2009年1月16日金曜日

人民元の偽札がインターネットで購入可能!?

●中国政府、ネット販売されている人民元の偽札の根絶で苦慮(1/16FT)
贋物の高級ブランド品の世界最大の供給基地として長いこと知られてきた中国。それが、今は偽札-それも中国自身の(!)-の供給販売においてグローバル・リーダーに躍り出た、とFT紙。

今月26日から始まる旧正月は、中国にとって米国のクリスマス商戦に相当する消費シーズン。これを目前にして中国政府が不正ネット販売を弾圧しようとするのは偶然ではないとFT紙は分析するが、効果は上がっていないと。

人民元の偽札は、偽札の額面の1割から3割程度の価格で取引され、指定された銀行口座に振り込まれると宅配されるというのが通常だそうです。中国最大の検索エンジン“Baidu"で「人民元の偽札販売」と検索すると、取り扱っているサイトは簡単に沢山見つかるとのこと。

中国の“ネット警察”によってブロックされているサイトも増えてはいる。しかし、昨年、ネット販売による不正薬物が被害をもたらした事件がそうであったように、法的措置を全国一律に講ずることが難しく、撲滅キャンペーンのようなものを仕掛けること以外に有効な手段が見出せないのが中国の特徴だと、FT紙は締め括っています。

人民元の偽札がこれほどまでにネット上で蔓延するということですが、偽札の製造元は上記末端価格よりも安い原価で輪転機を回しているのだから、何故自分で使おうとしないのか?人民元の紙幣のセキュリティの低さは以前から問題だったのが、何故ここに来てネット販売という分野で問題が深刻化したのか?中国経済や通貨管理、為替相場に与える影響は?などなどと疑問点や腑に落ちない点が多々ある中、実は本日午後4時から、日経CNBCで「米ドルと人民元の相場を占う」というテーマで私自身喋らなければなりません。その前に、このFT紙の“スクープ”消化するのは難儀です。
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2009年1月15日木曜日

ボインねたの翌朝

●加ノーテルが破綻-負債3200億円超(1/14WSJ、FT、日経ほか)
一時はカナダの株式市場で最大の時価総額を誇った通信機器超大手。日本だと、NECと富士通を合わせたようなイメージだが、マイクとスピーカーが一体となって手放しで通話が出来る技術はポリコムと並ぶ特許で、なかなか真似が出来ないものだという話を、以前に松下電器産業(現 パナソニック)の幹部の方から伺ったことがあります。

WSJ紙によれば、部品調達先の協力を取り付けており、事業継続のまま再生が目指せるとのこと。債務超過額はGMよりも遙かに「まし」。連邦破産法11条の威力-モラルハザード防止と事業継続に欠かせない取引先債権者の協力取り付けとの調和-を米国自動車業界に見せつけて欲しい試金石か。

●オバマ次期大統領の景気刺激策に43%の米国民が賛成-WSJ/NBCの最新世論調査(1/14WSJ)
しかし、連邦政府はカネを使いすぎだとして、財政赤字の拡大を懸念する声も少なくない、とWSJ紙は報じています。

●米政府、数十億ドルの追加支援をバンカメに約束へ(1/14WSJ)
メリルリンチ買収により、米銀最大規模となったバンカメ。

●JPモルガンチェースのCEO、2009年超悲観論を語る-フィナンシャルタイムズとのインタビューで(1/14FT)
米国では、クレジットカードその他の消費者向け貸付の焦げ付き、失業が通年で増え続ける。米国、欧州とも2009年中の景気回復は無理と、ジェイミー・ダイモン氏は語る。

●アップルCEOのジョブ氏、今年6月まで病欠(1/14WSJほか)
●リオ・ティント会長、退任へ(1/14FT)

ボインねたの翌朝につき、暗いニュースをまとめてお送りしました。
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2009年1月14日水曜日

DINKsとボイン

今月末に書店に並ぶ予定の『為替力』で資産を守れ!の最終校了が昨日午後。私自身が印刷工場で缶詰となり誤植がないかどうか一字一句見直すこと凡そ5時間。「お疲れ様でした。これ以上は、泣いても笑っても修正は効きません」と言われ、新宿の寒空の下に解放されました。

