2021年10月22日金曜日

「事後検証なしの雲散霧消」は許されないコロナ行動規制

 ワクチン2回接種率68%の二国の比較




日本と英国のグラフを並べており、横軸(期間)はぴったり合わせていますが、縦軸(人数)は合わせていません。英国の人口は日本の約半分です。にもかかわらず、縦軸の目盛りを見てもらうと、英国のコロナ禍の相対的悲惨さが良くわかります。感染者数の規模でもそうですが、死者数のほうがさらに酷いです。


これがまず押さえておかねばならない事実で、まずは①人種の違いという要因が考えられ、さらに②医療態勢の違い、③人口動態の違い、④貧富の格差なども追加要因として考えられるでしょう。①~④のどの要因も、好奇心を擽るテーマですが、きょうのところは、雑ながらデータから読み取れそうなことに集中するため、省略させてください。


まずはワクチンです。ワクチンをすでに2回接種した人が総人口に占める割合は、本日2021年10月22日本稿執筆時点においてぴったり68%と、日英で等しいのです。が、正確にはこれらのグラフに投影できませんが、接種が進んだ時期は、英国のほうが日本よりかなり早かったことが知られています。


なので、これらのグラフの対比は、イギリスのコロナ感染の再拡大が、ワクチンの「賞味期限」切れを意味する可能性があるということです。一方で、ここ3か月、イギリスは、感染者数こそ急増しているものの死者数はそれほどでもない(ただし、日本の第五波レベルではある)というのも、「ワクチンには、少なくとも、(重症化率や)致死率を抑える効果はある」という「定説」と矛盾しないように見えます。

デルタ株発祥の国インドでは何が起こっていたのか?

日本ではデルタ株直撃の第五波が過去の波に比べて極端に大きかったのですが、まだワクチン接種が十分行き届いていなかった時期も含めると致死率は過去の「小ピーク」に比べると低く抑えられていることもわかります。これには、医療機関の尋常でない努力と治療技術の急速な進化も貢献していますが、ウイルスが進化(<突然変異)により感染力を高めつつ弱毒化したことも要因と考えられます。


この要因にフォーカスすると、英国の現在の感染拡大が致死率を伴っていないことが説明でき、ワクチンの効能とその限界も浮き彫りにされます。つまり、これまでのワクチン(少なくともモデルナ型とそれを倍に薄めただけのファイザー)は、ウイルスの進化には対応できない可能性かつまたは賞味期限が期待されていたより短い(6ヵ月程度)可能性があり、致死率抑制効果はあるかも知れないがウイルスの進化の影響に紛れているという仮説です。


では、ワクチン接種が日英レベルまで追い付いていない国のひとつで、デルタ株の発祥の地であるインドのグラフも見てみましょう。

インドについては、人口も多いが、縦軸の目盛りもすさまじいうえ、とくにデルタ株ピーク付近などで、日英などと異なり、感染者数も死者数もちゃんと捕捉されていないのではないかという疑惑があります。それでも、ワクチン二回接種が20%に留まっている段階での急速な収束(終息)は紛れもない事実で、日本の9月以降の収束(終息)の理由(まだ日本の「専門家」が説明できていない)を解明する鍵がここにありそうです。

 

さきほど、日英比較だけから建てた仮説(ワクチンの効能とその限界)は、インドの過程を見ると、説得力を持ちそうです。留保条件としては、インドにおけるデルタ株のピークが公表されているデータを遥かに上回る酷い水準で(上述の捕捉率の問題)、実は集団免疫が出来てしまっている可能性あり、だとすると、私の仮説は棄却される方向に働きます。

 

今回のグラフも、世界的なデータが比較的整理されているニューヨークタイムズからとりました。同紙は、ワクチンをどちらかというと賛成しているメディアであることを申し添えます。また、副反応や、接種直後の死亡者の検分に関する問題、若い世代の接種の費用対効果の問題については触れる時間がありません。これも省略します。

 

さて、ここからが本題です。ワクチンはともかく、行動制限(飲食店の営業時間や「禁酒令」など)には意味があったのかどうかです。

何故「専門家」は事後検証をしてくれないのか?

