2018年1月28日日曜日

ビットコインも他人事ではない===コインチェック580億円不正送金事件

いまこの投稿をしている2018年1月28日日曜日12時過ぎの時点で、コインチェック社は、NEMの売買停止(金曜日午後12時過ぎ)から補償方針公表(土曜日23時)までの加重平均を用いて、日本円で、自己資金で、返金するとしています。

なぜこのような太っ腹な対応が、週末のたった2日弱のあいだに、また技術者とも思えないしどろもどろの記者会見の間に、意思決定できたのか?

ほんとうに不正に、すなわち仮想通貨交換所の側での(重)過失があったにせよ故意害意なく詐取されたものであるならば、それはそれで疑問です。

半年以上ぶりにブログを更新するのは、そこの真相究明が目的ではありません。

仮想通貨「通」を自称する人たちも呟き合っているSNS参加者の見立てでは、

今回の、マウントゴックス不正送金(?)事件を遥かに超える金額の、仮想通貨「交換所」スキャンダルは、


  1. さまざまな仮想通貨の種類が雨後の筍のように産まれている中で、NEM独特の脆弱性によるもの
    1. コールドウォレットの設定ができなかった=出典「コインチェック社謝罪記者会見
    2. コールドウォレットの設定が「できる」ビットコインなどほかの種類の仮想通貨なら大丈夫?
  2. さまざまな仮想通貨交換所が事業を行っている中で、コインチェック社独特の情報セキュリティ管理の杜撰さによるもの
    1. 改正資金決済法に基づく交換業登録を済ませている他の交換所は大丈夫?

ビットコインは安全。コインチェック社でなかったら安全。と言えるでしょうか?

仮想通貨FXをはじめ、交換業登録も目指すわたくしたちも他山の石としなければならない、論より証拠を。


金額の多寡が問題ではありません。もちろんわたくしは、コインチェック社が580億円相当も盗まれたということ以上に、580億円相当(マイナス値上がり分)も「集金」していたことのほうに実は驚いているのですが!!

(2)そして古いところでは、我が国のマウントゴックスの事件があります。ここでは仮想通貨交換所(注3)が倒産に追い込まれ社長が逮捕訴追されました。サイバー攻撃により不正に送金させられた(詐取された)という当時の社長の言い分が、いったんは聞き入れてもらえず、御白州に。しかし、裁判はまだ終わっていない中、昨年、マウントゴックスからビットコインを詐取した真犯人としてライバル交換所(?)BTC-eの社長が逮捕され、同取引所は米国で口座凍結業務停止処分となっています。

北朝鮮ハッカー集団が詐取した仮想通貨は、同国のミサイルに、BTC-e(所在地ブルガリア)が詐取したビットコインは、昨年の米国大統領選挙に絡み、敗北したヒラリー・クリントン陣営や民主党本部のメールのハッキングなどの資金に使われたという疑惑が出ています。BTC-eはブルガリアに本拠のある世界最古参の仮想通貨交換所ですが、逮捕された社長はロシア人です。ロシアゲートと仮想通貨は隣り合わせだったことになります。

(3)極め付きにもうひとつ。時期的には(1)と(2)の間で場所は日本。仮想通貨交換業登録済のかなり広告宣伝も打っている大手交換所でビットコインが詐取が複数発生していて、その被害総額はコインチェック社の今回の金額には及ばないものの、複数の裁判が継続中です。詐取した犯人が、第三者(外部のハッカー)なのか(?)、同交換所の内部者なのか(!?)、交換所自体なのか(!!??)、まだわかりません。3つの可能性のうちどれであってもそれぞれに事態は深刻であると言えます。

(注1)手口が米国ソニーエンターテインメント社に対するサイバー攻撃と同じであることから米国諜報当局が北朝鮮の仕業であると特定。北朝鮮はこれを否定。
(注2)これもNEMだったか、これはビットコインだったか、それ以外かはWSJの報道には載っていません。
(注3)この時点では本邦でも資金決済法による仮想通貨交換業登録制度はなかった。

ちょうど(1)の報道がWSJ紙でされた週の月曜日、こちらのブログでもしばしばご紹介している異端の経済学者(もともとは数学者)の塩沢由典先生の勉強会で、ビットコインに関するプレゼンテーションを行ったばかりでした。3時間の持ち時間のうち2時間は暗号理論と情報処理論に割きました。

2017年はビットコインをはじめとする仮想通貨(≒暗号通貨)が話題を総なめした一年となり、様々な解説本が出てきました。しかしこれらを複数読んでも、
うーん、わからないなぁ。
腑に落ちないなぁ。
俺って頭悪いのかなぁ。
理系じゃないと無理かなぁ。
・・・・・・
まぁ、背景はわからなくても、安く買って高く売ればそれで良いか???
などなどと自問自答された方がきっと何百万人もいらっしゃったのではないでしょうか???

