2012年11月15日木曜日

TPPと穀物法とレオンチェフ・パラドックス

いよいよ衆議院選挙。へそ曲がりのわたくしは、その結果そのものよりも、「TPP参加賛成だが脱原発」という政党と、「TPP参加反対だが、脱『脱原発』」という政党と、どちらを支持するのかという意思決定のほうに関心があります。

究極の選択になるかも知れませんが、財界には優秀なブレイン、企画スタッフがいますから、数字で以って、良き参謀役を務められると思います。

尤も、現時点で、最大野党の自民党が「TPP反対だが、脱『脱原発』」政党ですよ、と自らをハッキリさせたわけではないし、ハッキリさせるのかどうかも良くわかりません。民主党も同様でしょうが、開き直った人間の強みとは恐ろしいもので、野田首相は、今なら、自らの政党を定義づけるというリスクを取れてしまうのかも知れません。理想は、第三極なるものも含めて、これらをハッキリさせること。現役議員の政党間リシャッフルというのは、今となってはなかなか“忙しい”でしょうけど、あっても良いと思われるし、あるべきだと思います。

TPP参加に賛成と言っても、直ちに関税が撤廃されるわけではないし、それどころか、いまさら議論にすら参加させてもらえないかも知れません。しかし、今やシェールガス大国としてエネルギーの雄として躍り出たオバマ大統領率いる米国とすれば、脱原発を騒ぐことはもはや減点対象ではなくて、TPP賛成は勿論加点対象で、そっちの政党を支援するでしょう。

何処の誰からカネを貰っているのかよくわからないネトウヨは別として、支持率が1%割れたとしても、ここ数日の野田首相の立ち居振る舞いは、愈以って、松下政経塾の面目躍如というところです。

松下、、、と言えば、今日の日の丸家電の惨憺たる状況。証券業界や商品先物業界と大差ないように見えて、ひとつ大きく違うのは、20世紀後半の英国車メーカーの如く、無くなれば良いと言い捨てられるものではないことだと思います。

家電メーカーの経営者にも様々な判断ミスはあったにせよ、経営に失敗は付き物です。円高、最低賃金、整理解雇要件の厳しさ、これらのうちひとつだけでも自由度があれば、失敗の修正は可能だったと思います。

整理解雇要件の厳しさは、法律上のタテマエとしては労働者の人権を守ってきたと言われていますが、実態はそうではなく、労使ともに不幸にさせる、ルーズルーズの関係(ウィンウィンの真逆)にあるということを、このブログで繰り返し書いて参りました。

そこできょうは残りの2つをセットで。。。円高について日銀だけを犯人にしてもどうにもなりません。最低賃金を政治で弄るのは、何となく、無理でしょう。これらふたつを一挙に“裏道経由”で解決する緒がTPPです。

このような議論は、200年も昔のイギリスで、穀物法闘争として経験済み、実証済みです。経済学者リカードのプロパガンダとちょっと違ったのは、自由貿易は、産業革命のドライバーたる産業資本に味方して工業品の輸出を更に伸ばしただけでなく、イギリスの農業にも黄金時代をもたらしたということです。産業資本家と地主階級という対立するふたつのセクターをウィンウィンの関係にさせたようです。

日本の農業は、後継者不足による就農人口の低下、自給率の低下というプロパガンダで覆い尽くされています。実際のところは、前者は農業の効率化の証でもあり、後者はカロリーベースで計算された誤謬の結果です。

農業でしか喰えない、、、と嘆く工場労働者やサービス業従事者、産業資本化も出てくるでしょう。しかし、農業では喰えない、、、という嘆きは(植民地時代の後遺症で内戦状態だったり、コーヒー豆やゴムの木や綿花しか植わっていない農地を別とすれば)言語矛盾になります。

変化への対応を国民に求められない政党に、強い日本を語る資格はないでしょう。さて、そういう議論がこれから1ヶ月でできるかどうか。

と、偉そうに書いているわたくし自身も、柔軟性と瞬発力を身につけていかなければいけないと、自戒しているところです。

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2012年10月1日月曜日

薄煕来と毛沢東と反日デモ

スペインの国債の利回り以上に心配なのは、中国の景気後退が想定外のハードランディングとならないかどうかだ。多くの真面目な企業経営者や投資家は共通しているのではないかと思います。

薄煕来の公職追放の主たる原因は、不正蓄財とその財産の海外逃避の画策に関わった妻によるイギリス人協力者殺害疑惑です。

この不正蓄財の金額は、我が国で毎年夏と冬にジャンボ宝くじの一等賞を取り続けたとしても、何十年も掛かるという、まさに日本という小宇宙においては天文学的数字なのです。

たぶん99%以上の日本人は、人間が一生にどんなに贅沢な暮らしを続けても食い潰すことができない程度の蓄財にはさすがに関心がないと思います。そのレベルの何十倍、何百倍の蓄財をしたくなる心境というのを無理矢理想像すると、日頃顔を突き合わせている「同僚」とのあいだで、嫉妬と競争を繰り返しながら、モラル劣化を増幅させつつ、不正蓄財の表面上の数字を膨らませてきたということでしょうか。

もしそうだとすると、中国共産党のエリート部分の貯金は大変なレベルであり、中国の国内の貧富の格差は、一般に公開されているジニ係数よりもっとひどい数字ということになります。

共産主義を錦の御旗としつつも、実際には、暴力と陰謀によって中原を支配した過去の王朝となんら変わらなかったのが毛沢東そのひとです。しかし、貧富の格差が問題となり不平不満として実感されるときに、ひとびとが求めるのが、あの大躍進や文化大革命のころのほうが良かったという幻想とそれに基づく集団催眠的な示威活動です。

それをまた確信犯的に利用しようとしたが最後は挫折したのが薄煕来だったのかも知れません。

聖人君子たちによる禅譲の時代が終わったあとの、殷の時代以降の中国の王朝の変遷は、上述のごとく、地球上の他の地域には見られない抜本的で暴力的な政権交代の連鎖です。その歴史の端末に位置するのが中国共産党になります。共産主義の仮面を被った私利私欲の重商主義者集団の蛮行は、さすがにここまでインターネットが発達した社会のまえでは脆いように思えます。

尤も、毛沢東回顧のトレンドと集団催眠の力は大きい。尖閣問題も、そこに対する絶好のアシストになっているとの反論もあるでしょう。

日本の場合は、バブル崩壊を失われた20年の真犯人のように呼ぶのが一般的ですが、わたしはバブルの崩壊は富の再分配に大きな役割を果たしたと思ってもいます。しかし中国で同じことが起こった場合、日本のような「実質的共産主義」的世界が実現するでしょうか?

