2009年3月5日木曜日

スイス金融大手UBS、前財務相が会長に就任

前財務相と言っても、中川昭一代議士のことではありません。カスパル・フィリガー前財務相は閣僚が輪番で務める大統領職の経験もあり、UBSの経営改善にスイス政府が本格的に関与する可能性を今朝の日経朝刊は指摘しています。

昨夜11時頃、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙のトップ記事だった同報道は、「銀行業は長い間チューリヒの街にとって飯の種以上のものだったonly more reliably。自動車とデトロイト、コンピュータとシリコンバレーの関係と同じ。企業城下町の経済が浮き沈みする間ですら、世界中の資産を静かに見守るスイスの生業は、正確にチューニングされたスイス製時計のように、スイスの国民経済の豊かさを揺らぎなきものにしていた。

ただし、これまでは。。。」

という書き出しで始まっていました(今朝、もう一度読んだら、何故かデトロイトがシュツットガルトに置き換えられていましたが???)。

社長に次いで会長も更迭し、外部から人材招聘を決めたIHT紙の報道が指摘しているのは、金融立国スイスの脆弱さ。人口760万人のスイスのGDP(国内総生産)に占める金融業の貢献度は12.5%。ちなみにユーロ圏は5%、米国は8.5%です。英米がそれぞれ何十兆円規模の公的資金導入を実施しているのに対して、UBSのバランスシート(貸借対照表)は約200兆円と、スイスのGDP(国内総生産)の4倍にも達しているのです。

UBS以外のスイス系銀行の資産を全部足すと、スイスのGDPの6.8倍。国家破綻寸前のアイルランド(9.5倍)よりは“まし”だが、米国(商業銀行だけだと0.7倍)に比べて余りにも深刻。

加えて、スイス国外からの匿名口座の受け入れに対する、米国やEUからの改善プレッシャーが泣きっ面に蜂。当ブログでも昨年5月以来取り上げてきた脱税幇助の問題で、結局UBSは先月、米国に対し780百万㌦の課徴金と300名の富裕層顧客名の公表を行っています。

そんなこんなで、2007年末には2兆㌦近くあったUBSの預かり資産は2008年末1.4兆㌦へと激減しています(国外からの出金依頼が1050億㌦+株式等の下落による時価評価減)。

それでもまだフェニックス証券の預かり資産よりは大きい。立派なものです。
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2009年3月4日水曜日

小沢代表秘書逮捕と政治資金規正法

★「失われた10年」の政治改革は何だったのか!?
55年体制以降初めて自民党を下野させた細川内閣は、“政治改革”こそ最重要課題だとして1994年に政治資金規正法の改正案を成立させ、企業や団体からの寄付の対象を政党、政治資金団体、新設された資金管理団体に限定させました。カネが掛り過ぎる政治が、政治を悪くしているという認識の下、政治献金の取り締まり強化と同時に成立させたのが、衆議院議員選挙制度の改革、すなわち

小選挙区(比例代表並立)制

の導入です。中選挙区制度では、カネが掛り過ぎるという認識。日本には米国のような二大政党制がふさわしいという流れに、疑念を抱く声は、少数政党(の支持者)を除き、政財界にも、マスコミにも目立って聞かれず、野党自民党との調整で揉めたのも定数割り振りという各論部分でした。

今回の「西松建設-小沢民主党代表」疑獄は、

☆政治資金規正法が骨抜きの改正の繰り返しであった

ことに加えて、

☆選挙制度改革も、カネの掛らない政治という目標に対して殆ど貢献していない

むしろ、我が国の将来を本来担わせるべき人物が、二世議員や資金力の旺盛な既得権益にどっぷり漬かった勢力に分け入り、政治を志す気分にならない我が国の淀んだ風土をより悪化させた象徴、

というのが私の解釈です。

細川首相(当時は)、政治改革関連法案を国会で可決成立させた直後に、消費税問題と佐川急便事件で辞任。その後は、自民党と社会党の連立内閣で村山首相が「自衛隊は合憲」と所信表明演説。小選挙区制が潰したものはカネの掛る政治ではなく社会党という革新政党ひとつでありました。

★政治改革か?政治不信か?-相場への影響は???

「西松建設=小沢民主党代表」疑獄が、既にただでさえ根強い政治不信を一層強めることは間違いないでしょう。我が国の国民ひとりひとりが、この国の政治はどうしようもない。自分のことは自分で守るしかない。という意識を強めるのであれば、それは悪いことではない。ただし、二院制と小選挙区制は続ける意味がないと、政治家の皆さんですら少なからず内心は理解しているのです。

で、相場への影響はどうでしょう?政治不信は十分織り込み済みだそうで、株安も円安も極々限定的だという意見が太宗のようです。相場は先を読んでいますね。

さて、米国の政治はどうでしょうか?

