2021年12月30日木曜日

コロナワクチンで長寿という統計【年末ご挨拶】

2021年(令和3年)の暮れもいよいよ押し詰まってきました。通勤電車も、緊急事態宣言下を彷彿とさせるようなガラガラです。

英エコノミスト誌のニュースレター(※1)のなかに、Daily Chartというものがあり、統計マニアのスタッフが独特の視点で(その極端なのがビッグマック指数か?)、かつビジュアル重視で、人間社会や自然界に切り込んでくれているものがあります。

今年そのなかで最も反響があったとされるのが、この棒グラフです。



表面的な結論は、ファイザー社とモデルナ社の新型コロナウィルス感染症に抗するワクチンを2回接種したグループは、それ以外に比べて、新型コロナウィルス感染症以外の死因で亡くなった人の数(100人あたり、1年あたり)が、たったの1/3程度である。

つまり、

ファイザーとモデルナのコロナワクチンは、コロナ以外の病気に罹るリスクや重症化するリスクをも抑える効果もある。

ということです。

去年もそして今年も、どちらかと言えば(?)、ワクチンに対して懐疑的な話を紹介するなどひねくれた傾向(※2)にあった当ブログと当メルマガ(本人はいたって中立公平のつもりです!)なので、ワクチンの意外なすばらしさを伝えるエピソードで年末を締めくくり、バランスを図ろう・・・

というのが本日の趣旨???

では必ずしもありません。


どの程度の効果があったのかまったく検証されなかった緊急事態宣言下の様々な措置がありました。飲食業や旅行業に携わる人々はその理不尽な被害者の典型です。

今月、また、二度ほど、真珠湾攻撃前夜の話を書きました。無謀な戦争が、決して、非民主的な専制政治の暴走ゆえ始まったわけではないという、今日ではよく知られている真実にあらためて迫ろうとしたものでした。

この反省がまったく活かされていないのが、コロナ禍での、為政者⇔マスコミ⇔世間一般大衆のトライアングルだと思います。

マスコミ=マスゴミとは思いたくないですが、視聴率狙いでコロナを煽った低級情報番組が、この英エコノミスト誌の執筆スタッフとは大違いの数理・統計センスのなさで、世間一般を欺罔している姿は、戦前の朝日新聞と何ら変わりがありません。

☀☀

「相関関係」と「因果関係」はイコールではない、というのは統計のイロハのイです。なので、英エコノミストの同記事(棒グラフからハイパーリンクしています)でも、簡潔かつ丁寧に注釈がなされています。

例えば、

①持病を抱えていてコロナワクチンの接種を控えろと医師に助言されているひとたち→まさにその持病が原因で調査対象期間中に亡くなる。

②持病は抱えていないが何らかの理由で(下記③を除く)ワクチン未接種のひとたち→調査期間中に新たな病変を自覚したが(医療機関でコロナに感染したくないという理由で)診察を先送りにし、癌など進行の早い病気で亡くなる。

③持病が理由ではなく(例えば上記※のようなワクチン陰謀論を妄信している)偏屈なリバタリアン(※3)→平均的なひとよりもリスクの高い生活習慣や行動態度(マスクなんか着けずに三密環境で馬鹿騒ぎするなど)・・・

この調査は米CDCが米国民に行った悉皆調査です。そこでは③の要因は考慮に入れられているそうです。そのために、コロナワクチンを打っていないグループには、インフルエンザワクチンすら打っていないひとは除いている(≒納得のいく限り健康維持のためにできることはちゃんとやろうというグループのなかからファイザーまたはモデルナを打ったサブグループとそうでないサブグループとにわけた)ということです。

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こうして、同記事も、「ワクチン接種は『死への免疫』ではない」、つまりワクチンが不老長寿の妙薬ではないと結語しているのです。

ところで、このブログの読者の半数以上が日本人なので(!?)、同記事の本筋ではないのですが、冒頭の右側のグラフが気になるところではないでしょうか。

米国は、日本以上に(!?)多民族国家であることから、CDCの調査も、アジア系、ヒスパニック系、白人、黒人(※4)別に集計をしてくれています。

ワクチン二回接種済みか否かにかかわらず、致死率が、アジア系<ヒスパニック系<白人<黒人となっていることが見て取れ、なんとなく、ここ二年間で、コロナに関する世界情勢から感じ取ってきたことと整合するようには見えます。

ここであらためて、「因果関係」≠「相関関係」です。

アジア系(の読者が多いこのブログ)は、血筋的というか先天的というか抗コロナの免疫が備わっているひとの割合が多いと読み取りたい気持ちはわかります。実際そのようないわゆるファクターエックス的なものはあるのかも知れません。しかし、これら4つのグループの間では、住環境、経済環境、生活習慣や文化など、感染症に影響する特徴の違いが明確にありそうです。

この点でも、謙虚な分析が必要です。

先ほど、同記事の結語を紹介しましたが、その直前のセンテンスは、

It seems all but certain that some still-invisible difference between people who get the vaccine and those who do not, rather than some unknown benefit of the jab, is to thank (or blame) for the vaccine’s correlative effects.

ワクチン接種済みの人たちとワクチン未接種の人たちとの「いまだに見えざる差異」は、ワクチンの知られざる効能というよりもむしろ、ワクチンの「相関関係的」影響のおかげ(せい)と思えてならない。


※1    The Economist TodayMonday to Friday

※2    ワクチンに限らず、なにごとも(とくに世間一般で当然のこととして受け入れられてしまっている考え方について)新鮮な懐疑の眼差しを持つことはたいせつだと考えております。ただし、これは、ワクチン陰謀論とはまったく別物であることをあらためて強調しなければならないでしょう。「ワクチン接種の世界的キャンペーンは、某IT長者による、人口削減計画が背景にある」とか「ワクチンを利用して全人類にマイクロチップを埋め込もうとしていて誰が何処にいるのかGPSで監視できるようになる」とかを、立証もせずに、デマを広める行為は、ワクチンの効果を鵜呑みにするのと同等以上の非科学的態度です。

※3    わたしはどちらかというとリバタリアンですが偏屈ではないつもりです。

※4    この分類方法が完璧なのかどうか疑問ですが、あえてこのように分類してくれていることは統計を鑑賞する側としてはとても助かります



2021年12月24日金曜日

昭和の選択・・・1941日本はなぜ開戦したのか

アヴァトレード・ジャパンの実質的親会社があるイスラエルは通常金曜日と土曜日が休息日なのです。

それで、昨日、一日早いのですが、冗談半分で「メリークリスマス」と打電しました。

要件は、来たる年2022年にじっくり取り組んでもらおうと考えていた「不正インターネットアクセス防止策」について、です。

まだ年も明けていないのに、

「出金パスワード」

「MT4/5にログインしましたか?お客様でない場合は、『いいえ』を・・・」

「MyAVA(マイページ)にログインしましたか?・・・」

などのテストを行ってくれていて、それに関する質疑応答でした。

案の定「メリークリスマス」に関しては、完全にスルーをされております。仕事はしてくれています。

イエスキリストさんにとっては、「最後の晩餐」の向かって右端のユダが裏切者だった一方、ユダヤ教徒にしてみればキリスト(教徒)は異端ということになります。

「メリークリスマス」とあいさつされてうれしいはずがありません。

こういう場合に備えて「ハッピーホリデーシーズン」という無難なあいさつがあることを知っていて、あえてメリクリと呼ぶ私はへいくゎいものです。

さて、ナチスドイツとは軍事同盟の関係にあったにもかかわらずその占領下からのユダヤ人難民を助けたとされる杉原千畝はとても有名です。

杉浦ほどではないですが、まさに日独伊三国同盟を手ずから締結した時の外相松岡洋右も、実に積極的にユダヤ人救済に動いた人物でした。しかも、彼は米国で教育を受けたキリスト教徒であったにもかかわらず、です。

それは満鉄総裁時代の松岡の行動であったに過ぎないかも知れませんが、ナチスドイツとの軍事同盟締結後も、「日本は反ユダヤを採らない」「これは日本の総意である」と言明しているほどです。

先週のAVAニュースレター+社長ブログで取り上げた、80周年の真珠湾攻撃ですが、これを扱ったNHKの「昭和の選択」という2時間番組では、

ざっくり言うと(歴史に「たられば」はないと言うものの)

松岡が一蹴した「日米諒解案(野村*提案)」は、のちに最後通牒と解されるハル・ノートに比べたら格段に日本有利な内容だっただけに、

国力と兵力で格段の差がある以上、とにかく対米戦争を避けたいという共通理解をしている昭和天皇とその側近木戸幸一、陸軍海軍首脳部(含む東条英機陸軍大臣→総理大臣)としては、

《我の強い》松岡の暴走を止められなかったのは痛恨の極み(それどころか理不尽なことにそのせいでA級戦犯となっている)ということになるでしょう。

☀☀

いつのころか「失敗学」というのが流行っていましたね。

この番組(「英雄たちの選択」>「昭和の選択」)のレギュラーメンバーのひとりで脳科学者の中野信子さんは、日米交渉さなかの1941年の我が国の政策決定中枢の意思決定について、経済学用語でもあるサンクコスト(埋没費用)やプロスペクト理論を用いてコメントしていました。

これ、まさに、多くのFX(に限らないですが・・・)トレーダーが陥る心理的な罠です。

昭和史<日本史への関心は兎も角、FX教室のような意味合いでも、皆様、是非ご覧ください(NHK+などで動画配信されているようです)。

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おそらくヤマト政権成立以降最大級の「失敗学」について、80周年のこんにち、2時間の特別企画というのは快哉です。

ただ、どれだけ時間をとろうと、客観的で公正さを追求しようと、テレビには限界があります。

いや、テレビだけでなく、司馬遼太郎先生のような、小説家としてだけでなく、歴史家としても優れた天才の著作ですら、不特定多数を相手にわかりやすくという利益を追求すると、どうしても、歴史のストーリー(これ変な表現ですが)には、主役と悪役という構成をとってしまいがちです。

NHK>「昭和の選択」>真珠湾では、先述の松岡洋右こそが、大悪役という烙印を押されています。

しかたないとは思います。が、特に近現代史でこれをやってしまうのはあまりにアンフェアな感じもします。

大悪役を演じさせるのならば、総合的な人物像を描いてあげる必要はあろうかと。ただ、それでは2時間でも足りないということになるでしょう。

松岡が「日米諒解案(野村*提案)」を蹴ったのは、部下であるはずの野村駐米大使のスタンドプレーを詰ったからとか、自らの日独同盟締結という成果とおみやげをもってすれば、対米でもっと強気な講和が可能であると考えたからでも実はなくて、「米国の諒解案(「満州は認める」を含む)が案の全体とは思えない。米国の提案内容はもっと厳しいもののはずだ。野村は全部を自分に報告していないのではないか」ということだったようです(公文書に記録あり)。

この出展はWikipedia経由ですが、WikipediaとNHKとでは、我が強いという松岡の性格(Wikipediaによれば、それは松岡の米国武者修行中の苦労やそこで覚えたコカイン中毒などに帰せられるとの説明もあり)については共通しています。が、対米スタンスということでは、ふたつの説明はめちゃくちゃニュアンスが異なるということになります。