わたしは全く逆で、格差問題が臨界点を超す恐れがあると考えています。

日本の場合は、バブルとその崩壊は、ほとんどの知的エリートと経済エリートは翻弄されたほうの立場だったのに対して、中国の場合は、エリートたちによる集団的かつ確信犯的な相場操縦であったと見られ、リスク資産の分布は、意外なほど、(超)富裕層には少ない、、、つまりもう逃げ切りが図られている、、、と考えられ、もしそれが本当だとすると、これからの中国は、既に許しがたい貧富の格差がさらに広がり、政治と経済のインフラがぶち壊される前代未聞のリスクがあると思われます。
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2012年9月7日金曜日

道産子トマトの変身術

天気予報が見事に的中して、夕方から急速に雲行きが悪くなった東京の空は、乃木坂の隠れ家の中庭の石畳を、しっとりと濡らしてくれました。

ドビュッシーの「雨の庭」が聞こえてきそうな風景。

・・・・・・

なんて言っている場合じゃなくて、足元が悪いなか、足をお運びくださったお客さま、ただただ感謝です。

きのうお注ぎしたグラスワインの、ぶどうの品種を、時間潤に並べてみますと、、、

①ガリオッポ(イタリア・カラブリア州)
②ネレッロ・マスカレーゼ(イタリア・シチリア州)
③サンジョヴェーゼ(イタリア・トスカーナ州)
④シャルドネ(フランス・コートドール県)
⑤ペコリーノ(イタリア・アブルッツォ州)
⑥ソーヴィニヨン・ブラン(スロバキア!!!)
⑦ピノ・ノワール(ルーマニア!!!!!!!!)
⑧シャルドネ・ピノノワール(イタリア・トレンティーノ・アルト・アディジェ州)・・・スプマンテです。
⑨カリカンテ+カタラット(イタリア・シチリア州)
❿ネロ・ダーヴォラ(イタリア・シチリア州)

・・・・・・

あとは忘れてしまいました。それと、番外編。琥珀エビスに、ベルギービール(ただし、和歌山県産の山椒と高知県の柚子が使われています)。

さてさて、今週のあたまに、読者のみなさまにお知らせした北海道からお越しくださったボンジョルノ・トマトたち。無事に見事に変身しています。

①イタリア風夏のサラダ



②ブルスケッタ



③カプレーゼ



このほかに、グリル料理で、すごいのがあります。是非、乃木坂ヴィラージュで出会ってくださいませ。

隠れ家イタリアン
乃木坂 ヴィラージュ

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階

03-3405-6585


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2012年9月4日火曜日

北海道からボンジョルノ・トマト御一行様が御到着

北海道から、「ボンジョルノ・トマト」が10キログラム到着しました。

あまりの美味しさに、個人でも追加購入することを決めたところですが、、、




乃木坂ヴィラージュでは、北海道産トマト特集を、昨日のディナータイムからはじめました。アップが今朝になってしまい申し訳ございません。

ボンジョルノ・トマトのカプレーゼ
(モッツアレラチーズとバジリコの葉っぱを使ったカプリ風のサラダです)

ボンジョルノ・トマトのイタリア風の夏サラダ
(もちらの具材はご来店時のお楽しみに!!!昨夜は、7時台で完売となってしまい、重ね重ね申し訳ありませんでした)

などなど。。。




期限は、なくなるまでです。お問い合わせは・・・

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階
「隠れ家イタリアン
乃木坂“ヴィラージュ”」
03-3405-6585

まで、お気軽にお問い合わせください。『呑むリエブログ』を見たんだけど・・・と電話口でひとことおっしゃっていただくと、わかりやすいです。



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2012年8月17日金曜日

ワイングラスを傾けながら、無伴奏バイオリンに浸る♫♫

乃木坂ヴィラージュ オーナー呑むリエ にわひろし♪でございます。

今回は、9/22(土&秋分の日)16:00から(※)の企画、、、ヴァイオリニストの徳島由莉さんをお招きしての、

「土曜日の薄暮に、ワイングラスを傾けながら、無伴奏バイオリンに浸る」

の御案内です。

ミュージックチャージ1000円+要ドリンクオーダー
https://docs.google.com/file/d/0BwgrfnQ5u6EubUpraTd3anNiMzQ/edit
詳しくは、素敵なチラシをごらんください。ピアソラに無伴奏ヴァイオリンの曲があったんですねヽ(゚∀゚)ノ ☆

☆☆☆☆☆

ご予約は、お店のほうまで、お電話にてお待ちしております。
03-3405-6585
東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階

隠れ家イタリアン「乃木坂 ヴィラージュ(Village

(※)16:00~開場+(ドリンク)受付開始
16:30~徳島由莉さんによるヴァイオリン演奏(第一部)
・・・途中20分程度の休憩を入れさせていただいて、、、、
ヴァイオリン演奏(第二部)~
17:40頃、終演予定+(ご希望のお客さまに)ディナー受付開始


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2012年8月2日木曜日

完売御礼と次回ワイン勉強会【9/30(日)】の御案内

旧盆を含む週の週末という無理なスケジュール設定であったにもかかわらず、次回のワイン勉強会「ピノ・ノワールで世界周遊」は瞬く間に完売となりました。
素早くお申し込みをくださった皆さまに御礼を申し上げるとともに、検討中だった皆さまには、お詫びを申し上げます。

さて、次なる第三回ワイン勉強会@乃木坂ヴィラージュは、「トスカーナのワインたち」と題して、行ないます。

トスカーナはフランスの美食文化の原点であり、また現代イタリア語の原型がトスカーナ語であるという説が有力だったりして、ワインや美術を含めた文化全体において偉大な小宇宙を形成しています。

テイスティングの内容についてはこれからとなりますが、時期將にソムリエ試験の直前だということらしく、いつもはソムリエ試験とは無縁の内容の個性的なワインをご提供している当店も、たまには受験勉強の一助となるような、まともなラインナップを、とも考えております。

第三回 乃木坂ヴィラージュ ワイン勉強会

「トスカーナのワインたち」

9/30(日)18:00(←過去二回と異なり開始時刻が遅めである点、ご留意ください)

参加費:3000円

お申込み、その他お店のご予約は、
03-3405-6585
まで、お待ちしております。


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2012年7月31日火曜日

第二回ワイン勉強会のご案内【8/19(日)16:00~乃木坂ヴィラージュ】

先週は未曾有の忙しさで、ご注文を受け付ける呑むリエのCPUもフリーズしかけた季節はずれの寒い乃木坂ヴィラージュ。それでも、案の定、ロンドン・オリンピックも始まり、繰り返し覆る判定で蒸し暑さもパワーアップ!?乃木坂らしい静けさが戻ってきた昨夜の営業でした。

そんなときにも、テレビのひとつもない乃木坂ヴィラージュにお越しくださった常連のお客さま、ほんとうにありがとうございました_m(v v)m_

さてさて、お盆の殆どド真ん中で、夏休みのご予定もお決まりの方々も大勢いらっしゃると思いますが、従業員から何かやってくれという突き上げを喰らいまして(!?)、またまた突然ですが8/19(日)に第二回ワイン勉強会を開催させていただくことになりました。

第一回目は、知られざるオーストリアワインを、、、ということで、若干のイタリアンな前菜もご提供させていただきました。

今回もまた、隠れ家イタリアンとは殆ど関係のないテーマで、「ピノ・ノワールで世界周遊」と題して、ニュージーランドを含む新大陸系から、イタリアのピノ・ネロを含む旧大陸系まで、いろいろご用意させていただこうと思っております。

いまでは入手が極めて困難になっているブルゴーニュのコートドールのグランクリュの古酒も奮発してみようかと。

会費は3000円です。

8/19(日)夕方16:00~18:00

募集人数8名~12名・・・6種類お飲みいただけるように、いつものように企業努力して参ります。


写真はイメージですが、この銘柄、この年代に近い、値段を聞いてビックリするようなものもご用意します(※)。

お申込みは、

東京都港区南青山1-15-22ヴィラ乃木坂1階
「乃木坂 ヴィラージュ」
03-3405-6585

まで、「ワイン会」の件でということでお知らせください。

乃木坂ヴィラージュは、8月も、通常通り営業いたします。定休日は日曜日のみ(ただし上記「ワイン会」を除きます)。

(※)保存状態には万全を期しておりますが、かなりの古酒のご提供となり、瓶差(含むブショネ)についてはどうかご容赦ください。
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2012年7月27日金曜日

ハッキリと物事をいうこと

「あなたは脱原発ですか?それとも原発推進派ですか??」

「消費税増税に反対ですか?賛成ですか??」

些か、懐かしいのが、、、

「郵政民営化に反対ですか?賛成ですか??」

新聞、テレビなどのマスメディアから、ブログやツイッターなどのインターネット系ソーシャルメディアへと、媒体の移転に歯止めが掛からないのに、既存メディアの高給取りたちは、少しでも空洞化を阻止しようと悪あがきをして止みません。

