グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国、、、俗にいうイギリス(英国)からスコットランドが独立するかどうかを問う直接投票(レファレンダム)が、たった1週間後に迫っているということで、しかもまさかの賛成派反対はが僅差になっているということで、イギリス・ポンドは暴落。今年前半は深い眠に就いていた為替相場は一転して大荒れとなっています。
スコットランドの分離独立が予想外の現実味を帯びてきたことに加え、ことしは2月から、ウクライナ(クリミア半島)情勢やイスラム国の出現など、そもそも国家とは何かということを考えさせられる事態があまりにも多発しています。
世界中のどの地域においても、民族や地域の分離独立を望む派と望まない派で対立するのは、民族自決主義という大義名分のあるなしにかかわらず、経済的利害が圧倒的な要因であることに間違いありません。日本という国は、そのような「野蛮でドロドロとした欲」とは無縁であったからこそ万世一系の天皇家のもと、臣民は仲良くやってきたというのは、まやかしの皇国史観にすぎないでしょう。
日本のことはさておいて、スコットランドにおいては、スコットランド独立国が誕生するかどうかが9月18日に決着するという単純な問題でないところが問題です。
国家の定義は難しくてある程度曖昧だということですが、現代社会においては国際連合やEUなど、国際社会を引っ張っていると自負する国々による互助会で認められるかどうかもポイントです(国連⇔パレスティナの関係)。スコットランドはEU加盟国のイギリスから分離するのだから当然にスコットランド独立国もEUに加盟できるというのが独立派の主張ですが、大陸として繋がる加盟国はだいたいどこでも民族対立を孕んでいるため、民族問題の波及を恐れる加盟国はスコットランド独立を認めないという説を反独立派は煽っているところです。
もうひとつ国家の定義で最重要のひとつである軍隊を持つことについて。スコットランド独立派=反核(≒脱原発)であるため、スコットランドの海岸線に留め置かれているイギリスの原子力潜水艦を追い出して独立軍を形成しようというのが、直接投票後の計画なのですが、それを相手方の残されたイギリス側がすんなり認めるつもりがないという点。
そして、本稿の最大の目的である「野蛮でどろどろとした欲」の部分は、北海油田の権益と、イギリス・ポンドの採用継続です。
北海油田のほうは、どちらの国の排他的経済水域から油が湧いてきているということだけですんなり決着するはずはないのでしょう。
何と言ってもややこしいのは、現実に独立したあとも、スコットランドはポンドを使い続けたいとしていて、イギリス保守党はこれを許さない姿勢であるというところです。
(スコットランド地域ではロイヤルスコットランドバンクが発券銀行の一部を担っています。。。)
実際、ロイヤルスコットランドバンク(RBS)の破綻はリーマン・ショック時に世界で最大級の規模の血税が投入された事例です。さらにさかのぼれば、スコットランドの田舎銀行にすぎなかった同行が世界最大級の規模に成長したなかで、イギリス4大銀行のひとつであったナショナル・ウエストミンスター銀行を敵対的に買収したというステップがあります。
(ただし、イギリス経済を喰い物にしてきたかに見えるロイヤルスコットランドバンク(RBS)は、公式には、スコットランドが分離独立したら、本店をロンドンに移転すると言っています???)
✡✡✡✡✡✡
今回の新しい英ポンド危機は、9月18日で決着がつかない問題であるというところだけは押さえておく必要があります。
3 件のコメント:
丹羽広さま
ずいぶん前(2009年11月10日ブログやFOREX PRESSのインタビュー2009年11月11日)にわたしのことを取り上げて話されていました。長い間、まったく知らずにいたのですが、さいきん、ぐうぜんそのサイトに出会いました。
わたしが京大経済研究所の助手で、教養部に数学を教えに行っていたときの話しですね。写真を見ると、当時の面影がけっこう残っています。「法律を勉強するよりも、いまは経済学の方が面白い」と言っていたことは確かです。そのひとひとが丹羽さんの人生の方向を変えたとになると責任重大ですが、けっきょく最後は、ご自分で選ばれ、切り拓かれた道と思います。
3月末に中央大学を2度目の定年退職となりました。その直前に、2冊の本を出しました。
ひとつは『リカード貿易問題の最終解決』です。これはわたしが大阪市立大学に転勤したころから考えていた問題で、わたし自身かれこれ30年かかっていますが、問題の起源からいえば、もうじき200年にもなる問題です。これまでいろいろな議論があったのですが、今度の定式化で古典派価値論の延長上に国際価値論を構成するという問題は、基本的に解決されたと考えています。もちろん、理論を発展させていくのはこれからの課題です。
この本の第5章は、かなり数学的なものですが、丹羽さんたちと一緒に読んでいた二階堂さんの『経済のための線型数学』一冊ですべてがカバーされます。むかしの思い出と重ねて、いちどお読みいただければ幸いです。
国際価値論には、各国の賃金率の決定が含まれます。厳密にいうと、これは為替レートを決めることにもあたるのですが、国際価値論として決まるのはすこし長期の話で、丹羽さんのお仕事の日々の変動まで説明するものではありません。2013年度ノーベル経済学賞のShillerとFamaとの間にあるような関係ではないかと考えています(第2章8.3)。
もう一冊は、共編著の『経済学を再建する』です。この前半「提案編」全5章をわたしが書いています。経済学には多くの問題があるのですが、ひじょうに基本的なところから考え直す必要があると思っています。
塩沢由典 y(A)shiozawa.net
塩沢由典先生、コメントありがとうございます。と申しますか、よくぞ発見していただきました。色々と考えることもあり、ブログの更新を怠っていただけでなく、その管理も手薄となっていて、せっかくコメントをいただいたのに、返事がこんなに遅くなってしまったことを深くお詫び申し上げます。わたくしは出来の悪い学生でしたので、案の定、二階堂先生の線形数学は読了できませんでした。尤も、同級生の殆どは、購入すらしておりませんでしたが(笑)。しかし、その割には、生意気なことをこのブログでは書いてしまっています。間違いも多々あると思います。それでも、静学的均衡が最適解をもたらさないというのは、マーシャルが例外扱いした証券市場ですら例外でないことを、身を持って感じておりますし、またかと言って、計画経済やアベノミクスを含む混合経済が社会的更生を高めるわけではないことも事実です。。。実は、縁あってイタリア料理屋を経営することになり、イタリア語も齧っているので、時間ができたらスラッファを原文で読んでみたいと思っています。まだまだお伝えしたいことや思い出もございます。アヴァトレード・ジャパン株式会社代表取締役社長 丹羽広(オーナーたちはユダヤ人です)
訂正です。「こうせい」の字が間違っておりました。更生ではなく厚生です。
コメントを投稿