2018年9月21日金曜日

Zaif=テックビューロ、仮想通貨67億円分流出

Zaifハッキング問題については、まだまだ調査の余地があり予断は決して許されません。

しかしながら、被害金額の桁の違いを別にして、コインチェック事件とは異なる不自然さが気になってしかたがないという利害関係者や傍観者も大勢いらっしゃいます。

金融市場や資本市場に遠からず身を置く立場として、客観かつ公平に、何が起こっているのか、可能な限り調べておく必要はあります。



古今東西、企業の規模や公開非公開を問わず、様々な企業不正が起きています。

企業不正の多くは、経営者や大株主の強欲に起因するものかも知れませんが、そうでないものもあるとわたくしは勝手ながら思います。

多くの経営者にとっては、従業員をリストラしたり、新しいビジネスモデルを築くというのは簡単なことではありません。内外の環境のせいにすることが許されないなら、単に往生際の悪い無能な経営者と呼ばれるしかないですが、それはしばしば酷すぎるものです。

やむにやまれず、悪事に手を染めてしまうというインセンティブに惹かれる経営者は少なくないと思います。

フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン試験データ不正なども、上記の前者の要因か後者の要因が、よくわかりません。両方かも知れません。


ところで、上場株式では、今もなお相場操縦やインサイダー取引に該当するかどうか微妙な事案も含めて仕手戦がさまざまな規模で繰り返されているとも聞きます。今回はコインチェックのときの投稿と異なり、ブロックチェーン技術におけるセキュリティの問題とは違う角度で考察をはじめてみたいと思いました。 くれぐれも、繰り返しますが、Zaif問題はまったく余談を許さず、本件はさらなる調査、場合によってはインタビューやヒアリングを行って分析すべきところ、まずは私的メモということで、整理をしていきます。


親子上場を認めている資本市場は世界中で日本だけともいわれるが、フィスコ>ネクスグループ>カイカ(旧 SJI)は親子孫上場
(ア)  ただし2018年は通年で(1-3月期から)ネクスグループ、カイカとも連結決算からは外されている(どうやって?)
(イ)  ついでに、フィスコ仮想通貨取引所も連結から外れている(なぜ?)
フィスコの財政状態からは50億円の金融支援の現実性
(ア)  営業キャッシュフローと現金同等物の推移

(イ)  のれん代と商標権(資産計上)依存

(ウ)  借入金依存(ただし新株予約権付社債の行方は?無事償還?転換(予約権行使)は残念ながらなされていないものの?)

http://www.fisco.co.jp/uploads/20150213_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160216_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20170217_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180214_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_1Q.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180814_fisco_2Q.pdf.pdf

2005.06に発生したフィスコによるカイカ(当時SJI)の買収は赤字会社の「負ののれん代計上」を狙ったものか?
(ア)  http://www.fisco.co.jp/uploads/20150630_sji_ir.pdf

(イ)  ほかにも同様の事例が?

テックビューロとの技術提携と資本提携はフィスコ仮想通貨取引所(当初はフィスココイン)設立当初からなされていた。
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160112_fisco_pr.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160316_fisco_ir.pdf (フィスココインはフィスコ本社に引っ越すまでのあいだ設立時の住所が岸和田市)
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160509_sji_ir.pdf  (テックビューロの2015年度決算概要も出ている。2016~2018年途中までが最も興味深いがそこはわからない。ただしフィスコ仮想通貨取引所については下記5.)

絶好調のはずの仮想通貨セグメントは、2017年通年で、
(ア)  「8)仮想通貨・ブロックチェーン事業」フィスコ仮想通貨取引所が運営する仮想通貨取引所においては、
①     未だ取引手数料が実装されていないため、主にサンダーキャピタルなどの仮想通貨に対する自己勘定投資によって売上と収益を計上
②     仮想通貨・ブロックチェーン事業の売上高は900百万円、営業利益は750百万円
(イ)  一転、2018年にはいると、フィスコ仮想通貨取引所を「フィスコデジタルアセットグループ」という中間(?)持株会社に移行、フィスコから連結外しされる!!
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180110_fisco_pr.pdf

仮想通貨評価損、仮想通貨売却損の計上により経常損失は997百万円(前年同期は経常損失368百万円)

関連IR
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180413_fisco_ir.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_ir2.pdf



このグループがやっていることはいわゆる「会社ごっこ」(M&A+会計操作)?
制度信用による信用売りが出来ないJASDAQ銘柄(赤字会社)を傘下に3社抱えることにより、相場操縦で煙のないところに火をおこしている?

