2020年12月28日月曜日

「Daily WiLL Online連載の全6話完結」御礼と「リップル疑獄」

未曽有の一年となった2020年も、いよいよ残すところ1週間を切りました。

金融分野でも異例なことが続いています。注目は、暗号通貨です。

いま、ネットに公開された

ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探る

では、2013年以来の、ビットコインバブルの第一波、第二波、第三波をご覧いただくために、特別なログスケールを用いています。

2020年の日足チャートからは、昨日(陽線髭)の28,000㌦という史上最高値達成(そのまえに、わずか一週間前に、20,000㌦という記録があっという間に更新された様子)がわかります。


ビットコイン独り勝ちの様相を支援する悪役が登場しました。リップルです。

米国SECがリップル社と創業者2名を相手取り、「(暗号通貨ではなく違法の)有価証券を販売し不当利得を働いた」として訴訟に踏み切ったことが、文字通り、波紋(リップル)を呼んだのです。


SECの訴状には、日本の某取引所が取り上げられていて(もう皆さんその金融グループの名前はご存じだと思います)、リップルを実勢相場の1~3割引で調達していて、これがリップルの送金の仕組み(ビットコインと異なり中央制御が必要)に本来掛かる多額の費用の補填に使われ、「リップルを使えば送金手数料無料」という誇大広告の元手になっていたらしいのです。

この、不法利得の金額は800百万ドル相当だと訴状にはあります。

わたくしの最後の原稿

ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探る

を入稿した先々週末のあとに、このリップル疑獄とリップル大暴落が発覚・発生しました。

しかし、わたくしが取り扱ったテーマが、

 

1.      貨幣(通貨)とそれ以外(有価証券)とのボーダーラインについて

2.      決済手段の見える費用、見えない費用

 

にほかならなかったもので、このリップル疑獄は、今回のビットコイン分析の論点ずばりそのものです。

 

第五回までの、「異説日本史」に比べるとちょっと読みづらいかも知れません。が、天才バカボンや奈良の大仏から掘り下げてきた内容の総まとめにもなっております。どうか皆さま、ご一読いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 

さて、

 

仕事に翻弄されながらも、政治経済を含む世の中の仕組み、人類史の宿痾について考え続けてブログをたまに更新してきて10年以上経っていました。

新型コロナウイルス感染症が課したチャレンジは、まさしく、政治経済だけでなく、人類の宿痾についても深く考えさせられるきっかけでもありました。

科学技術や医学生理学の知識は、一握りの天才や秀才に寄りかかって人類全体がまんべんなくその恩恵にあずかれるものではありません。

答えが出ていない問題として以下の例があります。

1.      ウィルスの起源

2.      突然変異⇔抗体の寿命⇔ワクチンのリスクと有効性の関係

3.      重症化しにくいひとたちの経済活動⇔重症化しやすいひとたちにとってのセーフティネット、、、このふたつのトレードオフの関係をどのように割り切れば良いのか

 

第三波の真っ只中にあるわたくしたちにとっては、もはや「8割おじさん」という流行語は死語なのかも知れません。では、8割おじさんはやっぱり正しかったという再評価と復権さえしておけばそれで済むのでしょうか。わたくしは違うと思っています。

健康なひとたちの経済活動の犠牲は、人類愛の観点で、世界共通で是認されるもの。そのために、財政支出と金融緩和は歯止めを効かせてはならない。」

この主張はどうでしょうか?特に、失われた30年を経験している日本では、物価上昇が観察されるまではどこまでも財政支出が許されるというMMT(現代貨幣理論)の狂信者が増えていますが、今年世界各国で見られた新型コロナ対策を見ると、MMTを採用しない政策当局はもはや見つからないと言っても過言ではありません。

かかる環境下、月刊誌WiLLDaily WiLL Onlineを出版するWAC出版の幹部の方と再開し、全6話完結の連載をやらせていただくという貴重な機会を得ました。

ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探る

金と銀はいつも通貨の"ジョーカー"であった

権力者は「マネーの本質」を秘匿する~中世《銀》の流通にみる通貨論~

日宋貿易を独占した総合商社のドン、平清盛の実像~中世史から考える「MMT批判」~

聖武天皇は日本史上初のMMTerだった!?

金融の現場から見た「MMT(現代貨幣理論)」

 

わたくしたちは、中学校や高校の社会科の授業で、貨幣(通貨)というのは、物々交換だけの経済だと、「欲望の二重の一致」が難しいのを解決するために導入された(決済または蓄財)手段であるように教わります。

 

これは100%間違いだったということはないのだと思うのですが、今日のようなネット社会では、誰が何を買いたいか売りたいかという情報が極端に手に入りやすくなっていると思われませんか?「欲望の二重の一致」の問題解決手段としては、貨幣(通貨)でなくてはならないという状況ではなくなってきつつあると考えられます。

 

では、それでもなくならない貨幣(通貨)って何なのか???これが6回シリーズのもとになっている問題意識です。

 

最後に、、、わたくしは平均して年に6回風邪をひきますが、今年はいちどもひいておりません。たぶん、マスクのおかげです。どうか皆さまもくれぐれもご自愛くださり、良いお年をお迎えください。

2020年10月30日金曜日

権力者は「マネーの本質」を秘匿する~中世《銀》の流通にみる通貨論

おかげさまで、10月もWiLL Onlineの連載を書き上げることが出来ました。

権力者は「マネーの本質」を秘匿する~中世《銀》の流通にみる通貨論

第二回目の奈良の大仏が思いのほか(!?)好評でしたので、そこからどんどんハードルがあがってしまいました。第三回目の平清盛が「輸入」して導入(?)したと言われる宋銭とは銅というバトンで繋がっています。第四回目のテーマは、いきなり、銀に昇格しています。銀を繋いだバトンとは何だったのでしょうか?

東アジア経済圏への銀の導入と、世界史の「誕生」

わたくしは、モンゴル帝国(のちの元)と大航海時代(のスペイン・ポルトガル)ではなかったかと考え始めています。実は、毎月、長い記事にお付き合いいただいているのですが、初稿はもっと長いのです。今回、編集長によりカットされた部分で、

WAC出版から「この厄介な国、中国」という名著を出されている岡田英弘先生は、「モンゴル人は、十三世紀に当時のほとんど全世界に広がり、その大部分を支配する巨大帝国を打ち立てた。(中略)実にモンゴルは、世界を創ったのである。」と豪語します(『モンゴル帝国の興亡』あとがきより。ちくま新書、2001年)。

岡田先生の、モンゴル人が巨大帝国を築いたことが「世界」を創ったことを何故意味するのかは、同先生の「世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統」(ちくま文庫)1999年)を紐解かなくてはなりません。高校では「世界史」という教科があるけれど、中国史と西洋史ではその貫いている歴史観が水と油。中国の王朝や王権は、易姓革命という孟子や司馬遷(史記の作者)によって育まれた概念で正当化されてきた。西洋史にはそんなものはない。ヘロドトスはその著作「歴史」(※)で、アジアの代表であるアケメネス朝ペルシャという難敵にヨーロッパの代表であるギリシャが如何に立ち向かったか?という対立軸を導入した。モンゴル人が大活躍する12世紀までにも、中央ユーラシアの数多の遊牧民族(草原の民)が東西交流を細々と担ってはいたが、基本、東西は対立し、分断していて、世界(史)は存在していなかった。その壁をぶち抜いたのがモンゴル帝国(元)だった。。。

※ヘロドトスの「歴史」実はギリシャ語で研究という意味であって、ヘロドトス以前には民族や国家の物語という意味の歴史概念はなかったらしい。

第二回目の奈良の大仏にも書かせていただいたとおり、わたくしは高校時代は世界史が苦手で勉強する気も起きませんでした。岡田先生曰く、くっつけようがない中国史と西洋史を無理矢理くっつけて世界史なるものを教えようとしても辻褄があわない、どだい無理な話だと書かれています。今更ながら言い訳を見つけた気分です。

さて、岡田先生が非常に重きを置く遊牧民族について。

遊牧民族の出世頭モンゴル人の軍事力と経済覇権というエコシステム

モンゴル帝国以前にも、漢民族国家支配の中原を窺ってきた匈奴、ゲルマン民族に大移動を余儀なくさせたフン族、これらをはじめとしてユーラシア大陸の東西の端で、遊牧民族諸族の存在感は大きく、歴史を動かす燃料であり内燃機関であったと言えます。なかでも、勇敢だったのが、アケメネス朝ペルシャの攻撃にもギリシャの攻撃にも動じなかったスキタイ人やマッサゲタイ人です。両者は同族で風俗の多くが共通しています。さらに、匈奴とフン族は同族だったのではなかという仮説に立ちます。

ヘロドトスの記述によれば、「(前略)高齢に達すると、縁者が皆集まってきてその男を殺し、それと一緒に家畜も屠って、肉を煮て一同で食べてしまう。こうなるのがこの国では最も幸せなこととされており、病死したものは食べずに地中に埋め、『殺されるまで生き延びられなかったのは不幸であった』と気の毒がる」と。

農耕文明をベースにした現代の日本人から見ると、多くの遊牧民が共有するこのような風俗や価値観は奇異に思えますが、競争社会を生き抜くためにあちこちで採用され定着したというのがほんとうだとすると、そのなかでの最大級の軍事的成功者であるモンゴル帝国(元)は恐るべき存在であったと言わざるを得ません。

現在の日本の領土について言えば、縄文人がどのように弥生人によって駆逐されていったのかというのは有史以前の話です。記録が残される可能性があったのだとしたら、日本が初めて侵略された戦争は、元寇(蒙古襲来)における壱岐・対馬ということになるのではないでしょうか。あるいはさかのぼるとしても刀伊の入寇(1019年)となりここでも犠牲となったのは対馬です。

大東亜戦争における沖縄と同様の位置づけであるいわば日本の本土の人柱であった割に、いま高校の日本史の教科書や参考書を調べると、この重要性がほとんど無視されているように見えます。

そのうえで、何故ここまで、中世から近世にかけての極東情勢のなかで対馬が翻弄されなければならなかったのかを、ただ朝鮮半島に近いということだけでなく、銀の産地という観点で注目する必要を思いついたのでした。

沖縄と同じように日本本土の犠牲となり続けた対馬と銀山

貴金属資源に関すること、特に貨幣鋳造に関することについては、記録できたはずなのに存在しないというところが肝要です。奈良の大仏の500㌧もの銅しかり。皇朝十二銭しかり。

もうひとつ。

冒頭の問い、銀を繋いだバトンとは、まさにモンゴル人による洋の東西への未曽有の規模の侵略です。モンゴル人に必要だったのが日本の対馬銀。その理由は、中東以西の経済圏へと覇権を広げるには中国(経済圏)のスタンダードであった銅ではなかった。銀こそが古代メソポタミアからギリシャの都市国家の繁栄(※)を経て中世ヨーロッパへと続く国際交易の受容される通貨であって、モンゴル人は銀であるという新スタンダードに合わせる必要があったからでしょう。

※アテネ南郊のラウレイオン銀山は紀元前5~4世紀に最大の産出量を誇ったとされ、これがアテネの繁栄、アケメネス朝ペルシャへの勝利(サラミスの海戦など)の大きな理由だったとのことです。銀山の鉱区はギリシャ市民権を有する自由民にしか所有できず、労働者としては奴隷が大量に使われていたようです。

対馬の《沈黙した歴史》の背景には、①度重なる侵略戦争、②天平年間(7世紀後半)の銀山開発以降ずっと朝鮮半島(経由)で需要されてきた対馬銀の存在、③正規外交・通商ルートとしても倭寇の根城としても、重要な交通の要衝であった等、時々の権力者が敢えて記録を残さないという理由に事欠かなかった。記録が残っていたとしても、日本側、朝鮮側、中国側で記載内容が整合しない(対馬自身がそれらのどちら側に実効支配されていたのかすら実はわからない)という残念な問題があります。