なので、時間があれば、松岡洋右野村吉三郎*については、Wikipediaもあわせ読まれることをおすすめいたします。


2021年12月16日木曜日

学歴詐称の父-真珠湾「奇襲」80周年

年末または年始に戦争のことをときどき書くようにしていました。

2017年の年頭、トランプ=プーチン=習近平時代に安倍内閣は「真田丸」を築けるか?という投稿をしました。

・・・国力が下がり、再び列強の狭間で生き延びるためには、軍事と外交の知恵が必要だ・・・

そのような意味で、前年人気だったNHK大河ドラマを引き合いに出して書いたものです。

ここで取り上げたのが、太平洋戦争開戦のほんの3か月前に、近衛文麿首相や東條英機首相以下、政府・統帥部関係者の前で報告した「総力戦研究所」です。長期戦では間違いなく負けるので対米開戦は避けるべきという具申を、まずは陸軍が、次いで海軍が無視して大東亜戦争に至った、と短くまとめることが出来ます。

しかし、実は、A級戦犯として処刑された東条英機(注)をも含む陸軍も、「総力戦研究所」以前ですら、米国には勝てっこない、と考えていたという事実が、いくつかの歴史書や情報で明らかにされつつあります。

今年の12月8日は真珠湾攻撃からちょうど80年ということです。12月6日が父の命日で、ちょうど三回目でした。墓参りの際に、その墓を建てる際にお世話になった石材屋さんがわたくしの従兄弟(亡父の甥)の奥様の弟ということで、わざわざ集まってくれて、父の遺品を遠路はるばる持ってきてくれたのです。

そのなかに、「高校」時代に使っていた教科書と、卒業論文が入っていました。

実は、父は生前、「自分は義務教育しか出ていない。当時で言うと尋常高等小学校(現在ではだいたい中学校に相当)卒なんだ。」と言っておりました。わたくしの結婚式でもそのように紹介していました。

(逆?)学歴詐称を、父はしていたことになります。その高校というのが、「陸軍通信学校」という名前です。

思い起こすと不可解なことがいくつもありました。父が、妙に東京の地理に詳しかったり、定年退職後ワープロを覚えたような高齢者が地元で高齢者向けにパソコン教室をやったり、家電量販店で販売員が即答できないような質問を連発したり(販売員だけでなく隣に立つわたくしも回答できなかったのですが)。

この「陸軍通信学校」に関して、いまさらながらどんな学校だったのか調べたいと思っても、何故か、ほとんど調べようがないのです。

最近、アヴァトレード・ジャパンを応援してくださっているアフィリエイト・パートナーさんで、元自衛官(幹部候補生)の聡明な若者がいらっしゃいます。この話をしたら、「陸軍通信学校は、こんにちで言うと、開成高校みたいなもんです。」「本来なら、旧制高校(ナンバースクール)を経て帝国大学へと向かう人材だが、現在の中学校を卒業したのち、家庭の事情などでその余裕がない場合に目指す最難関の教育機関のひとつだったと聞いています。」

「陸軍通信学校」≒「開成高校」という評価にはさすがに違和感があるものの、とにかく情報が手に入らず、肯定も否定もできないのです。

所在地だった神奈川県相模原市を扱った産経新聞の記事程度で、元自衛官のパートナーさんの説明と無矛盾ではあるものの、そこまで偏差値が高い「高校」だったかどうかのか調べようがありません。

もしかすると、「陸軍通信学校」の存在自体が辛うじて自衛隊のなかで現代の神話として口頭伝承はされているが、それ以外の情報は、何らかの理由で抹消されてきているのかも知れないと憶測されます。

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さて、本題はここからです。父が使っていた教科書を見ると、時期的には日独伊三国同盟が締結され、日中戦争は泥沼状態、大東亜戦争は開戦前夜という状況ですが、良く言われている言論統制や軍国主義教育というカラーは、ほとんど見当たらないのです。

数学の教科書は、「関数」が「函数」と表記されていることを除くと、現在の指導要領と大きな違いはありません。理科も然り。そして、外来語のカタカナはそのまま使われています(野球で、ストライク、ファウル、アウトが敵性用語として使えなくなった時期に被っているにもかかわらずです)。

ここで最も驚くべきことは、この教育現場が、かつての通説では、対米開戦に最も積極的だった日本陸軍のお膝元であった、にもかかわらず、です。

圧巻は、社会>地理の教科書です。

さすがに、本文では、中国大陸に関する記載が豊富で、ヨーロッパや中東への言及はほとんどないなど、偏りはあります。

が、表紙の裏の地図には、列強がそれぞれどれだけ軍艦や戦闘機を持っているかという数値(とそれに比例した大きさの船と飛行機のピクトグラム)が書かれていたのです。これを見るだけで、陸軍通信学校の生徒たちは、米国や英国(の連合軍)と戦わされることはないのだろうなとまず前提し、そこからモールス信号や暗号作成・解読技術へと学びを進めていったことが推定されるのです。

この教科書が発行されたのは、「総力戦研究所」の日本必敗シナリオよりも遡ります。ということは、「総力戦研究所」をリクルートしたのは、すでに結論ありきであった軍執行部(あえて対米非戦論が主流であったと言います)が有能なコンサルティング会社の役割を果たすためのものであったとも推量されましょう。

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大東亜戦争開戦は帝国陸軍が非合理的な根性論に従って能動的に対米開戦を主導し次いで帝国海軍も追随した。大日本帝国憲法においては、政党政治という議会制民主主義が機能しない名ばかりの立憲君主制であったので、牽制が働かず軍部の暴走を許したことが、致命的な判断ミスの原因であり、よって予想出来ていたはずの破滅的結末へと進んだ。。。

これが、わたくしなりに、戦後教育のなかで学んだ戦前の昭和史です。実際には、中学校の歴史の授業は、このあたりの教科書の最後のほうはやれていませんでした。どうやらどこの中学校も当時はそんな感じだったようです。

わたくしは、高校時代は日本史を選択していなかったので、実は、去年、日本史のトピックスと関連させて、金・銀・銅・・・管理通貨・仮想通貨(暗号資産)を含む通貨・マネー・経済の話を投稿するに及び、いまさらながらに、高校日本史参考書の決定版と言われている山川出版社「詳説日本史研究」(2017年8月第1刷、2020年4月第3刷)を購入しました。

今年の初めから、アヴァトレード・ジャパンのコンプライアンス本部長(内部管理担当役員)として経営に参加してくれている坂根義範弁護士(東京解決工房法律事務所)は、学部こそ違えど大学の優秀な後輩で日本史に関してわたくしよりもはるかに詳しい輩です。

先日、彼と意気投合したのが、山川出版社「詳説日本史研究」の著者(どの先生が書いてどの先生が編集したかは完全には不明)の明治時代への評価があらわれている2点です。

ひとつは、「明治維新論」(P346)。「明治維新を日本版ブルジョア革命と看做す『労農派』と、逆に?絶対主義(王政復古)と看做す『講座派』という具合にマルクス主義学者の間での議論対立があったが、現在から見ると、いずれの左翼も的を射ていない」という項です。

そしてもうひとつが、「明治憲法体制の特色」(P364)なのです。曰く、「制度上、天皇が統治権の総攬者として諸々の大権を握っていたからといって、明治憲法体制を戦後マルクス主義歴史学者などが主張したように『絶対主義的本質をもつ外見的立憲制にすぎない』と看做すのは適切でない」としたうえで、「明治時代には、天皇の最高の相談相手として、『元老』が実質的に集団で天皇の代行的役割を果たしていた」のだが、「大正期以降、元老の勢力が後退するようになると、実際の政治運営においては内閣・議会・軍部などの諸勢力による権力の割拠性の弊害が進み、やがて1930年代には、天皇の名のもとに軍部などの発言力が増大し、いわゆる『天皇制の無責任の体系』が現れ」たとしています。

下線は筆者

坂根本部長とは、昭和史戦前の部は何度でも振り返る必要があるところだという話をしております。この項を書くにあたり、いわゆる幕末「開国」から何度も振り返っているところです。

「総力戦研究所」に言及した2017年からさらに時代は移り、米国はトランプからバイデンへと大統領が変わり、米中の軋みは新しいステージに入っています。日本の政策担当者が、ペリーやプチャーチンと向き合って以降、外交と軍事の両面ではどのように遊泳し、いっぽう内政面ではどのように国民を宥めてきて、こんにちに至るのか?どこはうまく行きすぎて、どこはうまく行かなさ過ぎたのか?確かに何度も振り返ってみたいところです。



(注)ちょうどこの墓参りの週末にNHKスペシャルの再放送が目に留まりました。

新・ドキュメント太平洋戦争 「1941 第1回 開戦(前編)」というタイトルで、まとめ記事の一部がこちらです。

『英米に対して三国同盟が衝撃を与えるのは必然である。いたずらに排英米運動を行うことを禁止する』

東條ら軍の指導者たちは、この時点ではアメリカとの決定的な対立を避けようとしていた。すでに陸軍は100万を超す大兵力を日中戦争に投じていた。その上、アメリカと対立する余裕はなかったのだ。


2021年11月5日金曜日

日本共産党がいる限り自由民主党は安泰?

枝野さんは辞めたが志位さんは辞めない・・・

まずお断りしておくと、わたくしは、小選挙区は立憲民主党候補に、比例区は日本共産党に入れました。

案の定、わたくしの清き一票は死票となりました。

開票速報では、事前調査と出口調査の精度が疑われました。それはともかく、大手メディアは立憲民主党の戦略ミスを指摘、枝野代表は辞任となりました。

しかし、冷静に考えてみると、小選挙区制度を前提とすれば、立憲民主党は、日本共産党とは選挙協力をするかしないかの両極端の選択肢しかない(※)のだと考えると、立憲民主党としては、日本共産党と選挙協力をしてもしなくても負ける宿命となります。

題意の、

「日本共産党が国政政党として這いつくばる限り、自由民主党の与党の地位は安全確実」

というのは、そういう意味です。

そこで、日本共産党に対するアレルギーの本質をいまさらながらに考えてみようと思います。

自由民主党政権にどんな不満があっても、「日本が、中国やロシアや北朝鮮のような国体になりそうなリスクに晒される」よりはよほどましだ、という古典的な風説については、本稿では扱いません。

前回のブログで指摘した「野党がコロナ対策を論点にして具体的に与党を攻めきれない」こと、それに加えて、財務省の矢野事務次官による指摘のとおり、「ばらまき競争」という点でも、経済政策が与野党の対立軸となっていないことを踏まえると、「それでも投票に行こう」という有権者の最後の決め手は、絶対的に安全保障だったのではないでしょうか。

独断と偏見を許してもらえば、日本共産党が安全保障について、正直な具体案を提示していないことが、「がんばればがんばるほど自由民主党の思うつぼ」構造のなかに飲み込まれてしまう理由です。

なまなかなポピュリズムゆえに伝わらない日本共産党の安全保障政策のホンネ

このブログでもしばしば取り上げてきた安全保障上の日本の地理的なポジション、、、

つまり、

故中曾根康弘首相が米国のための不沈空母であると呼んだそれ、、、

は、北朝鮮の核弾頭(巡行)ミサイルの性能向上、中国やロシアの復活、米国の凋落(その象徴がバイデン政権によるアフガニスタン撤退の手際の悪さ)により瓦解しつつあります。

そのなかで、日米軍事同盟と日本共産党が呼ぶ安保条約破棄は、確かに選択肢のひとつなのですが、それにかわって、①中国と組むのか?②ロシアと組むのか?③自衛隊を強化かつまたは改変しも保有し大国たちから自立するのか(武装中立)?④護憲を堅持し、非武装中立でマハトマ・ガンディーの非服従・非暴力主義でいくのか?はっきりして(させて)いないことこそ問題の本質だと考えています。

