2011年8月15日月曜日

日本橋さくら通りの桜の幹が余り太くない理由


フェニックス証券は外堀通りと日本橋さくら通りの角のあたりにあります。

東京駅八重洲北口の中心街とも言える日本橋さくら通りには外堀通りからの入り口付近に石碑があります。これによりますと、

☆通りの桜の木は昭和10年に植えられた。

★ところが、昭和20年3月の大空襲で、町とともに灰燼に帰した。

☆爾来10年有志が復興への意欲で力をあわせた結果、昭和31年に桜並木が復活した。

とのことです。外堀や内堀の土手に植わる桜の大木に比べて、幹が細い桜並木の正体は、ビル陰で日照量に恵まれないことだけではなさそうです。戦後は遠くになりにけりとは必ずしも思えない、66回目の敗戦記念日です。
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2011年8月12日金曜日

空売り規制では金融危機は収束できない

3年前に「裸の空売り」という記事を書きました。

http://phxs.blogspot.com/2008/07/blog-post_16.html

Naked Short Salesとは、空売りをする時点では、現物株の仮株の手当てがまだなされていないものを指します。記事当時のファニーメイやリーマンなど巨大金融機関だけでなく、アジア通貨危機のときのアジア諸国など、直ちに換金が出来ない固定資産を巨額の借入(レバレッジ)で支えている巨大かつ歪なバランスシートというものは、その資産を売り急いだ場合には、バランスシートの価値(ファイヤーセールス・バリュー)が著しく不当に低い評価を受ける、それは可哀そうではないか、という観点から、しばしば規制当局によって正当化されるものです。

昨夜これがフランス当局によってBNPパリバやソシエテジェネラルなど大手上場金融機関の株式について発動されました。これが上記理由に照らして正当かどうかの侃侃諤諤(かんかんがくがく)は敢えて措き、その効能について考えてみましょう。

3年前に書いた記事は、2008年7月のものです。つまり、リーマンショックはその2ヶ月後なのです。ハゲタカファンドや投機筋や規制、金融行政だけのせいには、リーマンショックは出来ないと考えるべきでしょう。

空売り規制は金融危機を収束させるものではなく、むしろより本格的な危機の前兆くらいの場所に位置すると予想します。

後々、「S&Pショック」と命名されるかどうか良く判らない今月の金融市場の混乱は、

①主役である米国債が暴落しているわけではないこと、

②大暴落した株価が反発に転じたきっかけは中央銀行による国債購入など金融緩和政策の拡大の発表でした(米国だけでなくイタリアとスペインについても然り)が、財政規律という本筋の問題を根治する処方箋とは読み取れないこと、

③では国債も株式も通貨も皆駄目だったら商品(先物)が全面高かと言えば、金を除いて大暴落であること

などなど、理屈では説明がつかないことだらけです。

リーマンショック後は、紆余曲折を経て、「ウォールストリートの不始末でメインストリートに迷惑をかけたのだから財政出動は当然」という議論に、軍配が上がりました。

2008年から2011年にかけて、「先進諸国」の政界と経済界は、リーマンショック以前の生活水準を維持するために、金融を財政でカバーしうるとの前提のもとになりふり構わずやってきたわけですが、やはりそれは無い物ねだりだったと判り始めたことが、この8月危機の本質なのではないかと疑っています。

金融危機をボラティリティで測るならば、昨年5月のギリシャショックは、今年3月の震災(というよりも原発事故)直後の危機より遥かに長かったわけですが、今回の仮称「S&Pショック」はそれよりも長引く可能性が十分あると考えられます。
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2011年8月8日月曜日

腐った組織の愚かな連中

事務次官など3人が「更迭」(←日本語が乱れ切っています!)された霞が関の某お役所その他原子力村の住民たちのことではありません。

リーマンショックの年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授がコメンテーターを務めるニューヨークタイムズ紙のなかの「御意見番コーナー」、、、というかブログのなかで、S&Pによる米国債格下げの報道をうけての一言コメント。