つまり、江戸時代以前の貨幣の改鋳の記録が乏しいこと、鎌倉時代以前の鉱山開発の記録が乏しいこと(いずれもなかったはずがない)と同様です。

現段階では乏しい史料からの弱い仮説の域を出ませんが、

①元寇の途中撤退、

②元寇以降の(明の開祖朱元璋洪武帝により中原の漢民族支配が復活したあと)対馬拠点に倭寇が活発化したこと、

③対馬銀が枯渇したという記録もないこと、

④対馬の守護大名の宗氏が元寇を生き残ったと考えるのは不自然であること、

⑤宗氏が石見銀山の開発や朝鮮への銀密輸に深くかかわり、博多商人と手を組み、倭寇を操縦しつつも、いっぽうで明との貿易(朝貢貿易であり勘合貿易でもあった)のために日本の国書を偽造し、安心東堂を名乗るものに表見代理行為をさせていたこと(朝鮮側の資料にあり)、、、

これらを一貫して説明するには、対馬は元寇により、日本(人)の実効支配は続かなくなった(が、宗氏の子孫を名乗るバイリンガルまたはトリリンガルの自称守護大名が必要な限りほそぼそと京の政権と連絡はとっていた)と考えるのがいちばん自然だと考えております。

史料がない以上、対馬にGo toするしかないと思っているところですが、是非このような憂国の切り口から、今月の銀の話を読んでいただけたらうれしいです。




2020年9月30日水曜日

日宋貿易を独占した総合商社のドン、平清盛の実像 ~歴史で考える「MMT批判」

今月も、月末ぎりぎりとなりましたが、WiLL Onlineに新しい記事が掲載されました。

第3話「日宋貿易を独占した総合商社のドン、平清盛の実像~日宋貿易から考える「MMT批判」」

先々月、先月の記事も長めで読者の皆さんを煩わせたこと必定ですが、今回も長いです。

しかし、過去記事の二本は、ピーク時、WiLLの経済部門で人気№1、№2を独占することができました。こちらのブログとは異なり、コメント欄がないので、実はディスられているのかも知れないですが。

第1話「バカボンのパパはやはり天才だった」

第2話「聖武天皇は日本史上初のMMTerだった!?」

経済(とくにマネー)と歴史と鉱物学とを、なるべく予備知識なしで、楽しく、それでいて浅薄にならないように説明してきたつもりです。それでも、どうしてもしばしば聞きなれない用語が突如としてあらわれてしまうことがあります。今回は、平清盛編を少しでも楽に読み進めていただけるよう、わたくしのブログで、語釈をつけてみることとしました。

安徳天皇    生後1か月で皇太子に、満1歳で天皇に、満6歳で壇ノ浦に沈んだ。父は高倉天皇、母は建礼門院徳子。ゆえに、後白河天皇(後の上皇・法王)は父方の、平清盛は母方の祖父ということになる。

自国通貨建てVS他国通貨建て    日米貿易で言うと、輸入(輸出)代金を円で支払う(受け取る)のが自国通貨建て決済、ドルで支払う(受け取る)のが他国通貨建て。ドル円の流動性が十分であれば、貿易決済が自国通貨建てか他国通貨建てかで有利不利はないはず。しかし、「ドルは(元)基軸通貨なので日米貿易もドル決済が主流であり、これはドル(米国)の既得権益だ」と考えるのが一般常識らしい。

改鋳(かいちゅう)    硬貨(金属貨幣)の材質(例:銅と鉛の比率)を変更すること。多くの場合、貴金属の比率を下げ、卑金属の比率を上げる、つまり質を悪くする(degrade)という意味で使われるが、必ずしもそうではない。

外貨準備高    貿易を国家が独占している場合(例:鎖国下の徳川幕府、明(みん)の勘合貿易)または貿易に民間が携わっていたとしても為替相場が固定相場制の場合、貿易黒字は中央政府または中央銀行の対外的な貯蓄となる。これが外貨=基軸通貨で貯蓄されている場合、外貨準備高=対外純資産となる。

南家⇒式家⇒北家 中臣鎌足(藤原鎌足)の次男(※)藤原不比等の4人の息子(※※)、武智麻呂、房前、宇合、麻呂を藤原四兄弟(藤原四氏)と呼ぶが、第2話「聖武天皇は日本史上初のMMTerだった!?」 の通り、四兄弟は全員、天平の大疫病(天然痘)で死亡した。武智麻呂は藤原南家の開祖であり、上記第2話の「主役」藤原仲麻呂はその息子。房前は藤原北家の開祖であり、平安時代に摂関家として全盛を極める冬嗣~道長・頼道の先祖。宇合(うまかい)は藤原式家の開祖で、その長男広嗣は九州で乱を起こすが、橘諸兄・吉備真備・玄昉を排斥することに失敗。式家が再び脚光を浴びるのは、孝謙天皇=称徳天皇崩御後、道鏡排斥へと動いた同八男百川(ももかわ)から。麻呂は藤原京家開祖。

(※)一説に、中臣鎌足の息子ではなく天智天皇の落胤とも。

(※※)聖武天皇の母藤原宮子も、聖武天皇の皇后となる藤原光明子も、藤原不比等の娘である。四兄弟のうち麻呂の兄貴の三人、宇合、宮子、光明皇后は腹違いなので、色分けしました。

通貨発行益    シニョリッジとも言う。政府・中央銀行が発行する通貨・紙幣から、その製造コストを控除した分の発行利益。「シニョール」(seignior) とは古フランス語で中世の封建領主のことで、シニョリッジとは領主の持つ様々な特権を意味していた。その中には印紙税収入や鉱山採掘権などもあるが、特に重要なのが貨幣発行益であった。中世の領主は額面より安価にコインを鋳造し、その鋳造コストと額面との差額を財政収入として享受していた。

スカルン鉱床    石灰岩などの大規模な炭酸塩岩が発達する地域で、花崗岩などの火成岩が貫入した際に発生する熱水により、交代作用(変成作用のひとつ)が起こり、炭酸塩岩が単斜輝石や柘榴石などに置き換えられることがある。これをスカルンと呼ぶ。この時、鉄、銅、亜鉛、鉛などが、酸化物や硫化物の形で一緒に沈殿することで形成する鉱床がスカルン鉱床。

赤字国債    特例国債とも言う。財政法第四条により日銀引き受け(財政ファイナンス)を禁止されているが、民間(例:市中銀行)が引き受けた赤字国債を公開市場操作の名目で日銀が購入することができる(買いオペという)ので、財政ファイナンスは実質的には禁止されていないことになる。

以上、Wikipedia、松原聰「鉱物ウォーキングガイド 関東甲信越版: 歩いて楽しい! 都内近郊の鉱物めぐり26地点」、高木秀雄「日本の地質と地形: 日本列島5億年の生い立ちや特徴がわかる」などを参考にして作成しました。


2020年8月26日水曜日

コロナ禍の今だからこそ問う奈良の大仏建立の謎

どちらかと言えば右寄りの救国媒体WiLLのオンライン版に、本日、わたくしの第二回目の記事がアップされました。


【企画連載】聖武天皇は日本史上初のMMTerだった!?~現役FX会社社長の経済&マネーやぶにらみ②


新型コロナウイルスについては、今年の3月から、限られた時間で、限られた情報をもとに、可能な限りフェアに分析と推論を行ってきました。いま読み返すと、これらの作業には大きな意義があったと気持ち自画自賛したくなるところもあります。


そのなかで、奈良時代の日本を(も)襲った天然痘のパンデミックを扱った記事がありました。


アジア人は「コロナ耐性遺伝子」を受け継いでいるのか


異常なまでも枝葉末節を記憶させられる高校の日本史の学習過程において、奈良時代に当時の日本の人口の1/3を犠牲にした疫病の取り扱いが小さ過ぎないかというのが、本日のWiLLの記事に向けての考察の原点でした。


度重なる(?)疫病や凶作から国民~国を守りたいという鎮護国家思想から聖武天皇と光明皇后は奈良東大寺大仏(廬舎那仏)、国分寺、国分尼寺などの大規模公共工事を行ったと教わり、「現代と異なり科学万能主義ではないから」と何となく納得させられるのが多数派なのだろうと思います。


「古代は宗教万能、現代は科学万能」という通念が誤りであるは、この時代を代表する宗教家~社会活動家である行基、そののちの空海の存在と業績を見れば明らかになるでしょう。


疫病にワクチンが開発できない点で、当時の天然痘と現在のコロナ・ノロ・ロタ各ウィルスの差はありません。いっぽう、どんなに科学が発達しても、宗教によって媒介される巨悪と情報弱者はいっこうになくなりません。


古代と現代に違いがあるとすれば、古代の宗教はその当時の科学知識を独占できていたが、それを鎮護国家思想に即せば、本山、末寺、檀家を通じてネットワーク(連鎖講)上でトリクルダウンさせることが出来ていたということでしょう。


行基のような私度僧は、アウトロー、いわば公務員制度から除け者にされた宗教家として、弱き民衆のために、無駄ではない公共工事に尽力し、ゆえに弾圧もされたということです。その行基が、逆に今度は《無駄な公共工事》のリーダー各公務員という使命を全うすることになります。これは変節でしょうか???


いえ、「銅」は後進国ヤマト政権にとってのゲームチェンジャーだ。なぜなら云々、と昨日の敵であった藤原仲麻呂に説得され、納得したうえでの受命だった。


これが本日わたくしが立てた仮説です。銅という貴金属=巨大廬舎那仏=国際決済手段=外貨準備高???これらを繋げる糸が【企画連載】聖武天皇は日本史上初のMMTerだった!?~現役FX会社社長の経済&マネーやぶにらみ② です。どうぞ御笑読ください。


行基も、そののちの空海も、経典を暗記し読み伝えるだけの高僧ではなく、全国を行脚し、井戸や温泉を掘り当て、病気がちな民衆のために薬草(雑草)の知識をシェアしてきました。ある程度は伝説染みたものも含まれますが、このような一部の宗教家を除くと、当時の日本に欠かせなかったはずの土木工学の知識や医学の知識をエリート独占するというのが鎮護国家思想にあったのだと思います。



2020年8月13日木曜日

ウィルオンライン(Daily WiLL Online)の連載がはじまりました

読者の皆さん、例年とは異なるお盆をいかがお過ごしでしょうか???  

近年は七転び八起きブログのスタイルも大きく変わってきておりますが、それでもますますのご愛読ありがとうございます。  

ブログのご縁もあって、月刊誌WiLLで有名なワック株式会社から、毎月の連載の話をいただきました。 

 ただし、オンラインメディア掲載のみです。 

 第一回目は、 


正直、いつもの、、、とくに最近の、、、ブログよりも一段と長めで、そのいっぽうでトーンは軽めになっています。どうかご笑読ください。

お盆の時期や年末年始は、日本と戦争のかかわりについて書くことが何度かありました。


題して、


総力戦研究所については、元東京都知事の猪瀬直樹さんが、昭和16年夏の敗戦という、最近新版が上梓された著書のテーマになっていることを最近知りました。

申し訳なくもまだこの本を読めておりません。そのうえで、アマゾンの最低評価のカスタマーレビュー(猪瀬直樹氏への批判意見)のなかで、


が参照されていたことを申し添えます。

決して右寄りでも左寄りでもないバランスがとれた日本史の教科書ですら、大東亜戦争前夜とその終結にまつわるエピソードや脚注たちには首を傾げざるを得ない断定がいくつかあります。現代史は歴史ではない、現代史だからこそ歴史ではないと言われるいっぽうで、これほど最近の、教訓に飛んだ事実もまだ認定できていないことにあらためて驚かざるを得ません。米中の新冷戦のなかで、日本がどのように生き延びてゆけば良いのか???少なくともそれが簡単ではないことだけは思い知らされる著作群です。

2020年5月15日金曜日

新型コロナウイルスの復習とアヘン戦争の復讐

新型コロナウィルスはアヘン戦争への復讐?

