2016年10月31日月曜日

日米英揃い踏みで金融政策決定会合

久しぶりに、アヴァトレード・ジャパン公式パートナー「大当たり」さんのメルマガを公開します。中銀ウォッチャーとして堂に入ってきた感じのある大当たりメルマガは、アヴァトレード・ジャパンに口座開設するだけで毎週無料でお読みいただけます(2016年10月31日現在)

(↑↑↑テーパリングしている先が萎えている南瓜の図↑↑↑)

(以下引用)

アヴァトレード・ジャパンの皆さま、こんにちは。大当たりです。

「そう言えば、大当たりさん。何ヶ月か前に、スパイ小説を続けざまに読んでいるって自慢してましたよね。」あっ、はい(^^ゞ

「スパイと言えば、FBI。FBIと言えば、ヒラリー・クリントンのメール疑惑調査再開。これって何か裏があるんですか?」

すみません。米国のスパイには詳しくないんです。ケネディ暗殺の黒幕が誰かも知りません。MI6とモサドが専門なんです。今回の件についてはほんとうに何もわかりません。

それより、英国EU離脱発表から、週末も目を話せなくなってしまった英国でまたまたスクープです。英国のEU離脱派≒保守党幹部たちから早期辞任の圧力を受けていたBoE総裁であるカナダ人のマーク・カーニーが友人とのあいだで、「任期延長オプション」を行使して残り8年職を全うする決意を内々に固めた。と、今朝早く、英フィナンシャル・タイムズ紙が臨時ニュースを出しています。

今週は、あまり注目をされていない日銀金融政策決定会合はともかく、日本では祝日の木曜日に、米国と英国で金融政策「揃い踏み」となります。もともとわたくし大当たりには休みがないので平気ですが、兼業トレーダーの皆さんにとっては集中力を絶やせない注目の週になりますね。

市場のコンセンサスは、
FOMC(11/3(木)午前03:00)0.50%現状維持
BoE(11/3(木)午後21:00)0.25%現状維持

珍しくありきたりなことを書かせてもらいますと 爆 、米国は利上げがあったとしても12月で、上記の黒幕不明のメール問題再燃で、ある調査では支持率が1ポイント差まで縮まっているなかでの大統領選の結果を見ずしてイエレン議長がサプライズを演出することはないだろうと市場は高を括っているところです。

片や英国は政権側と中央銀行側の対決姿勢が劇場化しているわけですが、喧嘩腰の外国人総裁とて、0.25%の下は、、、いつぞや日本でも0.1%というのがありましたけど、、、現在の金融政策決定プロセスが確立された1997年以降は0.25%刻みしかないようですし、素直に考えれば、、、ゼロ金利マイナス金利しかないわけで、、、

ちなみに、BoEと保守党政権で何が揉めているかというと、量的質的金融緩和の是非と中央銀行の独立性です。マーク・カーニー氏は金融緩和派、そして言わずもがな独立性維持派なのです。

日本の安倍政権と黒田総裁のスクラム状態を見慣れている日本国民にはイメージし難い状況ですね。アベノミクス前夜、当時の白川総裁が、、、あれでも、、、金融緩和が足りないと官民こぞってディスりまくっていた風景とも違います。

実は、わたくし大当たりには、英国紳士の仲良しがいます。どうやらどこかの大学で数学を教えているらしいおじさんなのですが、幸い日本語がペラペラなので助かっています。大当たりは英語が大の苦手。でも実は元理系なんです(*^_^*)。。。このおじさん、研究と講義で忙しいはずなのに、妙にFXのことに詳しいんです。先週金曜日も、米国GDPの発表前ですが、いっしょにおりまして英国の話で盛り上がりました。

マーク・カーニー氏は、カナダ人であるということが異例ですけど、それ以前に、ゴールドマン・サックスに10年以上勤務していたことがより異例だという話に。あくまで英国の転職社会ではということです。米国では歴代財務長官でロバート・ルービンとヘンリー・ポールソンはゴールドマン・サックスにいたわけなので。

要するに彼が言うには、マーク・カーニー氏はもはやサラリーマンではない組織人ではない。独立したお金持ちであり、誰にごまする必要もなく信念を以って仕事を出来る立場なのだと。