この時点では通常大きな加筆修正はないものなのですが、長時間お付き合いくださった編集長から、「“DINKs”という言葉が、編集部内で意味不明との声が多かったので、括弧書きで(共働きで子供の居ない夫婦のこと)と挿入したいのですが?」と聞かれました。“DINKs”が登場するのは、少子化高齢化と年金問題を取り扱いつつ、日本と中国の比較をした部分です。少子化と年金問題が『為替力』に関係あるのか、ですって?それは大ありなのですよ。

「語釈の挿入は全く問題ないです。しかし、“DINKs”と言われて(書かれて)意味が判らない読者が少なくないとなると、同じ意味を表すコンパクトな別の表現が出てきたということですか。“DINKs”は随分と寿命の短い《死語》になってしまったものですねぇ・・・」と私が訊ねると「少なくとも出版事業という立場では《死語》認定せざるを得ないですね。でも、(共働きで子供の居ない夫婦のこと)を簡潔に表す別の表現があるわけでもないので、語釈の挿入以外に方法はないですね。僕自身は、数年前に“DINKs”のための節税法という記事の編集に携わったことがあるので、僕個人の中では《死語》認定はしていないのですが」と編集長さん。

《死語》と言えば、現代「死語」ノート(小林信彦著、岩波新書1997/1)の中に、“ボイン”が《現代の死語》だと紹介されています。大橋巨泉さんが11PMの司会者としてコンビを組んだ朝丘雪路を指して発した言葉がbuss wordになったものと記憶していますが、ご存知の通り、⇒巨乳⇒爆乳⇒スイカップ、などと置換されてきています。一方、“DINKs”は別のbuss wordに取って代わられたわけではないのに何故死語になったのか?昨夜、校了が終わった後も気になって仕方がありませんでした。

少子化が「深刻化」(?)する中、“DINKs”が増えこそすれ減っているとは思えません。昨夜、テレビ東京「ガイヤの夜明け」で中国の寒村に初めて全自動洗濯機が入るという場面。家族の月収の2ヶ月分で手に入れた夢の機械は農作業と洗濯に明け暮れ、長年、“しもやけ”と“あかぎれ”に悩まされた奥さんを喜ばせたというシーンでした。温暖化のおかげもあるでしょうが、現在の日本の多くの地域では“しもやけ”と“あかぎれ”は死語に近いのではないでしょうか?「現象やモノが無くなった」ことによる《死語》では、“DINKs”は違うようです。

夜、寝る前に思いついた答えは、「現象やモノが《ありふれた》」ことによる《死語》もあるのではないか、という仮説です。温暖化のおかげで、という話をしました。もし、温暖化が更に進み、関東以南の太平洋沿岸の冬は毎日ポカポカ陽気になったとします。「小春日和」が常態化すれば、「小春日和」という言葉は死滅してしまうのではないでしょうか?エスキモーの言葉には「雪」に相当する言葉がないのだそうです。そのかわり、細雪、粉雪、牡丹雪、吹雪、・・・など7種類の言葉があるが、日本語や英語と異なり、●●雪とか●●snowみたいに、語幹に雪(snow)を伴わない。つまり、部分集合に対する全体集合としての雪という概念が存在しないのだそうです。天から降ってくるものは雪以外にはない世界が常態であれば、なるほどと思います。

対立概念があるから、言葉(意味するものと意味されるもの)が存在する、というのが言語学者ソシュールの構造主義。“DINKs”は、エスキモーにとっての雪のように当たり前の存在になりつつあるということかも知れません。
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2009年1月13日火曜日

ガザ危機と商品相場

「七転び八起きブログ」をご愛読くださっている皆さまのなかには、当ブログがガザ危機についていまだに取り扱わないことが不思議だと思われているかたも少なからずいらっしゃるのでしょう。無視を決め込んでいるわけではありません。イスラエルとパレスチナのいずれかに利害関係があって、書きづらいという事情があるわけでもありません。むしろ、ご想像の通り、我が国で入手可能な大手マスコミの情報から導き出される「図式」