司馬遼太郎さんの「花神」の主人公村田蔵六(のちの大村益次郎)とやんごとなき関係となったシーボルトの娘イネと、長回しとしては四度目の登場シーンが、長崎上海間を往来する英国籍の便船(飛脚船)の船上です。

蔵六はイネの手に引かれて船長と面談します。てっきり英国人だと思い込んでいたら、実はアイルランド人船長だったというところから、

「イギリスが中国でやったアヘン戦争などは、アイルランドの例でいえばなんでもない。インドでやりつつあることも、すでに彼等がアイルランドで経験して味をしめたことが基礎になっている」

この船長が、大英帝国に対して、怒り心頭恨み骨髄で、堰を切ったかのごとく啖呵を切る、その一部です。司馬遼太郎さんの歴史観そのものではありません。なぜなら、司馬遼太郎さんは、アヘン戦争について何ページも割いて《伏線》を敷いているからです。

《伏線》を振り返れば、司馬史観としては、数々の帝国主義戦争のなかでも、アヘン戦争が特に悪質なものであったこと。さらにアヘン戦争が対岸に発した危機意識こそが幕末の尊王攘夷と佐幕開国の対立のエネルギーの源流であり、しかもその後の新政府と旧幕府の戦いが、往々にして自ずと植民地として列強に分割支配されがちになるところ、危機意識と胆力を兼ね備えた人物たちが奇跡的な活躍をして中国の二の舞を演ずることを食い止めた。とにかく、幕末期のリーダーたちがはぐくんだ危機意識の最大の貢献者がアヘン戦争による中国の惨状と犠牲だということが読み取れます。

人道的な戦場などあるはずがなく、その観点で戦争に優劣をつけることは出来ません。しかし、戦争の動機として、中国茶を消費し過ぎて膨れ上がった貿易赤字を帳消しにするために、インドで生産したアヘンを中国人に売り付け、シャブ漬けにした。この三角貿易という名の錬金術の目的は、ひとつにはアメリカ独立戦争への準備もあったと言われています。

これほど動機が不純な戦争がほかにあるだろうかと感想を抱いてしまいますが、今度はアメリカ独立戦争に続く米英戦争は原住民(アメリカインディアン)を対立させる典型的な代理戦争の鋳型に押し込んだものだったことにも敷衍しておきたいところです。

アングロサクソンがなるべく血を流さず富と利益を収奪するために、さもなければ憎しみ合う必要もなかった原住民を巻き込むという帝国主義戦争の構図こそが、今日でも未解決のアフリカや中東での民族対立や部族対立の原点です。



このブログは、気持ちとしては、これまで12年のあいだ一貫して、一面的なものの見方や、《陰謀説》のような「多くの事柄を簡単に説明できる《嘘》」を批判してきたつもりです。

新型コロナウィルスが、中国武漢市の海鮮卸売市場の蝙蝠(こうもり)からではなく、武漢ウイルス研究所から漏れた(漏らした)ものであるという《陰謀説》は、《陰謀説》にありがちな根拠ゼロとは言い切れず、イスラエルの(元)モサドや米国のCIAによる取材は相当程度なされていると思われます。

そのうえで、意図せず漏れたのか、意図して漏らしたのかでは、月とスッポンほどの違いになります。後者の可能性は著しく低いと言っておかないわけにはいかないでしょう。しかも、新型コロナウイルスについてはまだまだわかっていないことがたくさんあります

そのうえで、、、

司馬遼太郎さん並みの、「事実関係を取材し尽くしたうえでの、事実とは無矛盾の虚構」を描くことが許されるなら、結果としてアングロサクソンの重症化率と致死率が高いウイルスは作られたものであり、150年の年月を臥薪嘗胆して、アヘン戦争の仕返しだったのではないかと。

3月から《連載》してきた新型コロナ通信では、随所で、現代中国の帝国主義的、自由と言論を抑圧する態度、そしてWHO(世界保健機関)との癒着を批判してきました。その延長で、アヘン戦争云々の《陰謀論》を説いているわけではありません。アヘン戦争の文脈の先には大東亜共栄圏があります。東アジア圏の感染率、死亡率が著しく低い(※)ことをもはや素通りできないのではないでしょうか。やや飛躍していますが、行間を読んでいただければと思います。

新型コロナウィルスに関するこれまでのブログのまとめ

新型コロナウイルスについてはまだまだわかっていないことがたくさんあります、と書きました。いまよりももっとわかっていなかった3月から書いてきたことは、当時としては異端で、ともすれば炎上しかねない内容ばかりでした。しかし、その後の各国の感染者数の推移、死亡者数の推移、ロックダウンの開始と中断、、、これらを冷静かつ公平に分析すれば、わたくしが申し上げていたことは首尾一貫していて、なけなしの情報から引き出した仮説として、現時点でも色褪せていないと自負します。

まだわかっていないことのひとつには、人種による違いは有意か?有意だとしたら理由はなにか?というのがあります。これがアヘン戦争陰謀論のヒントでした。

ほかにも、優先順位に従えば、他の疾患との関係、年齢層別、男女別、血液型別などで、統計上の有意が疑われていて、男女の罹患率の違いはXY染色体の違い(Y染色体が進化とともにどんどん短くなってきていること)にまでさかのぼる仮説も出てきています。

しかし、断トツに重要なのは、抗体と免疫についてです。これまでの連載では、ワクチンが利用できるようになるのには18か月程度はかかるだろうという情報を前提としていました。

これは早まるかも知れないし、遅くなるかも知れないですが、さらに悲観的に言えば出来ないかも知れないのです(治療薬は別)。

結論を先に言えば、ロックダウンを徹底させることのメリットは世に言われているほどではなくむしろデメリットのほうが大きいという主張は、この悲観論によりむしろサポートされるものです。

病原体に一度罹患したひとは二度と罹患しないという免疫システムは、抗体が(はしかのように)一生継続すること、抗体の遺伝子(タンパク質)が(抗体が対応しきれないほど)突然変異(≒進化)しないことが前提です。

ウィルスのなかには、インフルエンザウイルスのように、抗体の寿命がはしかよりも全然短いもの、ロタウイルスやノロウイルスのように寿命がゼロ(抗体が生まれない)のものもあります。

きょうのブログの投稿内容は、実を言うと、何週間も前から構想を練っていたものでしたが、WHO(世界保健機関)から優等生呼ばわりされてきた韓国とドイツがロックタウン明けに早くも第二波の兆候を見せている事実を確認して、公開に踏み切りました。

ロックダウンをしない、ソーシャルディスタンスも強く促さないスウェーデンが行っている社会実験を、ほとんどの日本人を含む人類の多くは興味本位に揶揄してきました。

しかし、現実に、二度罹るひとがいる(理由は突然変異体のせいか抗体の寿命のせいかそれら両方かはまだわかっていない)、専門家の間でも新型コロナウイルスの抗体寿命は半年から数年との言われ方であって、ほとんど何もわかっていないに等しい。これらを考えると、スウェーデンの社会実験は、果敢でありこそすれ、無謀ではないと言えます。

(日本株)BCGの接種状況もまた新型コロナウィルスの重篤率、致死率に有意に働いていると考えられますし、以前このブログでも取り上げてきました。日本株を国民の義務として接種させているということで言うと、旧ソ連、イラク、ポルトガル、台湾が該当します。日本株に限定しないと、その範囲は、東欧、南米へと広がります。したがって、これだけでは、東アジア(つまり東南アジアの大半を含むがインドやインドネシアは含まれない)の優位性までは説明し切れません。

※※3月26日のブログ新型コロナの致死率と、トランプの我田引水の末尾に、

ワクチン開発スピードと、病原菌の突然変異(体のうち過去の免疫が機能せず新たな病原となる「株」の出現)のスピード、病原菌(原文ママ)の感染のスピード、、、これら3つの変数が鍵を握ります。

と書きました。これにもうひとつの変数として「抗体そのものの寿命」を付け加えるべきでした。お詫びして加筆訂正します。さらに、「病原体の感染のスピード」のなかには、感染はしたが無症状のまま抗体を獲得した人と接触はしたが感染すらしない(抗体を獲得する必要がない)人がそれぞれどのような割合でいるかというサブ要因があることを加筆します。ただし、抗体を獲得する必要がない人の割合についてはどこかで研究が進んでいるのかも知れませんがデータを入手できません。もっと厳密には、ある特定の個人が、環境とは無関係に、無症状で抗体獲得できる人なのか、抗体獲得不要の人なのか、をラベリングできるわけでもありません。




2020年4月27日月曜日

ロシアルーブルは原油相場の鏡、ビックマック指数は購買力平価の鏡、

きょうは、お読みいただく前に注意していただきたいことがあります。

わたくしが為替相場のフェアバリュー(≒値ごろ感)とか、購買力平価(≒ビッグマック指数)を語るとき、過去何度も相場予想を外しているという実績です。

特に酷かったのは、2008年のリーマンショック前後のオーストラリアドル、ニュージーランドドルについて、2018年のトルコリラについて、です。

いっぽう、大当たりしているのはロシアルーブルについてです。
これまた注意が必要です。
(1)わたくしが占い師として有能なわけではなくて、「購買力平価で見て割安すぎる通貨を(対米ドル)で(押し目)買いするとうまくいく」というのが成り立つのは、世界広しと雖もロシアルーブルくらいだという残念な現実
(2)ロシアルーブルが原油相場との相関関係が強いため、原油相場の循環的な性質が、たまたま購買力平価説を後押ししているというのが現実

ではさっそく、アヴァMT4で原油CFD(画面上半分※)と米ドル・ロシアルーブル(USDRUB 画面下半分)を比べて見てみましょう。



赤い楕円で囲んだ3つは、いずれも、ロシアルーブルが史上最安値を更新した局面です。

2014年は早や2月からクリミア半島(+ウクライナ東部)を巡るロシアとウクライナの事実上の戦争で、ロシアルーブルは年初からじりじりと史上最安値を更新する展開でした(青の楕円)。『じりじり』と表現しましたが、その後の原油暴落で追い打ちを掛けられた「底」(上記チャート上では「天井」)が余りに高く、いまからふりかえると『じりじり』なのですが、当時は多くの外国為替市場参加者が押し目買いの誘惑に駆られ、原油暴落による追い打ちは想定外だったと嘆かれたものでした。

青の楕円の部分は、原油相場下落手動の、原油≒ロシアルーブルの正の相関相場ではないことがわかります。

この先、2016年初頭までの一番底と二番底については、とくに前者は、クリミア半島のロシアによる併合を認めない旧西側諸国によるロシアへの経済制裁の影響と、原油相場下落の影響が混然一体となっています。

この頃、原油相場は、地政学的なリスクより、需要と供給の均衡に翻弄されはじめました。
需要≒世界経済全体の景気-廃プラ問対策-温暖化対策、、、
供給≒OPEC+ロシア(のカルテルの首尾)+米シェール(+加オイルサンド)+代替エネルギー(含む再生可能エネルギー)の価格競争力、、、

需要も供給も、一日や二日で、相場を何割も変えるような性質のものではなさそうなのに、何割も下落して1バレルがマイナスの30ドル以下になったというのが一週間前でした。先物取引(≒デリバティブ取引)の怖いところでもあり、またそのようなオーバーシュート(※)が異常値であると見切った投資家にとっては千載一遇のエントリーチャンスを与えてくれるのも先物取引(≒デリバティブ取引)であるということになります。

このように、例外的な局面(=青く囲った楕円)もあるものの、基本は原油市場の鏡となっているロシアルーブルのビッグマック指数を見ていきましょう。


英エコノミスト誌のビッグマック指数は、毎年1月と7月が基準なので、今回の原油相場とロシアルーブル相場の史上最安値更新(3月19日の81.89!!!)はチャートに反映していません。それでも、ロシアルーブルがビッグマックの値段で見ると、対ドルで61%も割安で、これは調査対象通貨のなかでは南アフリカランドをブービーメーカーとするブービー賞(ワースト二位)であるとのことです。

ロシアルーブルのビックマック指数としての過去最悪値は2015年1月調査の72%割安という記録が読み取れます。いっぽう、2020年1月の実際のロシアルーブルはUSDRUB=61.43とのことなので、現在のUSDRUB=74.70で計算し直すと、対ドル割安度合いは75%となり、記録を更新してしまっていたのです。


さて、冒頭に、、、謙遜も含めてですが、、、「購買力平価で見て割安すぎる通貨を買いとうまくいく」というのが成り立つのはロシアルーブルくらいだ、と豪語しました。

本当でしょうか?