一貫性という点において他党の追随を許さない日本共産党の長い歴史のなかで、②ロシア論を前提とする指導部であった時代は少なくとも過去にはあったと思われます。この点では、日本に限らず世界中の共産党が「インターナショナル」の幹事であるソビエトロシアの共産党から、ヒト(スパイを含む)・モノ・カネが送られていたものと考えられます。日本だけでなく多くの資本主義国で日本の治安維持法と同様の反共防共政策がとられていたことと符合します。いっぽう、①中国論は比較的非主流であり、こちらはどちらかと言うと、(左派)社会党の系譜です。中ソ対立こそが、高度成長期の日本で社共共闘という革新連合が成立しなかった大きな要因ではなかったかと推察します。

ただし、これらは消し去れないかも知れないけれども過去の経緯であって、現在は、指導部も①中国論にも②ロシア論にも支配されていないのではないかとも推察します。この点では、代々木の立派な本部ビルや、歴代幹部の豪邸がしんぶん赤旗の売上だけで果たして建造できたかどうか疑わしいという反論があることも承知しています。

以上は推察に過ぎないですが、兎に角肝心なことは、③か④かをはっきり示せていないことです。

現実的には③「核武装して自衛隊を強化し諸大国から政治的軍事的独立を果たす」を臆せず正直に堂々と語ることこそ日本共産党の生きる道だと、わたくしは思います。それを胡麻化すことがポピュリズムだと指導部が思っているなら大きな間違いでしょう。

ところで、③「核武装軍事強化」を指導部がカミングアウトしてこなかった副反応として、④の理想主義を本気で考えている(考えようによっては気の毒な?)党員や支持者も、実は少なからずいらっしゃるのではないかとも推察します。

あえて言えば、これが絶対に荒唐無稽だと唾棄するべきだとは思いません。孤島や山深い里で、天然資源もなく、誰も耕したくないような崖に、這いつくばって生活することで、お互いの暴力を避けたコミュニティーを作ることは絶対にありえないとは思えません。

ただ、日本の国政レベルで、それを多数派の意見としてまとめていくのは、現代ではほぼ不可能です。

日本共産党には目指すべきロールモデルがある!

さて、公明党という政党があります。創価学会という宗教団体を基盤していることが特徴ですが、創価学会以外にも日本には国会議員を出せそうな力がある宗教団体はいくつかはありそうです。なぜそれをしないのでしょうか。

宗教団体にとって、政治に関与し、政治力を持たないまでも少なくとも政治に守ってもらうという欲求はあると思います。ただ、政党を作り、政治家を輩出し、選挙で国政に送り込むというのが政治力を持つ唯一の手段だとは考えていないからだと思います。

日本共産党が、下から上まで、本気で、④の理想論を考えているのなら、十分な政治的潜在力を持った宗教団体の素質があります。譬えて言えば、蓮如から顕如にかけての時期を除く浄土真宗本願寺派がそれです。いまのところ本願寺派は創価学会の真似は(敢えて?)していません。では、本願寺派の指導層は、創価学会や公明党の与党としての活躍を、指を銜えて見てきたのでしょうか?そんなこともないと思います。

プラグマティックに③「核武装+自衛隊強化」で行くのか?親鸞聖人やマハトマ・ガンディーを目指し④「非武装中立」で突き進むのか、そしてあわよくば(太平天国を建てた)洪秀全のアプローチを踏むのか、はっきりさせる時期でしょう。

日本の政治や選挙をじつにつまらないものにさせている戦犯の少なくともひとりがポピュリズムの仮面を被った日本共産党であるという自覚を持ってもらいたい。これが死票を投じたわたくしからのエールです。

※日本共産党以外の野党との関係においては必ずしも選択肢は両極端ではありません・・・なぜでしょうか?

2021年10月22日金曜日

「事後検証なしの雲散霧消」は許されないコロナ行動規制

 ワクチン2回接種率68%の二国の比較




日本と英国のグラフを並べており、横軸(期間)はぴったり合わせていますが、縦軸(人数)は合わせていません。英国の人口は日本の約半分です。にもかかわらず、縦軸の目盛りを見てもらうと、英国のコロナ禍の相対的悲惨さが良くわかります。感染者数の規模でもそうですが、死者数のほうがさらに酷いです。


これがまず押さえておかねばならない事実で、まずは①人種の違いという要因が考えられ、さらに②医療態勢の違い、③人口動態の違い、④貧富の格差なども追加要因として考えられるでしょう。①~④のどの要因も、好奇心を擽るテーマですが、きょうのところは、雑ながらデータから読み取れそうなことに集中するため、省略させてください。


まずはワクチンです。ワクチンをすでに2回接種した人が総人口に占める割合は、本日2021年10月22日本稿執筆時点においてぴったり68%と、日英で等しいのです。が、正確にはこれらのグラフに投影できませんが、接種が進んだ時期は、英国のほうが日本よりかなり早かったことが知られています。


なので、これらのグラフの対比は、イギリスのコロナ感染の再拡大が、ワクチンの「賞味期限」切れを意味する可能性があるということです。一方で、ここ3か月、イギリスは、感染者数こそ急増しているものの死者数はそれほどでもない(ただし、日本の第五波レベルではある)というのも、「ワクチンには、少なくとも、(重症化率や)致死率を抑える効果はある」という「定説」と矛盾しないように見えます。

デルタ株発祥の国インドでは何が起こっていたのか?

日本ではデルタ株直撃の第五波が過去の波に比べて極端に大きかったのですが、まだワクチン接種が十分行き届いていなかった時期も含めると致死率は過去の「小ピーク」に比べると低く抑えられていることもわかります。これには、医療機関の尋常でない努力と治療技術の急速な進化も貢献していますが、ウイルスが進化(<突然変異)により感染力を高めつつ弱毒化したことも要因と考えられます。


この要因にフォーカスすると、英国の現在の感染拡大が致死率を伴っていないことが説明でき、ワクチンの効能とその限界も浮き彫りにされます。つまり、これまでのワクチン(少なくともモデルナ型とそれを倍に薄めただけのファイザー)は、ウイルスの進化には対応できない可能性かつまたは賞味期限が期待されていたより短い(6ヵ月程度)可能性があり、致死率抑制効果はあるかも知れないがウイルスの進化の影響に紛れているという仮説です。


では、ワクチン接種が日英レベルまで追い付いていない国のひとつで、デルタ株の発祥の地であるインドのグラフも見てみましょう。

インドについては、人口も多いが、縦軸の目盛りもすさまじいうえ、とくにデルタ株ピーク付近などで、日英などと異なり、感染者数も死者数もちゃんと捕捉されていないのではないかという疑惑があります。それでも、ワクチン二回接種が20%に留まっている段階での急速な収束(終息)は紛れもない事実で、日本の9月以降の収束(終息)の理由(まだ日本の「専門家」が説明できていない)を解明する鍵がここにありそうです。

 

さきほど、日英比較だけから建てた仮説(ワクチンの効能とその限界)は、インドの過程を見ると、説得力を持ちそうです。留保条件としては、インドにおけるデルタ株のピークが公表されているデータを遥かに上回る酷い水準で(上述の捕捉率の問題)、実は集団免疫が出来てしまっている可能性あり、だとすると、私の仮説は棄却される方向に働きます。

 

今回のグラフも、世界的なデータが比較的整理されているニューヨークタイムズからとりました。同紙は、ワクチンをどちらかというと賛成しているメディアであることを申し添えます。また、副反応や、接種直後の死亡者の検分に関する問題、若い世代の接種の費用対効果の問題については触れる時間がありません。これも省略します。

 

さて、ここからが本題です。ワクチンはともかく、行動制限(飲食店の営業時間や「禁酒令」など)には意味があったのかどうかです。

何故「専門家」は事後検証をしてくれないのか?

さきほどと同じ英国に関して、別のグラフがあります。


ここから直ちに「規制解除が感染拡大の元凶だ」という決めつけは間違いであると言いたいわけではありません。これまでワクチンについて「群盲象を撫でる」レベルの分析からがんばって仮説を立てましたが、このようなデータは国家機関に採用された専門家であれば十分に入手できるはずで、それらを重ね合わせれば、わたしのような素人が建てた仮説は検証または反証が出来るはずです。ただし、問題は、頭の良い偉いひとは、自分たちが決めたことや出した答えが実は間違っていたと言いたがらない性格の人物が多いことです。そこはオンゴーイングの未曽有の病原体なのだから、国民も(国を率いる「賢者」たちの過ちを)赦してあげれば良いと思います(飲食店なの対面エッセンシャルワーカーにはいまからでも良いから「残債」を補償すべき)。それがやはりできない構造だというのなら、野党は別の専門家チームを作り、深層を究明して、いまこそ意義あるまつりごとをしてほしいものです。

暫定的な「まとめ」

限られたデータから、能率よく、大胆ながらも、細心に検討したつもりで、それゆえに、いつも以上に見通しの悪い論稿になってしまっていると自覚、反省します。

細心さを犠牲にして、仮説へと急ぐならば、

① ワクチンの有効期限は半年程度
② 行動制限の多くは無意味

注釈をつけると、①については、本来ミクロレベルで実験や治験によって明らかにされるべきものですが、検証に時間が掛かるという言い訳と、ワクチンの効果が限定的であるという反証を避けたいという動機が働いて、なかなか情報が手に入らないという問題意識がありました。それで、やむを得ず、入手可能なマクロデータ(ワクチン接種時期の「塊」が、日英で大きくことなる点に注目)からの推測でまず仮説を建てたということです。

「感染そのものを防ぐ効果は限定的でも、重症化率や致死率を抑制する効果は続く」という「定説」については、成り立つような成り立たないような微妙な灰色です。インドのデータを重ね合わせてもまだ白黒はっきりとはしません。

この項で、ワクチンという言葉を、(自然感染によるものを含めた)抗体と言い換えてもほぼ成り立つかも知れません。

抗体≠免疫となる要因としては、抗体量の減少だけでなく、病原体側の変異もあります。抗体量の減少と免疫の弱さが比例するわけでは必ずしもない点もいまではよく知られています。

よりちゃんと検証したいのは②についてですが、まだまだデータが足りません。しかし、言いたいことは、日本のデータだけを眺めていては、「行動制限の緩和と強化が、感染者数の増減に相関している」という印象論に引きずられてしまい、行動制限論者の思うつぼになるが、海外データを重ね合わせれば、見えてくるものが随分異なってくるということです。

行動制限がほぼなかったスウェーデンの同様のデータが欲しいところですが、残念ながらありません。代わりに、やはりニューヨークタイムズ出典で、昨年2020年、例年よりもどれだけ人が死んだかというグラフを、行動制限(この場合はロックダウン)へと政策転換した英国と対比して、示します。

せめて、このデータの今年2021年版が手に入れば、視界が良好になるのにと、隔靴掻痒するところです。

そして、いま一番開示が求められているデータは、日本でのデルタ株終息後、英国での行動制限解除後の、感染者数・死亡者数の年齢構成とワクチン接種履歴構成(のそれぞれの推移)です。

日本、イギリス、インド、、、ワクチン、行動制限、と、超駆け足で見てきました。行動制限と一言で言っても、完全なロックダウンから、飲食店などの業態別休業要請、謎のアクリル板や人数制限、昼呑みOKだが夜呑みNG、片や、マスク、リモートワーク、不要不急の外出云々、越境制限などさまざまなレイヤーがあります。これらすべて十把一絡げにして、是か非かというのはナンセンスです。以上も以下も個人の見解に過ぎませんが、私は、コロナ禍の下、風邪を含めまったく病気をしなかったのは独りマスクのおかげだという実感があります。仕事は例年どおり厳しく、厭なストレスは例年以上にあったことからすると、2年弱でいちども風邪をひかないということはかつてなかったので、行動制限がなくても、マスクだけは外さないようにしたいと思っています。


2021年10月15日金曜日

NTTドコモの通信トラブルから何を学ぶべきか

 「ネットが繋がらない?」「ネットが落ちた?」でも、その前に

 

「ネットが落ちた!」のネットはインターネットの略ですが、これはデータ通信の話です。「もしもし電話※」を含めると通信ネットワークという話になります。そして、ネットワークという言葉は、通信に限った話とはならず、電気・ガス・水道・・・鉄道などのインフラ、はたまたMLM(マルチレベルマーケティング)もネットワークと呼ばれたりします。

 

マルチ(商法)とも呼ばれるMLMは、措くとして。

 

スマホで、LINEFacebookが突然使えなくなったときに、いささか条件反射的に「ネットが落ちた」と反応してしまいます。が、実は、

 

    インターネット回線が落ちたのか?