少数民族パレスチナ人が被害者⇔イスラエル人が加害者←国連安保理決議でアメリカが棄権

という、勧善懲悪の歴史観に、大国主義の国連が機能しない(米国の政権が「ユダヤ人」票なり「ユダヤ人」の資金力を無視できない)姿が加わる「図式」は、確かに我がブログが従前から忌み嫌っている一方的な見方かも知れません。しかしながら、この一方的な決め付けに対峙できるような情報もまだ入手できておらず、我がブログ独特の天邪鬼なものの見方をご紹介できずにいるというのが本音です。

グルジア問題や北朝鮮問題を通じて、マスコミ等が喧伝する一方的な勧善懲悪を信じてはいけないと繰り返してきた「七転び八起きブログ」。これらにも増して「ユダヤ人」についての関心は、昔から深かったのですが、これまた書籍を含めたメディア全般において、日本において十分な客観的な情報を手に入れることが極めて難しい分野。「ユダヤ人」と鍵括弧付で書いてきたのも、民族の定義からして問題含みであるという指摘がこれまでにも随分されてきました。ここでは、「ユダヤ人」の全てがシオニスト(ユダヤ人は独自の国家を持つべきである《イスラエルを建国すべき》という立場)ではない。シオニストの全てがガザ侵攻に賛成なわけではない。という点だけお伝えし、引き続き私の独自の調査と勉強を続けて参りたいと思います。

宗教問題、民族問題、そして政治について「あっけらかん」としているのが、(例外は多々あれど)日本人の美徳だと申し上げてきましたが、この点逆に、「日本人は外国人相手に宗教、民族、政治の話題をしてはいけない」などと注意が繰り返されることがあります。私自身がこの注意書きを無視して大変なことを招いたことがあるのです。約13年前、イタリアはフィレンツェの料理屋で米国から旅行に来たとおっしゃる中年のご夫妻と席が一緒になりました。職業は、旦那様が大学教授で、バッハ以前の音楽を研究されていらっしゃるとのこと、一方、奥様はお医者様だとのこと。ここでピンと来るべきだったのですけど、音楽の話を徹底的に聞きだしている間に、例の注意書きを忘れてしまいました。名物のTボーン・ステーキを食べ終わる頃、お住まいを聞くと、ボストンだとか。既に酔っ払っていた私は、余計なことを口に出します。「ボストンと言えば、キッシンジャー元国務長官をはじめ、米国在住のシオニストが多く住んでいるところでしょう・・・」。当時の私のユダヤ人に関する知識は、シオニストのユダヤ人とそうではないユダヤ人はもともと民族の出自が異なるという「説」でした。「それは違う!、シオニズムは立場であり(建国)運動である」と、旦那様が興奮気味に語ると、奥様はそれは微妙に違うのでは云々と、旅行気分を台無しにさせる夫婦喧嘩のキッカケを与えることになってしまったのです。締めは「あなたは最初からお判りのとおり、わたしたちはユダヤ人だ。しかし、僕はシオニストだが、妻は違う。立場が違うんだよ」と。

「あっけらかん」と異文化を学ぶのは好奇心を満たすには良いのですが、随分な迷惑を掛けてしまったと今でも申し訳なく思っています。同一宗教(同一「民族」?)だが立場(時に「宗派」?)が違うということが、しばしば日本国外では大きな意味を持つという現象を、わたくしたちは、何何原理主義云々を待たずして垣間見ることが出来ます。何となく仏教徒の子孫という程度の意識の我々の多くが、恋愛や結婚をするときに、宗派は何処かなどと気にすることは一部の例外を除きないのではないでしょうか。

恐らく二度と会えないであろう、あのときのご夫妻に、おふたりそれぞれの立場でガザ問題について伺ってみたいような、万万が一再会してもその話題を避けて、「Tボーンステーキ、味は忘れたけど、美味しかったですね!」という当たり障りのない会話に終始したいか、複雑な心境に陥らせている今日の状況です。

パレスチナ地域を囲み、イスラエル=米国と対峙するアラブ諸国の立場も、決して一枚岩ではない点、最後に申し添えます。ガザ地区で修羅場と向き合うパレスチナ人に同情しつつも、難民流入は困るとして、支援に消極的なエジプトとレバノン。その両国を非難し、反米・反イスラエルを強硬にアピールするイランとシリア。

それにしても、原油価格は上がりすぎても下がりすぎても、紛争の火種になります。18年前の湾岸戦争も、その直前は商品価格が歴史的な安値圏だったことを忘れてはなりません。
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