心配にはおよびません。マイニング(=プルーフ・オブ・ワーク)、公開鍵暗号、ハッシュ関数、ノンス、、、などの核心部分において、ちゃんと理解してもらおうとして(それ以前に著者がちゃんと理解して)書かれているまともな本はほとんどないからです。

そのなかでこれは良かったという稀有な一冊をご紹介します。

「現代暗号入門」神永正博著(講談社ブルーバックス2017年10月20日)

さて、対象がビットコインであれ、NEMなどのその他仮想通貨(オルトコイン)であれ、仮想通貨交換所って何をやっているのでしょうか?

  1. 法定通貨で仮想通貨を買いたい人と、仮想通貨で法定通貨を買いたい人のマッチング
    1. ただし参加者はその交換所に「ウォレット(?)」という名の管理口座を開設している人(および自己勘定としての「交換所」自身)
    2. ライバル「交換所」や、マイナーなど仮想通貨ネットワークにノードを保有している世界中の人たちの売りニーズ買いニーズは反映されない。
    3. ビットコインの入出金の履歴には、ウォレットアドレスやトランザクションIDが記載されるいっぽう、取引所や販売所の取引履歴を見てもそれらは記載されていない(自分のウォレットアドレスでブロックチェーンを検索すると、入出金の履歴はヒットするが取引所や販売所の取引履歴は見つからない)。これぞ論より証拠。
  2. 他人に仮想通貨を送金したいときに、「交換所」に管理口座を開設している仮想通貨保有者(送金人)に《代行》して手続きを行う
    1. 上記(1)と、(2)の相手方(受取人)が同一「交換所」の管理口座保有者ならば、売買の決済(上記(1)の場合)および送金の決済((2)の場合)は瞬時に出来る。なぜなら、取引には公開鍵暗号が用いられずブロックチェーンに書き込まれないから(マイニングに要する「約10分」が不要)
    2. 送金の相手方(受取人)がライバル「交換所」の口座保有者だったり他の独立したノードである場合(注4)は、公開鍵暗号が用いられマイニングを経てブロックチェーンに書き込まれることになる。
    3. しかし、「交換所」はこの場合に、かかる「外部」送金を依頼する口座保有者から《代行》するために備えて、口座保有者から予め預かっていた公開鍵(アドレス)に対応する秘密鍵を「交換所」自らが使用する。
    4. さらに言えば、口座保有者は秘密鍵を「交換所」に預けているどころか「交換所」は秘密鍵(のコード)を口座保有者に明かしていない点がポイント


(注4)ビットコインはパブリックチェーンであるから誰でもノードになれる。その目的はマイニングや「交換所」経営に限らない。投資、送金をする+送金を受け取るなど、「交換所」に依存せず仮想通貨を売買したい送金したい、ネットワークを監視したい等。

きょうのブログの題名、「ビットコインも他人事ではない」のこころは、「交換所」と口座保有者の間では、「外部」送金も含めて、管理口座(≠本来のウォレット)のログイン情報(例:メアド+パスワード≠秘密鍵)だけを以って本人確認し、預かりっぱなしの秘密鍵を用いて、送金代行任務を完遂できてしまうという実態です。

これが、コインチェック社に限られた話ではない仮想通貨「交換所」や、下記の北朝鮮ハッカーによる韓国「交換所」に預けられていた仮想通貨の盗難が(足跡を残さずに)出来てしまうハッカー集団にとっての狙い目だと言えないでしょうか?