英エコノミスト誌のビッグマック指数の特設サイトは、記事本体を読むためにはメアド等の登録が必要ですが、上記スクリーンショットのグラフィック上で遊ぶだけなら、登録すら要りません。そこで、ロシアルーブルと並ぶ下位集団の通貨をいくつかマウスオーバーしてみてください。

濃い折れ線(ロシアルーブル)に対する色の薄い折れ線に注目します。2020年(1月)の「割安(割高)水準」をあらわす各通貨の赤点(青点)を悪い順にマウスオーバーすると、まず、南アフリカランド、
トルコリラ、

中国人民元、
最後に、チリペソ。
アヴァMT4で投資が可能な通貨のみをピックアップしました。

これだけ見ても、押し目買いチャンスがはっきりしているという点で、ロシアルーブルは特異な存在なのです。

他の新興国通貨と比べて、

「購買力平価で見て極端に割安になると、是正される」

性質は、ひとつにはやはり、原油相場の鏡であるという性質、原油は通貨や金(ゴールド)や暗号資産と異なり(交換価値だけでなく)使用価値がある財であるという点に負うところが大きいのですが、

もうひとつ再訪したいのが、各国の一人当たり国民所得との関係なのです。

ほとんどの場合、購買力平価で割安すぎる国は、割高すぎる国に比べて、一人当たりGDPが低すぎるのですが、

この点でもロシアは例外であるという事実です。

2016年2月のこの投稿は、そうは言っても結局のところは原油相場がどうなるかであろうという落ちで終わっていますが、購買力平価を扱う際に、一人当たりGDPには注意を払うべき理由をくどくどと書かせてもらっていますので、是非もう一度お読みいただきたいと思います。

以上、どう読んでも、原油を買うかわりにロシアルーブルを買いましょう、みたいな記事に読めてしまうところですが、過去の経済危機で起こったことは今回の経済危機でも繰り返されるわけではない点にもまた要注意です。世界同時株安=円の独歩高、では今回はありませんでした。そして、原油先物当月限最終取引価格マイナス、これも誰が予測できたでしょうか。











2020年4月16日木曜日

WHOって誰!? インフェルノ

われらが金髪の《ジャイアン》、ドナルド・トランプ米大統領が、WHO(世界保健機関)への拠出金の支払いを停止するとして、またもや物議を醸しています。

トランプ・フォロワー(注1)のわたくしとしては、「同大統領の初期動作がもう少し早くてしっかりしていれば、重症者数や犠牲者数をずいぶん減らせたはずだ」という言説には、諸手を挙げて賛成することはできません。

そのいっぽうで、WHOの初期動作が遅すぎた、不徹底であったことは、まずもって、批判を免れないでしょう。

WHOが中国を贔屓にしている(注2)と揶揄するのは、行き過ぎかも知れないものの、身から出た錆です。

3月10日㈫付け、七転び八起きFXブログの新型コロナシリーズの記念すべき第一回、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「ホモ・サピエンス小史」と並んで紹介した図書として、ダン・ブラウン氏の「インフェルノ」がありました。

「インフェルノ」については、「ダ・ヴィンチ・コード」ほどは成功しなかったと書いてしまいましたが、それでも世界中に翻訳されて、累計6百万部以上売れているようです。

同じサスペンス物でロバート・ラングドン(注3)のシリーズであっても、「ダ・ヴィンチ・コード」は水戸黄門や暴れん坊将軍よろしく、勧善懲悪物で、敵味方はっきりしている書きぶりでした。「インフェルノ」は、WHOと天才科学者ベルトラン・ゾブリスト(注4)との対立軸で物語は進みます。前者が善玉、後者が悪玉と決めつけられていないのが特徴なのです。あら筋をフォローするのに一苦労する理由(注5)でもあります。

ちなみに、「インフェルノ」は原作のあら筋に対して、映画のほうは、エンディング部分が大きく改変され、勧善懲悪物にされてしまっています。これが、WHOという巨大組織に対する忖度のせいなのか?大ベストセラーの「ダ・ヴィンチ・コード」の映画版が興行収入としては期待通りでなかったことの反省からなのか?は知る人ぞ知るです。

きょうのブログの着目点は、「インフェルノ」の、原作にあって、映画にはない、エンディングに向けてようやく明らかになる「落ち」です。

飛び抜けた才色兼備と、そのことがむしろ災いして招いた幼少期からの数々の艱難辛苦、それを乗り越えるきっかけとして、時を挟んで、シエナ・ブルックスの前に現れた二人の天才の男性。

天才科学者であり、見た目はこの物語の悪役であるベルトラン・ゾブリストは、これまでの研究成果により大富豪のカリスマとなっています。

ゾブリストの思想、教義を乱暴にまとめると、

「人類は今日の人口爆発により共倒れ状態となり、意外に早く絶滅する。」

「危機を乗り越えるための《進化》が必要だが、人口爆発のスピードには間に合わない。」

「人類全体の滅亡を回避し、《進化》のための時間を稼ぐには、《間引き》つまりトリアージュしかない」

ということ。しかも、ゾブリストの言う《進化》は人為的なもの。すなわち、遺伝子操作によるデザイナーチャイルドの発想なのです。

最後の部分は、トランスヒューマニズムと呼ばれるそうです。もうひとつの推薦図書(?)であるユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス小史」では、遠くない将来、スーパーヒューマン(注6)が地球上に現れ、これにより現在の人類(ホモ・サピエンス)は滅ぼされると言います。おそらくですが、ゾブリストの《進化》は、スーパーヒューマンを志向するものだと考えられます。

ざっくり言うと、ゾブリストが命を賭して開発し撒布を企てた人工ウイルスの性質を知って、シエナは身も心もゾブリストから遠のくのですが、そのあとも、人口爆発制御こそ最重要命題だという点においては、ゾブリストの一「使徒」(いちしと)であり続けていることが、遁走中のラングドンとの会話から明確に読み取れます。

で、ここからが肝心です。だいぶネタバレに近づいております。人口爆発問題に対処するという点においては、ゾブリストとWHOの方向性が異なっているとは見えないわけです。しかし、発想の未熟さや方法の稚拙さにより、WHOは結果を出していないと、ベルトラン・ゾブリストは女性の長官(エリザベス・シンスキー)を呼びつけて批判、啓「蒙」します。人口爆発のepicenterでありground zeroでもある発展途上国に、先進国から義援金がわりに送られた避妊具が埋め立て用の土嚢の代わりに堆(うずたか)く積まれているエピソードについては、女性長官エリザベス・シンスキーは反論出来ずにいる、などです。

この物語のあら筋~落ちの部分でわかりづらいのが、ここです。

シエナ・ブルックスは、映画で捻じ曲げられたあら筋のように、ゾブリスト側の悪役で終わるわけではありません。かと言って、逆にゾブリスト側からWHO側に寝返ったわけでもありません。

最後の最後にこの謎が解き明かされることになります。ゾブリストの病原体は何としても撒布前に食い止めなければならないと思った。しかし、食い止められたとしても、それがWHOの手に渡ってしまったのでは元も子もない!?と思った。だから単独行動に出て、しかも、WHOの絶大なリソースには頼れないところ、暗号(クリプト)を地下(クリプト)で解くことが得意なラングドンを連れまわすという着想に至った。。。

そして土壇場でラングドンを振り切って、WHOよりも早くepicenter、ground zeroを目指す。。。その場所はラングドンの天才的暗号解読によって特定されたものであるという皮肉。。。

シエナ・ブルックスは言います。WHOと協力して人口ウイルスの回収という選択肢はないのだ、と。ゾブリストの人工ウイルスがWHOに渡ってしまえば、その支援国家間の権力闘争やひいては戦争に悪用されることが間違いない。空気感染も可能な高性能のウイルスは悪用されようものなら、生物兵器にほかならないから、と言うのです。

わたくしたちは、国連(機関)というのは、国家や政治家のエゴから中立的な、公正で公平な存在だという幻想を持っています。これには社会科教育も一役買っています。第一次世界大戦後に出来た国際連盟は実力部隊を持たなかった。これが第二次世界大戦を引き起こした反省。それで国際連合は国連軍という実力部隊を持った。そして安全保障理事会の大国主義は機能している、などと習います。現実はおおいに異なり、第二次世界大戦後、戦場になっていない国は、日本を含めて極々僅かなのです(9.11も戦争、戦場だと看做します)。

WHOは、安全保障理事会や、国際オリンピック委員会よりはマシであると信じたいです。しかし、ダン・ブラウンが、どちらかと言えば悪役側であるベルトラン・ゾブリストやシエナ・ブルックスをして言わしめた批判(ややもすれば中傷)は、大国のスポンサーシップなしには成り立たず、大国の利害に揺さ振られる、vulnerableな国際機関の宿命を見事に描写しています。

エチオピア出身の現WHO事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏によるパンデミック宣言が遅かったことは記憶に新しいところ。そこには中国への配慮があったのか、新型インフルエンザで大騒ぎをしすぎた過去への反省があったのか、わかりません。そのあと、「一にも二にもテスト、テスト、テスト」発言です。

これまでの新型コロナウイルス感染症シリーズで一貫してお伝えしているように、都市封鎖の費用対効果と並んで、いま陽性か陰性かを判断するPCR検査の費用対効果について、わたくしは非常に懐疑的です。エボラ出血熱と異なり、致死率が低いこと、無症状または軽症を経て免疫を獲得できるひとの割合が高いこと、発症するにしても潜伏期間が長いこと、これら3つの性質に鑑みると、実施する意味がある検査は抗体の有無の検査(アンチボディテスト)です。数が足りなければ無作為抽出のサンプルテストでもやる意味があり、それによって、国ごと地域ごとの、適切な制御方法は異なってきます。

免疫を獲得できたひとを医療現場や隔離施設や経済社会に戻すこと、配置転換すること、これこそがいま一番大切な経済政策であり社会政策なのです。

いっぽう、都市封鎖を、一概に有意義だとか、一概に無意味だとか決めつける態度こそが有害無益です。このブログでは、定期的に、国(など)ごとの(単位)人口に対する死亡率に注目して、エクセルシートを更新してきました。この視点が、一部の心ある研究者や媒体を除いて欠けており、的外れの悲観論や楽観論がパンデミックを起こしてしまっていました。

感染率や致死率が、男女で、年齢層で、血液型で、どんな持病を持っているかいないかで、人種で、どのように異なるかという研究は、いろいろと進んでいることは確かです。が、その結果を知っても、ジタバタすることくらいしかできなくて、オンライン飲み会でのネタ程度にしかならないです。

多くの研究者や媒体が飛びつき群がる上記テーマよりもむしろ、人口密度(都市化率、都市の集中度)という要因を強調してきました。

このブログのエクセルシートを受け継ぐ以上に遥かに良くできた統計処理とビジュアル処理をしている無料サイトがニューヨークタイムズ紙にあります。ここから読み取れる情報は多岐にわたりますが、是非とも、都市集中と単位人口当たり(ニューヨークタイムズでは十万人当たり)の死亡者数に注目して、ニューヨーク州(ニューヨーク市)と、西海岸の大都市、その他を比べてみてください。国ごとの比較だけからは見えてこない示唆があります。




注1:トランプ大統領のツイッターをフォローしているだけであって、トランプ大統領の信奉者という意味では必ずしもありませんのであしからずご了承ください。

注2:実態は、中国がWHOの贔屓(谷町)になってきている、と言えそうです。

注3:美術史(と「象徴学」)を専門とする学者というキャラクター。謎の殺人事件など凶悪犯罪の現場などに残された「象徴」や「暗号」(=クリプト)を解読し事件解決の手伝いをするために、歴史的建造物の地下空間(=クリプト)などを、《マドンナ》キャラと一緒に遁走するのが特徴

注4:とくに産業革命以降に幾何級数的に増殖する人口が人類を滅ぼすとの信念から、自らが開発した人工ウィルスで、世界全体の女性の三分の一を不妊にさせるというパンデミックを起こす。ややどうでも良いが、LGBTのB。

注5:「インフェルノ」での《マドンナ》役は、シエナ・ブルックスというIQ200越えの女性。かつての信奉者であり恋人でもあったゾブリスト(注4)と、ラングドン(注3)との間で女心が揺れる。以下、ネタバレの本質部分になってしまいますが、ゾブリストが撒き散らす人口ウイルスの内容には合意できないことから、ラングドンとの逃避行の目的が変容するのですが、かと言って、ゾブリストに予告されたパンデミックを封じ込めようと焦るWHO(世界保健機構)側に寝返るわけではない。

注6:ホモ・サピエンスに対して、”ホモ・スペリオーレ”みたいな感じで、現人類とはホモ(ヒューマン、ヒト)という「属」は共通だが、「種」が異なる存在。かつては、ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)をホモ・サピエンスが凌駕したのと同じような関係

2020年4月7日火曜日

アベのマスク

どうも、ミルクボーイです。

よろしくお願いします。

(最前列のお客さまへ)あーーありがとうございます。
いま、トイレットペーパーの《芯》をいただきました。

(左の内ポケットに入れながら)ありがとうございます。

こんなの、なんぼあってもいいですからね。

ありがたいですわ、ほんまに。はいー。

ゆーとりますけともー。

実は、ウチのオカンが、一日も早く着けたいマスクがあるらしいんやけど、、、

ほうほう。。

その名前がどうしても思い出されへんらしいねんな。

好きなマスクの名前、忘れてもうて。
どないなってんねん。
ほな、俺がな、一緒に考えてあげるから。
どんな特徴言うてたか、教えてみてよー。

オカンが言うには、
布で出来てて、
左右にゴムがついてて、
一世帯に2枚ずつ《配給》があって、郵便屋さんが届けてくれるものらしいんやけどな。

アベのマスクやないかい。その特徴は完全にアベのマスクやがな。すぐわかったやん。

俺もアベのマスクや思うたんやけどな。

そうやろ。

せゃけど、オカンが言うには、そのマスクは片時も離さず、一生着けてたいらしく、、

ほうほう、、

着けたまんまで、人生最期の瞬間を迎えてもえぇ言いよるんや。

そしたらアベのマスクとは違うかー。。
人生最期のマスクがアベのマスクでえぇわけないもんね。
アベのマスクは、寿命にまだ余裕があるときに、着けてられるもんやねん。
アベのマスクの側にしても《御臨終の死装束》となると荷が重過ぎるしね。
お通夜の弔問客も、アベのマスク着けたまんまで棺桶入ってるオカン見ようもんなら、
『アベのマスクでウイルス防げかったんか』って《誤解》するもんね。
ほなー、もうちょっと何か言うてなかったか?

