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2021年11月5日金曜日

日本共産党がいる限り自由民主党は安泰?

枝野さんは辞めたが志位さんは辞めない・・・

まずお断りしておくと、わたくしは、小選挙区は立憲民主党候補に、比例区は日本共産党に入れました。

案の定、わたくしの清き一票は死票となりました。

開票速報では、事前調査と出口調査の精度が疑われました。それはともかく、大手メディアは立憲民主党の戦略ミスを指摘、枝野代表は辞任となりました。

しかし、冷静に考えてみると、小選挙区制度を前提とすれば、立憲民主党は、日本共産党とは選挙協力をするかしないかの両極端の選択肢しかない(※)のだと考えると、立憲民主党としては、日本共産党と選挙協力をしてもしなくても負ける宿命となります。

題意の、

「日本共産党が国政政党として這いつくばる限り、自由民主党の与党の地位は安全確実」

というのは、そういう意味です。

そこで、日本共産党に対するアレルギーの本質をいまさらながらに考えてみようと思います。

自由民主党政権にどんな不満があっても、「日本が、中国やロシアや北朝鮮のような国体になりそうなリスクに晒される」よりはよほどましだ、という古典的な風説については、本稿では扱いません。

前回のブログで指摘した「野党がコロナ対策を論点にして具体的に与党を攻めきれない」こと、それに加えて、財務省の矢野事務次官による指摘のとおり、「ばらまき競争」という点でも、経済政策が与野党の対立軸となっていないことを踏まえると、「それでも投票に行こう」という有権者の最後の決め手は、絶対的に安全保障だったのではないでしょうか。

独断と偏見を許してもらえば、日本共産党が安全保障について、正直な具体案を提示していないことが、「がんばればがんばるほど自由民主党の思うつぼ」構造のなかに飲み込まれてしまう理由です。

なまなかなポピュリズムゆえに伝わらない日本共産党の安全保障政策のホンネ

このブログでもしばしば取り上げてきた安全保障上の日本の地理的なポジション、、、

つまり、

故中曾根康弘首相が米国のための不沈空母であると呼んだそれ、、、

は、北朝鮮の核弾頭(巡行)ミサイルの性能向上、中国やロシアの復活、米国の凋落(その象徴がバイデン政権によるアフガニスタン撤退の手際の悪さ)により瓦解しつつあります。

そのなかで、日米軍事同盟と日本共産党が呼ぶ安保条約破棄は、確かに選択肢のひとつなのですが、それにかわって、①中国と組むのか?②ロシアと組むのか?③自衛隊を強化かつまたは改変しも保有し大国たちから自立するのか(武装中立)?④護憲を堅持し、非武装中立でマハトマ・ガンディーの非服従・非暴力主義でいくのか?はっきりして(させて)いないことこそ問題の本質だと考えています。

一貫性という点において他党の追随を許さない日本共産党の長い歴史のなかで、②ロシア論を前提とする指導部であった時代は少なくとも過去にはあったと思われます。この点では、日本に限らず世界中の共産党が「インターナショナル」の幹事であるソビエトロシアの共産党から、ヒト(スパイを含む)・モノ・カネが送られていたものと考えられます。日本だけでなく多くの資本主義国で日本の治安維持法と同様の反共防共政策がとられていたことと符合します。いっぽう、①中国論は比較的非主流であり、こちらはどちらかと言うと、(左派)社会党の系譜です。中ソ対立こそが、高度成長期の日本で社共共闘という革新連合が成立しなかった大きな要因ではなかったかと推察します。

ただし、これらは消し去れないかも知れないけれども過去の経緯であって、現在は、指導部も①中国論にも②ロシア論にも支配されていないのではないかとも推察します。この点では、代々木の立派な本部ビルや、歴代幹部の豪邸がしんぶん赤旗の売上だけで果たして建造できたかどうか疑わしいという反論があることも承知しています。

以上は推察に過ぎないですが、兎に角肝心なことは、③か④かをはっきり示せていないことです。

現実的には③「核武装して自衛隊を強化し諸大国から政治的軍事的独立を果たす」を臆せず正直に堂々と語ることこそ日本共産党の生きる道だと、わたくしは思います。それを胡麻化すことがポピュリズムだと指導部が思っているなら大きな間違いでしょう。

ところで、③「核武装軍事強化」を指導部がカミングアウトしてこなかった副反応として、④の理想主義を本気で考えている(考えようによっては気の毒な?)党員や支持者も、実は少なからずいらっしゃるのではないかとも推察します。

あえて言えば、これが絶対に荒唐無稽だと唾棄するべきだとは思いません。孤島や山深い里で、天然資源もなく、誰も耕したくないような崖に、這いつくばって生活することで、お互いの暴力を避けたコミュニティーを作ることは絶対にありえないとは思えません。

ただ、日本の国政レベルで、それを多数派の意見としてまとめていくのは、現代ではほぼ不可能です。

日本共産党には目指すべきロールモデルがある!

さて、公明党という政党があります。創価学会という宗教団体を基盤していることが特徴ですが、創価学会以外にも日本には国会議員を出せそうな力がある宗教団体はいくつかはありそうです。なぜそれをしないのでしょうか。

宗教団体にとって、政治に関与し、政治力を持たないまでも少なくとも政治に守ってもらうという欲求はあると思います。ただ、政党を作り、政治家を輩出し、選挙で国政に送り込むというのが政治力を持つ唯一の手段だとは考えていないからだと思います。

日本共産党が、下から上まで、本気で、④の理想論を考えているのなら、十分な政治的潜在力を持った宗教団体の素質があります。譬えて言えば、蓮如から顕如にかけての時期を除く浄土真宗本願寺派がそれです。いまのところ本願寺派は創価学会の真似は(敢えて?)していません。では、本願寺派の指導層は、創価学会や公明党の与党としての活躍を、指を銜えて見てきたのでしょうか?そんなこともないと思います。

プラグマティックに③「核武装+自衛隊強化」で行くのか?親鸞聖人やマハトマ・ガンディーを目指し④「非武装中立」で突き進むのか、そしてあわよくば(太平天国を建てた)洪秀全のアプローチを踏むのか、はっきりさせる時期でしょう。

日本の政治や選挙をじつにつまらないものにさせている戦犯の少なくともひとりがポピュリズムの仮面を被った日本共産党であるという自覚を持ってもらいたい。これが死票を投じたわたくしからのエールです。

※日本共産党以外の野党との関係においては必ずしも選択肢は両極端ではありません・・・なぜでしょうか?