さきほどと同じ英国に関して、別のグラフがあります。


ここから直ちに「規制解除が感染拡大の元凶だ」という決めつけは間違いであると言いたいわけではありません。これまでワクチンについて「群盲象を撫でる」レベルの分析からがんばって仮説を立てましたが、このようなデータは国家機関に採用された専門家であれば十分に入手できるはずで、それらを重ね合わせれば、わたしのような素人が建てた仮説は検証または反証が出来るはずです。ただし、問題は、頭の良い偉いひとは、自分たちが決めたことや出した答えが実は間違っていたと言いたがらない性格の人物が多いことです。そこはオンゴーイングの未曽有の病原体なのだから、国民も(国を率いる「賢者」たちの過ちを)赦してあげれば良いと思います(飲食店なの対面エッセンシャルワーカーにはいまからでも良いから「残債」を補償すべき)。それがやはりできない構造だというのなら、野党は別の専門家チームを作り、深層を究明して、いまこそ意義あるまつりごとをしてほしいものです。

暫定的な「まとめ」

限られたデータから、能率よく、大胆ながらも、細心に検討したつもりで、それゆえに、いつも以上に見通しの悪い論稿になってしまっていると自覚、反省します。

細心さを犠牲にして、仮説へと急ぐならば、

① ワクチンの有効期限は半年程度
② 行動制限の多くは無意味

注釈をつけると、①については、本来ミクロレベルで実験や治験によって明らかにされるべきものですが、検証に時間が掛かるという言い訳と、ワクチンの効果が限定的であるという反証を避けたいという動機が働いて、なかなか情報が手に入らないという問題意識がありました。それで、やむを得ず、入手可能なマクロデータ(ワクチン接種時期の「塊」が、日英で大きくことなる点に注目)からの推測でまず仮説を建てたということです。

「感染そのものを防ぐ効果は限定的でも、重症化率や致死率を抑制する効果は続く」という「定説」については、成り立つような成り立たないような微妙な灰色です。インドのデータを重ね合わせてもまだ白黒はっきりとはしません。

この項で、ワクチンという言葉を、(自然感染によるものを含めた)抗体と言い換えてもほぼ成り立つかも知れません。

抗体≠免疫となる要因としては、抗体量の減少だけでなく、病原体側の変異もあります。抗体量の減少と免疫の弱さが比例するわけでは必ずしもない点もいまではよく知られています。

よりちゃんと検証したいのは②についてですが、まだまだデータが足りません。しかし、言いたいことは、日本のデータだけを眺めていては、「行動制限の緩和と強化が、感染者数の増減に相関している」という印象論に引きずられてしまい、行動制限論者の思うつぼになるが、海外データを重ね合わせれば、見えてくるものが随分異なってくるということです。

行動制限がほぼなかったスウェーデンの同様のデータが欲しいところですが、残念ながらありません。代わりに、やはりニューヨークタイムズ出典で、昨年2020年、例年よりもどれだけ人が死んだかというグラフを、行動制限(この場合はロックダウン)へと政策転換した英国と対比して、示します。

せめて、このデータの今年2021年版が手に入れば、視界が良好になるのにと、隔靴掻痒するところです。

そして、いま一番開示が求められているデータは、日本でのデルタ株終息後、英国での行動制限解除後の、感染者数・死亡者数の年齢構成とワクチン接種履歴構成(のそれぞれの推移)です。

日本、イギリス、インド、、、ワクチン、行動制限、と、超駆け足で見てきました。行動制限と一言で言っても、完全なロックダウンから、飲食店などの業態別休業要請、謎のアクリル板や人数制限、昼呑みOKだが夜呑みNG、片や、マスク、リモートワーク、不要不急の外出云々、越境制限などさまざまなレイヤーがあります。これらすべて十把一絡げにして、是か非かというのはナンセンスです。以上も以下も個人の見解に過ぎませんが、私は、コロナ禍の下、風邪を含めまったく病気をしなかったのは独りマスクのおかげだという実感があります。仕事は例年どおり厳しく、厭なストレスは例年以上にあったことからすると、2年弱でいちども風邪をひかないということはかつてなかったので、行動制限がなくても、マスクだけは外さないようにしたいと思っています。


2021年10月15日金曜日

NTTドコモの通信トラブルから何を学ぶべきか

 「ネットが繋がらない?」「ネットが落ちた?」でも、その前に

 

「ネットが落ちた!」のネットはインターネットの略ですが、これはデータ通信の話です。「もしもし電話※」を含めると通信ネットワークという話になります。そして、ネットワークという言葉は、通信に限った話とはならず、電気・ガス・水道・・・鉄道などのインフラ、はたまたMLM(マルチレベルマーケティング)もネットワークと呼ばれたりします。

 

マルチ(商法)とも呼ばれるMLMは、措くとして。

 

スマホで、LINEFacebookが突然使えなくなったときに、いささか条件反射的に「ネットが落ちた」と反応してしまいます。が、実は、

 

    インターネット回線が落ちたのか?

(ア) ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)のシステムトラブル

(イ) 光回線キャリア側のトラブル(ISPが委託契約しているインフラで、海底ケーブルなども含まれる)

    (携帯)電話網が落ちたのか?

(ア) キャリアごとに独立(例外あり※※)

(イ) インターネット回線が使えない環境(Wi-Fiが届かない、Wi-Fiの契約がない場合のバックアップとしての35G回線など)

    アプリが落ちたのか?