(ア) ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)のシステムトラブル

(イ) 光回線キャリア側のトラブル(ISPが委託契約しているインフラで、海底ケーブルなども含まれる)

    (携帯)電話網が落ちたのか?

(ア) キャリアごとに独立(例外あり※※)

(イ) インターネット回線が使えない環境(Wi-Fiが届かない、Wi-Fiの契約がない場合のバックアップとしての35G回線など)

    アプリが落ちたのか?

(ア) 2021103~4日に発生したFacebookの世界的なシステム障害

    スマホそのもの(携帯電話というハードウエア)が壊れたのか?

 

これらのどれに該当するかが、すぐに判別できないケースもあります(特に上記④の可能性を含めると、直ちに原因を特定することが不可能と断言できます)。

 

極端な例とあげると、タクシーアプリで、タクシー料金の支払いをしようとしてエラーが繰り返されたとしますと、アプリの故障なのか?スマホ側の故障なのか?タクシーのリーダー側の故障なのか?同リーダーが接続するはずのネットワーク回線の故障なのか?タクシーによってはWi-Fiを会社まるごと契約している場合もあるかも知れませんが、携帯キャリアの回線に依存しているかも知れません。それがNTTドコモであった場合、またはWi-Fiのルータの先が(残念ながら)ドコモ光だった場合、どうあがいても通信は復活しないわけです。

 

しかし、NTTドコモから、障害報告の公表がない限り、ひたすらほかの原因を探って悩んでしまうことになります。質の悪いことに、スマホがつながらないので、NTTドコモからの障害報告が正直にタイムリーになされたとしても、それが届かないわけで、踏んだり蹴ったりです。

 

携帯ネットワークにも「振替輸送」を

 

かく言う私はNTTドコモのユーザーです。昔、お世話になったお客様でもあります。厳密に言うと、SIMカードはNTTドコモですが、スマホ本体はIIJという格安スマホ会社で取り扱われているAsus製のものです。ですから、昨夜は移動中著しく仕事に障害が出ました。

 

ヒューマンエラーはどこでも起こりえます。ドコモでも起こりましたが、弊社でも起きています。メガバンクでも、Facebookでも起きています。再発防止と同様に重要なのがバックアップの態勢です。

 

冒頭で、ネットワークは、通信だけでなく、電気・ガス・水道・・・鉄道もそうであると申しました。

 

電気すなわち電力の自由化で検討されてきた制度設計や、鉄道で現に実行されていることが参考になると思うのです。

 

まず、鉄道がわかりやすいです。鉄道キャリア側のヒューマンエラーは稀で、多くの場合、人身事故や自然災害などで、鉄道のある路線が不通になることはよくあります。この場合は、振替輸送が行われますが、あらかじめルールが決まっていて、トラブルの毎に、ライバル会社間で協議(する時間)を要するようなことはされていません。ルールには、〇〇電鉄の●●線が止まったら、△△鉄道の▲▲線で代替輸送する、という合意書が、線(毎)というよりは面(的)に決まっていて、さらにその場合の弁済スキームも決まっていると思われます(鉄道会社間の弁済ルールについては、ネット(この場合はインターネットの意味)で調べようとしたのですが、よくわかりませんでした。)

 

日本の携帯のネットワークでは、鉄道のネットワークにおける振替輸送に相当するバックアップ機能がまったく欠如していると言わざるを得ません。

 

冒頭のほうで、「ネットが繋がらない?」「ネットが落ちた?」でも、その前に、の場合分けで、②(携帯)電話網が落ちたのか? ()キャリアごとに独立(例外あり※)

 

と書きました。この※例外というのは、ローミングが国内でも行われている稀な例ということなのですが、ワイモバイルが使えない地域ではソフトバンクモバイルの低い帯域を貸し出しているとか、楽天モバイル(格安でないほう)が使えない地域ではAU by KDDIが貸し出されることになっているなど、親子間やアライアンスによる固定化されたバックアップ態勢であって、緊急時の振替輸送にはならないのです。

 

考えてみると、携帯キャリアと資本関係のないスマホ製造業者の側は、ローミングにも、携帯版振替輸送にもいつでも対応できる仕組みが備わっています。SIMフリー携帯の存在やダブルSIM携帯の存在は、携帯電話業界が適正に競争し適正に協働すれば、いつでもインフラの価値を高める準備が出来ているということです。

 

もちろん、NTTドコモの障害時に、そのユーザーがAU by KDDIとソフトバンクモバイルの2社に振り分けられてしまったらオーバーフローしてしまうかも知れません。これは直ちに分析できない課題ですが、そのあたりのことも気にしつつ、以下進めていきたいところです。

 

ちなみに、インターネット回線のことだけを言えば、(Wi-Fi)ルータから先の領域、すなわちISPと光ケーブルキャリアとの関係は、固定化された一対一関係では必ずしもなく、通信障害だけでなく負荷分散も勘案して、多対多関係が融通無碍に構築されて久しいことを申し添えます。インターネットの世界に限れば、大都市圏の鉄道網のモデルに近いものが自然発生的に出来てきていたわけです。

 

道半ばの電力自由化の制度設計のアイデア

 

ところで、私がNTTドコモのユーザー(を辞めない)でいる理由がもうひとつあります。これは山で繋がりやすいという特性です。つまり、基地局の偏在が理由になっています。北アルプスや南アルプスの山小屋のホームページを見ると、多くは、「NTTドコモはつながりやすいですが、それ以外は云々・・・」と表現されていることが多いのです。

 

一般的に、企業同士の競争が厳しいほうが、その業界が提供する財サービスの価格は下がると考えられます。が、菅義偉前首相が吠えていてくれていたとおり、日本の携帯料金は割高です。

 

ここらあたりは詳しくないので、読者の皆さまからの、駄目出しツッコミを大歓迎したいところです。携帯キャリアは、B2Cの末端においては、SIMロックや、番号ポータビリティの使い勝手の悪さなど、寡占利益が確保され気味だが、基地局の建設競争は熾烈で無秩序である。前者の寡占利益が、後者がもたらす高コストの財源になってはいまいか、と。

 

似たことが電力業界についても言えます。

 

電力の自由化が進んできていることは、近年、肌感覚としてはあります。東日本大震災をきっかけとした太陽光発電などの固定価格買取制度、電力の小売市場への新規参入などです。後者は、電力とガスの相互乗り入れだけでなく、異業種からの参入もあり、価格破壊とまではとても言えませんが、末端価格に若干の柔軟性が出てきています。小売段階では2000年に始まり、2016年に完全自由化となったいっぽう、参入障壁を低くするという観点で、世界中で検討されてきた発電と送電の分離については、日本ではようやく2020年に法制化がなされつつ、現状では実施例はないというのが実態です。

 

この発送電分離反対の論陣は、もちろん既存電力9社も含みますが、どうやら一部のMMT信奉者も、「そんなことをしたって電力料金は下がらない。ドイツは血税を投入して無理矢理発送電分離を実現維持している」という論法のようです。

 

発電事業に規模の経済があった時代においては、電力の地域独占が、細長い日本列島を縦割りになされていたので(例外あり)、発送電分離のメリットが少ないという論法も当たっていたような気もします(例:中国電力の発電部門が、九州電力の送電部門や四国電力の送電部門に送電費用の相見積もりを取るというのは現実的ではない、など)。

 

コジェネやオンサイトの発電事業が採算にあう状態になってきて、さらに再生化エネルギーも固定価格買取制度という補助輪なしで採算にあってくるのであれば、上記の、発送電分離への抵抗は、意味を失ってくるでしょう。

 

国「内」ローミングって出来ないの

 

実に話が迂遠になっていますが、要するに、携帯電話にとって、基地局建設は、電力産業における送電部門のように、切り離されたうえでの競争のほうが、効果的である可能性が強い(より精緻な分析は必要だが)ということであります。

 

(中)山間部の基地局建設は、協力したり、分業したりして、お互い競争しているどの系列の携帯会社にも公正な競争価格で接続を許す。平地や都会の基地局建設は、ビルやその陰などのデザインを考えて、そのようなネットワークを作ると、携帯会社からたくさんの受注ができるかで競う、などです。

 

発送電分離反対の守旧派の論陣からは、そんなことをしても携帯料金は下がらないよと批判されるかも知れません。そこは直ちに結論は導けないかも知れませんが、本日の論点は、「ネットが落ちないための保険制度」なのです。

 

川上から川下まで一企業集団がすべて押さえているというのは、明治の殖産興業の時代には当たり前だったかも知れません(例:製紙会社が山林も保有する)。飲食業で言えば、民宿の御主人が猟師や漁師で、内儀(おかみ)さんがワイナリー経営者(兼ソムリエで1年の半分をフランスやイタリアでワインの輸入までしている)というのは格好良くて理想的です。現実的には、どんなに個性的で素晴らしいシェフでもソムリエでも、食材や酒の調達は、問屋さんや酒屋さん(さらにその先にインポータさんが存在)に任せて、垂直分業による効率化を図っているのが現実です。

 

先の、ISPと光ケーブル会社の関係のように、垂直分業が自然発生的に定着していくのが、ほとんどの産業にとって自然な姿だと言えます。

 

しかし、言うは易し。これは、銀行業界と大蔵省銀行局との関係然り、通信業界と郵政省との関係然りで、業界を守ってきたような?苛めてきたような?微妙なしがらみが複雑化して凝り固まった堆積物を綺麗に再構築するのは簡単ではないでしょう。

 

※最近影が薄い固定電話網(銅線で出来た電話線と交換局からなるネットワーク)に、携帯電話の3G4G5Gと表示されるもしもし電話とショートメールサービスです。

2021年9月10日金曜日

バイデン大統領版のワクチンパスポート

日本時間で本日の未明、米国のバイデン大統領は、過去最強のワクチン接種率改善策を発表しました。従業員100名以上の企業経営者に、従業員へのワクチン接種または週一の検査を義務化し、違背した場合には1事案あたり罰金1万4000ドルなどと報じられています。


先ほどまで、私の横で焼き魚定食を食べていたイギリス人の科学者は「バイデンは遂に気が狂ったか?」とつぶやいていましたが、それはさておきます。


以下私見ですが、バイデンのこの動きの背景は二つあると考えます。ひとつは、支持率の急速な低下、もうひとつは感染状況の再拡大です。


支持率は、前回のメーリングリストで話題にしたアフガン問題がきっかけになっています。米ABCというやや民主党寄りとも言われるキー局のサイトで以下のようになっています。

https://projects.fivethirtyeight.com/biden-approval-rating/


このサイトはなかなか秀逸なのです。戦後、トルーマン大統領以降のすべての大統領の任期中の支持率推移を見ることが出来、それとバイデン現大統領のこれまでのチャート(まだ短い)と比較できるようになっています。

