2016年4月6日水曜日

ロシアも日本も自国通貨建て国債に依存している限り国家破綻はありえない

アベノミクスが剥がれ落ちてきそうなきょうこのごろ。タイトルを含む3つの予想についてきょうから検討していきます。3つとも、財政学や金融論で異論駁論の絶えない言説です。

Ⅰ.主権政府は、国内通貨の国債等に依存しているかぎり、倒産しない。

直感的には正しい。が、正しいにしても、

法定通貨=不換紙幣であることに加えて、固定相場制に組み込まれていない(少なくとも好きなときに離脱できる)ことが必要だと思います(例:ギリシャ2015においては、通貨ユーロをギリシャにとって自国通貨だが固定相場制から離脱できない不換紙幣だった)。

以下、直感を検証していきます。

倒産、破綻の定義について。

①債務不履行(弁済能力がない場合)
②債務不履行(弁済能力はあるが弁済意思がない場合(※))
③金融支援(私的整理)
④(債務不履行は起こしていないが)利払を含めた累積債務額が発散することにより実質破綻

を区別することは議論の精緻化のためには必要。この点、ロシア1998については、①または②に該当したのは何と自国通貨建て債務であった(※直感を信ずれば、①はありえないことになるので、②だったか???)キリエンコ首相(代行当時)に真意を聞く必要あり。

これらを踏まえても、財政ファイナンス(中央銀行による自国国債の買い切りオペ)が可能であれば、理論上、①は発生しないと考えられますが、②、③、④が発生しうるという点では外国通貨建て債務と同じ。

さて、財政赤字で『破綻』の恐れがある場合とない場合とをどこで線引するかでいくつかの伝統的な考え方があります。
(1)建設国債はOKだが特例国債はNG、
(2)市中消化はOKだが中央銀行消化はNG
(本論にあるように中央銀行消化(の選択肢を残しておくこと)こそが重要だという考え方も)
(3)徴税権(や「預金凍結」権や「外貨預金外貨送金制限」権)の及ぶ国内消化はOKだが外国債は(自国通貨建てでも)NG
(4)外国債でも自国通貨建てならOKだが外国通貨建てはNG
(5)発行代金の資金使途を問わず、国債の引き受け手を問わず、自国通貨建てかどうかを問わず、現役世代と将来世代の間の所得移転のパラメータが十分大きければ(コーナーソリューションが起きていなければ)OK=中立命題、



等です。このような百家争鳴の議論において、『破綻』が何を意味するのか?国際私法上の債務不履行の定義(definition)①∨②が問題となっているのか、格付機関ごときの同定義①∨②∨③それに限定(define)せず累積債務の発散をも含めているのか?取り決めが必要でしょう。

ここでは、財政赤字が発散しても、議論は収束させたいので 笑、
「①さえ回避できれば良い。そのためにも、発行代金の使途、引き受け手、は問題とならず、中央銀行による(無制限の)引受という選択肢と、自国通貨建て(に限る)発行ということが条件だ」という命題を検討することとします。

・・・確かにこれは十分条件のように思われます。ただし②③④を回避する必要条件ではありません。さらに、1998ロシアは①ではなくて②だったと言い切れるかどうか問題は残ります。

・・・では必要条件でしょうか?直感的にはそうなのですが、②③④の状態だが①の状態ではない国の通貨価値は限りなくゼロに近いかも知れないが正の値であってゼロではないのであれば、外国通貨建て債務を自国建て債務に借り換えさせるに十分な大きい(が無限大ではない)額の中央銀行引受が可能だということになります。つまり、財政ファイナンスが好きなだけできるという前提であれば、累積ソヴリン債務が自国通貨建てかどうかは五十歩百歩(五十歩一億歩かも知れないとしても)ということです。

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