郵便屋さんが、
『書留でーす、判子くださーいっ』呼び出すんで、
おっ、30万円届いたか思うて、いそいそ玄関行って、なか開けたら、布切れやったらしい。

アベのマスクやないかい。ってか、なんでもう届いてるんやー。
アベのマスクは、現金やないのに何故か書留で届くんよ。
しかも布切れ二枚やから厚みがちょうどお札三十枚くらいで、期待持たせといて、中身見てがっかりさせる。
そう言う作戦やから。俺は騙されへんよー。アベのマスクに決まりや。

いや、それがまだわからへんなんて。

何がわからへんのよ。ハッキリしとるがな。

いや、オカンが言うには、国会では安倍首相をはじめとして、議員先生がた全員がそのマスクを付けてて、永田町のラッキーアイテム言われてるらしいねん。

ほな、アベのマスクと違うやないかい。
布で出来たマスクを着けてるのは安倍首相だけ。
ほかの下々の議員さんたちは、メルカリで大枚叩いた使い捨ての紙マスク着けてんねん。
自民党の先生がたも肝心なときに《忖度》忘れてもうて。
ほなー、もうちょっとなんかヒント言うてなかったかー?んんん。。。

オカンが言うには、布切れが薄っぺらくて、目が荒過ぎて、杉とか檜の花粉は防げるけど、ウイルスとかPM2.5は素通りするらしい。

アベのマスクやないかい。日本人の多くは花粉症に悩まされてるけど、ウイルスやPM2.5は気にせぇへんのよ。安倍首相は頭えぇから、そこに目ぇ着けてて、コスパの良いもの作るゆーて、財務省の官僚たち説き伏せたんよー。アベのマスクに決まりやー。

いや、それがまだようわからへんねんて。

なんでまだわからへんのよ。はっきりしとるやないかー。

オカンが言うには、海外で超絶人気で、貿易船が海賊に遭って、船乗りさんの命は助かっても、マスクは根こそぎ奪われて転売されるくらい垂涎の的らしい。

ほな、アベのマスクと違うやないかい。アベのマスクは日本では人気でも、
海外では馬鹿にされてんのよー。
海外で人気なんは、紙のマスクと、紙の百ドル札だけ。
アベのマスクと違うがな。
アベのマスクで、アベのマスクやのうて、わけわからへんがな。もうちょっと何か言うてなかったかー?

洗って乾かしたら何度でも使えて衛生的らしい。

アベのマスクやないかい。洗って、乾かして、なんぼでも使えて、しかも衛生的なんは、アベのマスクと、薄すぎない昔のコンドームだけ。もう、アベのマスクに決まり!

しかし、オカンが言うには、そのマスクは、アベのマスクやないゆうねん。

そしたらアベのマスクとは違うやないかい。どないなってんねん。俺が恥を忍んで、昔のコンドームと比較したとき、おまえはどう思うてたんや!?

いや毎度のことながら申し訳ないなと。
どっちもサイズにあわせてそこそこ伸び縮みするわなと。

ほうほう。。感心してる場合かぁ!!

で、オトンが言うには、オカンが着けたいのはタイガーマスクやろうて。

鼻と口と目が開いとるやないか。絶対違うやろ。もうええわ。ありがとうございました。

2020年3月30日月曜日

日本型BCGで新型コロナウイルスの免疫

免疫力をつけましょう。新型コロナに対してと、愚かしいマスコミ+SNSに対しても
前々々回前々回前回のブログに続いて、こんなタイトルからはじめると、

七転び八起き社長は、一貫して、「都市封鎖懐疑派」だな!?

何て空気が読めない輩だ!!

と糾弾されてもおかしくありません。

「一貫して」という箇所はお褒めの言葉だとありがたく頂戴します。

一貫性がない(※)と言えば、前回、都市封鎖を一日でも早く実現して、経済活動を壊滅させないようにしたいと会見しツイートしたトランプ大統領。舌の根も乾かぬうちに、ニューヨーク市完全封鎖と言い出し、クオモ州知事がアベコベにこれを言語道断と批判。

大統領は前言を再度撤回と、二転三転どころではなく本日に至っています。

リーダーがこれじゃ駄目だろうと言うのは簡単。良くも悪しくもトランプ大統領は、一貫性も指導力(独裁性?)もある部類です。《空気》を読めずに困ることもあるのです。大統領選がさらに一年先であれば違っていたかも知れません。

都市封鎖について懐疑派か?推進派か?
このように二項対立の問題として提示し結論を得ようとするところが、群集心理を手玉に取ろうとするマスコミの常套手段です。

日中戦争から太平洋戦争へ突き進み、サイパン陥落後も軌道修正できなかった日本の指導者と群集の壊滅的失敗から、ほとんどまだ何も学べずにいる、この国があります。

前回ブログで提示した、医療崩壊と経済崩壊はどちらが致命的なのかという究極の選択。

これには明確な正解はなく、現実的な妥協をどこかの中間点でするしかないのです。

しかし、マスコミも、多くのSNS民も、どちらかの結論を、根拠も示さず、公平で冷静な分析もせずに喧伝し、世論を二分するだけになっています。

形勢?としては、経済=おカネ(?)より、医療=人命(?)のほうが大事に決まっているだろう!?に賛成する(いいね!を押す)のが、いまの《空気》なのでしょう。

このブログもまた、その《空気》を追い風にして、幾何級数的に人々を煽るか、逆に極端に《空気》を無視して異論をぶちまけ、Disられるか、どちらかしたら、クリック数も挙げられると期待はできます。

このブログでは、怪しい《空気》に最小限の《水》を差す役割だけは果たし続けたいところです。

「ロンバルディアの宝石」

で、月曜日恒例の、新型コロナウイルス統計アップデートです。きょうは、「国家」以外の例外としてさらにニューヨーク市(ニューヨーク州はもとから入っています)とベルガモ市(ロンバルディア州はもとから入っています)を入れました。
本日追加したベルガモ市は、ロンバルディアの宝石とも評される観光都市です。旧市街(Citta Alta)が特に美しい歴史的な街の人口はたったの12万人程度。そのうちの2,000弱が、非情なペース、で亡くなっているのです。

その割合である
1.67%
という数字は、「致死率」ではありません。

「致死率」の分母である「感染者数」の統計を取るにも、病院もパンクしていて、数字がわからないのです。自宅で倒れて医者にも診てもらえず葬式というケースが雪だるま式に増えていると言います。そして悲しいことにパンクしているのは病院だけでなく教会も火葬場も、です(ニューヨークタイムズの無料記事)。

上記記事で取材を受けている現地の医師の推測では、すでにベルガモ市では7万人が感染しているだろうとのこと。これは前回ブログで引用したイスラエルの疫病学者の考え方だと、Ro(基本再生産数)=2を前提とするならば、集団免疫(Herd Immune)が完成しているレベルとなります。個人的には、ベルガモ市のような状況(同様のケースがクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」、ニューヨーク市、など)では、Ro>>2と、前提が著しく狂っているではないかと考えます。

その近くに、集団免疫が出来つつあると考えられるモデルケースがあります。初回から、敢えて、載せていたサンマリノ共和国は人口2万人規模の小国。潜伏期においては、イタリア北部の他の地域と新型コロナウイルスが行き来していたに違いなく、これまで「国家」単位でくくると感染者の比率も死者の比率もワーストでした。が、直近一週間の増加率で言うと改善に転じていることが見て取れます。

二つの意味での都市封鎖

都市封鎖(Lockdown、Quarantine)には、都市の《内部》の人の動きを押さえつけるのと、都市の《内外》のそれを押さえつけるのと、二面があります。

前者については、北部イタリアの各都市に限らず、ヨーロッパのほとんどのところで、時すでに遅しと見えてしまいます。しかし、遅きに失したとしてもやってなかったらもっとひどかったかも知れません。

後者については、中部から南部のイタリアは、北部各都市の封鎖で大いに助かった数字が見て取れます。感染者(および死者)がゼロではないので、新型コロナウイルスは間違いなく中部南部にも侵入はしていて、しかしながらゆっくりとしたペースで集団免疫を作っていくということになりそうです。

臥薪嘗胆作戦は、ワクチン利用可能となるおそらく18か月先まで続けないと意味がない選択肢であり、経済崩壊を中心として、先進国に居住する人口にとって、生き方や考え方の変革を抜本的に求められる道です。

経済学について何もわかっていない媒体に露出することだけが評価対象となる自称経済学者(例:●●生命経済研究所など)が、GDPの●割程度の真水の財政出動が必要かもという、そのGDPって人間にとって何だろうというところまで見つめなおすくらいの価値観の変革です。

志村けんさんを悼む

がらりと変わって、国内の話題に。土曜日に小学校から帰ると、まずは「吉本新喜劇」を見て、夜は「8時だョ!全員集合」を視る。その前に大橋巨泉さんの「お笑い頭の体操」~「クイズダービー」も欠かさず。これが文化の汽水域である三重県のテレビ事情を踏まえたわたくしのお笑いの原点(←どうでも良いことです)になっています。

荒井注さんの後任として、ドリフの見習いとして頭角をあらわしていたすわ親治さん(※)が一軍昇格かと思いきや、その兄弟子だった志村けんさんが抜擢。その後の活躍については説明を要しないでしょう。

どれだけナンセンスな笑いであっても、あれだけのコントを毎週考えて練習して生放送でやり遂げることがどんなにたいへんなことか、もちろん子供のころはまったく理解できず、またまずまちがいなく一生理解できないわけです。厳しい芸能界のなかで生き残り頂点を極めている芸人さんというのは、そのストレスや苦痛を、やりがいや快感へと昇華させているのかも知れません。

すべてはわからないものの、特別な人生だからこその「免疫力」の限界というのはあったのではないかと。それと不可分で喫煙の問題も無視はできないところです。とにかく、その特別な人生だからこその達成感をその最期に意識されておられたならなと祈念しつつ、謹んでお悔やみ申し上げます。

都市レベルで壊滅的な感染と犠牲を出すことになったベルガモ市その他の地域や、志村けんさんは人柱です。感情的にYesNoを断じて扇動することでは犠牲者の魂は報われないでしょう。

BCG接種も要因のひとつとして?