戦略の巧拙は兎も角、バイデン氏が起死回生を図ろうとしているという見方はたぶん間違っていないでしょう。

さて、問題は、「ワクチン接種率伸び悩み」が、感染再拡大の根源であるとの決めつけについてです。

これは、日本の現状に照らしても、意見が分かれるところだと思います。冷静に見れば、①ワクチン接種の伸び悩みも要因として考えられるし、また②ワクチンが効かない変異種が(次々と)現れていること(【注意】これがワクチン接種者を回避すべく突然変異が進んでいるからなのか、ワクチン接種が進んでいない地域でむしろ感染力や毒性の強いそれらが発生しやすいのか、まだ科学的な結論は出せていないと言えます)、③変異種に対して効くか効かないかにかかわらずワクチンの効果が当初の期待より長続きしていない、さらには④(上記②③の可能性にもかかわらず、二回目の接種を終えたひとがマスクを外しがちであること)など、複合的な要因が考えられるからです。

新型コロナウイルス感染症の米国の現状【ニューヨークタイムズの無料開放コーナより】

 

さて、どれ(とどれ)が正しいのでしょうか?それを答えるのが今週の目的ではありません。

 

個人的には、②と③の、ワクチンへの過度な期待を修正するべき時期になってきている今に及んで、バイデン氏がむしろワクチンに突っ込もうとしていることにまずは驚いたのですが、そのあと更に驚いたのが、このニュースがもちろん複数の媒体で大きく取り上げられているところ、ニューヨークタイムズとウォールストリート・ジャーナルで読者からのコメントの内容がまったく異なっている点なのです。

 

去年のトランプ対バイデンの大統領選で、米国はますます「分断」したと言われていましたが、コロナによってとどめを刺されたと実感しました。

 

本日10(金)午後4時の時点で、ニューヨークタイムズのほうの記事

BidenAsks OSHA to Order Vaccine Mandates at Large Employers

には320件のコメントが読者から寄せられているのですが、ざっと見ると、バイデン宣言を賛美するものがほとんどなのです。いっぽうで、ウォールストリート・ジャーナルの

BidenBoosts Vaccine Requirements for Large Employers, Federal Workers to CombatCovid-19

には、何と5200件を超えるコメントが。。。さすがにこれは読み通せませんし、正直書き込みのスタイルというかテイストも、こっちまで頭が狂いそうになるクオリティのもので満ちています。ざっと、バイデンを罵る意見は、すべてということはなくて、5割から6割という感じです。

 

ちょっとショックだったのは、バイデンのこの動きを冷静に批判するまっとうなロジックもあろうかと思うのですが、キャッチ―な言いがかりばかりが目立ち、「ワクチン頼みを修正するべき時期に逆行している」という真っ当な意見は、共和党支持者らしいひとたちからはちゃんと聞こえてこない(つまり彼らはマスクもしたくない)という現状なのです。

 

私は、焼き魚定食食事中のイギリス人研究者に、「かくして米国は南北戦争時代へと逆行した」と感想しました。

 

共和党支持者と思しき読者のWSJへのコメントのひとつが「病院を占拠しているのはワクチン未接種者だけではなく肥満体(ゆえ重症化した患者)だ。ワクチンを強制するならダイエットも強制しろ。」

 

民主党支持者と思しき読者のNYTへのコメントのひとつにはこんなのがありました。共和党が強い地域で大勢がマスクをしない自由、ワクチンを接種しない自由、ソーシャルディスタンスをしない自由を謳歌している現状に対して、「1940年代の米国がこんな態度だったら米国は第二次大戦に勝てなかっただろう。1950年代・・・米国民はいまだにポリオと戦っているだろう。1960年代・・・月に行けなかっただろう。」

 

なお、ワクチンの費用対効果を直視したコメントについては、誤情報の可能性もあるとして、WSJ側で削除している可能性(それに対する怒りのコメント=WSJCCPと一緒だ・・・それはないでしょう、とか)。

 

私が十分に公平で偏見がないかどうかは立証できませんが、ワクチンに対して慎重に情報を集め分析を試みている側だと思っています。現状のワクチンの接種直後の副反応や将来の未知のそれらを対価として、十分な効果が得られるかどうかがポイントで、これはワクチン賛成派として有名な数学者高橋洋一さんもYouTubeで繰り返し言っておられます。

 

さらには、前回メルマガでご指摘したワクチンとマスクに共通する「公共性」というのがあります。上記の将来の未知の副反応というところが不気味ではありますが、公共性に照らした公平感ということで言えば、ワクチンを打っていたのに罹ったひとの医療費は(保険+)税金で補償し、ワクチンを打たずに罹ったひとの医療費は自己負担(生理的に打てないひとがいるから例外措置あり)という枠組みは大いにありうると思うのです。ただ、この自然な発想に進まないのは、やはり、何かあるのかも知れないですね。



2021年7月30日金曜日

日本のトップアスリートたちは偉い!どうするワクチン?

子供の頃、ソビエト社会主義共和国連邦、略してソ連という国がありました。体操をはじめ、オリンピックの度に、金メダルを量産していた記憶があります。いま、そのビジネスモデルを採用したのが、中国です。と、今朝のニューヨークタイムズ紙は書いています。


金メダルの数で、中国が日本を抜いた。その理由は、という件(くだり)です。リベラル派メディアにして、旧ソ連型戦略の指摘を読んで朝から爽快でした。


ざっくり言えば、人口で、旧ソ連は日本の二倍、中国は(除く台湾・香港、含む新疆ウイグル「自治区」でも)13倍なのですから、追い付かれたところで、どうってことはありません。


「中国の大衆は、自国のオリンピック代表の『犠牲』をだんだんと見るに見かねてきている」とは、同新聞の主観か、客観的な取材の結果か?日本の場合は逆に、ごく一部と信じたいですが、心無い匿名の誹謗中傷の被害が、ただでさえ独特のストレスのあるトップクラスのアスリーツに対して及んでいるわけですから、もっともっと『犠牲』の意味を考えてみたいところです。


びっくりするほど多くの金メダルのなかで、柔道の大野将平選手のインタビューが心に残っています。曰く、


「賛否両論あることは理解しています。ですが、我々アスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば、本当に光栄に思います。」

「オリンピックは自分にとっては楽しむ場所ではない」

「今後もやはり自分を倒す稽古を継続してやっていきたい」


(てにをは正確でないかも知れませんのでお許しください)そこには修行僧としての孤高なひとりの人間しか見えて来ません。


国家の体制や予算で金メダルのためには手段を選ばない国がそこここにあるなかで、自分と戦って成果を収めている日本のトップアスリートは偉いです!


「専制国家と民主国家は、ガチンコ勝負したらどっちが強いか?」というのは、紀元前のトゥキディデスが描いたアテネ対スパルタの戦いを含め、決着していません。第二次世界大戦を「自由と民主の、独裁と隷属に対する勝利」と呼ぶのは嘘の歴史を学ばされた結果です。


しかし、ワクチンについては、打つか打たないかは、自分で決めたいものです。


残念ながら、「モノ書き」を稼業にしているひとは、執筆料やページビューを意識しなければならないので、「誰も打たねばならぬ」か「誰も打ってはならぬ」か、極端な言動に走りがちです。大事なことは、何が検証されていて、何が(検証されなければならないのに)されていないかを冷静に見ることです。


往々にして批判されがちな行政ですけど、厚生労働省の情報開示は、相当ちゃんとしていて、ワクチンのこれまでの治験の内容、副反応の実態について開示されていて、不都合な部分の黒塗りは事実上問題ない感じです。


むしろ、地上波のワイドショーを含む大手メディアや、フェイクニュース主がうじょうじょいるSNSのほうがよっぽど質(たち)が悪いです。


ワクチンに対する懐疑のない報道には、2度の接種率の高い、イスラエル、セイシェル、英国、アイスランド、モンゴルなどなどの現状をちゃんと加えるべきだと思いますし、ワクチン絶対反対派も、ワクチンは人類抹殺計画でその首謀者は誰某という有名なビリオネアだとか、注射の中身にはマイクロチップが埋め込まれていてGPSで云々だとか、そういう低レベルのデマや陰謀論に与(くみ)すると、このひとたちは人類の未来のことを考えているのか、新興宗教を立ち上げたいだけなのか、わけわからなくなってしまいます。


旧ソ連や中国はまだしも、フランスでマクロン大統領が「ワクチンパスポート」法案を(僅差で)通してしまったのに続いて、フィリピンではデュテルテ大統領が「警官は路上のワクチン未接種者を自宅軟禁すべし」という命令を出したとか、ワクチン差別どころか、ワクチン・ファシズムが、蔓延しはじめていることが気になります。


Google愛用家としては、ワクチン未接種者は出社に及ばずというのも残念な話です。


経済学の言葉で、公共性とか、外部性というのがあって、これをネットで調べると、マスクの事例が出てきます。同様に、ワクチンにも公共性や外部性があると考えられるので、パンデミックのときに、ワクチンやマスクは各々の自主的な判断で、というのが絶対に正しいとは言い切れないのは確かです。


しかし、これは日本の政府だけではなくて、米国や英国など、主要な先進国も然りなのですけど、過去1年半やってきた、ロックダウンや、それよりは緩いが飲食業・旅行業・プロスポーツやエンターテイメント従事者に理不尽な犠牲を強いてきた緊急事態宣言やマンボウなどの政策効果と政策費用がどうだったのかという検証がまったくなされていないのは甚だ問題です(ABテストが出来ないので簡単ではないが、それをどうにかやるのがプロ)。これをやらずに、緊急事態宣言の早期終了が失敗だったとか、現在の感染者増加はオリンピックを敢行したせいだとか言い切るメディアの世論形成もまた、専制国家のワクチン・ファシズムと五十歩百歩です。


新型コロナウィルスの現状を、時系列的かつ横断面的に見てゆくと、


感染の拡大と収束は、強制的な人流への規制と緩和のサイクルではなく、耐性のある新型株(突然変異種)の出現による影響のほうが高いと考えられないか?

耐性のある新型株(突然変異種)の出現のペースは、新型コロナウィルスが世界的に認められた2020年当初は、SARSやMERSからの推測で、インフルエンザウィルスほどではないと考えられていたが、実は同程度で、今後も未定ということではないか?

抗体の有効期限は、時間をかけて実験または治験をするしかない(頭の良い人が計算して示せるわけではない)ので、ワクチンの有効性について断定するのはそもそも間違っていないか?


これらの疑問に対して、ワクチンを推奨する立場からは、「わからないものは確かにわからない」という正直な回答を含めて、これから接種を検討するひとたちに、考える材料を与えるべきです。


たったの数週間前までは、英国やヨーロッパでは、ワクチン接種が、日本と違って、急速に進み、各国ロックダウンを解除し、テニスの全英オープンも、サッカーのUEFA EUROも、そう言えば我らが大谷翔平選手大活躍中のメジャーリーグも、満席の熱狂のもと行われ、これに比べて、日本は、東京オリンピックをやると「決まって」いたのに、何故ワクチン接種をこれほどまでに遅らせたのかと怒り嘆いたスポーツファンもいたと思います。


四面楚歌、満身創痍、這う這うの体の現自民党政権でありますが、わたしは政権ブレーンのなかにはまともなひとも居て、ワクチンの調達力があっても、青壮年への接種は慎重に時間を稼いだほうが良い。その間に他の先進諸国の結果が出てくるはずだ。オリンピックを目指して拙速にやることは可能だがやるべきでないと進言した慧眼の持ち主がいたのではないかと推測します(根拠なし)。


繰り返しますが、マスクやワクチンには公共性・外部性がある点は留保するとして、自分のことは自分で決められる国に住みたいものです(フランス、フィリピン残念過ぎます)。メッセンジャーRNAワクチンたるや、原子力や常温超電導や暗号資産並みの人類の英知ですが、副反応を見るにまだまだ昭和の頃のはしかの予防接種と変わりがなく、はしかほどの抗体の有効期限が検証されていないところが現状の問題点。これから1-2年、この議論は否が応でも深まらざるを得なくなってくる、というのが筆者の予想です。


2021年4月7日水曜日

「見ざる聞かざる言わざる」の米国株マーケット

 

クイズです。以下は何のチャートでしょうか?