東京都の小池劇場とは、男女、攻守、あべこべな感じはしますけど、組織がきちっとしている日銀よりも注目されるのには理由があるんですね。

とは言え、利上げ方向へのサプライズはありえない。また、日銀と同じく、合議の様子はガラス張りに近いものがあります。
http://www.bankofengland.co.uk/monetarypolicy/Pages/decisions.aspx
(↑↑ここからEXCELのスプレッドシートがダウンロードできます。ちなみに0.25%刻みしか前例はなさそうです)

記述の如く、下方は限定されているゼロまたはマイナス金利は、今年のポンドの地合いを考えれば、底抜けになりかねません。

それとも、テレーザ・メイ政権とマーク・カーニー総裁は、対立したふりをしているだけで、金融政策とEU離脱政策の混乱に乗じて、自国通貨安を演出したいとでも考えているのでしょうか???

順不同で、テレーザ・メイ英首相、ジャネット・イエレンFRB議長、アンゲラ・メルケル独首相、ヒラリー・クリントン米民主党大統領候補、小池百合子東京都知事、以上のみなさんが主演女優賞にノミネートされております。

(引用終了)

きょうのメルマガの副題は、「ヒラリーさん含めて主演女優賞は誰か?」だそうです。

2016年8月30日火曜日

人工知能も天然知能も予想的中だった週末のイエレン=フィッシャー相場

本日も、アヴァトレード・ジャパンに取引口座をお持ちのお客さまにだけ配信している無料メルマガのサンプルをご紹介します。著者は、新進気鋭の夜型アナリスト大当たり亮さんです。

(サンプルメルマガ)アヴァトレード・ジャパンでFX取引をされている皆さま。大当たり亮です。今週も金曜日の雇用統計までよろしくお願いいたします。

さて、金曜日の臨時増刊号で、ジャクソンホールについてお話しさせていただきました。

『中央銀行は不要だとは言えないけど、余計なことはしてはいけない、という考え方。どこかの島国のバズーカ発砲しているセントラルバンカーとは真逆』
『円安を待望しているみなさんには旱天の慈雨になるかも知れない今夜のイベント』

狼少年の汚名返上。見事に大当たりとなりました。「利上げは織り込み済みで、踏み込んだ発言がなければ暴落。なので下はあっても上はない」というアナリストも多かったなかでの大当たりはうれしいです。

しかし、このような「天然知能」のまぐれ当たりで喜んでいてはいけないんです。あれはあくまでアヴァトレード・ジャパンさんに頼まれて、上とも下ともつかない夕方に配信させてもらったものです。

それに実際は、FRB議長のイエレン女史の発言そのものでは相場は「行って来い」でした。円安ドル高をトレンドと化したのは、先週前半から存在感を表していた副議長のスタンレー・フィッシャー氏でした。彼もまたユダヤ系の経済学者で・・・

ジャクソンホールでのイエレンさんとフィッシャーさん(こちらはCNBCとのインタビュー)が予想どおり、いや予想以上にタカ派的な発言をしたことで、米国の年内の利上げに対する見通しが高まり(先物市場に織り込まれる12月までの利上げ確率は57%から63%に上昇)、それに伴うドル買いが強まる展開となりました。

さて、「天然知能」の大当たりに対して、本日からアヴァトレード・ジャパンのお客さまに限り登録受付を開始する(これ、ほんとうに口座があるだけで良いんですかね???腋が甘すぎはしませんかアヴァトレードさん!?)

「人工知能(AI)巫(かんなぎ)『トレンド判定』無料メール配信サービス」
https://avatrade.manabing.jp/

ですが、この週末のイエレン=フィッシャー相場はどう乗り切ったのでしょうか???

お見事です。
予測日時 予測内容 予測時の価格平均値 評価日時 評価時の価格平均値 結果
2016-08-27 04:00:00上昇トレンド 100.857 2016-08-29 11:59:00 101.911 的中
2016-08-27 02:00:00上昇トレンド 100.569 2016-08-29 09:59:00 101.799 的中
2016-08-27 00:00:00方向感なし ******** ******** ******** ********
2016-08-26 22:00:00方向感なし ******** ******** ******** ********
巫(かんなぎ)の「トレンド判定」は実はものすごく慎重なのです。十分な方向感が出ていないと判断したときは「方向感なし」と「判定」しています。イエレン議長の「行って来い」相場は「方向感なし」と判断したわけです。