最後に、まだまだぬか喜びは禁物ながら、日本や、(旧東)ドイツや、ロシアで感染者数や死亡者数が有意に低そうな背景として、結核予防のためのBCG接種をやめていなかったことがあるという指摘があり、いま鋭意研究が進んでいるそうです。ツベルクリン反応の、アレです。最初に指摘された記事はコチラ。ビジュアルでさもありなんと納得してしまう記事はコチラです。

都市封鎖か否かどうか?だけでなく、免疫があるかどうか?免疫力があるかどうか?という問いもまだYesNoの二項対立ではなく、程度の問題です。
①若い(※)、
②体力がある、
③体調が悪くない、
④適度に清潔で衛生的である(※)、そして、
⑤日本型BCGを接種している(自分も、まわりも)
⑥被曝する新型コロナウイルスの量が多すぎないこと
こういったことの積み重ね(加点方式)で、感染しないというよりは感染するが比較的軽症または自覚症状なしで免疫を付けていく可能性が高くなると予測されます。

最後の⑥はあたりまえのようであたりまえではありません。まだよくわかっていないし、だれもちゃんと説明しようとしていません。新型コロナウィルスは間違いなくこの国にも蔓延しているところ、それにまったく被曝しないと免疫は獲得できないが、単位時間にあまりに大量に被曝したり、または累計的にでも大量に被曝すると、発症、重症化する蓋然性が高くなる。医療崩壊現場の医師や看護師さんが、防護服を着ていても犠牲になる事例からこのように考えられると思います。

マスクは無意味だと理論的に言われています。間違った使われ方や無駄な使われたかがされている現状では、そのように啓蒙するのが正しい態度だと同意します。いっぽうで、被曝を適量に抑える(お互いに)という意味では、手洗いうがいと同じく、一定の意味はあるのだと考えられます。

以上、アセトアルデヒド善玉説を立証して、飲食業を微力ながら応援したい、七転び八起き社長からでした。


※一貫性のない身近な例は、ワイドショーの常連の「専門家」と「評論家」。知らないくせに知ったかぶりを求められ断言を求められるのが仕事ゆえ仕方がないが、彼らの雇用維持のために群集心理が扇動され幻惑されるのは許されることではありません。

※冒頭に《空気》という表現を乱発しました。これは、山本七平先生の「空気の研究」という著書を踏まえています。このブログをご愛読中のみなさまには、是非いちど手に取ってみていただければうれしいです。サイパン陥落と戦艦大和の特攻のエピソードは何千万人もの日本人犠牲者人柱に立つ財産です。

※当時の芸名はすわしんじさんとひらがなだったそうです。ブルース・リーの燃えよドラゴンが大流行した時期で、その物まねをやっていました(それしかやっていなかった?)。

※きょうのブログでは、「免疫」ということばと「免疫力」ということばを使い分けています。このふたつは意味がちがうだけではないのでややこしいです。「免疫」=「抗体」である一方、「免疫力」という表現のなかの《免疫》は、なにかの細菌やウイルスなどに被曝しても感染しない、感染しても発症しない抵抗(力)のようなニュアンスがあります。スギ花粉症の人がスギ花粉の免疫力があると言って褒められることはありません。

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之教授によれば前者を獲得免疫、後者を自然免疫と言い換えることもできるそうです。そして、日本型BCG(の接種)は、それ自体が新型コロナウイルス(感染症のワクチン)そのものであるということはたぶんありえない(獲得免疫が無毒化された抗原でもたらされるわけではない)。そうではなく、一般的な自然免疫(巷間言われる免疫力)が高められている可能性はあるとのことです。

※「若い」要因。幸い、新型コロナウイルスではかなり有効のようです。季節性インフルエンザでは有効ではないこと。次以降のパンデミックではどうなるかわからないことなど、いろいろ謙虚でいる必要はありますね。

※《適度に》清潔で衛生的。完璧に清潔だと、「免疫力」は付かないとも言われます。腸内の寄生虫がスギ花粉症を防ぐと主張するために自らサナダムシを体内で《飼育》していた藤田紘一郎先生も免疫学者のひとりです。本書きすぎ?









2020年3月26日木曜日

新型コロナの致死率と、トランプの我田引水


手洗いと、、、

米国のトランプ大統領が、24(火)の会見で、「新型コロナウイルスに打ち勝てる道筋が見えてきた」として、復活祭で「教会を満席にして祝えるように」4月12日までには、自宅軟禁~隔離政策を解除させたいと述べたことが物議を醸しています。

人気のトランプ大統領のツイッターを覗いてみました。報道機関が引用しているのは、

会見同日のこちらのツイートです。反響も大きく、アンチ・トランプ勢からは、「ホワイトハウスにとっては、米国民の命よりも、ダウ平均株価のほうが関心事項であることが暴露された」みたいなリツイートが多いです。



トランプ大統領自身も、他人のいろんなつぶやきや報道をリツイートしています。最初に引用したCNNなどアンチ・トランプの記事については偏向報道などとコメントをつけて、、、ですが。

注目は、

新型コロナウイルスに関してはトランプ大統領が正しい。世界保健機構は間違っている。

というイスラエルの疫病学者の記事です。これが、トランプ大統領の、一転、自宅軟禁~隔離政策を早期解除へと駆り立てた理論的支柱になっていると考えられます。

非常に長いインタビューの形式になっています。

トランプ大統領の変節の理由は?

わたくしの前々回前回のブログと、分析結果の8~9割が一致します。

重要な点から並べると、

①新型コロナウイルスの致死率は0.45%と推定される。世界保健機構の言う3.4%よりも著しく低い(留保付き賛成)

②新型コロナウイルスのRo(ひとりの感染者が何人を感染させるか?)は2.0である。だとすると、ワクチンが開発されるまでの間に収束する=筆者注)感染者の世界人口に対する割合は50%(留保付き賛成)

③医療資源に制約があるときは、(治る見込みの高い)軽症の若者よりも、(治る見込みの低い)重篤な高齢者を隔離入院させたほうが良い。
  (1)エボラ出血熱で現場を指揮したときの教訓
  (2)急性の重篤な症状の患者のほうがウイルスをたくさん持っているから+死に際に大勢の見舞い客が来て感染するから
(上記②Roが、(a)重症患者>(b)陽性だが軽症>(c)陽性だが症状なし、、、という傾向であるという点で、エボラ出血熱と新型コロナウイルスが同様であるとは言い切れないし、イスラエルの疫病学者もその点は断言していない)

まず、①について。前回、前々回のブログの通り、国や地域(そして極端な事例としてのクルーズ船)で検査態勢が異なること、検査の精度自体の問題もあることから、多かれ少なかれ、感染者の統計が(b)と(c)を取り逃がしているわけで、ゆえに、巷間言われているよりも感染者は多く、致死率は低いというのは間違いないです。

ですが、イスラエルの疫病学者が主張するように、0.45%ぽっきりかというと完全同意は出来ません。

致死率を計算した今週23(月)のエクセルシートを再掲します。きょうは、その1週間前のデータと比べて、《実績値としての致死率》がどれくらい変化したのかが見られるようにしました。

今週の時点で、致死率が、世界保健機構の期待値をも大きく上回っているイタリア、スペインなどは、ほんの1週間で悪化度合い自体も酷いことがわかります。

《実績値としての致死率》からアプローチすると時系列分析が必要で、平均の潜伏期間、発症するしないの確率、発症した場合の回復に要する期間、発症したが回復できず、、、の期間等の平均・分散を知りたいところです。これらが入手困難だとしても、各種タイムラグが(おそらく1週間ずつくらいは)あると考えられるので、致死率が安定しないのです。

そしてこれにさらに、医療崩壊の要因と、年齢構成や、他の持病との併合の要因が重なります。

クルーズ船からのデータの貴重さは強調しすぎることがありません。これまた年齢構成や他の持病など、母集団にありすぎる特徴の考察は保留させてもらうとして、本日ブログを書いている時点で、月曜日から死者が3人増えてしまい、《実績値としての致死率》は不幸にも1.4%と上昇しました。

クルーズ船の《実績値としての致死率》の微妙な高さや変化と比較して、イスラエルの疫病学者の0.45%はさすがに楽観的すぎる気がしてなりません。彼の記事を見る限り、クルーズ船のデータを顧みている形跡がありません。彼に、国立感染症研究所の論文を英訳して送ってあげるのが、人類のために役立ちそうです。

全人類に感染するのは所詮?時間の問題だという事実?

次に、②のRoは、見た目より難しい概念です。Roは各種の病原菌に固有の値ではないらしいのです。そのうえで、馴染みのある病原菌の各数値をご紹介すると、

新型コロナウイルス  1.4~3.9(上記記事では2と紹介されているところ)
はしか        12~18
HIV/AIDS      2~5
季節性インフルエンザ 0.9~2.1(1918年のスペイン風邪や2009年の新型インフルエンザはまた数値が異なるようです)

はしかについては、昨年欧州で深刻な疫病として「復活」したことは別としても読者の皆様に馴染みが深いと思います。

筆者は子供のころなかなか罹らなかったので、近所でより小さい子供が罹ったと聞くと、オカンに連れられ「罹りにいかされた」ものでした。それでも罹らなかったので、「これだけやって罹らないのだから、一生罹らないのではないか?」とご近所巡りに抵抗を示したらたいへん怒られました。

結局ワクチンを打つことになりました。

ワクチンを打つ段になって、ワクチンを打つことで軽い症状は出るんですよね?と聞いたら、いや出ないですよとお医者さんに言われ、横から看護婦さんが、えっ、先生、普通にはしかに罹ったのと同じですよ。何言ってるんですか!?みたいな会話で、どっちでも良いから早く打ってくれと思ったのを覚えています(以上の会話はすべて伊勢弁でなされております)。

日本酒(ビール)と同じく、生酒(生ビール)と、火入れ(加熱処理)されたものがあることを知ったのはずいぶんあとのことです。

新型コロナウィルスは、はしかと違って、2019年12月の時点ではまだ誰も免疫を持っていなかったうえに、ワクチン開発と運用まであと1年6か月掛かるということがありますから、、、

Ro>1

であれば、全員が感染するのは時間の問題で、4の5の言っても仕方がないのではないかと素人考えが頭をもたげてしまいます。

日常会話で「時間の問題」と言い回しが使われるのは、遅かれ早かれとか、どうせ駄目になるのだから手間かけて対応しても意味がない、みたいな文脈が多いです。感染症ではここが大いに異なります。対応することに意味があるからです。

しかし、

対応、つまり具体的には現在世界人口の25%が経験している自宅軟禁が、感染のスピードをいくら遅らせたとしても、最終(※)的には、全人類が感染し、一定割合(※※)は無症状のまま免疫を取得し(この集団のことをHerd Immunity(集団免疫)と呼ぶそうです)残りは症状を経て回復するか残念ながら死に至るかという定常状態(新生児要因は無視しています)になるというロジックにおいては、筆者はこのイスラエルの疫病学者に賛成をせざるを得ません。

※生ワクチンかどうかにかかわらず、
《無症状のまま免疫を取得できるワクチン》
が開発され運用可能になるのが、この定常状態に間に合わないことが前提です。

※※このイスラエルの疫病学者によれば、一定割合は50%らしいですが、新型コロナウィルスのRo=2.0から、この50%という数値がどうやって導かれるのか、記事を読んでも筆者には理解できませんでした。

わかりやすく譬えて言うと、日本は、来年7月までに、新型コロナウィルスの終息(収束)宣言を出さなければいけなくなったのですが、これに間に合わせるためには、自宅軟禁などの隔離政策をとらないほうが安全であるという逆説的かつ不都合な事実を突きつけられているわけです(上記※の前提で)。

医療崩壊と経済崩壊。守るべきはどちらか?

もちろんここで「医療崩壊させないことのは重要ではないか!?」という《物言い》がつきます。イタリアやスペインそしてフランスの惨状を追っているニューヨーク市のアンドリュー・クオモ市長(民主党)が強調しているところです。

これに対して、トランプ大統領は、《経済》を犠牲にしてまで、治療と隔離を押し通すのは馬鹿げていると言い始めたというわけです。

トランプ大統領にとっての経済は、再選を実現するための、ダウ平均株価と雇用統計だけではなさそうです。トランプ大統領が経営するテーマパークの売上という死活問題があるという指摘があります(25(水)のテレビ東京WBS)。

トランプ大統領の公私混同、我田引水の疑惑を追及するのがブログの目的では実はありません。どこの国の政策担当者(※)にとっても、ワクチン開発スピード(※※)を所与とせざるを得ないならば、医療を崩壊から守るのか、経済を崩壊から守るのか、この二者択一を迫られていること。この究極の選択のどちらに傾いても、ワイドショーのような「報道」では批判票を集めて井戸端会議しておけばよいわけで、番組の構成や視聴率の面では手頃なテーマとして弄ばれてしまう点、注意を要します。

※米国に加え、英国(ボリス・ジョンソン首相)と日本において、そのブレの激しさが目立っています。

※※ワクチン開発スピードと、病原菌の突然変異(体のうち過去の免疫が機能せず新たな病原となる「株」の出現)のスピード、病原菌の感染のスピード、、、これら3つの変数が鍵を握ります。












2020年3月23日月曜日

アジア人は「コロナ耐性遺伝子」を受け継いでいるのか



各国比較ーあてにできない感染比率から何を読み解くか???
新型コロナウイルス感染症のメインステージが中国(・韓国・日本)から欧米へと急速に遷移しました。

欧州に関しては、前回ブログを更新していた時点ではイタリアが断トツであったのが、2週間も経たずに、欧州全域に広がりを見せ、ほとんどの国々で国境閉鎖、原則外出禁止(食料品と薬品の買い物を除く)状態になっています。

 イタリアだけが(欧州で)例外的な特徴があったわけではなかった理由???