ビットコインでも、米ドルでも、米国株ではありません。ちなみに、出典は、ウォール・ストリート・ジャーナルです。答え合わせは後ほど。

 

2021年の第一四半期、金融市場の話題をさらったのは、FXよりも、米国株だったのではなかったでしょうか?

 

キーワードは、ゲームストップ(Gamestop)、レディット(Reddit)、ロビンフッド(Robinhood)です。

 

ゲームストップ「事件」については、

 

令和3年2月4日万国の零細投資家、団結せよ_ゲームストップとキングオブEAでご説明しました。その事件現場だった「株式注文無料アプリ」運営会社ロビンフッドが上場してしまいました。

 

「万国の零細投資家」と、カール・マルクスを真似て呼びかけましたが、日本にお住まいの投資家は、「ロビンフッダー」にはなれません。ロビンフッドがやっているのは、アプリの運営どころか正真正銘、証券会社<第一種金融商品取引業、です。日本に上陸できないものでしょうか???上陸されたら困るという大手証券、オンライン証券も居そうです。

 

ゲームストップ「事件」のころ、わたくしは、エドワード・スノーデンの自伝を読んでいました。

 

スマホのアプリが、SNSだろうが、SMSだろうが、ゲームだろうが、無料があたりまえなのは(例外はあると信じたいですが)、広告収入やプレミアム会員からの料金徴収だけでなく、諜報機関へのデータ販売によるものだと言われています。まぁ、わたくしなんかは、CIANSAに目を付けられることはやっていないので(中国共産党は困るのでLINEをどうしようか迷います・・・)、ランニングアプリはいまでも平気で使っています。ジョギング中に、米国の衛星から爆弾を落とされるリスクは限りなくゼロだと思っているのです。

 

ロビンフッドは、無料アプリですが、証券会社にほかなりません。その収入源は、一部のプレミアム会員からの料金以外に、案の定、零細投資家たちの注文データ売却によるものらしいのですが、その売却先は、HFT(高頻度取引または超高速取引と和訳されている)のプロファンドだったらしく、従前それを零細投資家たちに開示していなかったとして、行政処分と罰金を科されています。

 

とにかく、タダより高いものはない、のが世の常。「無料」の種明かしはやっておくべきです。

 

多くのFX会社は、スプレッドを含めた手数料が不思議なほど安いですが、HFTかどうかは措くとして、注文データが「業者内プロファンド」においてマネタイズされるビジネスモデル、それこそが店頭デリバティブの本質だと見るべきです。

 

われらが金融庁により、平成 30 6 13 日にまとめられた「店頭 FX 業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書のなかに、

 

“店頭 FX 業者がカバー取引を行うことなく自己で抱える未カバーポジションについては、業者が自ら設定する未カバーポジションの上限額に大きな差がみられ、上限額が1,000億円を超える水準となっている業者もある。

 

未カバーポジションは、ヘッジされていないエクスポージャーであり、相場が急変動すれば保有する店頭 FX 業者は直接的にその影響を受け、多大な損失を被る可能性もある。店頭 FX 業者の決済リスクへの対応という観点からは、未カバーポジションを保有する業者に対し、情報開示や適切な リスク管理を求めることが適当と考えられる。“

 

というくだりがあります。「不勉強だったり下手だったりで、為替でやられる投資家がいて、その分業者がもうかるのは仕方がない。わたしはちゃんと勉強していて上手なので、勝てているのだからそれで良い」という考え方もあります。しかし、過半数のFX投資家が上手になることはないのでしょうか?

 

確かに、われらが金融先物取引業協会の資料によれば、日本の投資家は、ひたすらやられているので、



 

今後もそうだろうと考えるのは自然のように思えます。が、コレって、数学的ではない帰納法です。

 

ここで、冒頭のクイズの答え合わせです。

 



チャートの上と下に書かれている説明は、

 

WallStreetBets(コレです!https://www.reddit.com/r/wallstreetbets/)へ投資家から投稿されたコメントに占める「猿」「間抜け」「馬鹿」「読めない」「自分が何をやっているかわからない」などの自虐コメントの割合

 

ということです。人工知能の文脈に照らせば、このテキストマイニングで、米国株式のブル指数を予測してみたい、という発想になるところですが、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、今年の米国株式相場は、ブルでもベアでもなく、無知に支配されていると説きます。

 

しかし、結果がすべての世界。無知の知を投資用SNSで言いふらしつつ、株式投資の成功を自慢するというトレンドが出来ているのです。バイデン新政権によるコロナ対策・インフラ対策・温暖化対策(?)による米財政悪化が、米国債相場を押し下げ、ゆえにドル高という、わかったような(?)わからないような(?)後付けの説明も、このような新種の投資家には追い風です。

 



ウォール・ストリート・ジャーナルの記事には、見ざる聞かざる言わざるをもじってか、猿を牡牛(ブル)に置き換えたアニメーションが載っています。

 

この記事自体は、

 

「勉強していない弱小投資家が、勉強しているプロの投資家に勝ち続けることはありえない」という趣旨のものですが、それは措くとして、為替と株式では勉強することに相似点と相違点がありますし、受験勉強やパズルなどとはまったく異なり、何を勉強すれば良いとあらかじめ決まったことはありません。

 

「プロが結局は勝つ」と断言することは出来ないのです。

 

弱小な零細投資家は負け続けるまたはいつかは大負けするという前提に立ったFX会社の経営では、例えば目下のドル高が極まると、出金トラブルのリスクが増嵩するというわけです。

2021年2月17日水曜日

中国共産党の権力闘争に翻弄されたアリババの実像

大河ドラマと半沢直樹の使用上の注意

わたくしのアヴァトレード・ジャパン勤務も、今月で丸8年となってしまいました。これまでのところ、日本証券業協会の壁も厚く、また昨年10月、ちょうどわたくしの誕生日に暗号資産デリバティブ業務からは撤退をしたので、正真正銘、法定通貨関連店頭デリバティブ(早い話がFX)専業となっております。

その割には、法定通貨と関係のない、ビットコインやリップルなどお騒がせ気味の暗号資産貴金属や原油などのコモディティ、株式、はたまた政治・経済・歴史と、役に立たないブログ感がいよよ満載となっております。

以上は、ビットコイン50,000ドル突破の話の前置きというわけでもありません。


今週注目したニュースをふたつご紹介したいと思います。

ひとつは、

アリババ創業者ジャック・マ氏の裏には、上海市場への上場時に必要な「目論見書」のうえでは不鮮明な影の大株主が実は存在。それら影響力のあるステークホルダーのなかには、習近平国家主席の(元)ライバルもいる

もうひとつは、

フェースブックとアップルの鍔(つば)迫り合い

いずれもウォールストリートジャーナルの記事で、前者はスクープっぽいですが、後者はそうでもありません。

ご紹介したいと思ったのは、共通点として、テクノロジー関連のニュースなのですが、いずれも、米中のテクノロジー覇権争いという、聞き慣れた「枠組み」で、取材・記述されたものではないこと。慣れ親しんだ工業社会を情報処理技術の発展が変容させてきた過去・現在・未来を展望するうえで、有効な視座を与えてくれること。この二つが理由です。

まったく話が飛んでしまうようですが、、、わたくしはテレビドラマというのを余り見ないほうです。決して、忌み嫌っているわけでもないですが、ノンフィクション志向ゆえかも知れません。それでも、前回日本とミャンマーは紙一重でご紹介した松ちゃんこと松村邦洋さんのように、ただ観るだけでなく、背景を別途独学し、出演者の芸能歴まで徹底して学習するという態度があれば、見えてくるものも異なってきます。

しかし、注意すべきは、、、

ノンフィクション(だとわたくしたちが考えたい現実)とドラマ(が描きたい理想なる虚構)の違いは、ドラマには善人と悪人が登場することです。ノンフィクションには悪人しか登場しません(主役級に限っての話です)。

「勧善懲悪に仕立てなければ視聴率は稼げない」とまでは言い切らないものの、正義と非道を対立させないことには、平均的なリテラシーのオーディエンスにはなかなかあらすじを理解してもらえないという現実はあるのだと思います。

ただ、質(たち)がわるいことに、このような高視聴率ドラマで飼い馴らされた思考回路は、現実の歴史や政治の登場人物を、正義の側か否かという二項対立に直結してしまうことです。

トランプ、バイデン、習近平、プーチン、菅義偉、森喜朗、小池百合子(敬称略)、、、どうでしょうか???

これはポピュリズムやプロパガンダの原点であって、古今東西、ありとあらゆる政治権力とマスメディア(4th Estate)が(しばしば結託して)利用してきた枠組みです。古代ギリシャの僭主政治や議会制民主主義から独裁を勝ち得たナチスドイツなど枚挙に暇はありません。

しかし、

時期的に言うと、

①米国でトランプ政権が出現した前夜、

②アフリカ・中東からヨーロッパにかけてはアラブの春とその不時着地シリアからの難民問題激化(イスラミック・ステート問題)、とくに、

③ヨーロッパ各国での極右勢力の台頭、

④中国のほんとうの大躍進(一帯一路によるヨーロッパ・アフリカへの取り込み、米中対立激化)

このころから、「米国と中国とはたしてどっちが(より一層)悪玉か?」「さて、ロシアは?」「イランや北朝鮮は論外なのか?」みたいな、雑過ぎる議論が罷り通るようになってきたのではないでしょうか???

習近平は現代中国の源頼朝か?金正恩も?