ライザップも同様だとの報道が
https://facta.co.jp/article/201810026.html

このような疑問を解決することこそ、ハッキングされた仮想通貨たちのゆくえの大きなヒントになるのではというところです。

2018年8月15日水曜日

トルコリラは押し目買いのチャンスと言えるのか?

新興国通貨危機のたびに、売り込まれている通貨がその購買力平価に対して割安すぎるという議論が出てきます。

多忙と充電を言い訳にしてめっきり更新をサボっているブログでも、通貨危機ごとに、購買力平価説とそのもっともわかりやすいたとえであるビッグマック指数で「分析」と「予想」を行ってきました。

ブログを始めた2008年はリーマンショック前から割安だったオーストラリアドルやニュージーランドドル、そして何と言っても南アフリカランドは(主要国通貨を売ってでも)買うべし(?)と予想し、大外れして、笑いものになりました。

この経験も活かしつつ、英Economist誌のグラフィックインターフェイスの進化もあり、2014年と2016年のロシアルーブル危機では、軒並み割安になりがちな新興国通貨のなかでも、一人あたりGDPが比較的低いとは言えないロシアの通貨の「売り込まれ過ぎ状態」は数少ない事象だという指摘をさせてもらい、珍しく押し目買い推奨大当たりとなりました。

さて、では今回のトルコリラ危機はどうでしょうか?

購買力平価説は長期的にも成り立たないのか!?

笑福亭鶴瓶さんが出演している医薬品だったか医薬部外品だったかのテレビCMで、「膝が痛いから太るのか?太るから膝がいたくなるのか?」というのがありました。インフレと通貨安も同じような関係で、どちらもどちらの原因であり結果です。

実は、トルコは慢性的にインフレに悩まされていて、米ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストの個人的統計によると、インフレ(年)率は年代毎の平均で1970年代= 22.4%、1980年代=49.6%、1990年代=76.7%、そして2000年代=22.3%だったとのことです。

完璧に客観的な物価統計というのは難しいものなので、ほんとうにこれが実態だったのかどうかは良くわかりません。それにしてもこんなものだったとしたら、これを知っていてトルコリラ建ての外国証券を買わされていた日本人リテイル投資家はたまったものではありません。

ここで、話の順番はめちゃくちゃですが、購買力平価説とは何だったかを、やはりビッグマック(照り焼きバーガーでは比較できないため)を例にとって簡単におさらいしておきますと、

”イスタンブールでビッグマックが10.75リラで買えるのなら、そしてUSDTRY=4.71(先月の話です 爆)なら、ビッグマックを2.28ドルで仕入れられることを意味するので、それをニューヨークに持ち込めば、現地相場(1ビッグマック=5.51ドル)との差額3.23ドルが無リスクで稼げる。このような裁定取引(アービトラージ)は差額がプラスマイナスゼロになるまで続くはずなので、いつかはイスタンブールのリラ建てビッグマック価格が値上がりするか、かつまたはニューヨークのドル建てビッグマック価格が値下がりするか、USDTRYが下落(トルコリラが対ドルで上昇)するかが起こるはずである。“

というものです。

ちなみに筆者は2週間前に仕事でイスラエルに行き、帰りの乗り継ぎ地イスタンブールで、空港内という特殊な場所ではありましたが、ハンバーガーを食べました。ドル建てユーロ建てリラ建て表示のあるレシートを持ち帰ったつもりが紛失してしまいましたが、ざっくり10ドル=50トルコリラくらいで、赤坂のバーガーキングよりも割高な感じでした。
もうおわかりのとおり、購買力平価は、自国物価と外国物価を所与(固定)とすると《ある程度》この二国間の為替相場の予想に役立つのですが、前提が固定ではないので、思ったほど役立たないのです。購買力平価だけをもちだして割安(すぎる)云々抜かしている大手金融機関系のアナリストの記事を見たら、そういう金融機関に投資信託や外国債券などを買わされて損をさせられていないかどうか振り返る必要があります。