視聴率を死守したい報道番組という名のワイドショーは、素人へのわかりやすさや単細胞的な熱狂、パンチだけを効かせたコンテンツ、言説の先鋭化を売り物にしており、その傾向は既存メディアの退潮とともに悪化の一途を辿っています。

つまり、司会者も専門家らしいパネラーも、YesかNoかをハッキリいうタイプの下品な人物がより好まれるというわけです。

だから、旧態依然のマスメディアが駄目で、インターネット系ソーシャルメディアが良いのだと言っているわけでは全然ありません。たぶん、インターネット環境で好まれる(ページビュー数を稼ぐ)コンテンツ、、、カリスマブロガーやカリスマツィッターというのは、複雑な世相を複雑なまま提供していたのでは商売上がったれであって、物の見方を単純に切り捨てて、敢えてイエスノー世論に迎合して成功を収めているものと思われます。

既存メディアは、単純で短小な言説を売り物に出来るインターネットにより一層対抗しなければ生き残れないので、上記ロジックで、低俗化を極めていかなければならないのであります。

ハッキリと物事をいうことが美徳とは決して言えません。

象牙の塔と揶揄される学術的な言説のなかには、ハッキリとは物事を断じない美学があります。

きょうは、原発の分野でもなく、消費税の分野でもなく、オスプレイや普天間の話でもなく、何故かブログの原点に立ち返り、デリバティブ問題について、優れた言説(物の見方を網羅している・公平で客観的である・本質をついている)をふたつご紹介します。

ひとつは、もう10年以上も前に出た
「金融デリバティブ取引と賭博罪に関する論点整理」
http://www.flb.gr.jp/jdoc/publication05-j.pdf


もうひとつは、昨日付けの白川日銀総裁の講演内容
「先物取引市場と業界の課題」
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120726a.pdf

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2012年7月10日火曜日

7/14(土)~16(月・祝)の営業時間ごあんない【乃木坂ヴィラージュ通信】

おかげさまで、乃木坂ヴィラージュも、完全リニューアルオープンから3ヶ月、無事に続けることができております。大勢のお客さまにご支援していただいているおかげです。ブログ上にて恐縮ですが、ほんとうにありがとうございます。

さてさて、梅雨明け宣言があったのかなかったのか知らないくらい、無我夢中でお酌をしている毎日ですが、青空を見上げれば、どう考えても夏本番の、昨日今日の東京ですね。

今週末の三連休ですが、ほとんど通常どおりの営業時間とさせていただくことに致しました。

7/14(土)ランチなし、ディナー18:00~22:00ラストオーダー

7/15(日)お休みをいただきます

※7/16(月・祝)ランチ11:30~14:00(※ディナーまでの間もカフェ営業)ディナー18:00~22:00ラストオーダー


そして、わたくし、呑むリエひろしは、7/16(月・祝)昼夜ベタで出勤いたします。

休日でもありますし、ランチタイムからグラスワインのご提供をさせていただきます(平日ご提供していないわけではありませんので念のため・・・あれっ)。

それとは別に、7/16(月・祝)だけの、

「イタリアワイン 4種類 利き酒セット 1000円ぽっきり」


というのをご用意いたします(次回は8月のお盆の前後に実施予定)。



イタリアワインは地域性が強い地ぶどうから作られる個性が売り。暑さ本番のこの季節にピッタリの爽やかでフルーティな白ワイン2種類、スパイシーだが決して重過ぎない赤ワイン2種類をご用意しています。

カフェ営業時間でも、パルマ産生ハムやピクルス、サラダ、バーニャカウダ、などなどご用意いたします。

さらにさらに、ゴールデンウィーク期間中大好評だった(?)、国立新美術館のチケット半券お持ちの方に、グラススパークリングをご奉仕⇒7/16(月・祝)も、終日実施させていただきます。





エルミタージュ美術館展、たいへんな混雑が予想されますが、なんとこの日が最終日。展覧会会場で、近現代ヨーロッパの時空を彷徨っていただいたあと、乃木坂ヴィラージュにてイタリアを田舎から田舎へと旅していただければと思います。 


※隠れ家イタリアン「乃木坂ヴィラージュ」は千代田線乃木坂駅3番出口から徒歩1分です。
※エルミタージュ美術館展の会場となっている国立新美術館へは、同じく千代田線乃木坂駅の6番出口が地下鉄直結で便利ですが、お帰りの際は「星条旗通り」側の「正門」から外苑東通りを目指して、左折し、乃木公園を目指してください。「乃木坂ヴィラージュ」は下記の地図の乃木坂駅(現在閉鎖中の)4番出口の印のところにあります。
http://www.nact.jp/information/access.html

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2012年6月15日金曜日

嬉しかったこと

読者のみなさま、たいへんご無沙汰をしてしまいました。

この間、欧州情勢など、何もなかったわけではありません。それでも、ブログを更新しなかった理由は幾つかあります。

そのうちのひとつが、新しいニュースのように見えて、実は新しくもないニュースが繰り返された数ヶ月であったこと、です。

実は、昨夜うれしいことがありました。二人連れのお客さま、三名様のビジネスの会合、八名様の若き団体様、などなどに混じって、おひとりで乃木坂ヴィラージュにお越しくださったお客さま。カウンター席で、美味しそうにボンゴレビアンコを食事されている姿を見て、3ヶ月前に、八重洲でやらせていただいたセミナーに参加され、そのあとの居酒屋での懇親会でも、一番語り合った、というかほぼ一方的に教えていただいた、日本語完璧な中国料理店経営者の方です(お店は相模原と麻布十番)。

「ようこそ、お越しくださいました。外食産業を成功されてきたプロの目から、是非是非、苦言提言をお聞きしたいです。」

わたしのなかでは、改善点は幾つもあるのです。謙遜では全くなく、具体的に修正中、実行中なのであります。

「苦言提言??何もない。敢えて言えば、この味、この食材、このサービスと雰囲気からしたら、ひとりあたり2000円以上安すぎるよ!!」

というありがたいお言葉でした。

実は嬉しかったのは、それだけではありません。3ヶ月前のセミナーでは、ネット上で半分炎上して物議を醸したマネーポストの取材記事をテキストにして、「欧州危機は小康状態を保てない。雇用情勢の悪さ、特に失業率の絶対水準だけでなく、若年失業率に相対的悪さこと、、、日本も他人事ではない、、、ヨーロッパ社会の病理なのだが、これを敢えて規制緩和で荒療治するという気概は政治家にも一般大衆にもない。よって、破綻懸念国の緊縮策は選挙民の信任を得られず、ギリシャのユーロ圏離脱など、通貨ユーロのマイナス材料が強まる」というお話をしたのですが、それが丸切り当たってしまったことで、握手を求められたのです。

包丁一本で異国日本にお越しになり、ゼロから中国料理屋を立ち上げ成功させたその腕と気合には、人間一人の力では如何ともし難い景気や相場への鋭い関心が満ち溢れています。これまで、いろいろな形で、相場を語り、相場を外してきてしまいましたが、所詮当たるも八卦、当たらぬも八卦の話で、これほどの手応えを感じたのははじめてのことでした。

さて、これから先はどうか?
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2012年4月17日火曜日

出会い系サラリーマン金融「貸し出し倶楽部」

「出会い系」という翻訳が的確かどうかは読者のみなさまの判断にお任せいたします。

栄光と挫折、失脚と復帰を繰り返した経営者と言えば、真っ先に、昨年亡くなったアップルの創業者スティーブ・ジョブズを思い出します。

虚業、いや失礼、金融の世界にも、そういう立派な経営者がいます。かつての私の上司の上司の・・・上司で、このブログでもリーマン・ショック前後に取り上げてきたジョン・マック氏こそそのひとです。