(※パフォーマンス掲載サイトへは、「人工知能(AI)巫(かんなぎ)『トレンド判定』無料メール配信申込みサイト
https://avatrade.manabing.jp/
からリンクしております。きょうの大当たりメルマガが配信完了するころには、土曜日朝6時の「トレンド判定」の的中ハズレ判定も出ているかも知れません)

今回、アヴァトレード・ジャパンさんと特別タイアップをしたシステム開発会社の学びingさんの開発者さんに緊急インタビューを試みましたところ、

>イエレン=フィッシャー相場については、方向感が出るまでの短時間、乱高下の間は、じっと様子を見ていたのが良かったのではないかと思います。

>巫は、慎重にトレンド判定をしていますので、基準以上の確信をもった時点でようやく「トレンドあり」と判定します。

>AI「巫」の特性は、「損小利大」かつ「順張り」と表すことができます。「順張り」ですので、定点観測で「上昇トレンド」など同じ方向が連続すると利益がのびます。また、マーケットのボラティリティが大きくなるほど有利ですが、膠着相場やレンジ相場はあまり得意ではありません。同じ方向が続いている間で、ある程度自身が満足できる利益のタイミングで利益確定がいいと思います(メール配信後、トレンドが急変する可能性もございます。)

イエレン=フィッシャー相場は特に満塁ホームラン級だったにせよ、サービス開始以降の約半年で、的中率 70.30 % ( 393 勝 166 敗 )は見事です。これをFXの売買の利益に活かすためには、利食いと損切りのタイミング、それぞれの幅または比率をどうルールづけるかがたいせつになってきますよね。

この点は、今週またしつこくも臨時増刊号「祝 人工知能(AI)巫(かんなぎ)『トレンド判定』無料メール配信サービスイン(仮)」と題してその記念すべき9月1日(木)までに、わたくし大当たりの考え方をまとめてみようと思います。

取り急ぎは、学びingさんへのインタビューをご参考になさってくださいね。

>「売買シグナル」は、損小利大を基本としたものですから、勝率が低いゆえに当たる時に大きく勝つ、というロジックになっています。

>TP注文とSL注文を組み合わせる選択肢は十分ありだと思います。

>利益幅とストップロス幅の比率に注意していただければ、後はお好みで良いかもしれません。(目安の例 利益幅:ストップロス幅=3:1)

では、最後にわたくし大当たりのような「天然知能」系に必要な情報をまとめておきましょう 苦。

今週のイベント。米国の金融政策の先行きに対する注目度はますます高く、その金融政策に与える影響が大きいものとして、週末の米雇用統計は外せません。非農業部門雇用者数は予想が+18.0万人と20万人を下回っています。雇用関係の指標としてはADP雇用統計(水)などもありますが、よほど変な数字が出ない限りは週末まで様子見か。後は米国の個人消費支出(月)、消費者信頼感指数(火)、ISM製造業景況指数(木)など。

今週は米国の地区連銀総裁の発言にも要注意。ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演(水)、メスター・クリーブランド連銀総裁講演(木)、ラッカー・リッチモンド連銀総裁講演(金)となっています。前の二人は投票権を有しています。ここ最近のタカ派的な流れを踏襲するのか、修正するのかは注視したいところです。

ってか、メスター・クリーブランド連銀総裁、夜明け前にもうしゃべっているし。木曜日まで待てないんですかね。付和雷同で利上げのお神輿を担いでいるみたいで。マイナス金利に反対すると空気が読めないとして学歴詐称の馬鹿学者と首をすげ替えるようなどこぞの島国の金融政策決定会合とは真逆ですよね。いや、一緒か。

2016年8月26日金曜日

イエレンFRB議長講演 於 ジャクソンホール の傾向と対策【アヴァトレード・ジャパンのサンプルメルマガ】

本日は、アヴァトレード・ジャパンに取引口座をお持ちのお客さまにだけ配信している無料メルマガのサンプルをご紹介します。著者は、新進気鋭の夜型アナリスト大当たり亮さんです。

(サンプルメルマガ)

アヴァトレード・ジャパンでFX口座をお持ちのみなさま、大当たり亮です。

しつこいと思われるかも知れません。今週三度目の登壇となりました。今夜日本時間では11時から予定されている、米カンザスシティー連銀年次シンポジウム(於「ジャクソンホール」)でのジャネット・イエレンFRB議長による講演が予想以上に注目度が高くなっています。