 中国が震源地でありながら、東南アジア、南アジアの諸国では感染者や死者について(今のところ)深刻な統計が上がってきて来ない理由???

欧米と同様に、国境閉鎖、外出禁止の政策がとられている南米諸国では、実は、上記同様、統計上はまだ欧米やほんの少し前までの中国ほど深刻ではないように見えます。

週末三連休で急に箍が緩んだ感のある日本人の多くに、なんとなくアジア系、厳密にはモンゴロイドは今回のウイルスに対しては強いのかもという楽観が蔓延してはいなかったかと???そして、前回のブログ更新時の課題であった、

 各国統計で、感染者数の数値は当てにならないという問題。つまり、死者の数は正確だったとしても、感染者数となると陽性だが無症状にとどまる人をどれだけ補足できているかが検査態勢で違いすぎる問題を克服できないか???

きょうは、新型コロナウイルス感染症についての続報として、を掘り下げると同時に、について、新型コロナウイルスが中国以外で騒がれ始めた2月、対応の悪さについて欧米諸国から批判されたクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の統計もあわせて検討してみます。


この数表は、本日2020323日現在の、主な国々の感染者数、死者数に、参考目的で人口を加えたものです。さらに参考として、イタリアにはサンマリノ共和国ロンバルディア州を、米国にはューヨーク州を加えました(出典:日本経済新聞社、Wikipedia、国立感染症研究所など)。

フィルターの掛け方で様々な示唆が出てきます。初期状態としては、死者の数を感染者の数で割った数値で悪い順に並べています。

さすがにまだフェイクニュースにすらなっていない《モンゴロイド大丈夫説》の観点からは、非常にざっくりと、モンゴロイドの比率が高そうな東アジア~東南アジア(インド周辺と島しょ部を除く)と南米の一部について黄色でハイライトしています。良い加減で楽観にもほどがある仮説を棄却するほどではないものの、結論付けられるにはほど遠い状態であると言えます。

むしろ警戒すべき要因として《ソーシャル・ディスタンス》との関係で人口密度と都市化率を取り上げたいところです。

イタリア就中ミラノを州都とするロンバルディア州の医療崩壊が話題となっています。ニューヨークやロンドンの首長たちが言う通り、医療崩壊の閾値の問題は深刻です。トーマス・ロバート・マルサスの「食糧は算術級数的にしか増えないが人口は幾何級数的に増える」を捩れば、「ワクチン未開発の感染症患者と死者は幾何級数的に増えるが医療機関は算術級数的にすら増えない」という現実があるからです。

そのうえで、行政区分(厳密には国家)で行くと、サンマリノ共和国のほうがロンバルディア州よりも数値が悪いのです。注目されていない事実の背景として、医療環境に加えて、人口密度要因が考えられそうです。

米国はおろか、日本であろうと、行政単位が大きすぎると人口密度だけではこの問題には太刀打ちできません。ここでは「都市化率」という概念が役に立ちます。日本だけを見れば、時系列で、人口が増えていないなかでも、中山間地などの過疎化と東京など都市部への集中は同時に進んでいるところ、その都市部の全人口に占める割合が「都市化率」と言われるものです。日本の都市化率は世界と比べてどうでしょうか???

出典は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ「我が国の「都市化率」に関する事実整理と考察」20097月)という古い論文です。

都市化過疎化の問題は人口集中の問題と必ずしも同義ではありません。市町村単位の集中過疎、都道府県単位の集中過疎、そして地方中核都市と大都市、大都市間の人口の奪い合い(東京VSその他など)など、階層的でフラクタルな問題です。そこを思いっきり捨象すると、日本の都市化率は、G7の中では低いのです。東海道新幹線に乗って、東京または新大阪から何十分経っても、車窓から地平線まで田園風景にはお目にかかれません。必ず民家集落が視野のどこかにあります。G7の他の国ではこんなことはありえない、というくらい、日本と比べて都市化が進んでいる。。。これがグラフが意味するイメージです。

経済効率から言えば、集中のメリットのほうが集中のデメリットより大きいと考えられてきました。

が、パンデミック(や戦況次第で戦争)となると形勢が逆転します。「東京は人口も集中しているが病院も集中している。お茶の水の近くに住めばどの病院に行くか迷うくらいだ」なんてのは平時の話です。

ほんの一か月前には、「東京でオリンピックができないならロンドンが代わりにやってあげる」みたいな侮辱をうけていたわけで、黄色人種として反撃したい気持ちもありますが、ここは謙虚に、東京は、ミラノやマドリッドやロンドンを笑えないことを自戒する必要はあります。

京都大学山中伸弥教授の個人サイト

そのうえで、モンゴロイド(全員ではない)が農耕文明のなかで敢えて取り入れた酒に弱い遺伝子、つまりアセトアルデヒドを分解できない体質がある種の除菌には作用するというところが、上記数表の傾向と関係しているかも知れないなどなど、研究を進めていきたいところです。

前回の繰り返しながら、フェイクニュースに紛らわされないことが最重要です。現時点で、最もフェアでアンバイアスな情報整理がなされていると思われるもののひとつとして、京都大学山中伸弥教授が個人で運営されているサイトがおすすめです。「論文から見る新型コロナウイルス」というページに、

「武漢の3つの病院に入院した204名の解析。99人(48.5%)の種所(原文ママ)は消化器症状であった。消化器症状としては食欲不振83名、下痢29名、嘔吐8名、腹痛4名であった。7名は消化器症状のみで、呼吸器症状はなかった。消化器症状を示す患者は重症化する傾向にあった。」

という記載があります。読者の皆様のまわりにも、こういう傾向があったが病院に行かずに自然治癒したという方々もいらっしゃったりはしないでしょうか。さらには、前回ブログの繰り返しですが、検査していないため実は陽性だが症状はまったく出ないという人が少なくありません(それでも濃厚接触の度合いによっては人に感染させる能力を持つ)

山中教授によれば、「年齢にかかわらず感染者の約半分が無症状」ということで、この貴重な研究結果は、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号に関わった大勢の皆さんの犠牲のもとに得られたものです。

もう一度数表に戻ると、クルーズ船は検査が悉皆的であったため無症状陽性の感染者が全員カウントでき、これに近いのはだいぶ離れて韓国ということになります。クルーズ船での致死率が約1%、日本と中国の致死率が約4%ということは、「未検査陽性無症状」の人は「症状あり」の人()と同数程度というのでは計算が合いません。無症状陽性の人が同数以上いるか、軽い症状だからとかさすがに新型コロナウイルス感染症ではないと高を括って自然治癒を果たした人、さらには前回ブログで例示した病院にかかったが新型コロナウイルス感染症とは診断されず風邪薬と胃薬を処方されて回復したひとの合計が統計上の感染者数の1~2倍ほど潜在していることになりはしないでしょうか???

通院または入院実績あり、診断結果陽性、含む回復済み・死亡

日本の人口の三分の一を死に追いやった天然痘ー温故知新

ワクチンが手に入らないパンデミックが人口のどれだけを死に追いやるのか有史以来の情報をまとめたサイトがウィキペディアにあるのでご紹介します。

List of epidemic 日本語訳サイトなし
感染症の歴史 英語サイトなし

今回巷間でよく比較対象としてあげられる第一次世界大戦末期のスペイン風邪や、12世紀の中世ヨーロッパを襲った黒死病よりも、天平年間の日本を襲った天然痘735-737のほうがより壊滅的だったという驚きの事実があります。高校で日本史を選択して日本史で受験もしたという大学の同級生も、本件知らなかったとのこと。

では世界史はどうかというと、ローマ帝国の五賢帝の最後を飾るマルクス・アウレリウス・アントニヌス在位中に中近東出兵によりもたらされた天然痘(諸説あり、日本語サイトなし)で、直後のローマ帝国は、民間、兵士をあわせて、500万人もの人口を減らしてしまうこととなった。ローマ帝国の人口統計は、税金目的のおかげ(上記の奈良時代も同様)で、ある意味しっかりはしているのですが、身分別、属州別のデータは取りづらく、これが当時のローマ市民の何割なのか、属州を含めた帝国全体の何割なのかははっきりしません。しかしながら、教科書で書かれている五賢帝以降の愚帝が続いたことや、ゲルマン民族の大移動と比べても、このパンデミックは政権の流動化や帝国東西分裂(諸説あり)、キリスト教の取り込み(取り込まれ)などに与えた要因としてもっと注目されるべきでしょう。

そして、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの使節が、当時の中国すなわち後漢の皇帝に謁見したのはほぼ事実で(中国の史書に安敦と記載)、この一連の動きのなかでだれがだれとどのように濃厚接触したかはわかるよしもないですが、その後後漢は間断なく天然痘禍になやまされたそうです。天平年間に日本に天然痘を持ち込んだのは南蛮船説と遣唐使説があります。(後)漢と唐とでは時間に開きがあるものの、この東西交流と関係がないかどうかはわかりません。

国民の三分の一も殲滅する天平年間の天然痘禍を凌ぐのは、16紀メキシコのサルモネラ禍(全人口の8割!)くらいしかないのです(出典ウィキペディア、日本語訳サイトなし)が、これはスペインによる侵略と、500年に一度という規模の旱魃が重なったせいでもあると指摘されています。

ウイルス感染は、ワクチン未開発状態では、人類は、記録にあるだけでも、流行地域の何割もの人口を調整してしまう能力があることを思い起こさせる温故知新でした。


2020年3月10日火曜日

新型コロナウィルス感染症

トイレットペーパーだけでないフェイクニュース
わたくしどもアヴァトレードグループのイスラエルのオンラインマーケティングチームの俊英は、ヘブライ語がいささか苦手なイギリス人です。彼が、昨年日本に来たときに、夜中近所の焼肉屋で熱弁していたことが、ソーシャルメディアがどれだけ人類社会に悪い影響を与えているか、でした。

主要なソーシャルメディアはユダヤ人の創業によるものですが、イスラエル居住者であるわたくしの同僚の多くは、アメリカのビッグビジネスで成功したユダヤ人のことを悪く言うことが驚くほど多いです。会うたびに毎回その話になると言っても過言ではありません。

極端な例が、ユダヤ人であるマーク・ザッカーバーグ創業のフェイスブックが、決して創業者の思想信条ということではないにしろ、ただただ経済的成功のために、米国や欧州での反ユダヤ主義運動の再燃の温床になっている事実とそのメカニズムについて彼は力説をしていました。これは見方によっては、イエス・キリストやカール・マルクスやアドルフ・ヒトラーが思想信条として同胞の逆側の立場に立ったことよりも深刻です。


世に知られているソーシャルメディアの弊害は、2016年後半に絶頂を迎えます。米国でのトランプ政権の成立と、英国のEU離脱を問うた国民投票。両者へのロシア関与の疑惑についてはいまだに100%の証拠はないものの、フェイスブックなどの手助けは明らかとされています。グローバリズムに疲れ切った先進国の中間層にとって、反ユダヤ主義に加え、移民排斥や民族主義、保護貿易などを糾合するポピュリズムは、揮発性燃料として蔓延し充満した。この見立てによる金儲けこそがソーシャルメディアです。切手代の要らない郵便局、入場無料の公園よろしく、まるで公共財のようなその存在は、しばしば目を疑う不快な広告さえ無視すればこんな便利な道具はないと考えてしまいます。ビッグデータを掠め取り分析する、そしてターゲット広告を流す、そのような人工知能神話だけでごまかされたビジネスモデルでは、この規模の経済的成功は説明できません。

このような巨悪の温床となっているソーシャルメディアにおいて、
「トイレットペーパーはマスクと原料が一緒だから」
というフェイクニュースは、むしろかわいい部類です。もっともらしいフェイクニュースは、パニックやバブルを形成します。ジョン・メイナード・ケインズが美人投票や貯蓄のパラドックスで説いた経済恐慌の分析も、また立場は異なるものの、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス、フリードリヒ・ハイエクなどの切り口は、今で言う行動経済学的な慧眼と言えます。この人類社会の愚かさは繰り返し捉えられているものの、決して撲滅はできないのです。

一帯一路と一蓮托生
ここまでが、恒例、長すぎる前置き、フェイクブックもといフェイクニュースの巻、でした。

これらのエピソードは新型コロナウィルスにあてはまるでしょうか?