リーマン破綻への専門家コメント集

カインの末裔であってはならないモルガン家

モルガン・スタンレーのCEOを二度も辞めたマック・ザ・ナイフが、最近次々と社外重役のポジションを積み重ねている(KKR、CIC)なか、今回ボード入りが決まったのがレンディングクラブというピア・ツー・ピア・レンダーの大手です。

ピア・ツー・ピア(P2P)は、普通は、ネットワーク(パソコン絡みや通信絡み)で使われる言葉で、荒っぽい言い方をするとクライアント-サーバー方式ではない、つまり端末と端末の間にサーバーが介在しない(端末にIPアドレスが付されない、ホストにURLが付されないなど)ものです。

常識的には、あって当然の、サーバーを廃して、クライアント同士が直接、金銭の貸し借りを取り決めるということで、ピア・ツー・ピア レンディングが従来型金融業を創造的に破壊するかどうかが注目ポイントとなります。

ジョン・マック氏が何故このビジネスを選んだのか、FT紙の記事の原文がコチラですが、

記事のなかで、わたくしが個人的に面白いと思ったポイントは、

☆レンディング・クラブ社のシステムはサンガード社が動かしている(証券取引所接続システムの世界的な大手)

☆P2P貸金業の発祥は英国(2005年)だが、ヨーロッパでは伝統的銀行業の勢力を脅かしていない。

☆米国では2006年にプロスパー社が事業を立ち上げ、次いでこのレンディングクラブが2007年に事業を開始した(両社を合わせた貸金残高は現状10億㌦程度)。

ヨーロッパと違ってノンバンクの存在が小さくなかった米国では、リーマンショック以降、中小金融機関の倒産が相次ぎ、また大銀行の経営再建も思うように進んでいないなかで、P2Pの拡大余地は比較的大きいかも知れません(他の成長市場の候補として、中国、ドイツ)。

ジョン・マックを社外取締役として向かい入れた同僚役員が、彼の経営能力を”inspirational leadership”と称賛しています。これは何と訳せばよいのでしょう。そしてそれは落合博満型でしょうか?長嶋茂雄型でしょうか?

ただし、記事の締めくくりの一言「毎日はゴルフをやっていたくないから」というのには失笑します。
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2012年4月2日月曜日

エイプリルフールを迎えたジャックポット-あるいは宝くじと税金

身内に宝くじ関係者、いや、宝くじ出身者が居る割には、この方面のことに疎いのです。

わたくし本人も何年か前に、義理で宝くじを買わされたことがありました。学校を出て最初に入った会社が、宝くじを扱うことで有名な会社と合併したことが、義理の「遠因」でした。義理くじゆえ、それなりの大人買いをさせられたせいか、綺麗に「大数の法則」が働いたようでした。当選金額の合計が、購入金額の合計のちょうど半分に終わった記憶があります。

賭博産業では、この「ちょうど半分」だとか何割だとかのことを、ペイアウト、とかペイアウト率と言います。賭博産業だけではありません。外資系投資銀行のバンカーから地場証券の歩合外務員まで、会社にもたらした収益のうち何割が給料やボーナスになるかというのもペイアウト(率)であります。

先週末あたりから、英BBCや米CNNでは、アメリカの宝くじが1月以来当選者が出ておらず賞金がキャリーオーバーされ続け、656百万ドル(注)というジャックポットに至った。いよいよ当選者が出るかどうか世界中が注目したその結果は、当選者3名出たことが判明しているが、4月1日(日)の時点でまだ一人も「名乗りをあげていない」(注)ということなのだそうです。

(注)アメリカは州によって法律がかなり違っており、宝くじの当選者が匿名扱いで賞金を受け取れるかどうか?当選くじを扱った売店がどの程度のボーナスを貰えるか?州ごとにマチマチのようです。

過去に大金を掴んで家族ともども身を滅ぼした人もいる。が、統計的に見れば、自己破産に至る確率はとても少ない(イギリスでは、同国の当選者の「幸福感」が「改善」していることが広く観察されている)。。。などなど、逸話なのか真面目な研究なのかよくわからない話題も含め、お時間の許す限りWSJの記事をご参考にしてください。

この記事から知ったことは、アメリカの宝くじも、日本のそれとほぼ同様、ペイアウト率は5割程度であること。つまり、寺銭(=1-ペイアウト率)が5割ということですが、内訳は35%が州財政に、15%が宝くじのインフラ(と上記ボーナスなど)に使われているということ(これらも上記のように州によって違いがあります)。それと、アメリカの宝くじは、さらにその賞金に税金が掛かること(「一括」で受け取るか「年金」で受け取るかで税率に差あり)。

最後のポイントは、当たりくじや賞金を譲渡しない限り税金が掛からない日本のそれに比べて、アメリカのそれが更にペイアウト率が低いことを示しています。ジャックポットの大きさが、その欠点を補って余りあるということでしょうか?

それで、わたしは、世界中の宝くじについて、ペイアウト率や税制がどうなっているのか調べてみようと思い、まずグーグルで「宝くじ ペイアウト率」と検索してみました。

そうしたら、知りたい情報は全然出てこず、検索にあがってきたサイトは殆どすべて「オンラインカジノ」の宣伝でした。

そのなかにひとつ紛れて、FXの「バイナリーオプション」のアフィリエイト広告がありました。

しかし、寺銭がこんなに良心的で良いのか?という観点で言えば、我田引水のように聞こえるかも知れませんが・・・というか正真正銘我田引水ですが・・・通常のFXに勝るものはないと思うのですが、反対意見はあるでしょうか?

ただ難しいのは、ドル円0.4銭だ、ユーロ円0.9銭だ、というスプレッドを自慢する際に、宝くじや競馬は論外としても、ランキングされるようなオンラインカジノやバイナリーオプションに比べて、明確に、客観的に、寺銭が低い、良心的過ぎる、と数値化できないことです。わかりやすい例で、ひとつ考えられるのは、過去1年、一週間ごとの通貨ペアの値幅(最高値と最安値の差分)の平均を取り、それでスプレッドを割るという方法を思いつきました。もちろん、過去1年とか、一週間ごとという時間の長さに何か根拠があるわけではありません。
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2012年3月21日水曜日

創造的破壊とFX攻略5月号

先週、フェニックス証券の外国為替証拠金(FX)取引のお客様が、わざわざ八重洲までご来店くださり、しばし時事放談を楽しませていただきました。そのなかで特別に印象に残った一言が、

「好不況や円高円安はたいした問題ではない。経営者が本当に恐れるのは技術革新だ」

技術革新すなわち創造的破壊こそが、資本主義の裏と表の実像であり、その裏表がオセロのように一挙に入れ替わることが企業家にとって夢でもあり悪夢でもある、、、という話を、最近ブログ等で取り上げるようにしております。

只今発売中のFX攻略最新号にも、そのような話を書かせていただきました。是非ご一読ください。


それでは、恒例と言いつつしばしばサボっている、過去記事(2011年11月号)から。

「ことりFX」で為替の新時代を迎え撃とう、なんて言うとまたフェニックス証券の宣伝かと思われそうですが、この時期に為替新時代を宣言することには大きな意味があります。

「ヨーロッパ全域を統一通貨圏に」という試みは21世紀初頭の壮大な実験だったと後の歴史家が評価するかも知れません。ナチスの第三帝国とは関係ない話ですが、ユーロ構想は、ローマ帝国の膨張やフランク王国の成立に続く偉業でもあり暴挙でもある・・・逆にそれ以外の時期のヨーロッパは、戦争や小国(含む都市国家)の分裂に明け暮れており、大雑把過ぎる大局観をお許しいただければ、地域全体の統一のメリットとデメリットの比較評価で何十世紀も揺れ動いてきた後の“一旦の”結実が統一通貨圏構想だった。。。