さて、《ある程度》というところの注釈は、重要ですが後回しにして、ロシア危機後のルーブル反発のような可能性をトルコリラは秘めていないのかどうかについて触れます。

いよいよ時機良く出版してくれた英エコノミスト誌のビックマック指数です。

下のグラフに描かれている赤丸は割安通貨(Undervalued)、青丸は割高通貨(Overvalued)、米ドルが基軸になっています。計算によると、トルコリラは対米ドルの相場が58.5%も割安に放置されているということになります。


これを時系列で追ったのが下の折れ線グラフです。現時点(正確には直近ビッグマック指数発表の2018年7月)でトルコ(リラ)よりも更にひとつ割安国(通貨)にとどまっているロシア(ルーブル)に筆者がマウスオーバーすることでブルーグレイの折れ線グラフと対比して、トルコ(リラ)の割安割高推移をご覧いただくことができます。

トルコリラは2013年から割安度合いが深まっているが、それでも(いまでも)ロシアルーブルの最割安時期の割安度合いにまでは到達していない(良い線行っているが)ということがわかります。

しかし、これだけで、トルコリラの底入れは近いとは言えないのが、ひとつには既述の《パラメータは為替水準だけでなく、自国物価、他国物価と複数ある》および、次のグラフでご説明する上記《ある程度》という購買力平価説留保条件です。

為替相場だけでなく購買力平価にもサポレジがある!?

一人あたりGDPを考慮に入れてしまうと、景色が一変します。この理由はちょっとむずかしいですが、先程引用した筆者ブログを参考にしていただけると助かります。

英エコノミスト誌が、読者からの批判を取り入れて、購買力平価に、一人あたりGDP要因を勘案したもの「も」出すようになったのは、2011年からなので、こちらの時系列は、一人あたりGDPを勘案しない上記のグラフの半分の長さしかありません。注意して比較してみてください。

記事によると、トルコ共和国の一人あたりGDP(の小ささ)をも勘案すると、トルコリラの割安の酷さは緩和されて、さきほどの58.5%から30.7%となる。

そしてまたもしつこくロシアルーブルと比較してみたのですが、過去最も酷かったロシアルーブルの割安時点と比べると、トルコリラの割安はまだまだ底まで言っていないと見えます。

自国通貨の暴落と自国物価の上昇につられて、名目賃金も完全に比例するような状態であれば、この連立方程式体系は解が定まらないということになります。トルコの状況がどうなのか、数年前のロシアの状況がどうだったか、名目賃金がどの程度硬直的な労働市場なのか(実質賃金が可愛そうなくらい下がっているのかどうか)は正確な統計がまだ手に入っていません。察するにハイパーインフレや自国通貨の自由落下状態においては名目賃金はもはや硬直的ではいられないという一般的な傾向があると思います。それまでは名目賃金(自国通貨価値)は(レジスタンス)サポートされるが、いったん名目賃金変動の閾値を超えるとこのサポレジは破られてしまうということが言えます。

《ある程度》という購買力平価説留保条件とは、ペン効果とかバラッサ=サミュエルソン効果(仮説)とか言われるものです。さきほどのハンバーガーの裁定取引(アービトラージ)なんて、かさばるし、日持ちはしないし(防腐剤をどの程度使っているのか知りません)、実際問題運べないだろう。それに比べると、貴金属や高級時計やスマホなど小型軽量高性能電化製品だと、ビッグマックとは違う指数が出てくるよねという話です。

2018年1月28日日曜日

ビットコインも他人事ではない===コインチェック580億円不正送金事件

いまこの投稿をしている2018年1月28日日曜日12時過ぎの時点で、コインチェック社は、NEMの売買停止(金曜日午後12時過ぎ)から補償方針公表(土曜日23時)までの加重平均を用いて、日本円で、自己資金で、返金するとしています。

なぜこのような太っ腹な対応が、週末のたった2日弱のあいだに、また技術者とも思えないしどろもどろの記者会見の間に、意思決定できたのか?