アヴァトレード・ジャパンさんから、注意喚起のメルマガを作ってくれと言われたわけです。月曜日のメルマガにも取り上げたのですが覚えていらっしゃいますか???オリンピックの感想というか無駄話が長すぎて、そんなもの読み飛ばしたですって!?はい、大当たりのせいですね。

それに、月曜日は「ジャクソンホール」のことだけではなくて、
「黒田日銀総裁が23日にFinTechフォーラムで挨拶ということで、そこで金融政策の先行きに対する発言をするかどうかといったところは円の動向に大きな影響を与えそう・・・」だとも並列してお書きしましたが、蓋を開けて見ればまったくの無風。大当たりどころか大はずし狼少年になってしまいました 泣。

そんなこともあって、今週は、ドル円をはじめとして、みなさまのあいだにもファンが多いポンド円ですら、凪の相場となりました。

以前より、大当たりが書いているとおり(?)、ボラが低い状態は相場がマグマというかエネルギーを貯めこんでいる状態です。ジャクソンホールでのイエレン発言の前には動きたくても動けないという市場参加者の気持ちがあらわれていますよね。

識者の意見はいろいろとわかれています。鷹派発言をするのではないか?でもそれは織り込み済みなのではないか?いやたとえ織り込み済みでも利上げが具体化すれば一転円安ドル高ではないか?日欧オセアニアは利下げやマイナス金利がイケイケドンドンのブームですが、利下げが予想通りでも発表後乱高下することが繰り返されています。何が折り込み済なのかまったくわからない相場です。ニュースを見るよりチャートだけを見ていたほうが勝率が高いように思います。

それに、今夜については、イエレン議長のどんな一言がいつ飛び出してどう反応するかまったく予測がつきません。思い込みは禁物ですね。

ところで、今更気が付きました。FRB議長は、ポール・ボルカー氏を最後に、アラン・グリーンスパン氏、ベン・バーナンキ氏、そしてジャネット・イエレン女史と三代続けてユダヤ系なんですね。ボルカー議長は当時のレーガン大統領に解任されたとされているのに対して、グリーンスパン議長以降は「禅譲」だったと言えます。これら三人のユダヤ系エリート経済学者に共通するのは、やはりユダヤ系で幼いころの貧困から這い上がって世界的な経済学者となったミルトン・フリードマンの考え方を重視ないし信奉していることです。ざっくり言えば、金融市場は完全に放置プレイにしちゃうとしばしば混乱を起こすから中央銀行は不要だとは言えないけど、余計なことはしてはいけない、という考え方。どこかの島国のバズーカ発砲しているセントラルバンカーとは真逆なんですね。

円安を待望しているみなさんには旱天の慈雨になるかも知れない今夜のイベント。ポジションにはくれぐれもご留意ください。

最後に、つまらない話。ジャクソンホールというのは街の名前なんです。コンサートホールのホールじゃないですよ。このホールは穴のホール(Hole)です。Hallじゃないんです。登壇するのはジャネット・イエレンさんです。ジャネット・ジャクソンさんじゃありませんから。アヴァトレード・ジャパンの丹羽社長がこのことを知らなかったらしいので、自慢をかねて書き留めておきます。

2016年5月2日月曜日

パナマ文書の徹底追及のまえに円高

日銀金融政策決定会合(4月27日~28日)での追加緩和策見送りを受けて、ドル円は4円程度という急激な円高となりました。翌29日には、米国財務省が、中国だけでなく日本も、自国の通貨を意図的に安く誘導する為替操作への監視する対象とすると発表、ドル円は輪を掛けて円高となりました。木曜日と金曜日の2日間だけで、ドル円は6円前後も円高ということで、これは変化率で較べても、2008年3月のベア・スターンズ危機のときと同程度の衝撃だと言えます。

唐突ながら、熊本の震災のことに触れざるを得ません。地震予知など無意味だという議論が喧しい今日このごろ。ただ、国家予算を投じてでも続けるべきかどうかということについてであれば、もうずいぶん長い間、この方面の国家予算は削られてきているようです。昨夜のNHKサイエンスZEROでは、「南阿蘇村の地すべりが、表層の火山灰だけで起きていたのであれば、阿蘇大橋を吹き飛ばすほどのパワーには至らなかったはず。その下の溶結凝灰岩がクラック(※)や柱状節理(※)に沿って地震で崩れた。地すべりのエネルギーの想定外の大きさは、この表層の下にまで及ぶ根こそぎの崩落にあった」と自らも被災された研究者が説明しておられました。