仮想通貨を原資産とする派生商品(いわゆる仮想通貨FX)を別とすると、仮想通貨を現物資産として取り扱う業務を行うには改正資金決済法の交換業登録が必要であるという法令規制制度を裏返すと、業登録ができると、取引所や販売所など(上記1.)だけでなく送金代行(上記2.)も出来てしまう、ということになります。果たして制度設計として、なんでも出来たほうが良いのかどうか疑問です。株式取引やFX取引のような利便性を仮想通貨に当て嵌めたいというビジネスニーズは、安全のためビットコインは保有者ひとりひとりがコールドウォレットで保管しましょうと呼びかけるモチベーションと相矛盾するのではないか。売買注文の《取次》が主な収益源だと思われる「交換所」が、主な収入源とは思えない送金《代行》のためにひとりひとり異なる秘密鍵を口座保有者にオフライン管理させあとは自己責任でという業務運営を進んでやる気になるでしょうか。これはもはや「交換業」ではなく、ノード作成代行業です。


2017年5月2日火曜日

今中哲二京都大学原子炉実験所助教の講演録ほか チェルノブイリ子ども基金&未来の福島子ども基金イベント

先週金曜日に、原子力発電所の事故として、31周年のチェルノブイリと、6周年の福島、これら被災地とその子供たちを支援する毎年恒例のイベントに今年も参加しました。


毎年、チェルノブイリ事故が発生した4月26日の周辺で毎年行われるこの「チェルノブイリ子ども基金」(加えて6年前からはその派生ファンドである「未来の福島子ども基金」)のイベント。強制避難か自主避難かにかかわらずその子供たちに対しての理不尽ないじめや差別がおそらくは実態のほんのわずかしか事件化していていないと想像される今日、思うところもあり、アヴァトレードジャパンとして、社格に似合わない(!?)金額の寄付をさせてもらったところです。


今年の目玉は、原子力発電の技術者研究者の立場でありながら、米スリーマイル島原発事故以来、原発の「非現実性」について、原子力村の権力者たちを恐れず警告を続けてこられ、福島第一原発の事故以降は舌鋒さらに鋭くされてきた今中哲二京都大学原子炉実験所助教(ただし今年3月で定年退官。その後も同実験所で研究員として勤務継続と自己紹介されていました)の講演でした。


チェルノブイリ周辺の放射能汚染の地図に見慣れている小職にとっては、汚染の深刻さが事故現場から綺麗に同心円で広がっていくわけではなく、事故当時からの風向きや風速、いつどこで雨や雪が降ったかなどで、極端にその同心円が崩れることを理解していたつもりでした。


しかし、これを福島第一原発の事故に置き換えた時に、南東北、北関東、南関東の各地の宿命も同じように偶然に左右されていただけであったという、特に東京の住民にとっては恐ろしい含意を含んでいることが今中先生の講演で指摘されていました。


具体的には、事故現場から北西方向にあたる飯館村方向に風が流れていた時間帯は雨や雪が降っていた、南西方向にあたる東京に風が流れていた時間帯はたまたまそうでなかったので、放射能の隗は東京上空を通過して太平洋へと流れた、ということです。


今村雅弘「前」復興大臣の「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」というのは、政治家としてホンネとタテマエを使い分けるべきところを(身内のパーティーでの講演だったということで)油断しただけであり、ホンネとしては一理あるのではないかと内心思っているひともきっと大勢いらっしゃるのではないかと敢えて申し上げます。「自分さえよければ」という意識が正直小職にもあるからこそ、「東京が飯館村と同じ運命にならなかったのはほんの偶然に過ぎない」という事実は頗る重く感じられます。


ご存じの通り、東京電力が保有する原子力発電所は一基たりとも東京電力が電力供給するエリアにないわけです。今中先生が研究者駆け出しのころに柏崎刈羽を取材したときに地元住民が「東京電力のひとは安全だ安全だというけどそこまで安全だというのをなんでこんな田舎に作らなければいけないのか不思議だよね」と異口同音につぶやいていたという逸話を披露してくれました。


原発事故が単なる人災ということだけでなく確信犯みたいなところがあるという話です。


ただし、小職は、「チェルノブイリ子ども基金」「未来の福島子ども基金」で無償で活動しておられる皆さんと反原発ということで完全に同意しているわけではありません。


福島第一原発だけは、ほかの(東京電力管轄の)原発に比べて明らかに構造上の欠陥があることが従来から指摘されていて、コストの問題で放置されていた。同じ巨大地震で女川、福島第二が(停止はしたが)事故に至らず、そして別の巨大地震で柏崎刈羽が(火災は起きたが)同様の事故には至らなかった。また安全性という面で魅力があるはずの核融合技術が、もんじゅでの度重なるうっかりミスでとん挫するというのも、我が国にとって残念すぎる損失であることも指摘したくてたまりません。


いっぽう、先週こんなニュースもありました。BBCによると、先月22日は、イギリス全体で発電において石炭がまったく使われなくて済んだ一日になったということで、これは1880年代以降はじめてのことで、それだけ再生可能エネルギーの利用が進んでいるという話でした。


小職は、バイオマスが再生可能エネルギーで、石炭がそうではないという意味がいまひとつよくわからないのですが、一定期間におけるCO2を基準に考えるとこの二つは区別して良いということなのでしょうか?


