びます。

天然資源もない、安い労働力もない、農業や林業の生産効率も悪い、の無い無いづくしのなかで、1000兆円もの貯蓄があるだろう、金融資産も立派な資源(生産要素)ではないか、という意見を良く聞きます。はたして、金融資産は生産要素であるという議論は正しいでしょうか???

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