(※)カルデラ噴火の噴出物が自らの重さと熱で溶解し、その後冷えたために、硬く固まるのだが、その冷え方が急すぎて、割れ目ができる。

阿蘇山のカルデラ噴火は、それによって九州全土がたかだか1週間で出来上がったほどの大量の噴出物を遠方にまでうず高く吹き飛ばすものです。阿蘇=九州を例外あつかいしてはならないことがたいせつで、箱根や穂高も過去に同じような形態の噴火の実績があること、またそのような記録も痕跡もない火山のために、関東甲信越だけでも、クラックや柱状節理に特徴づけられる溶結凝灰岩が多様な地形を作っています。

断層や地質のことを知れば知るほど、巨大地震や火砕流被害などから、日本列島は逃れようがないという思いに至ります。阿蘇山や南海トラフや日本海溝だけが震源ではないからです。

しかし、あきらめないための知識だけでなく、あきらめるための知識を与えてくれるのもまた科学だと言えます。

為替や株価を予想できるわけでもない経済学には、地震予知以上に、国家予算が削減されても致し方無いところでしょう。それでも、最近ではアベノミクス、もう少しさかのぼると、ソ連型社会主義経済や中国型社会主義経済など、壮大な実験が、好むと好まざるとにかかわらず、行われてきたわけで、その結果を冷静に分析することは、わたくしたちに有益な知識を与えてくれるはずです。

ときに、世の中はゴールデンウィークなので、天気予報と道路交通情報が気になるという方が多いことでしょう。このふたつが異なるのは、渋滞のピークの予想は、自分一人が予想を信じてピークを外そうと思っても、似た行動をする人が多いと、外した時間帯がまたピークになっていたということが起こりやすいが、天気予報ではそのようなことは起きない(多くのひとが晴れの日に行動を集中させたからと言って、それが低気圧や前線を呼びこむことは無い・・・人だかりが上昇気流をもたらすとは大袈裟すぎます)。経済分析がややこしい一面として、理論や予想に対して、この人間たちのひとりひとりの、ときに独立した、ときに独立したつもりが独立していない、意思決定がもたらす正や負のフィードバックの存在が大きいことではないでしょうか???

経済学については、財市場と金融市場が混同されやすい(混同されてもしかたがない)事情があります。金融市場、すなわち、通貨(貨幣)の需要と供給を論ずるときに、通貨(貨幣)以外に一般的な経済財(例えば、イワシやキャベツのように豊漁(豊作)なら価格が下落、不漁(凶作)なら価格が上昇するもの)にたとえてよいのかどうか???この簡単そうで難しい問題の答えは、管理通貨(≒不換紙幣?)と兌換紙幣(≒金属通貨?)で違ってくるかどうか???不換紙幣≒管理通貨>兌換紙幣>金属通貨と、あいまいな線の引き方をしたのは、ひとくちに管理通貨と言っても、現在のG7ほか多くの国が採用しているように最初から金などの貴金属との兌換を保証していない通貨もあれば、表向き貴金属との兌換を保証しているが実際にはそのような貴金属を通貨発行高の一部しか支払準備として保管していない通貨もある。また、兌換紙幣>金属通貨という不等号を使いましたが、貨幣改鋳などによる通貨発行益が狙われる場合も考慮しなければなりません。ですから、古今東西で、通貨の管理通貨らしさと商品通貨らしさのブレンドはまちまちであるということになります。

金融緩和を、量的に、しかも異次元に行えば、イワシが豊漁となるのと同じように、値段は下がるだろうと多くの人が予想し、またなかにはその予想はまちがっているけど、間違うひとが多い場合にはいっしょに間違わないと大怪我をするということで、円の通貨価値が下落した。これがアベノミクスによる円安です。

どうやら多くのひとが間違えに気づいたという説明はマイナス金利でも円高?欧州の銀行不安と世界経済の減速だけで説明できるのか??(2016年2月10日)に譲ります。日銀がどんなに必至に民間銀行保有の日本国債を吸い上げても、市中銀行に対して個人や企業が保有している預金の残高(≒マネーサプライ)は殆ど増えないということです。

ここではより深刻な別の側面を。よしんば市中銀行(民間銀行)の預金を増やせたとしても、物価上昇(通貨価値下落)をもたらすことが出来ない。

これについては異論があると思います。恒等式と考えられている、
PQ=MV
(ここでPは物価、Qは取引高、Mは貨幣量、Vは貨幣流通速度)