2012年3月21日水曜日

創造的破壊とFX攻略5月号

先週、フェニックス証券の外国為替証拠金(FX)取引のお客様が、わざわざ八重洲までご来店くださり、しばし時事放談を楽しませていただきました。そのなかで特別に印象に残った一言が、

「好不況や円高円安はたいした問題ではない。経営者が本当に恐れるのは技術革新だ」

技術革新すなわち創造的破壊こそが、資本主義の裏と表の実像であり、その裏表がオセロのように一挙に入れ替わることが企業家にとって夢でもあり悪夢でもある、、、という話を、最近ブログ等で取り上げるようにしております。

只今発売中のFX攻略最新号にも、そのような話を書かせていただきました。是非ご一読ください。


それでは、恒例と言いつつしばしばサボっている、過去記事(2011年11月号)から。

「ことりFX」で為替の新時代を迎え撃とう、なんて言うとまたフェニックス証券の宣伝かと思われそうですが、この時期に為替新時代を宣言することには大きな意味があります。

「ヨーロッパ全域を統一通貨圏に」という試みは21世紀初頭の壮大な実験だったと後の歴史家が評価するかも知れません。ナチスの第三帝国とは関係ない話ですが、ユーロ構想は、ローマ帝国の膨張やフランク王国の成立に続く偉業でもあり暴挙でもある・・・逆にそれ以外の時期のヨーロッパは、戦争や小国(含む都市国家)の分裂に明け暮れており、大雑把過ぎる大局観をお許しいただければ、地域全体の統一のメリットとデメリットの比較評価で何十世紀も揺れ動いてきた後の“一旦の”結実が統一通貨圏構想だった。。。

過去の巨大帝国との違いは、もちろん“平和裏に”各参加国の財政政策と金融政策の裁量を“奪った”ところにあります。ドイツ哲学の伝統の一端を担う弁証法で言えば、過去の分裂と統一のメリットデメリットを止揚(アウフヘーベン)したものにも見えます。

これらのうち、金融政策の放棄は自明です。が、財政政策については「毎年の財政赤字はGDPの3%までよ」などのルールは「表向きだから、裏で色々やりようがあるからね」という、ただただ参加国を増やすための二枚舌が、統一理念の土台自体を腐らせる欺瞞であることを“改めて”白日の下に曝したのが、ギリシャ危機、改め南欧危機、更に改めフランスまでも含む「ドイツ以外のユーロ圏危機」だったのです。

そこまで無理をして騙し騙し欧州全体に固定相場制を広げるメリットが域内唯一の貿易黒字国(=資本輸出国)であるドイツに集中していたことに注目すべきであるし、しかもそのドイツ国内の論調としては「公務員が58歳で退職し、現役時代の8割の年金をもらえる。政府は破綻寸前なのに、国民の大部分はまともに税金を払っていない。そんなギリシャを筆頭とする怠け者の国に、なぜ我々の税金を使わなければならないのか」(月刊ファクタ10月号:「欧米金融機関『三年目の断崖』より」ということらしいです。気持ちは判りますが・・・冒頭で、ナチスは関係ないと書きました。それは兎も角、第四帝国なんて、手を変え品を変えだけで簡単に成立するいうことではありません。為替に関して言えば、欧州関連資産の相場暴落は、根拠のない相場操縦で所詮マッチポンプだと矮小化するのは間違いでしょう。過去の民族間の戦争の傷跡や遺恨、一旦手にしてしまった豊かで安定した生活にしがみつきたいという大衆の感情に政治がメスを入れられないという文明国の末期現象など、解決困難な根の深い問題であると考えるべきだと思います。

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2012年2月6日月曜日

アラブの春が中国に近づきつつある

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン版のなかのブログです。

http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/02/05/the-arab-spring-is-coming-to-china/

ミュンヘンで開催中の世界安全保障会議の中での一幕。よくもまあ、こんなパネルディスカッションが成立したなあと思わせる構成員は、4年前の米大統領選でオバマ現大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員と中国の外務副大臣、そしてなんとコーディネーターを、かのキッシンジャー元国務長官(筆者の世代以前には極めて印象の強いニクソン政権の最重要人物のひとり)が務めています。

ベトナム戦争の終結、金兌換停止、変動相場制への移行という当ブログが扱うべき重要テーマにおいてもニクソン=キッシンジャー体制は大いに研究すべきテーマであるし、最近話題の映画のタイトルロールであるエドガー・フーバーとの絡み合いもまた米国史の暗部ということで熱い視線を送りたい部分です。
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_05.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_26.html
http://phxs.blogspot.com/2010/03/blog-post_08.html

それにしても、核開発疑惑でイラン経済制裁という点でも、米国(+欧州+日本)と対立している中国(+ロシア+インド)が、事実上の戦争である(BBC)とも言われるシリアにおいても安保理決議でロシアとともに拒否権を発動している状況のなかで、この企画が中止にならなかっただけでも十分有意義ですが、マケイン氏が「敵国」の外務官僚のナンバー2に面と向かって「(チベットで相次ぐ焼身自殺が、チュニジアのジャスミン革命の触媒となったのと同じように)中国にアラブの春がもたらされつつある」と言い切ったのは非常な重みがあると思います。

さて、中国の外務副大臣はどう言い返したでしょうか?「中国でアラブの春というのは幻想を超えるばかげた発想だ。。。中国は100年以上も外国勢による侵略と占領に屈してきたのだから、内政干渉に対しては黙っていないぞ」。

後段の部分は、北朝鮮からもよく聞こえてくる科白です。

イランとシリアを契機とした大国間の対立軸は、ソビエトやベルリンの壁が壊れる前の構図に戻った感もあります。ただし、もちろん大きく違うのは経済や情報技術であり、今は中国は、深刻なバブル崩壊の真っ只中かも知れませんが、社会主義が建前、資本主義が本音、より正確には半奴隷制、という2つないし3つの顔を持つ得体の知れない国へと変貌していることに注意が必要です。
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2011年12月30日金曜日

割れかけたコロンブスの卵

昨日、12/29(木)のブログで、

「欧州の危機には、統一通貨ゆえに急成長し過ぎたツケと、個別国国債の買い切りには(独立通貨国以上に)抵抗がある中央銀行の存在という特殊要因があるものの・・・・・・」

と書きました。日本のような独立通貨国でも、日銀総裁が頑固だからというだけでなく、中央銀行による国債の直接の引き受けは原則禁止なのです(「国債の市中消化の原則」財政法第5条)。