(ア) 2021103~4日に発生したFacebookの世界的なシステム障害

    スマホそのもの(携帯電話というハードウエア)が壊れたのか?

 

これらのどれに該当するかが、すぐに判別できないケースもあります(特に上記④の可能性を含めると、直ちに原因を特定することが不可能と断言できます)。

 

極端な例とあげると、タクシーアプリで、タクシー料金の支払いをしようとしてエラーが繰り返されたとしますと、アプリの故障なのか?スマホ側の故障なのか?タクシーのリーダー側の故障なのか?同リーダーが接続するはずのネットワーク回線の故障なのか?タクシーによってはWi-Fiを会社まるごと契約している場合もあるかも知れませんが、携帯キャリアの回線に依存しているかも知れません。それがNTTドコモであった場合、またはWi-Fiのルータの先が(残念ながら)ドコモ光だった場合、どうあがいても通信は復活しないわけです。

 

しかし、NTTドコモから、障害報告の公表がない限り、ひたすらほかの原因を探って悩んでしまうことになります。質の悪いことに、スマホがつながらないので、NTTドコモからの障害報告が正直にタイムリーになされたとしても、それが届かないわけで、踏んだり蹴ったりです。

 

携帯ネットワークにも「振替輸送」を

 

かく言う私はNTTドコモのユーザーです。昔、お世話になったお客様でもあります。厳密に言うと、SIMカードはNTTドコモですが、スマホ本体はIIJという格安スマホ会社で取り扱われているAsus製のものです。ですから、昨夜は移動中著しく仕事に障害が出ました。

 

ヒューマンエラーはどこでも起こりえます。ドコモでも起こりましたが、弊社でも起きています。メガバンクでも、Facebookでも起きています。再発防止と同様に重要なのがバックアップの態勢です。

 

冒頭で、ネットワークは、通信だけでなく、電気・ガス・水道・・・鉄道もそうであると申しました。

 

電気すなわち電力の自由化で検討されてきた制度設計や、鉄道で現に実行されていることが参考になると思うのです。

 

まず、鉄道がわかりやすいです。鉄道キャリア側のヒューマンエラーは稀で、多くの場合、人身事故や自然災害などで、鉄道のある路線が不通になることはよくあります。この場合は、振替輸送が行われますが、あらかじめルールが決まっていて、トラブルの毎に、ライバル会社間で協議(する時間)を要するようなことはされていません。ルールには、〇〇電鉄の●●線が止まったら、△△鉄道の▲▲線で代替輸送する、という合意書が、線(毎)というよりは面(的)に決まっていて、さらにその場合の弁済スキームも決まっていると思われます(鉄道会社間の弁済ルールについては、ネット(この場合はインターネットの意味)で調べようとしたのですが、よくわかりませんでした。)

 

日本の携帯のネットワークでは、鉄道のネットワークにおける振替輸送に相当するバックアップ機能がまったく欠如していると言わざるを得ません。

 

冒頭のほうで、「ネットが繋がらない?」「ネットが落ちた?」でも、その前に、の場合分けで、②(携帯)電話網が落ちたのか? ()キャリアごとに独立(例外あり※)

 

と書きました。この※例外というのは、ローミングが国内でも行われている稀な例ということなのですが、ワイモバイルが使えない地域ではソフトバンクモバイルの低い帯域を貸し出しているとか、楽天モバイル(格安でないほう)が使えない地域ではAU by KDDIが貸し出されることになっているなど、親子間やアライアンスによる固定化されたバックアップ態勢であって、緊急時の振替輸送にはならないのです。

 

考えてみると、携帯キャリアと資本関係のないスマホ製造業者の側は、ローミングにも、携帯版振替輸送にもいつでも対応できる仕組みが備わっています。SIMフリー携帯の存在やダブルSIM携帯の存在は、携帯電話業界が適正に競争し適正に協働すれば、いつでもインフラの価値を高める準備が出来ているということです。

 

もちろん、NTTドコモの障害時に、そのユーザーがAU by KDDIとソフトバンクモバイルの2社に振り分けられてしまったらオーバーフローしてしまうかも知れません。これは直ちに分析できない課題ですが、そのあたりのことも気にしつつ、以下進めていきたいところです。

 

ちなみに、インターネット回線のことだけを言えば、(Wi-Fi)ルータから先の領域、すなわちISPと光ケーブルキャリアとの関係は、固定化された一対一関係では必ずしもなく、通信障害だけでなく負荷分散も勘案して、多対多関係が融通無碍に構築されて久しいことを申し添えます。インターネットの世界に限れば、大都市圏の鉄道網のモデルに近いものが自然発生的に出来てきていたわけです。