同記事によれば、イギリスの再生可能エネルギー依存度は2015年においてすでに発電量の25%に至っているとのことです。片や日本は、こんな感じです。
新エネ等(3.2%)と一般水力(8.4%)を足しても11.6%にしかなりません。今中先生も、講演の締めくくりとしてこの棒グラフを使われ、個人的にはモノが足りるようになったと思われる1970年代後半(二度の石油ショックから経済が回復して)以降の電力需要は豊かさのバブルなのではないか?人口減少社会を迎える日本としては、原発再稼働などの欲望を捨てて分相応の生活に戻っても良いのではないかと語っておられました。


小職も消費社会という点においては同感です。輸出立国を支えるための製造業を支えるための質の高い電力供給ということにまで話が及ぶと少し違ってくるかも知れません。しかし、廃炉コストや安全コストまで勘案すると、原発再稼働が世界の工場復活の条件というのも絵空事だと思います。

あまりに外国為替相場と無関係な話が長くなりましたので、先ほどの棒グラフと同じ出典サイトに為になる折れ線グラフがありますのでご紹介します。
ふたつのグラフの出典はこちらのサイトです。

「1880年代以来の『石炭なしの日』」というBBCの記事はこちらです。

2017年4月4日火曜日

ドナルド・トランプと習近平の対決は単純な貿易摩擦ではない

以下はUSDCNY(米ドル/人民元)週足のローソク足です。




トランプ新大統領の経済運営については、
    レーガン大統領のそれを彷彿とさせるところはあるが、保護貿易とか公共投資など、共和党らしくない政策と、再軍備などやはり鷹派的なところを併せ持つハイブリッド型(俗に「はちゃめちゃ」「前代未聞」「未来予想不能」など)であること
    レーガン大統領との共通点を強調するならば、小さな政府を理想に掲げた割には、前代未聞の所得税減税と軍事費増大で同氏が忌み嫌ったケインズ政策を結果として実現してしまいそれが好況をもたらした。ドル高を旗印にしたレーガン大統領は、自民党政権と当時の大蔵省に媒介させることで、当時最大の貿易(赤字)相手であった日本の銀行や生損保に無理矢理米国債を押し売りした。ドル高はプラザ合意で外された梯子だった。
    レーガン大統領のドル高政策とプラザ合意という日本(=貿易黒字国=資本輸出国)梯子外しというシナリオは、現在のトランプ政権下においては、まったくは当てはまらない。なぜなら最大の貿易相手であり米国債購入者が中国へと変化しているから
    日本はペリー来航以来、戦争、原発、TPPと梯子を外されまくりだが、同じことは中国のような大国かつ核保有国には通用しないだろう。

いよいよ今週、トランプVS習会談となり、貿易摩擦、為替操作、北朝鮮指導で強硬な姿勢を取ると例によって呟いている状態です。

人民元。社会主義国らしく凝り固まっている時期と激しく上昇トレンド下降トレンドを繰り返す難解な通貨です。先程MT4のチャートで表した週足は、下記の1982年から(天安門事件前)の超長期チャートでいうと長方形で囲った部分に過ぎません。



それぞれの節目で何があったのか考えると何時間あっても飽きがきません。レーガン時代の貿易大国日本とトランプ時代の貿易大国中国では大違いです。核を持つ国連安保理常任理事国か核を持てない非常任理事国がやっとこさの国かということではありません。普通、常識的には、貿易不均衡は資本取引によってファイナンスされますが、日本の場合は、貿易黒字で溜め込んだ外貨準備で米国債を買わされていたわけです。

現在の中国は、一見似てますが、トランプが苦言を呈するように、貿易大国という地位を固めるために、為替操作を続けるために、敢えて米国債を買い込むというのは、最初のMT4のチャートの人民元高ドル安の谷底(2014年初頭)までの説明に過ぎず、そこからは貿易黒字は減りつつも季節要因以外では赤字になったりはしていないにもかかわらず、恐るべきペースで外貨準備高が減っているという日本ではかつて無かった人民元からの(言い換えれば国家または銀行システムからの)逃避が加速している。。。