温故知新のために、こんな雑なカタチから入るのもアリかも知れませんが、そこでとどまってしまっては、見えるものも見えません。

ビットコイン50,000ドル突破にしたって、世界の一握りのお金持ちヤクザの陰謀だと片づけてしまったら楽ですが、たとえ一握りだったとしても、お金持ちヤクザ間で抗争がないはずはないのです。どんな相場にも、買い方と売り方の熾烈な綱引きがあって、その一瞬の結果として最新約定価格があるだけのことです。

アリババ(≒ジャック・マ?)の話にもどりましょう。わたくしもこの記事に目を通すまでは、アントフィナンシャルの株式公開延期(とそれに伴い?ジャック・マさんが表舞台から姿を消した問題)は、アントグループがもたらす金融・資金決済の技術革新が、国営銀行による旧態依然としたシステムや既得権を脅かすこと、技術革新(による新たな超過利潤減)は国家権力が主導し独占すべき公共財であるという(共産主義に限らない)「理念」から来ているものと思っていました。ゆえに、アントフィナンシャルVSデジタル人民元という構図です。

実際のところ、アントフィナンシャルがやろうとしていることは、決して中華思想に特有の「反米のプラットフォーマー志向」(この点、ファーウエイはどうでしょう???)なのだと思い込まないほうが良いのだと思います。このような技術が、例えば、イスラエルや、米国のシリコンバレーから出てきてもまったく不思議ではないこと。実際、日本の銀行決済やクレジットカード決済は、アントフィナンシャルのそれに比べて周回遅れであることを思い知らされます。

そこに来て、アントグループ株式公開延期が、習近平に蹴落とされ続けてきた中国共産党のなかのライバルのなかで最後までしつこく踏みとどまっていたアリババの影のスポンサーの振るい落としであると読み解く記事がでてきたわけです。

えっ?さっき、大河ドラマ脳になってはいけないと言っていたばかりではないか?習近平がやっていることは、いまはじまったばかりのその次の、NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」みたいな話ではないのか?と突っ込まれそうです。そう突っ込まれても、まだあらすじもわかりませんので反論しようもないですが。。。

では、続いて、フェイスブックとアップルの対立について。こちらも、この記事によって、ざっとリーマンショック前夜あたりから、iPhoneが登場し、対してGoogleのandroidも登場し、そのころからアップルとGoogleは熾烈な競争をしていたが、途中で、両者は、中国に譬えると(わたくしの勝手な解釈です)国共合作みたいな構図になって、フェイスブックへと(とりわけアップルは)矛先を向けた。その論点は、

①個人情報の監視と取得、それを悪用~濫用しての、

②広告出稿や世論を操作するだけでなく、

③国政選挙にも関与するようになる(ケンブリッジ・アナリティカ事件)

この点、②③はフェイスブックグループ独自の極端な問題も考えられますが、注目したのは①についてです。これは、今世紀最大級の内部告発者エドワード・スノーデンによれば、米国の大手IT企業、インターネットメディア企業は、巧みなマネーロンダリング操作(※)を経由して得た、NSA(CIAと一体ではないが)からの巨額報酬の対価として、個人情報を共有させている(情報機関に売り渡している)。GAFAはその最たるもの、ということなのです。

この記事自体は、どちらかというと、アップル寄り(他のWSJの記事で、アップルとGoogleの癒着を追求したものもあり)である点は留意すべきですが、アップルの現在のCEOであるティム・クック氏は、この①の点について、アップルは潔白である。それに対してFacebookは滅茶苦茶である。よって、アップルとしては、iPhoneなどでのFacebookのアプリに制限を掛けることは正当である、と繰り返していることが書かれています。マイク・ザッカーバーグ氏の反論や怒りも書かれてはいます。


※マネーロンダリングが米CIAの自家薬籠中のモノであることは、先日のブログでご紹介した児玉誉士夫 巨魁の昭和史(有馬哲夫著)につまびらかに描かれています。


で、結論はいったい何なの?という話ですが。。

結論がないのが結論です。結論を急ごうという思考回路のなかに、右が正しい、左が間違いみたいな短絡を招く病理があります。アリババ対習近平の逸話と、フェイスブック対アップルの逸話は、この病理を癒す冷湿布かと思い、紹介しました。予想どおり、前者にはソフトバンクの孫正義さん、後者にはエドワード・スノーデン氏が、登場しています。

(本日は、敬称が略されたりされなかったり、社名がカタカナだったりアルファベットだったり、一貫性がありません。ご容赦ください。)

2021年2月4日木曜日

日本とミャンマーは紙一重

いきなりですが、、、と来れば、、、ウチのオカンがどうしても思い出せない何何、、、というのが試行錯誤を経て確立された、2019年М-1グランプリのミルクボーイのテンプレートでしたね。

いきなりですが、漫才の話を進めると、

漫才には、時事漫才という分野があります。この分野では、爆笑問題さんとナイツさんが、両雄です。スポーツ、芸能、などなど、昨今も、いじるべき時事問題に事欠かなくなってきました。漫才でいじりづらいのが、ほんとうの時事問題でしょう。スポーツ、芸能、はたまた有名女子アナウンサーの旦那の不倫は措くとして、ビットコインや、リップルなどの暗号資産もびっくりするような、米国株ゲームストップの乱高下。学べば学ぶほど、株式投資は、大口投資家が、さらには投資銀行が、より儲かりやすいような構造になっていて、個人零細投資家は、それらの掌のうえで踊らされているだけだと、諦める。。。けど、その射幸性ゆえに、やっぱり諦められない。。。そういうスーダラ節みたいな常識が蔓延していたところ、

SNSを通じて、ネット投資家の集団が、往年の仕手筋顔負けの革命劇を演じたのです!

NHK「ダーウィンが来た」に譬えると、天敵のスズメバチに巣を襲われたミツバチが体の大きなその敵を囲んで体温を集中して蒸し風呂状態にしてスズメバチを殺すようなものです。

もうちょっと難しい話をすると、古細菌と同レベルで進化から最も取り残された「生物」とも言えなくはないウィルスが、周期的ではあるが、進化の頂点にいると勝手に自覚している人類を襲うことがあるのとも似ています。


経済・マネーの分野とともに、漫才のネタにしづらい(???)のが、国際・政治でしょうか???

ミャンマーの軍事クーデターも、実は謎めいています。どちらかというと左よりのニューヨーク・タイムズの記事(記者)も、「当然にアウンサンスーチー女史を擁護する」という論調一辺倒かと思いきやさにあらず。実は、彼女は軍事政権以上に独裁的だったのだとか、軍事政権から「民主」政権への移行はどこの国でも簡単ではない。「民主」側が、軍事政権の既得権益をはく奪するのを急ぎ過ぎてはいけない。南アもチリもそれでどうにかうまく行った。アウンサンスーチー女史は、徹底的に、だが拙速にやってしまったので、軍事政権側にも身内(の民主政党側)にも敵を作りすぎたという記事もあります。

このあいだ話題にしたワシントン国会議事堂襲撃事件と同様、もうちょっと慎重に研究したいところ。

真実はまだ謎です。

そして、日本は、まさか、米国やミャンマーみたいにはならないだろうと、肌感覚で思っているひとが多いと思うのですが、戦後の日本も、ミャンマーみたいになるか、北朝鮮みたいになるか、または戦前の日本みたいになるか、思いのほか微妙な、薄氷を踏む歴史を辿っていたことがわかります。

政治は時事ネタにしづらい、、、と書きましたが、東京オリンピックがらみでの、森喜朗さんの失言は、いじりやすそうですし、ロッキード事件で、田中角栄(前)首相が逮捕されたときは、コロンビアトップさんがネタにしていたのをいまでも記憶しています(自身も政治家)。

しかし、ロッキード事件は、金権政治=悪玉、クリーンな政治=善玉、というバイナリーな価値観で片づけられるほど単純なものではないようです。

ロッキード社は、60年安保闘争においても重要なプレーヤーです。戦闘機・哨戒機を日本にどれだけ買わせるかという点で、ロッキード社とダグラス・グラマン社が争っていたのでした。ロッキード事件は、ニクソン大統領の時代です。米国はベトナム敗戦の処理で、巨額の貿易赤字に苛まれていて、これがニクソンショックに繋がり、1ドル=360円という固定相場から離脱となったのです。60年安保改定前夜と異なり、自国の航空機開発技術を高めてきていた日本にとって、ロッキード社の戦闘機・哨戒機さらに民間機は、押し売りでしかありませんでした。

ここで、注目したいのは、事件当事者とされる田中角栄氏、中曾根康弘氏も、そして児玉誉士夫氏も、ホンネは、憲法も防衛力も自前が良いという信念を持っていた、、、という確かな証拠があるということです。

ロッキード事件は、ニクソン大統領自身が、CIAを使って民主党本部の盗聴をしたというウォーターゲート事件の発覚(による民主党の加勢)、日中国交正常化を実現したかった田中角栄首相への米国からの圧力などの複雑な要素が、3氏の政治的野望に絡んでいたと考えるべきです。

サンフランシスコ講和条約で戦後日本は独立したというのは形式論に過ぎず、もっと本質的な、つまり理想は、米軍の基地が日本から撤去されるような独立だ、、、という思いを、3氏は共有していて、児玉誉士夫氏が、CIAと、自主独立派保守政治家とのあいだの二重スパイだったのは、現実と理想の狭間(先立つものはカネ)で、清濁併せ吞む姿勢に由来すると考えると、見通しがよくなります。

米軍出ていけ」なんて言うと、日本共産党みたいじゃないですか!?

わたくしは、高校時代から、極左と極右は近親憎悪だと考えておりましたが。。

米英による占領下(ソ連がはいってなくてほんとうによかったとは思います)、武装解除を半永久に求める憲法を押し付けられたその直後に、朝鮮戦争で、旧日本兵が徴発されているのです。そうやって考えてゆくと、戦後の平和と発展は、様々なラッキーと、理想と気骨のある複数のリーダーのおかげで、なんとかぎりぎり実現しえたものであることがわかります。

日本とミャンマーは紙一重なのです。

(参考文献)

「児玉誉士夫 巨魁の昭和史」有馬 哲夫(文藝春秋)

「Permanent Record (English Edition)」Edward Snowden

How a Deadly Power Game Undid Myanmar’s Democratic Hopes Feb. 2, 2021 (New York Times)

After Coup, Myanmar Military Charges Aung San Suu Kyi With Obscure Infraction Feb. 4, 2021 (New York Times)

(2021年2月8日 「ためにならない」追記)

日曜日の夜のNHKは、ダーウィンが来たあとに麒麟がくるはずが、昨夜の最終回「本能寺の変」のあと、明智光秀は山崎の合戦後ナレ死かと思いきや、、、実は亡くなってはおらず(天海僧正として徳川幕府を支える、つまり実は麒麟がきたという)思わせぶりな結末でした。

本能寺に向けての明智十兵衛光秀の心象風景がおおいに変わったのが、松永久秀の平蜘蛛という茶道具。はたしていまこの名器がどこにあるのか。稀代の大河ドラマ通、松村邦洋さんによると、既述の爆笑問題の太田光さんの奥様の太田光代社長(旧姓松永光代さん)が、実は、松永久秀の末裔であり、意外と彼女が経営する芸能事務所に飾っていあるのではないかとのことです。ほんとうに詳しいですね。


松村邦洋さんのタメにならないチャンネル、実はほんとうにためになります。

2021年1月21日木曜日

国会議事堂襲撃の資金はビットコインだった!?

 

年末年始、市場の話題を攫って(涼って)いたビットコインが、またもや踊り場に来ています。

 

思い出したかのようにアップさせていただくBTCUSDのチャートがこちら。



「サラリーマン投資家が登場すると、相場もそろそろ大詰めというのは、洋の東西を問わない」と溜息をつきたくなるところですが、そうとも言い切れません。サラリーマン投資家の最たるものである中央銀行や年金が、7年以上、買いあさってきた日本株は、いま昭和バブル期を凌駕する高値圏にいるのです。

 

わたくしの過去のブログのアップでも、おおいに反省すべきものがあるのが、相場はファンダメンタルズで分析しても意味がない、先は読めないということです。インサイダー情報はここで言うファンダメンタルズではありません。

 

ビットコインをフォローするなかでぶち当たった気になるニュースがこちらです。

 

米国国会議事堂襲撃事件関与たAlt-Right Group主要人物フランス人極右青年50ドル相当ビットコイン寄付てい!!!