この「原則」は先進各国共通のようです。しかも「例外のない原則(で)はない」というところも似ています。つまり、いったん市中の銀行に消化された国債を、金融調整目的で、中央銀行が買い上げることは可能であり、結果としてそれを満期まで持つことも可能であり、償還と同時に借換債を購入することも可能なのです。

この抜け道に注目したのが、今月、欧州で決定されたLTRO(長期リファイナンス・オペレーション、または長期レポ・オペレーション)だと言えます。

借り換えが困難な国の国債をECBが直接買えないのは、市中消化が原則であるだけでなく、健康な国の税金で運営されている(欧州)中央銀行を病気(の国の国債)のリスクに曝(さら)すことへの愛国心的な抵抗があります。そこを、やや健康な国の銀行にまで病気のリスクが蔓延していることを奇貨として、今回はまずイタリアの国債でしたが、これを買って担保に入れることを条件に(?)、それらの銀行に金を貸してあげるという枠組みになったのです。

中央銀行が助けたいのは国の財政だが、それが直接できないから、民間の銀行を導管として使う(使われた銀行も悪い気はしない)というのは見事な抜け道ですし、コロンブスの卵です。

このコロンブスの卵、ユーロ圏では、(市中消化の原則だけでなく)自らは健康だと思っている国の愛国心を回避するためのアイデアであったわけですが、愛国心の問題を気にしなくても済む日本でも米国でも応用できるかも知れず、そうであれば、消費税のことで与党内で揉めたり、離党議員や支持率の低下で悩まなくても良いのです。

ほんとうにそうでしょうか?イタリア国債の入札が、上記理由で順調であったにもかかわらず、ユーロは対ドルでも対円でも大きく下落しています。
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2011年11月4日金曜日

パパンドレウ首相が開けたパンドラの箱

いまから2年前、2009年の流行語大賞は「政権交代」でした。1955年の結党以来となる自民党の大敗は、その当時は必然であり、民主党は、高速道路無料化や子ども手当や農家への戸別補償を持ちだすまでの必要はなかったのではないかと思っています。

ましてや、普天間問題をや、であります。今となっては懐かしい鳩山当時首相の「故人献金」は身から出た錆として、普天間問題にスポットライトを当てたのは、政治家にしては正直過ぎて馬鹿をみたとも言えます。

自民党の悪政の責任をボランティアとして引き受けてしまった問題という意味でも、原発問題と普天間問題は同列です。

原則として世襲政治家(の割合の多さ)を徹底批判してきた七転び八起きブログですが、逆にしばしば重要な例外的存在があることを御紹介して参りました。ポリティカル・ダイナスティ(政治王朝とでも訳すべきか)の末裔でしか出来なさそうな、教育、資力、正義感の三拍子が揃ってはじめて出来るリーダーシップというものもあるのでしょう。

実は、いま渦中のパパンドレウ首相も、親子三代に亘るギリシャ首相経験者の、その三代目です。

ウィキペディアの日本語サイトが不完全であり、また翻訳も酷いので、ここには英語サイトを掲載します。上から、祖父、父、御本人です。
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou_(senior)
http://en.wikipedia.org/wiki/Andreas_Papandreou
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou
余りに長い話となり、映画で言えば「ラスト・エンペラー」や「ゴッド・ファーザー」を超える上映時間を要するようなものですが、無理矢理要約すると、

★祖父は第一次世界大戦前後に親ドイツの皇帝に反逆して暗殺されかかった首相経験者、

★父もその反骨精神を受け継ぎマルクス経済学者としても優れた功績を残したやはり首相経験者、

★そして渦中の本人は全ギリシャ社会主義運動という野党党首(2004~)として2009年の総選挙で政権交代を果たし、その直後に全政権の負の遺産である財政赤字の粉飾を摘発、このことがギリシャ危機の発端となり、下野した新民主党と有権者たちの信任を失って今日に至るというわけです。

すべてのケースで等しく同情するわけではないですが、鳩山民主党の普天間、菅民主党の福島第一原発、だけでなく、オリンパスも然り、古く(もないが)を辿れば日本長期信用銀行や日本債権信用銀行にしても背任的なレベルまで不良債権を作りだしたり粉飾したりしたときの経営者ではなく、それが発覚したときの経営者が刑事罰に問われた(現在は無罪の差し戻し判決が確定済)ことをも彷彿とさせます。

パパンドレウ首相が、6割の債務カット案の条件として突きつけられている緊縮財政案を国民投票に問うという行為に対し、「いまさら何を馬鹿な」とついつい反応してしまいがちですが、申し上げた経緯と切り口からは、また違った感想が浮かび上がると思います。

それにしても、かつてはイタリアやフランスなどでも一世風靡したユーロ・コミュニズム(西欧版共産主義)が一律大きな政府を目指したのに対して、パパンドレウ首相がギリシャというボロ車の運転席に就いた途端に、小さい政府を目指して不人気を買わざるを得なくなっていたというのは、皮肉なものです。
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2011年10月24日月曜日

住宅ローンで債務超過の借り手を救済へ-米国政府

米ウォールストリートジャーナルの臨時ニュースです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204346104576638931114550132.html?mod=djemalertNEWS
資本主義陣営である米・欧・日などのなかでは、モラルハザード的な政策が最も受け入れづらい米国で、極めて異例な「自己責任・結果責任を問わない」手段が取られようとしています。

共和党側、とくにティー・パーティーの出方、反応にも注目ですが、オバマ政権の動きに、しのごの言ってられない、のっぴきらない状況を感じざるを得ません。

ギリシャという国が相手か、住宅ローンを借り過ぎた相手か、随分異なるように見えますが、稼ぐ力以上の生活に嵌ってしまった浪費家を助けざるを得ないという事情ではほぼ共通です。

米国財政の更なる不健全化という意味では明らかにドル安要因、ただし景気悪化に歯止めがかからない程度であればマネーサプライは上昇せず、ドル高要因と減殺されます。
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【追記】今朝10/25(火)朝のNHKニュースで、ウォールストリートジャーナルのスクープを追認する報道がありました。そのサイトを添付します。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111025/t10013482551000.html

2010年7月12日月曜日

ねじれ国会の悪夢で、どう転んでも円安か!?