繰り返すと、貿易黒字はペースダウンしつつも赤字に陥っているわけではない(下のグラフ)。



にもかかわらず、外貨準備高は異常な勢いで減少している(下のグラフ)。



何が言いたいのか?上海に住む友人によると、もともと「投資」が好きな中国人の間でもFXが未曾有の人気となっていて、みんな人民元が紙くずになるまえに逃げ出したい。アメリカも酷い国で米ドルも紙くず度合いは似たものかも知れないけど、直感的に人民元よりはましだと異口同音に語るそうです。もともと厳しかった外貨持ち出し制限や交換制限は更に厳しくなっていて、こういう規制強化があればあるほど余計心配になるという悪循環なのだそうです。

フロリダでどんな会話がなされるのでしょうか???北朝鮮問題は措くとして、トランプ氏が為替操作いい加減にしろと言われたら習近平氏は中国全土に人民元を投げ売りして米ドルを買い漁らないよう規制強化している、やるべきことはやっている、言われなくてもこっちは国家存亡の危機で大変なのだ、って言い訳をするでしょうか。

トランプ大統領の御用新聞になったと言われるウォール・ストリート・ジャーナルですら、ここのところ連日、中国の金融システムの腐食、資本逃避、外貨規制強化をテーマに報道が続けられています。




仮想通貨(暗号通貨)をやっている皆さんが不換紙幣(フィアットマネー)とこき下ろす点で、人民元も米ドルも日本円もすべて紙くずと言えば紙くずなのでしょうが、何となく紙くず度合いでは、人民元>米ドル>日本円という感じがしてなりません。再来する中国ショックに備えた売り方買い方がドル円をやるときも大事です。

2017年1月3日火曜日

トランプ=プーチン=習近平時代に安倍内閣は「真田丸」を築けるか?

2017年の年頭所感~2017年もアヴァトレード・ジャパンをよろしくお願い申し上げます

アヴァトレード・ジャパンでFX取引をされているユーザーの皆さまへ、謹んで初春のお慶びを申し上げます。

アヴァトレード・ジャパンがまったく無名だったことから、貴重な外資系ブローカーだということで応援してくださっていた、またユニークなFX会社だということで新しく加わってくださった投資家のみなさまやパートナーのみなさまのお陰で、じわじわと、成長を遂げることができた2016年でした。

2017年も、アヴァトレード・ジャパンならではのネットワークと独特の問題解決能力を研ぎ澄ませ、新旧パートナーさま方と連携し、裁量トレードのノウハウやアルゴリズムそして人工知能にまでおよぶ「武器」を、金融商品のなかでも最も苛烈な戦場である外国為替の舞台で切磋琢磨するアヴァトレード・ジャパンのユーザーさまにご提供していきたいと考えております。

6月24日の英国EU離脱「内定」、11月9日のドナルド・トランプ「選出」など、一日または瞬時でのドル円やポンド円などの変動率で見ると、リーマンショック級や東日本大震災級の事象が多発した異例の一年が明けました。

BREXITもトランプも、グローバリズムに対してNOを叫ぶポピュリズムの奔流を堰き止めるはずの防波堤が閾値を越えて決壊したという点に注目すべきです。




ポピュリズムと言えば、ナチスドイツを率いたヒトラーこそは20世紀最大のポピュリストだったことに異論を唱えるひとは少ないでしょう。これに対して、我が国のA級戦犯たちは、だれひとりとしてヒトラー級のポピュリストではなかったと言えます。

ウィキペディア東條英機によれば、同氏は「大戦中、戦後を通じて・・・日本の代表的な戦争指導者と見なされることが多く、第二次世界大戦時の日本を代表する人物とされている。一方で戦史家のA・J・P・テイラーは、大戦時の戦争指導者を扱った記述の中で、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、ソ連についてはそれぞれの指導者を挙げているものの、日本については「戦争指導者不明」としている・・・」とあります。

いっぽうで、ウィキペディア総力戦研究所によれば、当時の官僚、陸海軍、民間から内閣が抜擢した若手エリートを集めた同研究所が、「日本必敗」という結論どころか、あらすじまでも言い当てた研究結果をたった3ヶ月でまとめあげ、

「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に青国(日本)の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」

