2009年1月27日火曜日

為替だけではない米中の保護主義合戦の火ぶた

●ガイトナー氏を財務長官に正式指名、米国上院(1/27WSJ)
先週、中国に対して経済「冷戦」の宣戦布告をし物議を醸した同氏。オバマ陣営の閣僚人事のなかで最もトラぶった財務長官ポストがこれで解決したとWSJ紙はブレイキング・ニュースで伝えました。

●人民元問題で論争を避ける、IMF長官(1/26FT)
「為替操作国」だとレッテルを張るかどうかが問題ではない、とドミニク=ストラス=カーン長官。しかし、「中国政府は為替操作を自覚しているのは明らか。人民元が実力以下にしか評価されておらず、より柔軟な変動相場に晒されるべきだとIMFは繰り返し主張してきた」とFT紙とのインタヴューで答えた。

人民元を巡っては、IMFは2007年に「米国政府寄り」に政策転換をしているが、それ以前のIMF首脳は、米国政府の代弁者としてIMF自体が人民元引き上げを扇動する動きを批判している。

●化石燃料依存からの脱却を-オバマ新大統領(1/26FT)
自動車の燃料効率の基準をより厳しくする一方、米国内各州に対して温暖化ガスの削減目標を設定。

温暖化対策を怠っていたブッシュ政権から大きな政策転換だとFT紙は報じるが、新大統領は「中国とインドも同調することが必要。全世界の協調なしに、米国がひとり温暖化対策に踏み切ることはありえない」とも語っている。

真面目な車作りを続けてきたメーカーにとっては、燃料効率と温室効果ガスの基準厳格化は買い替え需要を煽るのでプラスの材料の筈。しかし、旧ビッグスリーにとっては、肺炎患者が乾布摩擦を処方されるようなものかも知れません。

ブッシュ政権と異なり、原油高政策を採る必然性のない(?)オバマ政権としては、必ずしも中国とインドを牽制することなく、自国完結型の環境政策をぶち上げても良かったのではないかと思うのですが、、、政権発足後、まだ1週間足らずで、米中は為替と環境と両面で軋み始めております。
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2009年1月26日月曜日

第8回オンラインセミナー、今夜8時

先週金曜日のブログ、人民元の記事は、アクセス数が倍増しました。

米中の経済「冷戦」は予想通りというよりは、オバマ新政権発足の週にいきなり口火が切られるとは寧ろ意外。米国経済の問題を、オバマ新大統領が(1兆㌦の)需要不足と断言していることに大いに関係がありそうです。

自国の首相を叩きまくっている日本の殆ど全てのメディアが手放しで歓迎し期待を膨らませているオバマ氏ですが、米国経済の課題を需要側に求めるのが正しいのかどうか、私には疑問があります。

売れない自動車を作り続けようとしている過去形となったモノ作り、金融の技術革新や自由化に合わせたビジネスモデルの進化を実現できなかった金融業界、そして何よりも、家計においては借入枠と可処分所得をごっちゃにした過剰消費。

持続可能な筈がなかったこれらの矛盾が破綻したと考えれば、米国の経済の問題は、需要側ではなく供給側にある。あなた方、米国民が住むべき家は、もっと貧粗で狭い部屋だ。これこそ、新大統領が演説の中で用いた「現実(real)」という言葉であり、選挙民につきつけなければならなかった現実でしょう。世界経済のなかで、需要側に課題があるから内需刺激策が功を奏しうる国は、貿易黒字と財政黒字という糊しろを持つ中国以外にない、というの私の持論です。

しかし、正論を吐いては民主主義国家では政権をとれません。結果、米中は保護主義路線に突き進まざるを得ない。世界最大の外貨準備高、特に米国債という首根っこを押さえている中国の人民元政策こそ、米ドルの信認のカギを握っているという点こそ、2009年の為替相場を見通すうえで、最重要ポイントとも言えそうです。

先々週末の日経CNBCアジアマネーでのお話と重複しますが、今夜のオンラインセミナーをどうぞお楽しみに。今夜はすでに予定が・・・とおっしゃる皆様は、31日発売の「“為替力”で資産を守れ!」もご参照ください。昨年からずっと注目している中国のことを色々な角度で書かせていただいております。
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2009年1月23日金曜日

人民元が鍵を握るオバマ政権下の為替相場

●ガイトナー新財務長官、中国の為替操作を非難(1/22FT、IHT)
ポールソン氏の後任財務長官としてオバマ大統領が指名しているガイトナー氏。米国上院での質疑で「外交上も“強硬な”手段で中国政府と立ち向かう」と意思表明。