週末の参院選直前ブログで、選挙結果の場合分けを通じて、移ろいゆく民意は、民主党の大勝も大敗も望んでおらず、惜敗を経ての「民みん連立」を望んでいるのではなかろうかと分析しました。

結果は、惜敗というよりは大敗でした。万が一(?)みんなの党がごっそり与党議席に加算され、野党議席から減産されても、国民新党の非改選議席を考慮する以前に、僅かながら過半数に至らないという計算結果になります(離反、造反を考慮せず)。

日本海側を中心とする多くの一人区の結果は、民主党にとっては惜敗からは程遠い惨敗ですが、みんなの党と組んでもねじれを解消出来ないというのは、有権者にとっての惜敗なのかも知れません。

「選挙結果なんかは、翌朝のニュースで十分」という合理的な考えを敢えて捨てて、開票速報にチャンネルを回すのは、マスメディアの演出の巧みさなのか、嗜好品や博打と同じで依存症なのか、私も12時までは見ていました。数字上では≪ぎりぎり民主党とみんなの党の連立が無意味≫という最終結論が判明するまでの間も、両党の幹部は、「個別政策協議はあっても、連立は有り得ない」的表現を繰り返していた風景は、東京選挙区での共産党の小池さんとみんなの党の松田さんの激戦ぶりと相俟って視聴率の源泉だったようです。

無論、政治はハッタリと妥協の繰り返しでしょうから、一夜明けてどうなるかは予想だに出来ません。昨夜の時点では、自信満々のみん党幹部が、「自分たちの政策を丸飲みするなら」と高飛車に出るのは心情的にも判るし戦略的にも間違ってはいないのでしょう。

それにしても気になるのが、霞が関や郵政や地方分権など、民主党(すくなくとも菅首相への交代後の)と共同戦線が張れる分野が多いことを強調せずに、「根本が違う」ことを強調し、政策を呑めるかどうかの第一の試金石として日銀法改悪を真っ先に掲げるところは、単なる経済音痴なのか、改革者の仮面を被った「ばら撒き政党」という実態のせいなのか、ベンチャービジネスや外資系企業での成功者たち(の資産形成の手口)は所詮インフレ選好だからなのか、、、、、、兎に角、みんなの党を躍進させた熱狂たるは、表向き小さな政府を志向する革新政党が「中央銀行の貸借対照表を大きくしたくて堪らない」という急先鋒であるという醜い矛盾には全く気付いていないことを、この外国為替証拠金(FX)ブログとしては、指摘しておかざるを得ません。

つまり、民主党がみん党の政策を丸飲みしたとしても、円安。ねじれ国会の再現を食い止められなかったとしても、明らかに政治迷走で円安。

ということです。

勿論、政治迷走は、日本だけではありませんから、今日以降一切円高局面がないということは有り得ないでしょう。なので、慌てずにFXの準備をされたいかたら、コチラ!?

http://phxs.jp/

玄葉政調会長の『速報経過は「消費税よりも(霞が関改革や国会議員定数削減など)無駄削減を先に示せ』というのが民意だと解釈したい」という読解力センスに、一縷の望みを見た気がします。
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2010年7月9日金曜日

民主苦戦-参院選終盤の世論調査に思う

腐った鯛になってしまった小沢=鳩山の置き土産・・・

小沢幹事長(当時)との「刺し違い」により、政党支持率を盛り返せたのは、鳩山首相(当時)の超ファインプレー だと、去る6月3日にこのブログで書きました。棚から牡丹餅どころか、とれたてピチピチの鯛のような置き土産を、菅新総理。彼の消費税発言を、殆どのマスメディアも、そして恐らく国民も、愚かにも程があると断罪しているように見えますが、果たしてそうでしょうか?

代議制民主政治においては、投票行動が有権者の希望する政治や政策に簡単には結びつかないものです。その最たる例こそ、小沢=鳩山体制で、連立の相手として社民党と国民新党が選ばれてしまった直近の事案でしょう。二院制では、永遠にねじれが続くかも知れないエネロス体質の政界では、殆どの有権者にとって不条理な、選挙後の合従連衡については制御不能なのです。

わたしは、小沢=鳩山体制が、かくも脆く、かくも短命だった理由は、普天間問題や政治とカネの問題だけではないと思っています。普天間とは大いに関連しますが、数合わせのためだけに選ばれた連立相手が手枷足枷となり、昨年の衆院選時の有権者の投票行動の基盤であった民主党らしさへの選好や期待が見事に裏切られた点のほうがより重要です。

「腐っても鯛ですから・・・」と、みんなの党に「御裾分け」

民主党らしさを、今更ながらでも、一番引き出しうる連立相手は、やはりと言って良いものかどうか判りませんが、みんなの党ではないか。。。多くの有権者(特に都市部や若年層の有権者)だけでなく、菅総理そのひとも考えていたとしたら、首相交代時の置き土産(みんなの党に流れていた支持率が一挙に民主党に逆流した)を敢えて温存せずに、その半分以上をみんなの党に「御裾分け」してあげた「消費税発言」は計算通りの「国民新党への三行半」であった。そこまで考えるのは、菅総理の権謀術数を買いかぶり過ぎているでしょうか。

殆どのメディアが公表している参院選終盤の世論調査をさっと読むと、ざっくり、次の3つのような、非連続的な場合分けが出来るのではないか。すなわち、

①民主党を勝たせ過ぎても、国民新党と必ずしも手を切らないかも知れない、

②民主党を負けさせ過ぎると例の青鬼くん が出て来てしまう

青鬼くんは立派です。「静かにしていてね」と赤鬼くんに言われているにもかかわらず、「消費税発言のせいで選挙に負けるようなことがあったら、じっとしてないよ」と早速出しゃばり、あたかも約束を守っていないふりをしてくれている、、、

③民主党が適度に負けて、完全に埋没中の国民新党と組む意味がない程度となれば、みんなと党が連立相手にならざるを得ない。

百点満点とは言えない「民みん連合」だが・・・

みんなの党だって、どんなに躍進したって、単独過半数の政権を取れない以上、選挙後民主党とあっさり休戦して、「官僚叩きは自分たちに任せて下さい」という展開に、、、さすがに、善戦の自民と組むことは自己否定となってしまうから有り得ないだろうという前提、、、

繰り返し、菅総理の手練手管については買いかぶり過ぎかも知れませんが、いっぽうで、圧勝確実だった昨年の衆院選の直前に、敢えて民主党を飛び出し、みんなの党に合流した浅尾慶一郎さんのような代議士もいたことを付言したいと思います。彼にあったのは、勇気だけではなくて、先を見通す力だったのかも知れません。