過去の巨大帝国との違いは、もちろん“平和裏に”各参加国の財政政策と金融政策の裁量を“奪った”ところにあります。ドイツ哲学の伝統の一端を担う弁証法で言えば、過去の分裂と統一のメリットデメリットを止揚(アウフヘーベン)したものにも見えます。

これらのうち、金融政策の放棄は自明です。が、財政政策については「毎年の財政赤字はGDPの3%までよ」などのルールは「表向きだから、裏で色々やりようがあるからね」という、ただただ参加国を増やすための二枚舌が、統一理念の土台自体を腐らせる欺瞞であることを“改めて”白日の下に曝したのが、ギリシャ危機、改め南欧危機、更に改めフランスまでも含む「ドイツ以外のユーロ圏危機」だったのです。

そこまで無理をして騙し騙し欧州全体に固定相場制を広げるメリットが域内唯一の貿易黒字国(=資本輸出国)であるドイツに集中していたことに注目すべきであるし、しかもそのドイツ国内の論調としては「公務員が58歳で退職し、現役時代の8割の年金をもらえる。政府は破綻寸前なのに、国民の大部分はまともに税金を払っていない。そんなギリシャを筆頭とする怠け者の国に、なぜ我々の税金を使わなければならないのか」(月刊ファクタ10月号:「欧米金融機関『三年目の断崖』より」ということらしいです。気持ちは判りますが・・・冒頭で、ナチスは関係ないと書きました。それは兎も角、第四帝国なんて、手を変え品を変えだけで簡単に成立するいうことではありません。為替に関して言えば、欧州関連資産の相場暴落は、根拠のない相場操縦で所詮マッチポンプだと矮小化するのは間違いでしょう。過去の民族間の戦争の傷跡や遺恨、一旦手にしてしまった豊かで安定した生活にしがみつきたいという大衆の感情に政治がメスを入れられないという文明国の末期現象など、解決困難な根の深い問題であると考えるべきだと思います。

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2012年3月15日木曜日

ゴールドマンサックス退職社員の捨て台詞

チャールズ・チャップリンの自己評価としては最高傑作だったという「殺人狂時代」という映画。不世出の映画監督 兼 喜劇俳優 兼 ・・・・ が「赤狩り」に遭い、ハリウッドを追い出されるキッカケになったともされる作品の最後の部分で、死刑台に登る主人公が発する言葉が、

「一人殺すと殺人犯、百万人殺すと英雄、、、」

One murder makes a villain; millions a hero.

というものです。

いまでは代表的な構造不況業種となってしまった証券業界や商品先物業界ですが、かつては大儲けした時代もありました。その時代に巡り逢っていたかったとは必ずしも思わないし、またその時代も、方法も、業種、規模、個社によりけりで、決して一括りにしようとは思いません。

が、ある時期、あるカルチャーを共有していたグループは、証券と先物共通の「方法」を濫用してきたこと(で資本蓄積に成功したが、いまはそれを食い潰しているだけであること)を多くの経験者や内部者が認めていると思われます。今様に格好良く言えば、ビジネスモデルの一種なのかも知れません。

良くもあしくも投資家の自己責任というカルチャーが根を下ろしていない我が国では、自称人権弁護士の動きもあり、立法行政の対応も早く、このようなビジネスモデルは殆ど死に絶えています。

それはそれで良かったのだと思いますが、何故それが世界規模で行われていると無罪放免なのか、否、それどころか就職人気ランキングも含めた超セレブ企業と崇め奉られるのか、ここ5~6年腑に落ちない状態でした。

そこに来て、今朝飛び込んできたニュースが、題意の告発文。悪徳資本主義批判はニューヨーク・タイムズの真骨頂です。
http://www.nytimes.com/2012/03/14/opinion/why-i-am-leaving-goldman-sachs.html

この内部告発か外部告発かの端境とも言える動きに対して、ゴールドマンサックスの対応の状況をウォール・ストリート・ジャーナルが報道しています。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304692804577281252012689294.html?mod=WSJ_hp_us_mostpop_read

日本のメディアもこの時間帯それぞれ取り上げていますが、一番早かったのはコチラのブログか。
http://markethack.net/archives/51808686.html
きょうのブログのテーマである「マペット」とは何ぞやを動画で解説してくれています。

ちなみに、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中でも、「マペット」の解説がありまして、

"Muppet" is a British slang term for "idiot" and is sometimes used on Wall Street trading floors to denigrate an opposing trader.

英国の俗語で「馬鹿な奴」を意味し、しばしばウォール街のディーリングルームで売買相手となるディーラーを指して(つまり自分が売りたいものを買ってくれる相手に対して)使われる

とのことです。
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2012年3月1日木曜日

それでもユーロは・・・・「マネーポスト」2012年春号本日発売

ユーロの問題は、政治が結束して域内劣等生を助けてあげるかどうかという意思決定の切り口ばかりが報道されているようです。

赤字を垂れ流している国に対して補填を決めたとしても、不均衡の解消は一時的なものにとどまるにもかかわらず、市場はその場しのぎの意思決定に左右されています。

より根本的には、「金融政策が一本化されているのに、財政政策が一本化されていないことが、ユーロの矛盾であり不備である」という根強い論調があります。では財政政策を統一すれば、ユーロ圏は蘇るでしょうか?

わたしは、より実体経済、特に失業問題、中でも若年失業率に注目して、統一通貨下で不均衡を抱えながら経済運営を続けていくことはミッション・インポッシブルではないかという切り口を提示したいと思いました。

その論稿が、本日発売の「マネーポスト」2012年春号に載っております。是非、書店で手にとって御笑読ください。

ところで、他の先生方が書いた記事で、これは面白いと思ったのがあと(?)ひとつありました。日本の年金制度・・・少子化だから年金制度が崩壊していくのではなくて、年金制度自体が少子化を推奨していることが国策上の問題という指摘です。
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2012年2月17日金曜日

沈黙は金、雄弁は銀

日銀の白川総裁が俄に雄弁です。

今週、月曜日火曜日に行われた金融政策決定会合で「長期国債の買い入れペースを、従来の月5000億円から三倍に引き上げる」という金融緩和策の強化を決断したことが、(米国株の上昇や欧州危機の小休止ムード(?)と相俟って、)日本株はさしずめミニバブル状態。

七転び八起きブログでさんざん批判し揶揄してきた「日銀が金融緩和を徹底さえずればデフレと不況が収まるのに、それをサボっている総裁は日本経済のA級戦犯である」的批判を繰り返してきたB級エコノミストたちも、さぞ喜んでいることと思われる一方、真面目な日銀ウォッチャーのなかには、頑固冷徹理路整然の総裁の変節を疑う人も出てきます。

まずは、金融政策決定会合の直後の総裁記者会見の内容と質疑応答

前半、物価安定(≒インフレ率1%)を「目標」とよぶか「目処」とよぶか「理解」とよぶか、に関するQ&Aでは、その長さとしつこさが、官僚の言葉遊びのように思われてしまいがちです。わたしはここは、日銀はこれまでインフレターゲットを拒絶してきたものの、いま思えばインフレターゲット採用国も経済が滅茶苦茶になっているではないか。それにインフレターゲットとハッキリ言って来なかっただけで日銀がしてきたことも実質的にかなり近かったと、《怖いデータ》の数々を見せつつ何度も言っているじゃないか。今後もそれを連続的に強化していきたいだけで、矛盾も変節もないというのが根底にあるのだと思われます。この点、本日先程リリースされた日本記者クラブでの講演が更に雄弁で、趣旨がわかりやすいです(この講演録の末尾添付のチャートとグラフこそ、上記《怖いデータ》の数々そのものです)。