Vを事後的に、つまり外生変数であるP、Q、Mによって決まる内生変数であるとしてしまえば確かに恒等式ですが、それでは何の意味も持ちません。Vが安定的かそうでないかが、長くケインジアンとマネタリストの争点であったわけです。

争点により焦点を当てるならば、中長期的には、ケインジアンもマネタリストに賛成で、Mを無理矢理増やしても、中長期的には同程度の物価上昇を招くだけで、政策目的であるQ(その代理変数である国民所得など)の上昇を達成することは出来ないとされています。

さて、Mを貨幣量、すなわち貨幣供給と貨幣需要(流動性選好)の合致するところで決まる数量としているわけです(用語の混乱についても、マイナス金利でも円高?欧州の銀行不安と世界経済の減速だけで説明できるのか??をご参照ください)が、貨幣に対する需要(流動性選好)ってそもそもいったい何でしょうか?

日常と非日常とを問わず「おカネが欲しい!」「無担保でおカネを貸して欲しい!」というときのおカネは、たぶん99%は、所得や富や(経済)財が欲しくてそのために費消するためのおカネが欲しいのであって、最終目的物であるお米とか電化製品とかを最初から無料でもらいたいというのと同じ意味です。残り1%は、週末の冠婚葬祭のための祝儀不祝儀だったり、外国為替証拠金取引の証拠金入金だったりかも知れません。

貨幣に対する需要を流動性選好と呼ぶとき、「お金が欲しい」と発話する意味合いから「物欲」を取り除くことで、支払手段としての貨幣の性格がはじめて浮かび上がります。

ありとあらゆる経済財のなかから、貨幣というものを特別扱いするのであれば、①売買契約における買主にとって、②金銭消費貸借契約における借主にとって、③雇用契約における雇主にとって、物々交換や代物弁済や差金決済(≒企業間信用)では埒が明かなくて、どうしても強制通用力があったり一般社会が交換手段として認めている貨幣が必要で、そのためには当面不要の手持ちの財産を処分(売却または質入れなど)をしても構わない、と考えるのが流動性選好です。

わたくしは、上記①>②>③で状況の差こそあれ、インターネットが普及するなどの高度情報化社会においては、世の中全体が一個ないしは数個のポータルを通じて売りたいもの買いたいもののスペックと価格という情報がインデックス化されている巨大なフリーマーケットになっているので、そうでなかった時代ほど、商取引の媒(なかだち)として貨幣が果たさなければならない役割は激減していると見ます。つまり、物々交換の時代に逆戻りしても、欲しいものと要らないものの交換費用がたいして嵩まないということです。

まだ話は終わっていませんが、賢明な読者のみなさんは、日本やEUのような社会では、マイナス金利を極(きわ)みとした金融緩和が空転している理由がおわかりいただけるのではないでしょうか?

PQ=MV
(Pは物価、Qは取引高、Mは貨幣量、Vは貨幣流通速度)

に戻ると、日本やEUで起きていることは、Mを引き上げても、PもQもあがらないというケインジアンVSマネタリストの論点とは違う次元のことです。

Mが引き上げられたぶん、Vが反比例的に減少するということでしょうか???

そんなことはあってはならないでしょう。Vの安定は強すぎる仮説だとしても、Vが有意に減少するならば、単位時間あたりの預金口座の入出金頻度が減少する⇒現預金の占有者の交代頻度が減少する⇒入出金の時間差の対策のためのバッファー、、、これこそが取引需要としての流動性選好ですが、これが減少するので、Mは減少(銀行貸出を返済)するはずだからです。

答えは、この恒等式が間違っている(右辺と左辺が等しくない)わけではないが、PQが名目取引量を表してはいない(物々交換、代物弁済、差金決済、現物支給においてはQに乗ぜられるPはゼロだが、これはあたりまえのこととして、物価がゼロに下落したわけではない)ということです。

・・・・・・これも、あきらめるための知識です。大きくて非効率な政府を目指す財政政策は論外として、金融緩和も国民の生活など助けてはくれない。何もかわらない。という性質の社会に生きていることを知れば、自らの技術を高めて仕事を愛する、願わくば仕事と相思相愛になる、そういう堅実な努力以外に生きる道はない。カネの生る木はないという覚悟です。