無駄に大きな政府をいよいよ何とかしないといけないというは、私だけでなく、このブログの読者全員が日々考えていらっしゃることだと思います。ただし、それでも、「民みん連合」が百点満点の政治をするとは思っておりません。「デフレの元凶は日銀にある」という主張で凝り固まっているみんなの党の幹部の皆さんには、もう一度良く経済学を勉強してもらいたい(少なくとも謙虚に日銀総裁のレクチャーを聞くべき)だと思います。
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2010年6月8日火曜日

泣いた赤鬼と椿姫と小沢一郎氏

「国民のために一生懸命政治をやっており、実績もあがっているのに」と赤鬼クン。「国民が聞く耳を持たない」と嘆いた。それを聞いた親友の青鬼クンは「自分が悪役を演ずるから、君がボクを退治したまえ」と。図ったように人気反騰の赤鬼クンを尻目に、青鬼クンは「これまで通り友達付き合いを続けたら、共犯者だ、悪鬼だと思われるだろう。自分は静かにしている」と家に張り紙を残し、赤鬼クンの周辺から身をくらませる。

犠牲(sacrificio)というのは、犠牲であることを悟られないことこそが本質であり、それが故の悲劇もある。椿姫第二幕のヴィオレッタの犠牲を、空気を読めない恋人アルフレードの悲劇がそれであり、肺病病みの高級娼婦ヴィオレッタが、オペラ史上最もファンを引きつけるキャラクターのひとりであり続ける理由もその一点にあるのでしょう。

さて、以上はありふれたブログ的随想であり、当ブログで繰り返し揶揄している日本の政治の仕掛けを読めない大マスコミに対する皮肉です。遡れば、鳩山前首相の故人献金≒子ども手当問題や小沢前幹事長の同様の「政治とカネ」に関する複数の問題が十分発覚していた昨年の衆院戦後の状況判断として、そのまま参院選まで持つ筈がないというのは多少の想像力を働かせれば判るというもの。そこに来て、普天間の期限を任意に5月末と決めてしまったことを単純に鳩山前首相の愚行と看做してしまうことこそ、殆どのメディア人の知能指数が、実は自分たちの掌の上を転がっているに過ぎないと馬鹿にしている政治家トップクラスの人たちよりも格段に劣ることの証左と言えましょう。

さて、普天間5月末期限という仕掛けとともに、もうひとつ考慮しなければならないのが、戦後の歴代の内閣総理大臣の在任期間であります。左のハイパーリンクから資料をご覧頂くと、日米関係こそが最大の決定係数であることがおわかりいただけると思います。選挙民に対するメッセージとは別に、実質的に日米関係を政策の最重要課題として取り組んだ首相が、在任期間の長い順番に並んでいるのです。

新内閣は、小沢氏の犠牲を忘却の彼方に葬って、米国に魂を売るということはないでしょう。しかし、青鬼くん宅の張り紙が剥がれない間、当面、小泉竹中路線のベクトルへと、或る程度のパラメータが振り向けられることが予想されます。国際金融のテーマもこれありです。南欧~東欧問題に留まる筈のないソブリンリスクの顕現化は、大き過ぎる政府への批判を正論たらしめ、大衆の人気を得てゆくものと考えられます。
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2010年6月3日木曜日

菅直人新総理=円安トレンドへの転換、、、と決め込むのは未だ早過ぎる

小鳩「刺し違い」はファインプレーだが、、、

民主党の新代表の有力候補である菅直人氏が、円安論者だからとか、草の根政治家だからとかで、鳩山総理辞任発表後の円安を長期トレンドの転換とまで捉えるのは極めて危険です。

大マスコミが何と言おうと、記者クラブに安住する彼ら誰ひとりとして予想できなかった小沢幹事長との「刺し違い」により、政党支持率を盛り返したのは、鳩山氏の超ファインプレーと言えます。但し、参院選後も益々政治の混迷が続くことは避けられない。そして、誰がリーダーになっても決断が出来ない体質は、当面の間は、日本にとって、日本円にとって、売り材料ではなく寧ろ買い材料なのだというのが、先日のブログ リーダーの賞味期限 の論旨でした。


中国のGDP統計は、やはり虚偽の数字なのか?

フェニックス証券の優秀な中国人社員が、とても気になる記事を探して来てくれました。

「国家統計局、監査部、司法部の三大司法省庁は、中国全土すべての地方自治体に対して、GDP統計などの経済指標を集計する際に、虚偽報告をしてこなかったかどうかについて、調査を開始したことが明らかになった。」

中国の中枢から発信されている情報は、ここのところ全て、過熱するホットマネー流入と不動産を中心とする金融相場を意図的に調整しようとするものばかりです。彼らの政策態度は、皮肉なことに、サブプライム以降の英米の政策よりも寧ろ、我が国の80年代バブルの終結にむけての日銀の政策(当時の総裁は三重野氏)や、2005年以降の郵政解散後のミニバブルへ向けての金融庁の政策に近いと言えます。


「円高円安は日本の政治次第」という発想は幻想

中国のバブル退治が、新興国全体の過熱経済をハードランディングさせないかどうか?それと、何ら根本的な解決には至っていないユーロ圏の経済動向が、リスク回避の金融商品として定番化した円の評価を握っているのであって、これらに比べれば国内政治の安定化の帰趨は取るに足らない材料だということを認識しておかなければなりません。
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2010年5月31日月曜日

リーダーの賞味期限

みずほ、JAL、そして日本
このようなタイトルの論説が各種メディアを賑わすのもそう遠くない日かも知れない鳩山首相の周辺であります。勿論、このブログの趣旨は、鳩山首相の退陣を煽ることではありません。「“政権交代”があったにもかかわらず、、、」という言い方を敢えて控えましょう。“出身政党”は違うのに(元は同じ?)、安倍、福田、麻生、そして或る程度の確率で鳩山と、賞味期限が1年の内閣(総理大臣)が4回も続くかも知れないという《絶望的既視感》は、もはやリーダーひとりひとりの個性や、政党の組織や人材の問題など、特定の原因に帰することが出来ない段階にまで来てしまっております。

メガバンクで言えば、みずほグループ。事業会社で言えば、日本航空。これらの病理が経営者一人の力ではどうしても治癒も切除も出来ないのと同じように、この国の政権中枢もまた、そこ自身の問題だけでなく、選挙制度や国民の気質、そのどうしようもなく低い民度に迎合することでしか生き延びることが出来ないビジネスモデルを知っていて続ける大手マスコミの揚げ足取りと出る杭を悉く打つ戦略、これらのドロドロとした総竦み状態に陥っており、これを断ち切らなければ日本航空と同様に国家が墜落するという危機感と実行力を持つ人材は、そういう性格故に、たとえ政治家を志したとしても、なかなか首相の座までには至ることができない構造にあるわけです。