★オバマ人気、更に高まる

最新のウォールストリートジャーナル/NBCの調査。ただし、「米国は正しい方向に向かっている」が41%なのに対して、「米国は間違った轍に乗っかっている」が44%であるという数字もあります。大衆迎合のばら撒き政治に対する抵抗感はまだまだ根強いのです。
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2009年3月3日火曜日

NYダウ、終値で6800割れ-AIGショック

★前週末比299.64(4.2%)下落。12年ぶり安値
シティグループが20%下落(1.20㌦)。金融のみならず、GE(11%下落)、ボーイング、キャタピラー、3M等、製造業含め全セクターにわたって、大幅下落。

シティグループとAIGの二社に対する米国政府による公的関与が暴落の引き金。英HSBCの時価発行増資(180億㌦)と米国の消費者金融事業撤退のニュースで同銀行株が18.7%下落したことも寄与。

しかし世界の金融業界の現実を直視すれば、「公的資金による銀行株の希薄化」を世界中の株安連鎖の犯人扱いするのは間違い。公的な関与をせず、第二、第三のリーマンブラザーズを出してしまえば、暴落の度合いはこの程度では留まらないからです。

シティグループとAIGに対する関与の在り方は、バーナンキ&ガイトナーのコンビ以外でも結論が大きく変わることはないでしょう。

公的資金と言えば、
★バンカメの社長、「メリル買収のための200億㌦の(追加)公的資金は“戦略ミス”だった」
フィナンシャルタイムズ紙の独占インタヴューで、「公的資金導入のせいで、バンカメがシティグループと同じ類の駄目銀行だと見られてしまったことは失敗」と懺悔。

バンカメに入った公的資金は、9月に250億㌦、12月に追加で200億㌦。後者は、メリルからの“お土産”(四半期損失150億㌦)に対処するためのバッファーだったが、必要なかったと。

バンカメ社長は、メリルリンチ買収に200億㌦も費やしたこと、その後に上記“お土産”が発覚したこと、買収直前の12月に支払われたメリル役職員への巨額ボーナス、そんなこんなでメリル買収以降2ヶ月でバンカメ株が約8割も下落したことで、引責辞任を求める声が高まっている。FTのインタヴューは「公的資金を返済するまでは、辞められない」という理屈で批判をかわすための、戯言かも。

ところで、シティグループとAIGに戻りますと、

★公的資金は惜しみなく投入する

しかし、

★国営化はしない(する必要がない)

と米国当局が嘯く(うそぶく)のは、大きすぎて潰せない問題のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の「信用事由(クレジット・イベント)」の中に、倒産や債務不履行だけでなく「公的管理」というのも入ってしまっているからです(2002年度版ISDA)。格付偽装でCDSを引き受け、または保証しまくって浮銭を追っていた巨悪の金融機関に対するモラルハザードの泥濘(ぬかるみ)相場は当面続くと考えざるを得ません。

金融サミットのような“世界政府”で、または(BIS規制が見事に機能しなかった反省で)バーゼル主導でも良いから、

☆公的資金が入った金融機関は、海外での事業から撤退すべし

というルールをぶち上げるべきでしょう。まあ、無理でしょうけど。
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2009年3月2日月曜日

シティグループ、AIG、、、ヨーロッパ東西分裂の危機

金曜日の夜から、大西洋の両側で経済ニュースが騒がしく、週初のブログでは何に焦点を当てるべきか、いまだに悩んでいます。

★米国GDP改定値発表
2008年10月~12月の改定値は年率で6.2%のマイナス(1カ月前に発表されていた速報値ではマイナス3.8%だった)。大幅下方改定の要因として、在庫投資の調整、輸出と個人消費の減少が挙げられている。
1982年1月~3月のマイナス6.4%以来の最悪記録。

★シティグループ、米政府保有の優先株275億㌦を普通株に転換
米政府の議決権割合は36%に上昇。早くも取締役人事に介入。

ところで、転換価格は1株3.25㌦という“配慮”だったが、金曜日の終値は1.50㌦(前日比▲0.96㌦)と大暴落。

★AIG、追加支援300億㌦
既にこれまで600億㌦の貸出、400億㌦の優先株取得、500億㌦の不良債権買取枠と巨額の血税を次ぎ込み、議決権で約80%を握っている米政府。2008年10月~12月の四半期決算が620億㌦という歴史上最悪の数字となることに備え、金融安定化法案の7000億㌦枠を再び活用へ。

AIGがこれらの資金を直ちに使うわけではなく、政府支援を示さないと、ムーディーズやS&Pが、これ以上“偽装格付け”を続けていられないと痺れを切らせているからだと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は報じています。

上記の訳出は「七転び八起き」の独断と偏見に満ちていますが・・・

以上、米国に対して、ヨーロッパも大変です。。。

★EUサミット、(旧)東ヨーロッパ救済案を否決
ハンガリーから提案されていた東欧からのEUへの新規参入国への大規模な救済を求める提案は、ドイツが拒否、他の参加国からの支持も殆ど得られず。これに対し、ハンガリー首相は「新しい“鉄のカーテン”だ」と欧州が再び東西に分割されることを警告。

この結末の伏線とも言える記事が、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙からEUサミット前夜に出されていました。

★東西分裂という“疫病”に悩まされるヨーロッパ
米国発金融危機の問題に対処すべく、週末ブリュッセルに集まった欧州各国の首脳たち。だが、EUに新たに参加した東欧のメンバーは、自分たちだけで作戦を練るべく、西側首脳を排除した“プレ・サミット・サミット”をポーランド大使館でこっそり行なった。

月がかわりました。3月からはフェニックス証券にとって史上最大のFXキャンペーン、取引システムのバージョン・アップ(何段階かあります⇒話題のCFDも)も始まります。が、もうひとつ、角川グループのマネージャパンMoney Japanにて私の新しいコーナー「“為替力”で資産を守れ!」(仮称)が連載開始となります。ブログですと、一日の更新が長すぎたり内容が濃すぎたりすると、読みづらくなりますので、月に一度、トレンドを占うような内容を厳選して、読者の皆さんに喜んでいただけるようなコーナーにしていきたいと考えております。
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