「明らかなことは、我々は(週明けの東京市場がどうなるかなどを案ずるために・・・七転び八起き注)、腐った組織に属する愚かな連中がいったい何をどう考えているのか程度のことに気を配ろうとしていることだ。」

http://krugman.blogs.nytimes.com/2011/08/06/the-best-summary-of-the-sp-downgrade/

リベラリストの同教授が断言するように、債務危機の問題があるのであれば、中央銀行が米国債でもイタリア国債でもスペイン国債でも迷わず買えば良いだけの話だ、、、という意見に、わたしは100%賛成であるわけではありません。

しかし、同教授が上記一言コメント以降に長文のブログを更新しているなかで述べているように、企業が発行する債務(社債など)への格付け審査や発表の実態もさることながら、国家の債務についての格付け機関の態度が馬鹿げていることについては賛成です。

かつて日本も、週末ではなくて週央の日中に、大手米系格付け機関に格下げの不意打ちを食らい、国債市場が大混乱したことがありました。もちろんそれ以降も日本の財政規律は改善するどころか悪化する一方ですが、あの格下げの意味はなんだったのか。いや、何の意味もなかったことを、今回格下げを「演じた」格付け機関も、格下げをしないと「発表」した格付け機関も、同様に論理的に反省すべきです。

米国債を「格下げしない」と「発表」した格付機関も同様に愚かしいことについてはちょっと解説が必要かも知れません。例えば、東京電力の発行する社債はついこの間まで日本企業のなかでトップクラスでしたが、社債には満期まで数年と短いものから、20年またはそれ以上の長いものがあるにもかかわらず、社債格付けは同一なのです。では格付け機関は、格付け審査をしている企業や国家が発行している債務のうち最も満期が先のものまでその償還能力が等しく高いと推定して高い格付けを付与しているのでしょうか。そんなことはないのです。

エンロンでもサブプライムでもそうでした。格付けを下げるという行為は、格付け機関の存在感や影響力を誇示している側面として取り上げられるようですが、実は、生命保険会社に譬えれば、生命保険の契約者が死亡したのに保険会社側に義務のある健康診断がちゃんと行なわれていなかったことを免責事項としてでっち上げて保険金を不払いにするような犯罪でありまして、保険金不払いにも色々あるでしょうが、こんなひどいことはさすがにないと思っているのはわたしだけでしょうか。
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2011年8月3日水曜日

イタリア国債の問題は桁違いに深刻

「市場には二つのタイプの参加者がいる。恐怖で動いている参加者と欲望で動いている参加者である。

現在、イタリア国債やスペイン国債の流通市場で観察されている現象は、、、どちらのタイプの参加者も同じ方向(≒売り逃げ)で動いてしまっていることである」

ニューヨークタイムズ紙の記事の特徴は、まず何と言っても文章が長いことですが、もうひとつは記事の結びに取材先からのコメントを格言のように取り出して締めくくっていることです。

米国債の発行額上限問題が何とか解決したとたんに、狼(おおかみ)は再びヨーロッパ、特にイタリア、スペインの扉を叩いたという趣旨の同紙の記事を締めくくっているのは、あるヨーロッパの財務担当高官の匿名のコメントです。

ヨーロッパの主要銀行が保有しているイタリア国債の額は33兆円を超えており、先ごろ問題だったギリシャの国債の30倍以上のレベルとのこと。どの銀行がどれくらい保有しているか、記事に詳細があります。

http://www.nytimes.com/2011/08/03/business/global/pressure-builds-on-italy-and-spain-over-finances.html?pagewanted=1&_r=1&ref=global-home

大手金融機関のビジネスモデルという点で言えば、一昨日発表された英HSBCの大規模リストラの発表は、世界規模での金融ビジネス縮小の前触れに過ぎないという一面を表しています。

一方、大西洋の両側で繰り返される国家債務問題は、通貨発行権限(シニョレッジ)や財政金融政策の独立性(ソブリニティ)を超えたグローバリゼーションに内在する問題の深刻さも如実に物語っています。
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