大統領制、または首相公選制、なら、、、否、少なくとも全国区かつまたは比例代表制を重視すれば、と単純に主張するものではありません。

絶大な支持率を誇っていた英国ブレア首相とポンド相場
拙書“為替力”で資産を守れ のなかでソフトブレーン創業者の宋文洲さんが「安倍さんも福田さんも1年で辞めても日本は大丈夫だ。と思われるから、平気で辞められるんだ。。。日本は世界でも稀な『鼓腹撃壌』を謳歌している住みやすい国だ」という趣旨の発言をしておられます。いつまでそんな天下泰平が保たれるかという問題はありますが、宋文洲さんとの対談の内容には一理あります。圧倒的かつ持続的な人気を背景とした強力な個性のリーダーが、一見眩(まばゆい)い政策を続けた結果、取り返しのつかない禍根を残すという話が、ここのところ私のブログでご紹介した舞台演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」で描かれておりました(英国の「新」労働党政権下で進められた「歪んだ」市場原理主義と金融依存、、、それに、演劇の範囲外ですが、イラク戦争も無縁ではありません)。

議員内閣制の英国ですらそうです。トニー=ブレアとゴードン=ブラウンの組み合わせで「17年連続の経済成長を果たした」(上掲「ザ・パワー・オブ・イエス」)英国は、ピーク時のポンドが対円で250円にも達し、円貨換算でロンドンの地下鉄の初乗り運賃が1000円を超えるという、常識で考えれば何か変という状態から、現在為替は「半値」近くになっているのです。英国経済の実態は、南欧経済が他人事と言えない深刻な状況です。

まして、米国の大統領制を真似て、力強いリーダーシップを、と単純に唱えれば良いというものではありません。

鼓腹撃壌と古代ギリシャ
日本の民主主義は、その最も醜いところ、リーダーの支持率下落で御祭騒ぎをすることしか脳のない「衆愚」と大胆な政策が一切取れない「事勿れ主義」が竦み合っている状態であるが故に、致命的に間違った政策も実行されない・・・世界で何か激震が起こると必ず円高になることと無関係ではありません・・・日本円は政府がこれだけ借金をしていても、金利を生まない金(ゴールド)と同様、金融ショックでは最も好まれて買われる「通貨」の位置を確実にしています。

日本はこれから先も、没個性のリーダーを一年毎に更迭し続け、衆愚と事勿れ政治にどっぷり漬かって天下太平をエンジョイして行けるのかどうか?これが難しいところです。今話題のギリシャは、言わずと知れた古典古代に於ける民主主義の原点です。つまりそれは衆愚政治の原点でもあり、それゆえ共和制の崩壊と多民族による支配を経験したのち、近現代のヨーロッパ大陸の中でも、国家の独立と民主政治を勝ち取るまでに最もエネルギーを要した国のひとつに陥ったと言えます。この因果関係は些か強引ですか、現在の日本に住む我々が最も重視しなければならない教訓のひとつでしょう。
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2010年5月6日木曜日

ユーロ、ギリシャ国債は押し目買いのチャンスなのか!?

昨日は、連休中唯一休暇を頂きまして、東京大学の本郷キャンパス内を散歩しました。久しぶりの三四郎池には、オタマジャクシは居らず、鴨と亀と鯉が我が物顔で群れ遊んでいました。「亀釣り」を楽しむ親子連れと、東大病院の患者さんたちや見舞いの方々に囲まれた長閑で平和な昼下がりでした。安田講堂も然り。70年安保やら全共闘から40年(以上)たった現在も聳えるその名建築は、さながらにして「兵どもが夢のあと」と言わんばかりの、初夏の陽気に包まれておりました。

さて、そこから無理矢理、普天間の話にもっていこうとしているのではないのです。安保闘争や米騒動のような草の根の実力行使、平たく言えば暴力に訴えた革命志向というのは、わが国においては随分と過去のものになった。という思いを、債務問題で全く落ち着きを見せないギリシャのゼネストを見て考えてしまうのです。

「日本にとっても他人事ではない」「ギリシャ(+ポルトガル+スペイン)の次は日本の番だ」などと、危機意識を煽る政治家が少なくありません。

その主張が正しいとしても、そういうことをおっしゃる政治家に限って、日銀がもっともっと国債を含めた民間市中の資産を買って金融緩和をすべきなのに、サボっているともおっしゃっているのが滑稽なのですが。

仮に、ギリシャの二の舞を日本が演ずることになるとして、IMFなどから、消費税率の急増や公務員給与の引き下げを求められたとして、ギリシャ同様のストライキや暴動が起こるでしょうか?

大衆の行動様式の違いは、国のリーダーの気質の違いと対をなしています。パパンドレウ首相は、同政権が進める財政緊縮措置が「国を救うために導入を決定したもの」とし、「これに代わるものは、破たんのみだ」と述べ、またパパコンスタンティヌ財務相は「多大な政治的代償を支払う用意がある。一歩も後退しない」と述べる(ロイター)など、暴動やそれによる人命犠牲に動じない態度は、鳩山首相に何も限った話ではなく、短命政権を繰り返す歴代首相の八方美人的な軸のぶれ方と対照的に映ります。

ギリシャの過去の政権の腐敗について詳しくない私たちから見ると、ゼネストに参加しているギリシャ国民は随分と往生際が悪いという風に見えます。ユーロ参加のメリット(デンマークがリーマンショック直後にユーロ非参加を後悔していたことを思い出させます)を享受しているのだから、その裏返しとしてのデメリット(通貨発行権【シニョリッジ】の放棄)も甘受しなければならない(ギリシャ国債をギリシャ中央銀行が買い切りオペしてマネタイズするわけにはいかない)ので、ギリシャの救済は、あたかも日本における夕張のような財政緊縮を停止条件とした(財政)金融支援という形を取るほかにないのであります。

場合分けをするならば、

①ゼネストが鎮圧されて、ギリシャ現政権の財政緊縮案が実行され、よってEU、そして9(日)総会の予定のIMFでの融資が決まる。

または
②鎮圧に失敗するなどして、財政緊縮案が破綻し、ユーロ建てギリシャ国債の借り換え【リファイナンス】が失敗⇒ギリシャがユーロ離脱(新ドラクマ導入!?)