ほんとうに不正に、すなわち仮想通貨交換所の側での(重)過失があったにせよ故意害意なく詐取されたものであるならば、それはそれで疑問です。

半年以上ぶりにブログを更新するのは、そこの真相究明が目的ではありません。

仮想通貨「通」を自称する人たちも呟き合っているSNS参加者の見立てでは、

今回の、マウントゴックス不正送金(?)事件を遥かに超える金額の、仮想通貨「交換所」スキャンダルは、


  1. さまざまな仮想通貨の種類が雨後の筍のように産まれている中で、NEM独特の脆弱性によるもの
    1. コールドウォレットの設定ができなかった=出典「コインチェック社謝罪記者会見
    2. コールドウォレットの設定が「できる」ビットコインなどほかの種類の仮想通貨なら大丈夫?
  2. さまざまな仮想通貨交換所が事業を行っている中で、コインチェック社独特の情報セキュリティ管理の杜撰さによるもの
    1. 改正資金決済法に基づく交換業登録を済ませている他の交換所は大丈夫?

ビットコインは安全。コインチェック社でなかったら安全。と言えるでしょうか?

仮想通貨FXをはじめ、交換業登録も目指すわたくしたちも他山の石としなければならない、論より証拠を。


金額の多寡が問題ではありません。もちろんわたくしは、コインチェック社が580億円相当も盗まれたということ以上に、580億円相当(マイナス値上がり分)も「集金」していたことのほうに実は驚いているのですが!!

(2)そして古いところでは、我が国のマウントゴックスの事件があります。ここでは仮想通貨交換所(注3)が倒産に追い込まれ社長が逮捕訴追されました。サイバー攻撃により不正に送金させられた(詐取された)という当時の社長の言い分が、いったんは聞き入れてもらえず、御白州に。しかし、裁判はまだ終わっていない中、昨年、マウントゴックスからビットコインを詐取した真犯人としてライバル交換所(?)BTC-eの社長が逮捕され、同取引所は米国で口座凍結業務停止処分となっています。

北朝鮮ハッカー集団が詐取した仮想通貨は、同国のミサイルに、BTC-e(所在地ブルガリア)が詐取したビットコインは、昨年の米国大統領選挙に絡み、敗北したヒラリー・クリントン陣営や民主党本部のメールのハッキングなどの資金に使われたという疑惑が出ています。BTC-eはブルガリアに本拠のある世界最古参の仮想通貨交換所ですが、逮捕された社長はロシア人です。ロシアゲートと仮想通貨は隣り合わせだったことになります。

(3)極め付きにもうひとつ。時期的には(1)と(2)の間で場所は日本。仮想通貨交換業登録済のかなり広告宣伝も打っている大手交換所でビットコインが詐取が複数発生していて、その被害総額はコインチェック社の今回の金額には及ばないものの、複数の裁判が継続中です。詐取した犯人が、第三者(外部のハッカー)なのか(?)、同交換所の内部者なのか(!?)、交換所自体なのか(!!??)、まだわかりません。3つの可能性のうちどれであってもそれぞれに事態は深刻であると言えます。

(注1)手口が米国ソニーエンターテインメント社に対するサイバー攻撃と同じであることから米国諜報当局が北朝鮮の仕業であると特定。北朝鮮はこれを否定。
(注2)これもNEMだったか、これはビットコインだったか、それ以外かはWSJの報道には載っていません。
(注3)この時点では本邦でも資金決済法による仮想通貨交換業登録制度はなかった。

ちょうど(1)の報道がWSJ紙でされた週の月曜日、こちらのブログでもしばしばご紹介している異端の経済学者(もともとは数学者)の塩沢由典先生の勉強会で、ビットコインに関するプレゼンテーションを行ったばかりでした。3時間の持ち時間のうち2時間は暗号理論と情報処理論に割きました。

2017年はビットコインをはじめとする仮想通貨(≒暗号通貨)が話題を総なめした一年となり、様々な解説本が出てきました。しかしこれらを複数読んでも、
うーん、わからないなぁ。
腑に落ちないなぁ。
俺って頭悪いのかなぁ。
理系じゃないと無理かなぁ。
・・・・・・
まぁ、背景はわからなくても、安く買って高く売ればそれで良いか???
などなどと自問自答された方がきっと何百万人もいらっしゃったのではないでしょうか???