 

このニュースが気になった理由は、いくつかあります。

 

ひとつ。ワシントンのキャピトルヒルの襲撃は、現職の大統領が暴力を首謀するとは、前代未聞だとか、言語道断だとか、さまざまな感想や意見が寄せられています。いっぽうで国会議事堂のセキュリティはいったいどうなっているのだなど、言われてみれば確かに解せない指摘もあります。

この点、トランプ前大統領に近い情報機関からは、同前大統領は集会や示威行動までは教唆したが暴力にまで走らせたのには別の首謀者がいるだとか、その別の首謀者は俗に言うアンティファという反トランプ陣営で、BLM運動などを通じて米国社会の破壊を企んでおり、その資金源は中国などの米帝転覆を狙う筋だとの陰謀論的な情報まで飛び交っているからです。

アンティファ云々は、絵空事のようにも思え、まともな情報機関は相手にしていないように見えますが、とにかく、歴史、政治、経済、、、科学(新型コロナウイルス感染症の関係を含みます)について、先入観を持たずに、権威の言説を猛進せずに、というのが我がブログの精神なので、そういう意味で、この事件は素直な気持ちで情報を収集し、冷静に分析をしたいと思っていたところなのです。

 

ふたつめ。ビットコイン(をはじめとするブロックチェーン)については、しばしばその本質に迫りたくて分析をしてきました。そのなかで、ビットコインの匿名性というのがあります。この記事によれば、500,000ドル相当のビットコインの送り主も受取人も把握できているわけで、とくに送り主についての詳細など、どのようにして「足がついた」のかについても、記事では開示できないが、ChainAnalysisとしてはしっかり把握できているのだと書かれているのです。

 

ChainAnalysisの記事には、フランス人で、ビットコイン送金後に自殺を図ったプログラマーの遺書が紹介されています。自殺の直接の原因と考えられる自身の体調不良についてのほかに、欧米諸国全体に対する「憂国」が綴られているのです。フランス国内に限らず、また米国にも限らず、欧米社会全体の伝統を蔑ろにする風潮、寄付者の言葉でワイマール共和国的な悪がはびこっているとし、その一例としてBLM運動が参照されています。

 

ところで、巨額のビットコインを誰が送り、誰が受け取ったか、このようにほとんど判明している理由は、わたくしにはよくわかりませんが、送金に使われたとされるフランス版暗号資産取引所のKYCがしっかりしていたからか、送金で使われたウォレットやノードのなかにあるExtremist Legacy WalletExtremist Donor Walletが何らかの理由でChainAnalysisの技術でトラッキング可能だったのかも知れません。

 

それによると、

 

ビットコインの寄付金はひとりの送り主から20口座近くのアドレスに送られていて、一部アドレスの「名義」がわからないものも含まれているようです。しかし、総額の約半分は、米国極右の代表格であるNick Fuente青年ひとりに送られているのです。

 

名うてのYouTuberだったらしい同青年は、同アカウントを凍結されるほどの筋金入りの極右で、有色人種排斥だけでなく反ユダヤでもあるようです。そうすると、ユダヤ人を娘婿に迎えたトランプ全大統領とは政治信条が完全一致するのかと、やや疑問を挟みたくもなります。米国の保守主義というのも幅があるようで、トランプ大統領のユダヤ人贔屓というもどう考えても打算の代物でしょう。Nick Fuente青年がトランプ前大統領を心底惚れ込んで応援団長を買って出ていると考えて間違いはなさそうです。

 

なんとかあらすじを拾ってみようと書いてきましたが、興味がある読者の皆さんは、まずは、ChainAnalysisの記事そのものをご覧ください。わたくしが書ききれなかった細かい情報やニュアンスが詰まっています。

 

この大スクープによって、トランプ派報道機関(Fox NewsNew York Post など)が言う「集会させたのはトランプだが襲撃までさせたのはトランプ(と同じ考え方の人物)ではない」という言説は、さらに怪しいものに思えてきます。さらには、立場が真逆のアンティファが、トランプ派の振りをして、暴徒に混じるどころか、率先して国会議事堂に侵入し暴力行為を働いたというのは、やはり陰謀論にように思えるところです。かと言って、アンティファや一部のBLM運動にも許しがたい問題を引き起こしているものも厳然とあります。

 

自殺したフランス人プログラマーの、ワイマール共和国という譬えに沿うならば、まさに現在の米国は、ワイマール共和国成立後、国家社会主義労働者党と共産党が対立し、中道派が瓦解したドイツの状況に似ているのかも知れません。記事中のAlt-Rightとアンティファ、どちらが正義でどちらが悪者なのか、、、という観点でしか物事を判断できないひとが蔓延してきていることこそが、人類社会の崩壊の証左なのでしょう。

 

最後に余計なひとこと。実はアンティファだったというのが陰謀論ではなくて事実であったみたいなことは歴史上いくらでもあろうかと思います。我が国でも、安保闘争を暴徒化させた資金は、大東亜戦争後は代表的な右翼となった田中清玄から全学連に渡っていたものだったとされますが、なかには元外交官の孫崎亨氏のように、田中清玄を経由させた資金の出どころはCIAであり、その狙いは、岸信介で退陣あって、見事に狙い通りになったと説かれています。もちろんこの説が出鱈目だというひと(とくに安保闘争の当事者だったひとたち)もいます。

 

2021年1月7日木曜日

コロナ第三波で、世界のお金持ちは、何を考えているのか?

お陰様で、Daily WiLL Onlineのおカネに関する連載が6話完結したいま、人気記事ランキングのトップファイブを独占するに至りました。

もうこれ以上は記事が更新されないので、あとは、陥落のみです(苦笑)。

 

MMT(現代通貨理論)を皮切りに、金(ゴールド)・銀・銅を切り口とした異説日本史を経て、最終回はいま熱過ぎるビットコインなどの暗号通貨の話題で締めくくったことが、反響を倍加した感じです。

 

MMTをきっかけにしたのは、怪しい経済理論であるにもかかわらず、コロナ禍のもとで、先進諸国は議論する余裕もないまま、未曽有の財政赤字の急増がなし崩し的に意思決定され、ロックダウン(日本では緊急事態宣言に伴う時短などの自粛要請)とセットでの給付金対応を迫られているからです。

 個人的には、給付金はフェアであってほしいですが、それそのものを否定したくはありません。

 「コロナ勝ち組」、「コロナ負け組」などという、品(ひん)の無い言葉もあります。

 人間たるもの、いまどちら(側)の産業に従事しているかには、運の要素が強すぎて、努力で克服できるレベルを超えていると思うからです。

それにしても、「コロナ勝ち組」の連中や、これまでしっかりと現預金を溜め込んできた世界のお金持ちが、いま、何を考えているかを想像してみることは重要です。2021年の相場を見通すために、十分ではないが必要な、考察です。

彼らの多くは、景気循環のひとつの局面である景気後退期から不況または恐慌の時期にあっても財政支出を支持しないものなのです。ましてや、とりわけ今回のようなショックは、資本主義に内在する景気循環の結果ではなく、外生的なものです。ならばなおさらのこと財政出動で和らげられる性質のものではないと考えます。

しかし、民主主義の政体は、「外生的ショックの緩和には財政赤字は有害無益」という《正論》では支持を得られません。次善の策として、資産防衛のために、インフレーションやスタグフレーションに耐えられる資産(アセットクラス)は何か無いものかと、死に物狂いで模索します。

この候補者選びもまた《正論》は存在しません。ケインズの美人投票のような過程で絞り込みがなされてゆきます。

ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探るで、

「金(ゴールド)など貴金属には実体(としての価値)があるが、暗号通貨は実体が空っぽである」

という言説は誤りであると、連載全体の結論として締めくくりました。金(ゴールド)やビットコインなど、通貨(貨幣)の代替候補に人気が出てきている(法定通貨に対する相場が急騰している)のは、物体(使用価値)としての実態(実体)とはほとんど無関係の、決済手段としての信任です。

その信任には、《合理的な根拠》は不要ですが《緩やかな合意》は必要です。信任される通貨(の代替候補)は、どんな物体(ハードウエアとソフトウエアの両方を含む)でも良いわけではありません。《絶妙な程度の希少性》が必要で、地球上に少なすぎても多すぎても候補から漏れます。すなわち、

造幣する費用≦偽造する費用≦市場価値(流通価格)

これを満たしていて、過去~現在~未来も安定的にそうであると、通貨として採用するコミュニティ内で合意形成されるものでなくてはなりません。長い時代、それが一部の貴金属に限られていたこと、刑務所や強制収容所などではタバコが、貴金属が「絶妙な程度の希少性」を超えて希少過ぎた古代中国においては、コミュニティから十分距離の離れた海外で採れた貝殻が、使われていた事例などは、この《法則》を裏付けるものです。

コロナショック(2020310日)の週【赤くて太い点線の長方形】は、条件反射的にリスクオフで軒並み急落した、以下の代替通貨候補が、波打つように、その後は(対法定通貨=チャートは対ドル)相場を回復させていること、そのピークは、例えば金(ゴールド)とビットコインとを比べると、特に理由はなく、有意にずれていることなどがわかります。

【金/ドル】


ビットコインのチャートは、Daily WiLL Onlineの記事では、第一波(20141月のマウントゴックス破綻まで)、第二波(20181月のコインチェック事件まで)、第三波(コロナショックから現在)の三つのピークがよくわかるように、対数表示にさせていますが、以下では、通常の表示で、過去1年分の動きをご覧いただいております。

 【ビットコイン/ドル】


連載の最終回を書いたのは、先月つまり2020年12月の中旬で、そのころビットコインは20,000ドルを超えて大騒ぎしていたときです。それが、本日2021年1月7日のただいま現在は、その倍である40,000ドルを超えるのは時間の問題みたいな雰囲気です!!

おまけで、年末にご紹介した「リップル疑獄」にちなんで、リップル/ドルも挙げます。年明けも比率で見れば異様な乱高下ですが、《リップル送金手数料闇補助金問題》が解決されておらず、この先も不透明です。

【リップル/ドル】

更に、年明け一層のモメンタムが出ている原油相場について。こちらは、コロナショックから1か月経ったところで、先物限月交代に伴う《買手が現物を受け取るタンクがない》問題で未曽有の価格がマイナスという現象がありましたが、気がつけば、コロナショック前の価格を回復しています。これも、貴金属、暗号通貨と並べて、代替通貨選択にノミネートさせてあげるべきです。原油の倉庫証券は立派な代替通貨候補です。しかし、引き取り手の倉庫がなくなるのは困るので繰り返されたくないところです。

【原油(WTI)/ドル】


大まかに振り返ると、コロナショック後、世界のインフレヘッジャーたちは、タイムラグを経つつ、金(ゴールド)、ビットコイン、原油を現預金の疎開先としてコンセンサスをうかがおうとしてきて、またそろそろ次は何か?不動産や株式は、ほんとうなら、コロナ禍で実体価値は減耗しているのだが、金やビットコインでの相場操縦の成功体験は、不動産や株式をも例外とさせない可能性は大いにあるのです。

最後に、暗号通貨関連でおまけ。ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探るで、ブロックチェーンの歴史を超絶わかりやすく(?)振り返るために名脇役を演じてくれたのがステーブルコインでした。ドルなどの法定通貨とずっと(?)一対一で交換を発行体が約束する暗号通貨のことです。これを、米国の通貨監督庁(OCC※)が、米国内の銀行間の決済手段として(例えば、Fed Wireなどの代わりに←筆者注)利用して構わないというニュースが流れました。

FederallyChartered Banks and Thrifts May Participate in Independent Node VerificationNetworks and Use Stablecoins for Payment Activities

こちらは、それを日本語に翻訳して紹介しているニュースですが、これだと、米国内の銀行が、日本でいう仮想通貨交換業(現行法の暗号資産取引業の一部)の兼営が許され、さらに日本では許されていないステーブルコインの取り扱いまで許されるのかとも読めるのですが、そのようなB2Cの話ではまだなさそうです。

米通貨監督庁(OCC)、国法銀行にステーブルコイン利用とノード運営を許可

これは、年末年始の暗号通貨界の話題としては、リップル疑獄に次ぐマグニチュードのものであると評価されます。

※暗号通貨に関与する米国当局には、SEC(証券取引委員会)、FinCEN(金融犯罪捜査網)があり、各当局の態度が異なるので、なかなか困った状況なのだと考えられます。