最初に引用した2/14(火)の記者会見に戻りましょう。お時間の少ない方に最優先で読んでもらいたい箇所は、9ページ目の質問からのところです。つまり、

「財政ファイナンスが目的でない・・・とおっしゃっても、財政政策に一段と近づいてきていると思われるリスク・・・日本銀行がこれまで一番避けてきたマネタイゼーションに近づいているのではないかという疑念を・・・総裁はどう思われますか?・・・・・・政治的圧力に屈したのではないかとの見方・・・?」

生で会見に立ち会ってなくても、ここが質疑応答のなかのクライマックスであると容易に想像がつきます。

ところで、白川総裁はこれらより前の1月にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス主催の講演で『デレバレッジと経済成長 ―先進国は日本が過去に歩んだ「長く曲がりくねった道」 を辿っていくのか?―』と題して話をされています。イギリス人相手に、ディケンズやビートルズを引用しながら、政治からの圧力、衆愚(B級エコノミストを含む)からの圧力と向かい合いながら、のらりくらりを演じながらも理路整然かつ分かりやすく金融政策の手綱捌きをしなければならない立場の苦悩が延々と語られています。

ぶっちゃけて言いますと、燻し銀の日銀総裁が、理不尽にもデフレの元凶と罵られ続けて、逆切れしての雄弁、という感じもします。

以上、強引にまとめまして「雄弁は銀」。多かれ少なかれ西側先進国経済はこのような体たらくだから、通貨(為替)で言えば、日米欧の不美人投票はより酷く続くだろう、と考えれば、黙って金を買うのがベストの選択だ、、、という立場がどうやら中国の公共セクター(含む中国人民銀行)のようで、英FT紙によると、2011年の最後の3ヶ月間で、金の購入を更に加速させている とのことです。


世界最大の外貨準備高を誇る中国。米国債を買うのは資本輸出(=資本赤字要因)ですが、金を買うのは輸入(=貿易赤字要因)という国際収支の表の見方の落とし穴から露呈した現実であるところが面白い記事の内容となっています。

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2012年2月14日火曜日

ドッド=フランク法の生みの親ボルカー氏大いに吠える

1927年生まれのポール・ボルカー氏が実に元気です。

欧州ソブリン危機の元凶だとの批判は、荒稼ぎができなくなった投資銀行によるお門違いの戯言(たわごと)だと一刀両断です(英FT紙)。

フェニックス証券の「ことりFX」は、実質的に見て、業界で最も有利な水準のスプレッドを提供していると思うのですが、それでも先週あたりから、ドル円で0.4銭とか、これでもか!これでもか!という業者が約2社ほど出てきています。

譬えが婉曲的で恐縮ですが、1990年代、大店法緩和のなかで地方スーパーを競って買収して、シェア拡大を狙った大手から先に倒産して行ってしまい、実は寡占大手の買収を断った地方スーパーは小規模ながら今でも結構生き残っているという皮肉な小売業界が彷彿とされます。

小売における大店法と、FXにおける信託やレバレッジの規制とは比較できませんが、一般に業界の内部の人間というものは、規制に対する意見(賛成意見・反対意見)が一枚岩になる傾向があります。電力業界で、発電・送電・配電の分割やら総括原価方式の見直しやら、規制緩和に賛成という経営者はいないでしょう。大手スーパーや百貨店が相次いで倒産した5年~10年前、大店法は本来大手がスケールメリットを活かして零細商店主のシェアを奪える筈のところを邪魔していて、大手にとって不利な規制であるとして、チェーンストア協会は一貫して撤廃または規制緩和を訴えていたものでした。しかし結果を見るに、実は大店法が大手同士の喰い合いを防いでいて寡占利益を温存していたという事実が判明したのです。

さて、本題。FX業界と証券業界とでは業界利益がかなり違うのですが、証券業界という立場で、ボルカー・ルールに賛成だ、なんて主張すると、村八分になるかも知れません。

しかし、このブログでは、サブプライムショック、リーマンショック、ギリシャショックなどなど、節目節目でモラルハザードを容認する規制にも規制緩和にも反対してきました。

モラルハザードとファイアーウォール

ボルカー元FRB議長が現役復帰

米国にボルカーあり、日本に白川総裁あり

多くの主要国でリーダーが変わるかも知れない2012年、選挙直前のリーダー達は、増税で有権者から嫌われたくないというホンネと、第二、第三、第四・・・のギリシャにしてはならないというタテマエの間で苦悩し、結果として、ボルカールールの受け入れや有価証券取引税の導入など「コレ以上大銀行の血税による救済は許されない」という大衆に受け入れやすい増税方法を選ぶ流れが出来てきています。

フランスも英国の印紙税を真似た有価証券課税が具体化へ と、同じく本日の英FT紙が報じています。

様々な点で金融規制では欧米に先行していた日本は、金融庁に先見の明があったと言えるかも知れません。しかし、全く安心はしていられないのです。「大きすぎて潰せない」金融機関の存在を断固として認めない、そして中央銀行に当座勘定を持つ金融機関は(定義上、商業銀行なのだから)有価証券関連の自己取引は認めない、、、というボルカールールが国際的に抜け目なく適応されるべきだとなったときに、どうすることもできない金融機関が、我が国にも2つや3つはあるのではないでしょうか。
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2012年2月8日水曜日

欧米の資本主義と大東亜の資本主義

英FT紙の論稿。資本主義それ自体が危機なのではない。欧米の資本主義が危機なのである。欧米の資本主義は、アジアからもっと学ぶべきだ、という主張です。

日本型資本主義のように政府が程よく市場に介入するやり方がアジアでは主流であって、これまで余りにも市場に任せ過ぎてきた欧米の政策担当者やオピニオンリーダー達は、日本、韓国、中国、台湾、香港、シンガポールを視察し学習すべきだ、と言われると、20年以上も自信喪失一本槍だった日本人としては嬉しくなくもありません。しかし、上記の各「国」の資本主義を一口に「アジア型」と括るのは流石に無理があります。

ただ、この論稿のなかで最も刺激的なのが、当ブログで長年一貫して主張している金融業の肥大こそが資本主義のメリットを台無しにするという主張。明快にして雄弁です。

「同じ知能を持つエンジニアが二人いたとして、金融エンジニアの給料が製造業のエンジニアの給料の5倍から10倍という馬鹿げた事態が何故起こるのか?」

それは、

「(ナショナルブランドの)金融機関はリスクマネーにレバレッジを賭けて実力以上に儲けられた反面、10年ごとの危機で生じるお決まりの損失については税金で救済されるからである」

「中央銀行によって負債が保証されている金融機関は、いつの時代も最大級のフリー・ライダーとなった」

わたしは、この主張は100%正しいと思いますが、よって欧米の金融行政が間違っていて、日中の金融行政が正しいとは全く言えない点は注意を要すると思います。

我が国の金融当局の公的資金について、そのものが間違いだと(モラルハザードの観点から、、、非金融セクターへの相当な痛みを覚悟してでも、、、潰れるべき銀行は潰れていくのを放置したほうがよいと)までは言わないにしても、公的資金の入れ方には工夫の余地があっただけでなく、そのような事態を招いたのがそもそもオーバーバンキング(銀行が多すぎる、銀行員が多すぎる、銀行員の給与が高すぎる)に原因があり、本論考のコンセプトとは逆に、政府が金融業界に介入しすぎた(護送船団方式)ゆえの過保護の結果であることをより重要視しなければならないと思います。

以上がポイント(欧米の資本主義の戦略的誤り)の一つ目・・・

《欧米は資本主義を人々の幸福度を高めるための実用的な道具としてではなく哲学的な意味で(共産主義よりも)良き概念であると看做してきた・・・》

で、残り2つの戦略的誤りは、《20世紀初頭の共産主義の脅威を体験したことからの教訓を忘れてしまったこと》と、《アジアを含む第三世界に資本主義を「伝道」してきたときに、「創造的破壊」の功罪について十分な教育を施さなかったこと》としています。