感染者や死者の統計が正しいのか?中国の発表を信用して良いのか?

WHO(世界保健機構)の声明は最新の医学生理学の分析結果を反映しているのか?あてにならない大本営発表なのか?

これらのありきたりの命題を論ずるには、ここのブログはあまりにへそ曲がりです。

まず、感染者と死者の統計を各国横断面で比較することの無意味さについて、です。こんなブログにまで目を通してくださっている賢明な読者の皆様はもうお気づきのことと思います。

前提として、新型コロナウィルスの根源は、中国湖北省武漢のじめじめした市場で食用として取引されたこうもりであるという通説に立つことにします。武漢の細菌研究所から故意または過失によって漏れ出た細菌(テロ)説や、イタリア北部とイランも武漢同様の「震源地」であるといううわさは一旦措きます。

そうすると、イタリア北部とイランの感染拡大のペースと規模は異常値だとなり、その説明として巷間言われているのは、

① イタリアとイランは、中国の一帯一路構想に組み込まれているから?
② イタリアとイランは、大気汚染が深刻から?武漢はエピセンターであるだけでなく大気汚染も感染拡大に一役買ったと言われている?
③ 生活習慣が不衛生だから?食事の前に手を洗わない。便所の後に手を洗わない。挨拶におけるハグの習慣など。

このうち、①は、確かにイタリアがG7のなかでは真っ先に一帯一路構想に参加合意した国であること。一帯一路構想の「一帯」つまり陸のシルクロードを具現化した「中欧班列」の根幹をなす中国ー英国ルートにとって、武漢はその最重要拠点駅であり、ミラノは終着点のひとつです。イランもまた敵対するサウジアラビアとともに「中立性」という謳い文句にほだされて一帯一路構想に参加、テヘランもまた鉄道網に組み込まれてはいます(上図には入っていません)。とは言え、一帯一路構想に参加している国は中央アジアにも東ヨーロッパにもいっぱいあって、このことだけでイタリアとイランの特殊性を説明するのは無理があります。

次に、②について。大気汚染(や煙草)と新型コロナウィルスの感染、発症、重症化の関係についてはかなり根拠のある研究があるようです。イタリアはモータースポーツが文化に根付いている国柄からハイブリッド車などが普及していないというのはあるかも知れませんし、ゆえに空気が汚いかも知れないのですが、これは他の欧州のほとんどの国も同様です。同じように、イランを大気汚染で区別するのも無理があります。

最後に、③は、清潔好きな日本人との対比では信憑性のある微笑ましい話ですが、上記②と同じように、イタリアとイランをほかの欧州諸国、中東諸国と区別させるに十分な要素ではありません。

くだらない俗説は枚挙に暇がない今日このごろです。上記①~③のなかで、敢えて殊更くだらない③について掘り下げてみましょう。

新型コロナウィルスは、その国際的な略称(Covid-19)にあるように、昨年すでに発生しているのですが、日本で大きく話題になったのは、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号がきっかけでした。その時点で、中国に次いで感染者?発症者?死者?が多い、危機管理のなっていない国という烙印をおされていたのが、あれよあれよと思ううちに、韓国に抜かれ、イタリア、イランに抜かれ、米国その他にも抜かれようとしているわけです。

この現象を、日本人の清潔さや危機意識の高さに帰すひともいるでしょうが、再び、賢明な当ブログの読者は、「群盲象を撫でる」で安易な真実めいたものに飛びつくことはないと思います。

トイレットペーパーだけでなくパニック症候群
現時点で知られている限られた事実に基づくしかないですが、それでもはっきり言えることは、

感染者数には、(1)検査を受検し陽性だったが発症はしていない「静かな保菌者」と、(2)発症して診断により陽性が確認された発症者(含む重症患者、死者)の両方が含まれるところ、(1)の受検率は各国でバラバラであるので、(1)と(2)の合算結果を横断面で比較する意味がもともとない。

為政者による故意か過失かはともかく、日本では(1)の受検率が少なくとも韓国に比べると著しく低いことが確かです。この点、イタリアとイラクで何故高い(らしい)のかはわかりません。為政者による云々と書きましたが、個人的には不要なパニックを避けるために、また臨床現場での不要な感染を避けるためには、このままで良い(※理由は後述)と考えます。

いっぽう、(2)について。臨床現場のもうひとつの事情、実は頼まれても検査が出来ないのだが、かと言って患者を不安のまま帰らせないということで、かなり典型的な新型コロナウィルスの症状で受診しても、新型コロナウィルスとは異なるが今流行の別の風邪だから安心しろとして、解熱剤と胃薬を処方されておしまいというケースが多発しているものと思われます。これまた、低レベルの井戸端会議を公共の電波で垂れ流している地上波ワイドショー的には許されない事実かも知れないのですが、上記(1)と同様、同じ理由※でこのままで良いと考えます。

フェイクニュースの話に戻ると、おそらく最大級の嘘は、WHO以下の、「飛沫感染と接触感染」だけ説ではないかと推測します。つまり、空気感染もあること、その分、各国統計(とくに日本の数値)を大きく上回る感染者がいると推測されること、さらにその分、感染しても発症はしないサイレントキャリアの割合が公表されている統計よりもかなり高いこと。このあたりの分析が、パンデミックレベルでない典型的なインフルエンザとの比較でなされると有意義ですが、ニューヨーク・タイムズの一部の記事でやや触れられているくらいで、なかなか入手困難です。

現状ではざっくりしたことしかわかりませんが、通常のインフルエンザと比べると、感染未発症の人の割合は同様に高いが、重症化率、致死率については、もとより年齢差があるところ、新型コロナウィルスのほうが加齢要因による重症化が大きい、、、感じはします。

もう少し、なけなしの事実についてお話します。また非常に面白くも深刻な話だと思ったのが、同じくニューヨーク・タイムズが報じているところですが、今回のワクチンの量産化には少なくとも18ヶ月掛かると言われていますが、米国の大手の製薬会社は、過去のパンデミックでワクチンの開発を迫られた際のトラウマがあって、開発に乗り気ではないという話。感染症のワクチンの副作用や後遺症に関する訴訟リスクが、売上に比べると大きすぎてビジネスにならないと考えられるのだそうです。こうなると社会主義の一面も持つ中国に期待するしかないのかも知れません。

このような状況においては、日本の受検率の低さ、受診率の低さ、意図的誤診率の高さは、嘘も方便と言ったところかも知れません。ただしこれが真実ならば、新型コロナウィルス関連各国統計横断面比較の無意味さについて再度強調に値します。

対処療法についてはHIV薬などいろいろ情報が飛び交う中、ワクチンが上述のニューヨーク・タイムズ報道の通りだとすると、多くの識者が、封じ込め(containment)が最も有効と嘯く気持ちもわかります。いっぽう、個人的には、もはや世界中の空気中には普通感冒のアデノウィルスと同じように、新型コロナウィルスもうじゃうじゃいてもおかしくないと推測します。封じ込めは、経済活動への極端なブレーキになってしまっただけかも知れないとも考えられます。

「落ちてくるナイフを拾うな」
アヴァトレード・ジャパンのMT4では、ライセンス上、発注約定は出来ませんが、外国為替(の通貨ペア)のほか、株価指数や、国債、商品の代表的な店頭デリバティブのチャートが利用できます。ご覧の画像は、原油の日足です。昨日月曜日には、大きなギャップダウンを経て、2016年1月以来の安値1バレル=20ドル台を付けたのが確認できます。

新型コロナウィルスのパンデミック化による世界的な総需要の縮小、中国を事実上のハブとするサプライチェーンの寸断に、OPEC加盟国とロシアによる追加減産協議の決裂が泣きっ面に蜂となりました。

マクロでは減産合意こそが合理的な意思決定であるにもかかわらず、ミクロでは自らの売上を減らしたくないから、価格下落分を数量(≒シェア)で取り戻すという行動に出る。それが更なる価格下落をもたらすというネガティブ・フィードバックです。先述のジョン・メイナード・ケインズの貯蓄のパラドックスに象徴される合成の誤謬です。

※新型コロナウィルスの検査機会を増やすことも、事後的に受検や受診が不要だった非感染者、非発症者が、接触機会が増えたことで感染する、発症者を増やすということにつながり、医療機関へのストレスとなると、同様のネガティブ・フィードバックが発生します。これが「嘘も方便」を個人的に支持する理由でした。

では、1バレル=30ドル前後まで急落中の原油は値頃なのでしょうか?「落ちてくるナイフは拾うな」なのか?「人の行く裏に道あり花の山」なのか?

「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」かわからないように、諺や格言は何の助けにもならないわけです。前段の新型コロナウィルスの群盲象を撫でるの巻は、世の中が悲観的過ぎていないか、楽観的過ぎていないか、どちらだろうかという問いについて、疫学的にはもしかすると前者かも知れないとの推察です。しかし、その悲観論に基づいて各国で封じ込め政策が連鎖しています。わたくしは中国バブルは何かはきっかけとなって崩壊すると考えてきましたが、予想してから何年も経つので予想は外れたも同然です。そしてそのきっかけもまた予想外です。個人的には中国経済は国営企業の乱脈経営とその不良債権の逃げ道としてのシャドーバンキングの破綻がきっかけでバブル崩壊と見立てていました。きっかけが間違っていようが、またサプライチェーンが復興したとしても、総需要は回復しないと見ます。

ホモサピエンス小史とインフェルノ
ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモサピエンス小史」とダン・ブラウンの「インフェルノ」は、いま人類史上の先端で起こっている不幸に対して驚くほど啓示的、預言的です。

前者のメッセージの一部を自分なりに解釈すると、生態系と言うと、バランスのとれた食物連鎖のピラミッドのようなイメージがあるが、その頂点に立つ人類は部品として不要である(植物や菌類なくして動物は存在できないが逆は真でない。この動物のところを肉食動物や人類と置き換えることもできる)。人類がこのような他の生態系参加者にとって有害無益の存在になったきっかけは農業革命であり、温暖化の現況である産業革命やそれ以降の文明の有害性よりもより根源的である。農業革命をきっかけにした人類の地位向上は、それ以前の、例えばアンモナイト※だとか、恐竜だとかが大手を振るうようになったのとはスピード感がまったく異なったために、生態系に与えてしまった衝撃は甚大で他の生物の進化(突然変異の積み重ねによる緩やかな適応)のための猶予が与えられなかった。その悲惨さが、人類が各大陸に定住したと考えられる推定年代に集中する殺戮された巨大獣の化石からわかる等。です。

※アンモナイトには手はないですが・・・。

後者は、有名なダ・ヴィンチ・コードの続々編で、人口爆発に警鐘を促すカリスマが世界中の女性の一定割合を不妊にさせる空気感染する菌をばらまくという話で、物語は奇しくも北イタリアのフィレンツェから始まります。これは、ダンテ・アリギエーリの神曲(地獄篇)、中世の黒死病との関連で選ばれた舞台です。ダン・ブラウンはこのカリスマを巨悪のアンチヒーローだと単純に描いていないところが妙なのですが、いろいろ物議を醸してしまったようで、扱うトリックは非常に良くできているのに、ダ・ヴィンチ・コードほどの成功とは行かなかったようです。

限られた事実に基づく推測の域を出ない点、繰り返し強調しなければなりませんが、新型コロナウィルスそのものについては過度な悲観論には要注意であるものの、中国バブル崩壊のきっかけとしては十分過ぎたと考えられること。空気感染を覚悟しつつ、人類の宿痾について考えるきっかけにしたいです。