前任のポールソン氏も、これまで時々、中国の「自国通貨安」を批判してきたが、中国を「為替操作国家」と正式に告発しろ、という議会からの圧力には抵抗してきた(FT)。勿論、これは米国にとってのジレンマ、即ち中国政府を怒らせて、その大量に保有されている米国債を堂々と売却されては堪ったものではないという事情があるからです(IHT)。

中国が人民元のドルペッグ制を廃止したのは2005年。管理された変動相場になって以来、人民元はドルに対して約20%増価しています。

ところで、上述の「米国にとってのジレンマ」の裏返しとして、先週金曜日に日経CNBCで喋りました「中国にとってのジレンマ」があります。リーマンショックで加速したドル安は、オバマ政権によるバラマキ政策と、既に始まっている連邦準備制度による米国債に限らない形振り構わずの市中資産買い入れによる未曾有(みぞう)のマネタイゼイション(ハイパワードマネーの供給)で、再加速する恐れがある。但し、只今現在は米ドルは(対日本円を除けば)寧ろ堅調で小康状態。今のうちに米国債を損切りしたいが、損切りするにも、米国債の保有割合(米国債の発行残高に対する割合でもあり、外貨準備高に対する割合でもあります)が高すぎて、自ら動くことが自らの首を絞めるというジレンマです。

中国政府にとっても、外貨準備の評価損をこれ以上大幅に拡大したくないという命題と、人民元の対ドル高基調に戻したくないという命題は、両立が困難な難問なのです。

フェニックス証券のホームページに先週末の日経CNBC「ラップトゥデイ」における人民元の話をアップしました。動画ソフトのダウンロードが少々面倒臭くなっておりますが、お時間のある方、どうぞ本日のブログと合わせてお楽しみ下さい。
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2009年1月22日木曜日

ポンド危機、再び

●2月のG7会合、ポンド安について討議へ=G7筋(1/22日本語ロイター)
ロイターの独占報道で、珍しく情報源が明かされていない。

●ロイズとRBSは国営化されるべき=英国下院財務委員長ら(1/21FT)
ロイズ(旧ロイズ+旧TSB+旧スコットランド銀行+旧ハリファックス)とRBS(旧スコットランド王立銀行+旧ナショナル銀行+旧ウェストミンスター銀行)だけでなく、バークレイズ銀行まで国営化されるのではないかという噂もあり、今週に入ってからの英国ギガバンク各行の株価は大暴落。

ポンドは、対米ドルで7年半ぶりの安値、対円では14年ぶり最安値更新で、昨年ピークの半値に。

主要銀行が概ね国営化されることを社会主義と呼ぶのではなかったでしょうか?今週月曜日に、

《オーバーバンク解消という漢方薬を煎じて飲まないと長期的には資本主義経済圏の病理は何一つ改善しないのですが、短期的にはモラルハザード政策のスピードに応じて、その国の通貨が評価されるという事態が続くかも知れません。政府主導の信用膨張と財政膨張が、当該通貨の買い材料から売り材料に逆転するのが、どの程度「短期的」か、これを占うことが大変難しい。》

と書きました。次いで、翌火曜日には、

《昨夜の為替相場は、円>ドル>ユーロ>ポンド、です。銀行救済⇒量的緩和は、これまで米ドルにおいては買い材料だったのが、昨日は逆だったという点、全てのFX投資家は注目するべきでしょう。》
と続けました。リーマンショック後、マッチポンプのように繰り返されてきた金融機関救済を代表格とする政府の大胆な市場介入が、当該国の通貨の信任として直ちに反応してきた幻想が遂に終わりかけているのが、今回のポンド危機です。

ギガバンクのエコノミストに洗脳された多くのFX投資家は、

★物価指標が予想よりプラス⇒買い材料
★マネーサプライが予想よりプラス⇒買い材料

と長年思い込まされてきました。もともと貯蓄不足であった国において、国外に依存していた資本が引き上げられる信用収縮の局面においては、この大前提が逆転する。というか、金融バブルという特殊な状態が意外と長く続いただけのこと。貯蓄不足だから物価があがる、地下鉄の初乗りが千円以上する国の通貨を喜んで買い続け、更なるインフレ期待でそれを買い増すという大衆心理こそ馬鹿げていたというべきでしょう。詳しくは、昨年5月のフェニックス証券オンライン・セミナーをご覧下さい。
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