心配にはおよびません。マイニング(=プルーフ・オブ・ワーク)、公開鍵暗号、ハッシュ関数、ノンス、、、などの核心部分において、ちゃんと理解してもらおうとして(それ以前に著者がちゃんと理解して)書かれているまともな本はほとんどないからです。

そのなかでこれは良かったという稀有な一冊をご紹介します。

「現代暗号入門」神永正博著(講談社ブルーバックス2017年10月20日)

さて、対象がビットコインであれ、NEMなどのその他仮想通貨(オルトコイン)であれ、仮想通貨交換所って何をやっているのでしょうか?

  1. 法定通貨で仮想通貨を買いたい人と、仮想通貨で法定通貨を買いたい人のマッチング
    1. ただし参加者はその交換所に「ウォレット(?)」という名の管理口座を開設している人(および自己勘定としての「交換所」自身)
    2. ライバル「交換所」や、マイナーなど仮想通貨ネットワークにノードを保有している世界中の人たちの売りニーズ買いニーズは反映されない。
    3. ビットコインの入出金の履歴には、ウォレットアドレスやトランザクションIDが記載されるいっぽう、取引所や販売所の取引履歴を見てもそれらは記載されていない(自分のウォレットアドレスでブロックチェーンを検索すると、入出金の履歴はヒットするが取引所や販売所の取引履歴は見つからない)。これぞ論より証拠。
  2. 他人に仮想通貨を送金したいときに、「交換所」に管理口座を開設している仮想通貨保有者(送金人)に《代行》して手続きを行う
    1. 上記(1)と、(2)の相手方(受取人)が同一「交換所」の管理口座保有者ならば、売買の決済(上記(1)の場合)および送金の決済((2)の場合)は瞬時に出来る。なぜなら、取引には公開鍵暗号が用いられずブロックチェーンに書き込まれないから(マイニングに要する「約10分」が不要)
    2. 送金の相手方(受取人)がライバル「交換所」の口座保有者だったり他の独立したノードである場合(注4)は、公開鍵暗号が用いられマイニングを経てブロックチェーンに書き込まれることになる。
    3. しかし、「交換所」はこの場合に、かかる「外部」送金を依頼する口座保有者から《代行》するために備えて、口座保有者から予め預かっていた公開鍵(アドレス)に対応する秘密鍵を「交換所」自らが使用する。
    4. さらに言えば、口座保有者は秘密鍵を「交換所」に預けているどころか「交換所」は秘密鍵(のコード)を口座保有者に明かしていない点がポイント


(注4)ビットコインはパブリックチェーンであるから誰でもノードになれる。その目的はマイニングや「交換所」経営に限らない。投資、送金をする+送金を受け取るなど、「交換所」に依存せず仮想通貨を売買したい送金したい、ネットワークを監視したい等。

きょうのブログの題名、「ビットコインも他人事ではない」のこころは、「交換所」と口座保有者の間では、「外部」送金も含めて、管理口座(≠本来のウォレット)のログイン情報(例:メアド+パスワード≠秘密鍵)だけを以って本人確認し、預かりっぱなしの秘密鍵を用いて、送金代行任務を完遂できてしまうという実態です。

これが、コインチェック社に限られた話ではない仮想通貨「交換所」や、下記の北朝鮮ハッカーによる韓国「交換所」に預けられていた仮想通貨の盗難が(足跡を残さずに)出来てしまうハッカー集団にとっての狙い目だと言えないでしょうか?

仮想通貨を原資産とする派生商品(いわゆる仮想通貨FX)を別とすると、仮想通貨を現物資産として取り扱う業務を行うには改正資金決済法の交換業登録が必要であるという法令規制制度を裏返すと、業登録ができると、取引所や販売所など(上記1.)だけでなく送金代行(上記2.)も出来てしまう、ということになります。果たして制度設計として、なんでも出来たほうが良いのかどうか疑問です。株式取引やFX取引のような利便性を仮想通貨に当て嵌めたいというビジネスニーズは、安全のためビットコインは保有者ひとりひとりがコールドウォレットで保管しましょうと呼びかけるモチベーションと相矛盾するのではないか。売買注文の《取次》が主な収益源だと思われる「交換所」が、主な収入源とは思えない送金《代行》のためにひとりひとり異なる秘密鍵を口座保有者にオフライン管理させあとは自己責任でという業務運営を進んでやる気になるでしょうか。これはもはや「交換業」ではなく、ノード作成代行業です。