となるか、、、

私個人は以下の理由で②の可能性は余り高くないと思っておりますし、その場合もテクニカル的には、ギリシャ国債のデフォルト宣言とユーロ離脱宣言がどういう順番になるかで現実随分変わってくるのですが、ここでは詳述を控えます(ちなみに、ギリシャのユーロ離脱自体は、ユーロ圏の毅然たる態度表明の現れであるので、本来はユーロの買い材料だということも忘れてはなりません)。

EU各国の首脳は、異口同音に、「ギリシャ危機という“山火事”の鎮火を怠ると、火の気のない筈の域内健全国(???)にまで火災が蔓延してしまうから」と、結束を呼び掛けています。しかし、彼らは義憤や同胞愛から本気でギリシャを助けようと発言を繰り返しているのでしょうか。米国やIMFの動きは措くとして、域内の意思決定の鍵を握るドイツでは、議会の承認に苦労しつつも「財政緊縮案の実行を停止条件としたギリシャへの金融支援」の批准に漕ぎ着けた状況です。この金融取引が如何に通常の市場取引よりも有利であるかを考えてみてください。「ユーロが120円を割れそうだ。そろそろ買い場だろうか?」とか「ギリシャ国債が暴落、続落し、利回りが13%を超えた。流石に破綻はないと読むならば、絶好の買い物だろうか?」という設問に対しては、当たるも八卦、当たらぬも八卦としか言いようがないのですが、ドイツが決定した停止条件付き融資というのは、ノーリスク、ハイリターンの取引です。私がもしドイツのリーダーであったならば、ギリシャ国内が大いに揉めて、最後に言いなりの条件で助けてやるという交渉をすれば、貿易黒字の使い道としては最高の運用となるし、また揉めている間のとばっちりとしてユーロ安がありますがこれも国内の輸出産業にとっては、生産拠点を国外に移転させなくても実質賃金を下げることが出来て競争力が増し、製造業の経営者が喜ぶので、一石二鳥なのです。寧ろ、ギリシャが債務不履行に陥り新ドラクマ導入となって美味しい金融取引を取り逃がすやら、国庫や民間金融機関で運用していたギリシャ国債が紙屑になることを嫌がるでしょう。ドイツ以外のユーロ圏の主要国も概ね同じような魂胆であると考えられます。

一言で言えば、現在のユーロ相場とギリシャ国債相場には巨大なインサイダーないし相場操縦が存在しているので、この情報の非対称性を打ち破って無防備に参加をするのは得策でないと思うのです。このような「取引を煽らない」発言は、FX会社の社長としては相応しくないのですが(爆笑)。「それでも相場に参加したいから、売りか買いかどちらか教えてほしい」と言われたら、前述の如く、当たるも八卦、当たらぬも八卦、なのですが、押し目買いの領域に来ているとは思います(対ドル、対円。但し、最下点ではないかも)。
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2010年4月9日金曜日

私のなかの「ユダヤ人」

氷は融け始めると、徐々に融けるペースが加速していきます。秋の日の釣瓶(つるべ)落としの如きその様子は、氷の「表面積÷体積」という比率がどんどん大きくなっていくからです。いまの自民党の状況を「融解が始まった」と譬える多くの諸先輩に、今週出会うことが出来ました。

かつてこのブログで取り上げた中曽根康弘氏を筆頭に、現在「立ち上がれ日本」を立ち上げようとしているメンバーのひとりも含め、これまで自民党の要職にあった多くの政治家が、「日本は単一民族国家だから、云々」という失言を、驚くほど性懲りもなく、繰り返してきました。

保守主義というものは、往々にして、市場原理主義だけでは満足せず、伝統や宗教、民族の矜持という要素が漏れなく付随してくるので、仕方の無いことだったのかも知れません。問題は、「日本は単一民族国家だから、云々・・・」の「云々」の部分です。それらの失言の多くは、やれ、だから「教育水準が高い」だの「文化水準が高い」だの「知的水準が高い」だの、挙句の果てには「世界に冠たる国力を持つことができた」などと、昭和の価値観というアナクロニズムに酔い痴れたものが殆どなのです。

少数民族の融和を進めるべきかどうか、とか、言語の統一を徹底すべきかどうか、については一長一短があります。それを措くとしても、失われた20年を経ての今日の日本は、自民党の古臭い政治家の多くが安住、虚栄してきた「単一民族国家」もどきの負の部分のほうが噴出してしまっていると認識すべきではないでしょうか。

勿論、子ども手当がベストの政策であると申し上げているわけではありませんので、念の為。

このようなことを考えさせられたきっかけのひとつが、冒頭、「自民党の融解が始まった」と口々に説明をされた、現役の政治家の先生や高級官僚や経営者諸先輩の本音トークでした。これから先の日本に対する徹底的な悲観論で満場一致となったものの、何故か却って意気軒昂とならなかったのは、「政治家としては自分に嘘をついてでもポピュリズムに迎合しないと選挙に勝てない」一方、「官僚としては自分に嘘をついてでもイエスマンを続けないと偉くなれない」。。。つまり政治も行政も、判っていながら、日本を変えられない、悪い方向にどんどん行っているのを抑止するどころか傍観、放置しているという現状でありメカニズムであるということです。

そして、もうひとつのきっかけは、ワイナリーツアーに御参加いただいた中で、ユダヤ系ポーランド人の御両親のもとに生まれたフランス国籍で日本在住のルティさんとの出会いです。

過去の自民党幹部の問題発言を批判しつつも、「単一民族国家」という表現が、一定の程度においては当て嵌まる日本の微温湯(ぬるまゆ)では想像も出来ない「ユダヤ人とは何か?」「国籍とは何か?」「シオニズム」「戒律」等々の問題と真剣に取り組まなければならなかった女性の半生の実録を、今週一気に読了しました。

「私のなかの『ユダヤ人』」

行政の故意なのか過失なのか判らない理由で、長い間、無国籍状態を強いられた逸話に始まる同書は、御両親がどのようにして辛うじてナチスを逃れたか、そして「ユダヤ人の正史」から削除されている本当の起源に纏わる話など、コンパクトながら意味深長な内容が満載ですが、私を最も魅了した箇所は、イスラエルで生まれフランスで育った彼女が、どのようにして執筆当時彼女の夫であった広河隆一さんとの出会ったのかという部分です。シオニズムの実像と併せ、広河隆一さんのような日本男児、、、、草食系が跋扈する(若者だけでなく、既述のとおり、政界や官界も!)なかで、本物の肉食系に出会えた気がしました。