前者は、欧米の多くの国々で悪化している雇用問題と貧富の格差を、後者はデジカメの普及で倒産したコダックを見れば、それはそれでなるほどなと思います。が、これらふたつについても、中国の日本という似ても似つかぬタイプの資本主義が元祖資本主義の欧米のお手本だと言うのは余りに無理があります。

実はこの論稿の著者は、国立シンガポール大学のリー・クアンユースクールの学長なので、我田引水もあるのかなと思います。しかし、論稿そのものは修辞学上も優れていて説得力に富みます。

みなさんのご意見はいかがでしょうか?もしお時間と余裕があれば、是非ご一読ください。
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2012年2月6日月曜日

アラブの春が中国に近づきつつある

ニューヨーク・タイムズ紙オンライン版のなかのブログです。

http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/02/05/the-arab-spring-is-coming-to-china/

ミュンヘンで開催中の世界安全保障会議の中での一幕。よくもまあ、こんなパネルディスカッションが成立したなあと思わせる構成員は、4年前の米大統領選でオバマ現大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員と中国の外務副大臣、そしてなんとコーディネーターを、かのキッシンジャー元国務長官(筆者の世代以前には極めて印象の強いニクソン政権の最重要人物のひとり)が務めています。

ベトナム戦争の終結、金兌換停止、変動相場制への移行という当ブログが扱うべき重要テーマにおいてもニクソン=キッシンジャー体制は大いに研究すべきテーマであるし、最近話題の映画のタイトルロールであるエドガー・フーバーとの絡み合いもまた米国史の暗部ということで熱い視線を送りたい部分です。
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_05.html
http://phxs.blogspot.com/2010/02/blog-post_26.html
http://phxs.blogspot.com/2010/03/blog-post_08.html

それにしても、核開発疑惑でイラン経済制裁という点でも、米国(+欧州+日本)と対立している中国(+ロシア+インド)が、事実上の戦争である(BBC)とも言われるシリアにおいても安保理決議でロシアとともに拒否権を発動している状況のなかで、この企画が中止にならなかっただけでも十分有意義ですが、マケイン氏が「敵国」の外務官僚のナンバー2に面と向かって「(チベットで相次ぐ焼身自殺が、チュニジアのジャスミン革命の触媒となったのと同じように)中国にアラブの春がもたらされつつある」と言い切ったのは非常な重みがあると思います。

さて、中国の外務副大臣はどう言い返したでしょうか?「中国でアラブの春というのは幻想を超えるばかげた発想だ。。。中国は100年以上も外国勢による侵略と占領に屈してきたのだから、内政干渉に対しては黙っていないぞ」。

後段の部分は、北朝鮮からもよく聞こえてくる科白です。

イランとシリアを契機とした大国間の対立軸は、ソビエトやベルリンの壁が壊れる前の構図に戻った感もあります。ただし、もちろん大きく違うのは経済や情報技術であり、今は中国は、深刻なバブル崩壊の真っ只中かも知れませんが、社会主義が建前、資本主義が本音、より正確には半奴隷制、という2つないし3つの顔を持つ得体の知れない国へと変貌していることに注意が必要です。
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2012年2月1日水曜日

増収減益のアマゾン・ドット・コム

独占・寡占の仲間入りを賭けて薄利多売に専心するのはFX業界だけではないと思い知らされる決算発表でした。

2010年のアマゾンの売上は前年比35%の上昇。にもかかわらず、利益は57%の減少でした。原因は、ウェアハウス投資(本の倉庫のことなのか、クラウドサーバーのことなのか、両方か?)、技術投資、そしてキンドルであるとしています。

キンドル関連の数値はすべてが公表されているわけではありませんが、ホリデーシーズンの売上は前年比177%増とのこと。しかし、キンドル一台売るたびにアマゾンは15ドル赤字だという推計もあるようです。それを将来、デジタルブックや音楽配信などで取り戻すという考え方なのですが、日本の携帯端末と同じようなモデルが成り立つのかどうか、iPadもあり、不透明と言わざるをエません。

無制限即時発送を約束している「プライム・プログラム」も、年会費79ドルを徴収しても尚11ドル(一会員あたり)赤字なのだそうですが、同会員はプログラム加入後は従前比3倍もアマゾンを使うという推計もあります。

詳しくは、WSJの記事を御覧ください。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204740904577195371567545142.html?mod=WSJ_business_LeftTopHighlights
日本語の記事は例えばこちら。
http://japan.cnet.com/news/business/35013651/

全然話が変わりますが、今朝一番気になったのは、ユーロ圏が通貨統一後失業率が最悪になったという記事です。こちらはFT。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dca5fe48-4bf3-11e1-98dd-00144feabdc0.html#axzz1l5fAlXZ0
特にひどいのが若年失業率で、スペインとギリシャは50%に接近しています。このような状況が放置できないと政治や民意が動くとなると、ユーロ危機問題の解決の経路として、救済基金の増額の可能性(もともと低い)よりも、ユーロ分裂(による各国の財政金融政策の柔軟性の取り戻し)の可能性に振れると見るべきかも知れません。
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2012年1月25日水曜日

ビッグマック指数の最新版

今月は英エコノミスト誌恒例のビッグマック指数が更新され発表されています。
http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2012/01/daily-chart-3
もともと何か特殊要因でハンバーガーの「相場」が割高だったブラジルは、欧州危機後のレアル暴落にもかかわらず、「平均値的通貨」であるドルや円に比べて依然極端な割高が続いていること、1ユーロ=1.2スイスフランまで無制限介入を約束して度肝を抜いたスイスもまだ、割高さトップの地位に君臨していることなど、様々なことが見えてきます。

2008年に、この「七転び八起き」ブログを始めたときに、同時にオンラインセミナーも始めており、当時からユーロの割高をしつこく指摘してきました。その論拠の一つが、購買力平価であり、その簡易版であるビックマック指数もプレゼンに活用させてもらいました。

オンラインセミナーのオンデマンドは期限か切れておりますが、より詳しい内容は、このブログの過去記事にもあります。一例がこちら

先々週ついに97円割れ寸前まで下落したユーロも、その後の一週間半で101円台まで急速に買い戻され、対ドルでも1.3台を回復しています。しかし、OECDの指摘(新興国への警告)の通りで、ユーロが最悪期を脱したと見ているひとは殆どいないでしょう。それだけ、円キャリー(またはドルキャリー)によるユーロバブル(またはポンドバブル)が常軌を逸していたわけであり、その治癒には相当の時間がかかるものと思われます。

その反面、デレバレッジ、金融機関の機能の低下が世界中に蔓延しそうな今日この頃、ハンバーガーの値段が極端に安い国の通貨はもっと見直されてもよいと思います。

ビッグマック指数は、他にも面白い切り口を提供してくれています。ずっと円高だったため、割安感もなくなってしまった日本(円)ですが、実は、最低賃金で買えるビッグマックの個数は世界一なのだそうです。何かと、生活保護の給付水準に比べて最低賃金が安すぎると議論されることが多い現在、日本の最低賃金の高さを目立たさせる事実になっています。ただ、ここで大変失礼ながら、マクドナルドのパートの皆さんの給与水準が法定ぎりぎりに近いと仮定すると(注:それでもマックのバイトが人気なのは、時間の柔軟性にあります。これ、重要)、高い最低賃金で作られる日本のハンバーガーが安いのは、効率性(労働者がテキパキしている。ひっきりなしにお客さんが来るので原材料のロス率が低い)の高さや、または諸外国比でビッグマックの大きさが小さい(日本が本当にそれに該当するかどうか知りませんが、オーストラリアのビッグマックはカナダのそれよりかなり小さいらしい)、材料をけちっている(本部のバイヤーの買い叩きが特に強烈であるとか、質を「選んでいる」とか)などなどの要因も考えられます。

