2009年9月1日火曜日

話題の鳩山「論文」

衆院選後の昨夜。NHK特番で、細田自民党幹事長が「鳩山代表の『論文』が米ニューヨークタイムズ紙に掲載されている。米国流の自由主義経済を見習ってきた弊害という論調に、米国民も呆れていると聞いている」と同席の岡田民主党幹事長に負け惜しみを吐き捨てた。

問題の記事はこちら。

http://www.nytimes.com/2009/09/01/world/asia/01japan.html?_r=1&pagewanted=print

穏健派で知られるニューヨークタイムズ紙が、企業のモラルハザードについてはゾンビ企業を認めない立場からGMやクライスラーの破綻処理に関して政府介入を批判していたことは、拙書「“為替力”で資産を守れ!」にも書きました。こちらの記事でも、日本経済の閉塞感が、小泉(+竹中)改革による弱者切り捨てのせいではなく、むしろ同改革が既得権益打破や官邸主導なり地方分権なりの徹底が全く不十分だったせいであるという論調に賛成。問題は、小泉氏に選ばれた後継者(達・・・安倍、福田、麻生)のせいなのか、続投しなかった小泉氏のせいなのか、小泉氏自身が改革者のふりをしてブッシュ政権に尻尾をふっていただだけ(外交面でも、靖国問題含め、対アジアで不要な摩擦を生じさせた点も、真の改革とは整合しない)なのか、なかなか明快にするのは難しいので、民主党の選挙戦略は「小泉路線見直し」だったわけですが、結果的には反小泉でも“半”小泉でも勝てたかも知れません。

先々週のブログで述べた通り、経済運営においては自民党にも民主党にも過大な期待は出来ない状況のなかで、オバマ政権との適度な距離を置きつつ、自民党が果たせなかった対アジアの「太陽政策」【注】が民主党の手によって出来れば日本の将来も多少明るいかも知れません。
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【注】自民党が果たせなかった・・・1997年のアジア通貨危機後の宮沢構想は米国によって実質的に潰されました。自民党政権下で「太陽政策」が出来なかったのは自民党のせいでは必ずしもない点にも言及しておきたいと思います。

2009年8月28日金曜日

いよいよ衆院選

小選挙区で公共工事を沢山誘導してくれる政治家を応援するのが地域エゴイズムならば、子供がいる家庭が少子化対策を大盤振る舞いしてくれる政党に票を投ずるのは世帯エゴイズムかも知れません。

七転び八起きの持論爆論は、少子化は対策を立てるべき問題ではなくて、日本は少子化という症状と仲良くやっていくしかない、というもの。しかし、かと言って、大盤振る舞いの少子化対策マニフェストがまるっきりナンセンスだとは思っていないのです。

その理由は、日本の年金制度が必要以上に少子化傾向をサポートしてしまっている点にあります。

年金制度が歪んでいるくらいなら廃止したほうが良い、という政策は政治的には実現不能でしょう。その代わりに少子化対策をふんだんに行うという手はあるのです。

詳しくは、拙書「“為替力”で資産を守れ」をご覧ください。


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2009年8月27日木曜日

英国当局、金融部門の肥大化を矯正

英国金融庁のトップであるターナー卿の発言。「金融センターとしてのロンドンの競争力の強さを、金融庁としてはもっともっと注意して(懐疑的に)見ていくべきだ。英国経済にとって、シティの強さがかえって不安定要因になってしまっている」と。

ターナー卿の提案は、「トービン税」。米エール大学の経済学者ジェイムス=トービン教授に由来するアイデアは、世界中の金融取引に一律に課税して、発展途上国など世界中に再分配するというもの。既にこれまでに開発経済学者やフランス政府などによって、特にリーマン危機後提唱されてきたが、金融部門からの反対に遭って来ました。

英国内でも、ターナー卿の発言に対しては、アリスター財務相や、英国銀行協会(BBA)のナイト理事長が「聞いていない」と無視まはた反対する等、まだ一枚岩ではなく、規制緩和の賜物であるシティの存在は税収という点でもイギリス経済にとって欠かせない資源だという伝統的意見はまだまだ根強いようです。

実体経済の規模に対して金融部門が余りにアンバランスに肥大化すると歪みや弊害が致命的となるお話は以前から当七転び八起きブログでさせていただいておりました。時に、幸福実現党は小さな政府(警察と国防だけの夜警国家)を唱えておりますが、金融も仲間に入れるべきかも知れません。しかし、国内だけ課税するとイギリスの所得が減るだけなので、世界中での一律課税(new global tax)を提唱するところが、七つの海を支配し続けていると勘違いしているイギリス貴族らいしところ。
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2009年8月26日水曜日

バーナンキ再任に「異議あり!」

モルガンスタンレー(アジア)会長で反骨のエコノミストであるスティーヴン・ローチ氏が、英FT紙に、オバマ大統領によるバーナンキFRB議長再指名の早期決断は短視眼的と批判する論稿を載せました。

曰く、「医療過誤をしでかした医者に、奇跡的な治療法を発明したとおだてるようなもの。患者は新しい医師を求めている」と、容赦なき論調です。
http://www.ft.com/cms/s/0/a2ba2378-9186-11de-879d-00144feabdc0.html
取り返しのつかない資産バブルを見逃した中央銀行家として、グリーンスパン同様、バーナンキも罪を背負うべきかも知れません。オバマ大統領は、ブッシュ政権の大失敗を暴ける立場であるにも関わらず、そこを突き詰めることが自らの政権の危機を招くとの直観から、ガイトナーをして米銀ストレステストを、そしてこの早過ぎるタイミングで、バーナンキ再任をと、敢えて茶番を繰り返して来ているのでしょう。米国型金融システムの抜本見直しよりも、短視眼的に症状を糊塗するほうが米国の国益に資するとの判断は或る意味正しいということは、世界中の殆どのメディアがバーナンキ再任に肯定的である点からも窺い知れます。

米国の国益に最も近い立場である筈のモルガンスタンレー。論稿の著者であるローチ氏のような、何かと大本営のシナリオに対して水を差す人物を、ITバブルやお家騒動など紆余曲折を経つつも永年クビにせずに言いたいことを言わせている点に、米国そのものとも言える大銀行の懐の深さを感じます。
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