最後に、宣伝。体を張ってパレスチナ問題やチェルノブイリ問題などを追い掛け続ける広河隆一さんの 写真展4/21(水)~23(金)、文京シビック1階で行われます。そして、翌4/24(土)13:30~わたくしも登場する「チェルノブイリ24周年救援キャンペーン 最新現地報告&チャリティコンサート」です。
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2010年3月16日火曜日

米国の国会議員、超党派でオバマ政権を突き上げ-人民元問題

中国の全人代が閉幕し、温家宝主席が記者会見で「人民元切り上げ要求を一蹴」 した直後の月曜日、米国では超党派の国会議員130人がオバマ政権に対して「中国に対して為替操作国だとのレッテルを貼れ!」との要求したと、たった今、英FT紙が伝えました(原文をツイッターにリツイート)。

「貿易摩擦」や「貿易不均衡」と言うと、プラザ合意以前からの日米関係(円高誘導だけでなく非関税障壁の指摘なども)の既視感が過ります。80年代後半(まで)の日本と現在の中国とでは、非関税障壁の実態のほか資本取引に関する規制環境も異なるため、その既視感は慎重に疑う必要はあります。しかし、貿易黒字国が貿易赤字国の乱発する国債を買い支えてあげなければ、為替相場(など)のパラメータの変化により、不均衡は均衡へと向かう筈、という点では共通です。

「貿易」依存度が著しく高い東京都は果たして収支均衡しているのか?
「悪貨は良貨を駆逐する」シリーズの第二回で東西ドイツの統合を取り扱いました。特に、その後編で、1東独マルク=1西独マルクと政治決断されたために、実態の4倍もの高い評価を得た東独側では失業や工場閉鎖(倒産)という「有難迷惑」な経済混乱を経つつも、工場が東側に移転したり、労働者が西側に出稼ぎに行ったりして、「不均衡」を解消していったのだとお話しました。より大事な点は、東独の労働者(≒組合)が選択肢を放棄しただけのことであって、失業や工場閉鎖の代わりに労働賃金の切り下げを受け入れても、「自国通貨が高過ぎる評価レベルで固定化してしまっている」という隘路を乗り越えることができたという考え方です。

実は、東西ドイツの例を持ち出すまでもなく、これは国内経済でも経験していることです。東京都という地方経済圏が東京都以外の道府県から農林水産物を「輸入」していることは周知です。我が国の都道府県は(市区町村もですが)たいていは財政赤字でありそれを地方債などによってファイナンスしていますが、黒字の自治体がないということは、都道府県に跨るファイナンスは顕著には見られないと考えて良いと思われます。そして、これは自明ですが、東京都にとって貿易相手「道府県」との決済に使われる通貨は日本円であって、どう足掻いても動かしようのない固定相場です。資本取引もなくて、「為替」も固定相場制であって、どうやって都道府県「際貿易」の不均衡が解決できるかと言うと、残された唯一つ(二つ)の自由度が労働と土地(建物)という生産要素の価格(賃金と地代家賃)だということです。

民主政治が行き詰るとポピュリズムに走るのは日米同じです。 米国債を買い支えてくれている中国(という認識がオバマ大統領本人にはあるので、同政権は議員の陳情に苦慮していると前掲のFT紙は報じています)に対して「人民元を切り上げろ。手前(てめえ)は為替操作国だ。」と恩を仇で返す前に、自国民に対して生活水準を切り下げてくださいと言うべきなのですが、落選の恐怖を前にして、スケープゴートを国外に求めざるを得ないのが、成熟国家の議会制民主主義の宿命なのかも知れません。

「インフレこそ政権の足元を揺るがす」は本音か!?
さて、本日のテーマは成熟した資本主義国家が保護主義やポピュリズムに陥りがちであることではありません。昨日、お約束した通り、中国の温家宝主席の全人代閉幕後の発言を、スペインの価格革命を分析した考え方で深読みしてみようということでした。

「人民元の切り上げ要請には屈しない」という発言は「国益」を代表するものでしょうか。また、為替関連発言よりも注目したいと七転び八起きが申し上げた「もしもインフレが発生し、所得分配の不公平が重なってくれば、社会の安定に影響し、政権の足元を揺るがす事態になる」 という部分は国家元首の本音と考えて良いのでしょうか?

まず、後者です。当ブログにて、今日の日本が「デフレの進行とともに格差も拡がっている」という論調は錯覚(厳密には逆「貨幣錯覚」)に過ぎないと繰り返して参りました。その点で、温家宝発言は、正しいだけでなく、物価上昇に対して、農業従事者や工場の非熟練労働者と言った大半の国民の賃金の上昇が付いていけない状況というのが、大航海時代の植民地、産業革命期のヨーロッパや、高度成長期までの日本と似たような搾取的労働の実態を認めたものであるとしたら、大国の舵取りをする国家主席の発言として意味深長なものだと受け取らざるを得ません。

しかし、正鵠を突いていることは必ずしも本音の発言であることを意味しません。これ以上のインフレが国体に危機をもたらすと本気で考えているのであれば、人民元問題と一緒に解決できるからです。冒頭の「貿易黒字国が貿易赤字国の乱発する国債を買い支えてあげなければ、為替相場(など)のパラメータの変化により、不均衡は均衡へと向かう筈」 を思い出してください。日本で言えば、中央銀行と只今話題の埋蔵金のひとつである外国為替特別会計で買い続けてきた米国債が外貨準備高を構成しているわけで、これを市中売却すれば、市中銀行(民間銀行)は中央銀行に支払準備預金として積み立てていた自国通貨建ての預け金を取り崩さざるを得なくなり、信用創造が弱まり、マネーサプライは減少します。これでインフレの大原因のひとつが取り除かれば、隷属的な労働現場においても、労働分配率が成熟した資本主義国家の平均に少しは近づくというものです。

言わば中国は、国内に「内陸部」という巨大な植民地を抱えている、現代世界では珍しい構造を持っているが故に、貿易面で著しい競争力を有していると考えられます。これが中国の政権中枢のパワーの源泉であり、また政権を陰に陽に支える沿岸部の富裕層の利潤の源泉でもあります。「人民元安は死守する」というメッセージと「インフレは格差拡大で国家危機を招く」というメッセージは実は矛盾しているのであります。前者が本気、後者は人気取りのためのポーズに過ぎないと考えられます。これをさらっと言い抜け、海外のメディアも評論家も殆どが煙に巻かれているということですから、流石は大国の国家元首、超大物政治家であるということです。
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