ファーストフードのパート店員の給与水準が最低賃金レベルであるという事実が概ね世界共通であるという仮定から、エコノミスト誌自身も、実際の為替レートと、ビッグマック指数が乖離するのが、一人あたりGDPの違いによるところが大きい と分析しています。

この点、わたしが重要だと思うのは、「逆は必ずしも真ならず」であって、今日、ファーストフードのパート店員だけが最低賃金レベルではなくなってきており、製造業の現場では部品のモジュール化が、非製造業の「現場」ではIT化が、それぞれどんどん進み、これにグローバル化を掛け算すると、「われこそは最低賃金とは無縁の中流ホワイトカラーだ」と思い込んでいた中途半端な知性の人たちの雇用がどんどん失われていく傾向にあることです。ビッグマック指数が平均以上の国の「中間層」のひとたちは注意が必要です(この議論には、貿易黒字国・貯蓄超過国の海外からの配当利子などの所得が一人あたりGDPや実際の為替に与える影響について含めておりません)。

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2012年1月23日月曜日

2012年を大胆予測-FX攻略.com最新号

FX攻略.comの最新号(3月号)がいよいよ書店に並びました。
わたくしのコーナーでは、2012年を大胆に占う予言集となっております。
新年ということで、いつもよりもグンと読みやすい内容となっていますので、是非ご一読をお願いいたします。
雑誌全体の特集内容は「確定申告」です。

さて、過去記事をご紹介します。2011年8月下旬に発売された同年10月号から・・・

ヨーロッパではギリシャに端を発した財政危機が桁違いに病巣の大きいイタリアとスペインに蔓延したことで、ユーロが導入以降最悪の危機に直面しました。一方、米国では、すったもんだの末、米国債の発行上限の問題を議会がクリアしたものの、その直後の米国債格下げ(スタンダード&プアーズ)で基軸通貨(?)ドルの存在感を取り戻し損ないました。金融市場が大混乱したなかで、日本は前人未到の円高のお盆を迎えています。


国民とマスメディアとが「内向き」な島国根性を競っているような日本ですから、大震災でも原発事故でもリーダーシップを発揮出来ない政権を血祭りに上げることしか能が無いわけです。こんな体たらくのメディアに洗脳されてしまっては、国内外でどんな種類の危機が起こっても、種類を問わず何でもかんでも超円高というのが理解できなくなってしまいます。しかし、そんな日本円よりも高騰を繰り返している金(ゴールド)の存在は謎を読み解く大きなヒントです。

リーマンショックから3年近く経ったので、サブプライムなる言葉すら死語に近づきました。「内向き」のメディアたちがリーマンショック前に繰り返していたのは「金融技術の革新とグローバリゼーションで日本を除くアジアと米欧は好景気が加速していて、日本だけ蚊帳の外」という論調でした。今考えれば、ひとつはサブプライムを一例とする詐欺的手法でレバレッジされた不動産バブル、もうひとつはユーロという通貨統合によって期待された不動産バブルに過ぎず、その宴のあとの後始末の厄介さの本質は、日本の90年代、2000年代と変わらず、しかもどうやら欧米のほうが重症なのではないかということです。

実は、わたしは、リーマンショック後に緊急出版した「『為替力』で資産を守れ」で予想を外していました。リーマン倒産による金融市場の混乱はなかなか収束しない。金融市場のチョンボを財政出動で取り返そうとしても抜本解決にはならない。能力以上の生活水準を追求してしまったツケは節約と緊縮(オーステリティ)でしか解決できないから当分景気は悪い、等々。小国ゆえ一番目のモデルケースになってしまったのがギリシャでした。大国の多くも、財政出動やらイカサマの銀行ストレステストなどで約3年誤魔化してきましたが、財政も破綻気味、金融機関も破綻気味となると、もうあとは本質に回帰するしかない、つまり「清貧の思想」を国民に要求する以外にないのです。これが受け入れられるかどうかは人生観、文化の違いが大きいでしょう。日本はいまのところ例外的な国家のひとつのようですが、多くの先進国や新興国では暴動がまだまだ多発する恐れがあるのです。

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2012年1月5日木曜日

ストラディヴァリウスと「食べログ」と尾上縫

明けましておめでとうございます。

新年早々の三題噺、「ストラディバリと『食べログ』は、わかるけど、尾上縫(おのうえぬい)は何故だ?」と思われるでしょう。

正月明け、ネットとメディアを騒がせているのは、「一個(一台?一本?)何千万円~何億円もすると言われるヴァイオリンの名器『ストラディヴァリウス』や『グァルネリ』が、現代の安い量産ヴァイオリンと比べて音色の差が殆どない。場合によっては現代のもののほうが評価が高い」というニュース

そして続いて出たのが上場会社カカクコムが運営していて飲食店や「地域名 ランチ」などで検索するとほぼ間違いなく上位に出てくる口コミサイト「食べログ」のやらせ疑惑です。

フェイスブックなどソシアルメディアの閲覧数や「いいね!(Like)」ボタンの押される回数みたいなものですら、ワンクリック幾らとかで売り買いされる時代だそうですから、SEO対策などで宿敵ぐるなびを戦慄させてきた「食べログ」に限らず、およそ「口コミサイト」なるもの、多かれ少なかれ「やらせ」はあるのだろうと読者の皆さまは既に賢察のことと思います。

現状、記事によれば、カカクコム自身はインフラを提供しているだけであり、やらせ業者を取り締まり監督規制する立場であることを明確にしています。

ここは実に重要で、外国為替証拠金(FX)取引の世界で、広告の大半を占めているアフィリエイトは、個人ブロガーはさておき、比較サイトや口コミサイトは、それ自体がやらせであり、人気順位を売買させていることがはっきりしているからです。

そのことの是非については、金融先物取引業協会でも、のらりくらりと議論されているようなのでそちらに譲るとしましょう。アフィリエイトという何となく洗練された外来語が「やらせ」という直截な言葉に置き換えられようとしている事実だけで、アフィリエイトモデルに依存してきた多くの業者や周辺産業の人々は「ああ、来るべき時が来たな」と観念することでしょう。

ヴァイオリンの話に戻すと、東京の郊外にあり、比較的多くのヴァイオリン奏者を育成輩出することで知られる音楽大学では、一個(一台?一本?)500万円以下の単価のヴァイオリンのことを“ゴミ”と称する習わしがあると聞いたことがあります。そういう価値観を成り立たせている教員や学生の耳こそまさしく“ゴミ”であるとわたくしは言いたいです。

・・・・・ヴァイオリンは一個でも一台でも一本(※)でもなくて、一丁と数えるそうです。豆腐と一緒です。。。。。(※)「あるオーケストラのなかでヴァイオリストが何人いるか?」という文脈では何本と使うようです・・・・・

良きにつけ悪しきにつけ、スティーヴ・ジョブズが圧縮音源によってアナログ音楽や生の音楽のビジネスモデルを破壊した一面があります。が、その敗者の代表格ソニーは、プロモーション・ビデオ(≒MTV)で「口パク(くちパク)」の歌と音楽を一般大衆に許容させてしまっていて、いまや天下のNHKですら平気で「口パク」歌手を紅白歌合戦の大舞台に立たせるほど寛容になっています。

メット文明の便利さは捨てがたい反面、良質なマスメディアの生存確率は劇的に低下したため、ネット上で「やらせ」産業が跋扈し、大衆の耳や舌や価値観につけいる隙を与えてしまっています。

それで、何故に尾上縫なのだ?と続くところですが、後半は後ほど。要すれば、ほんとうの金持ちはブランドでは騙されない、よって自身をブランドで飾らないことによって(普通のオバサンのように振る舞うことによって)ほんとうの金持ちはこういうものだ、ほんとうにこの人はおカネを持っているんだと思わせようとした一級の詐欺師であったというお話です。