 

道半ばの電力自由化の制度設計のアイデア

 

ところで、私がNTTドコモのユーザー(を辞めない)でいる理由がもうひとつあります。これは山で繋がりやすいという特性です。つまり、基地局の偏在が理由になっています。北アルプスや南アルプスの山小屋のホームページを見ると、多くは、「NTTドコモはつながりやすいですが、それ以外は云々・・・」と表現されていることが多いのです。

 

一般的に、企業同士の競争が厳しいほうが、その業界が提供する財サービスの価格は下がると考えられます。が、菅義偉前首相が吠えていてくれていたとおり、日本の携帯料金は割高です。

 

ここらあたりは詳しくないので、読者の皆さまからの、駄目出しツッコミを大歓迎したいところです。携帯キャリアは、B2Cの末端においては、SIMロックや、番号ポータビリティの使い勝手の悪さなど、寡占利益が確保され気味だが、基地局の建設競争は熾烈で無秩序である。前者の寡占利益が、後者がもたらす高コストの財源になってはいまいか、と。

 

似たことが電力業界についても言えます。

 

電力の自由化が進んできていることは、近年、肌感覚としてはあります。東日本大震災をきっかけとした太陽光発電などの固定価格買取制度、電力の小売市場への新規参入などです。後者は、電力とガスの相互乗り入れだけでなく、異業種からの参入もあり、価格破壊とまではとても言えませんが、末端価格に若干の柔軟性が出てきています。小売段階では2000年に始まり、2016年に完全自由化となったいっぽう、参入障壁を低くするという観点で、世界中で検討されてきた発電と送電の分離については、日本ではようやく2020年に法制化がなされつつ、現状では実施例はないというのが実態です。

 

この発送電分離反対の論陣は、もちろん既存電力9社も含みますが、どうやら一部のMMT信奉者も、「そんなことをしたって電力料金は下がらない。ドイツは血税を投入して無理矢理発送電分離を実現維持している」という論法のようです。

 

発電事業に規模の経済があった時代においては、電力の地域独占が、細長い日本列島を縦割りになされていたので(例外あり)、発送電分離のメリットが少ないという論法も当たっていたような気もします(例:中国電力の発電部門が、九州電力の送電部門や四国電力の送電部門に送電費用の相見積もりを取るというのは現実的ではない、など)。

 

コジェネやオンサイトの発電事業が採算にあう状態になってきて、さらに再生化エネルギーも固定価格買取制度という補助輪なしで採算にあってくるのであれば、上記の、発送電分離への抵抗は、意味を失ってくるでしょう。

 

国「内」ローミングって出来ないの

 

実に話が迂遠になっていますが、要するに、携帯電話にとって、基地局建設は、電力産業における送電部門のように、切り離されたうえでの競争のほうが、効果的である可能性が強い(より精緻な分析は必要だが)ということであります。

 

(中)山間部の基地局建設は、協力したり、分業したりして、お互い競争しているどの系列の携帯会社にも公正な競争価格で接続を許す。平地や都会の基地局建設は、ビルやその陰などのデザインを考えて、そのようなネットワークを作ると、携帯会社からたくさんの受注ができるかで競う、などです。

 

発送電分離反対の守旧派の論陣からは、そんなことをしても携帯料金は下がらないよと批判されるかも知れません。そこは直ちに結論は導けないかも知れませんが、本日の論点は、「ネットが落ちないための保険制度」なのです。

 

川上から川下まで一企業集団がすべて押さえているというのは、明治の殖産興業の時代には当たり前だったかも知れません(例:製紙会社が山林も保有する)。飲食業で言えば、民宿の御主人が猟師や漁師で、内儀(おかみ)さんがワイナリー経営者(兼ソムリエで1年の半分をフランスやイタリアでワインの輸入までしている)というのは格好良くて理想的です。現実的には、どんなに個性的で素晴らしいシェフでもソムリエでも、食材や酒の調達は、問屋さんや酒屋さん(さらにその先にインポータさんが存在)に任せて、垂直分業による効率化を図っているのが現実です。

 

先の、ISPと光ケーブル会社の関係のように、垂直分業が自然発生的に定着していくのが、ほとんどの産業にとって自然な姿だと言えます。

 

しかし、言うは易し。これは、銀行業界と大蔵省銀行局との関係然り、通信業界と郵政省との関係然りで、業界を守ってきたような?苛めてきたような?微妙なしがらみが複雑化して凝り固まった堆積物を綺麗に再構築するのは簡単ではないでしょう。

 

※最近影が薄い固定電話網(銅線で出来た電話線と交換局からなるネットワーク)に、携帯電話の3G4G5Gと表示されるもしもし電話とショートメールサービスです。