と東條英機に報告したにもかかわらず、東條英機はこれを無視、これすなわちハル・ノート(注)を無視し、その半年後に真珠湾攻撃に打ってでたわけです。

一昨日のテレビ朝日の「朝まで生テレビ」は、アヴァトレード・ジャパンの近所でよく見かける田原総一朗さんが、加齢のためか、いよいよ冷静な司会ぶりを発揮、安倍首相真珠湾訪問とその直後の現職防衛相による靖国参拝問題を切り口として、A級戦犯分祀問題(細野豪志氏)や政教分離問題(井上達夫氏)も織り交ぜつつ、陸軍やマスコミや民衆を巻き込む好戦ムードを押さえ込むだけの指導力や「独裁」力がときの東條英機あったとは思えない(小林よしのり氏)という意見も飛び出しました(注:前掲のウィキペディア版「ハル・ノート」によると東條英機はむしろ非戦側に立っていたとの指摘有り)。

トランプ勝利とEU離脱を投票したポピュリズムはこれほどまでにおそろしいものです。

周囲を強国に囲まれ、長いものに巻かれる以外に延命の道が無い国衆として、乱世を生き延びた真田昌幸、信繁(幸村)、真田昌幸(信之)たちの政治センスと軍事センスこそ、いまふたたび、ドナルド・トランプ、ウラジーミル・プーチン、習近平によってもたらされる世界秩序再構築のなかで日本に求められるものなのでしょう。

ウィキペディアついでで恐縮です。真珠湾攻撃陰謀説も検索をしていただかないとバランスを欠くと思うので、急ぎ付け加えます。「東條英機」「総力戦研究所」「真珠湾攻撃陰謀説」、、、これら三点セットを、アヴァトレード・ジャパンからのお年賀に代えさせていただいたいと思います。

それにしても、「総力戦研究所」という企画力、知力、予知能力、素晴らしいですね。今年は更に欧州でポピュリズムの奔流が勢いを増すのか?トランプ相場(トランポノミクス)はどうなるのか?いまこそ、日本完敗を予想した「総力戦研究所」の若き知的エースたちの力を借りたい気持ちです。

さきほどの朝まで生テレビのやりとりを振り返ると、細野氏は、自身が政治家であることから、ポピュリズムを制して、正しい政策を押し通すのが政治家の役目、汚れ役かも知れないが、というのを真珠湾の経緯を学べば学ぶほど意識する(正確な要約ではありません、あしからず)と述べていました。民進党にそれが出来るかどうかはわかりません。が、

ダークすぎる馬だったドナルド・トランプが、如何に巧みに、ポピュリズムを裏切るか。それはいつか。これが2017年の焦点であることは間違いありません。

さらには、レームダック期間の最後っ屁の如く、強制送還させられたロシア外交官の原因となっている米大統領選に関わるロシアのハッカー攻撃とトランプ陣営との癒着は本当なのかどうか。トランプとプーチンが癒着していたら、原油相場とロシアルーブル相場は堪ったものではありません。人工知能を使って、原油とルーブルを売り買いするのは当面見送るべきです。

最後に、トランプ相場のユニークなところは、少なくともこれまで、米株高と米金利高(米国債安)を両立させているところです。これはユーロ圏と日本のマイナス金利政策という薬がまったく効いていないことと対照的です。そしてユーロ圏で言えば、ドイツ銀行やモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行の経営危機も、越年の課題となってしまいました。

不良債権とか一時的な相場のショックで瀕死または即死をするのではなく、どちらかと言えば衰弱死、すなわちIT(情報技術)やFintech(金融技術)の進歩に経営体質が着いていけず、じわじわと襲ってきた構造危機であるという点では、東芝や日本のメガバンクも同様の構造問題を抱えていることに気づきます。

構造問題が顕在化する“すんで”のところで身を切る改革を率先垂範できる伝統的大組織の経営者がどれだけいるでしょうか。社員は家族と同じみたいな文化を育んできた新卒一括採用と終身雇用制を目の前にして、ほとんどの経営者は自分たちの不作為を棚に上げて東條英機の作為が無謀だったと批判できないのではないでしょうか?

個人的には安倍首相がその第一次政権のときに頓挫した労働ビックバン、いわゆる再チャレンジ可能な社会の実現を望みますが、一億総非正規雇用なんて、与野党こぞって潰しまくるのでしょう。

壊滅的な半導体大手や金融機関のビジネスモデルのあとにどのようなぺんぺん草を生やせられるかに日本経済の沈没を救う鍵があり、2017年はいよいよその答えを先送りに出来ない外部環境が整う年になるような気がしてなりません。

春先からの放談をお許し下さい。2017年もアヴァトレード・ジャパンをよろしくお願い申し上げます。

アヴァトレード・ジャパン株式会社
代表取締役社長
丹羽 広