2008年12月24日水曜日

チャリティ・オペラ・コンサート直前情報【其の弐】

本日ブログ【朝刊】のチャリティオペラコンサート直前情報

『カヴァレリア・ルスティカーナ』

の独断と偏見に基づくご紹介に続きまして、ドニゼッティ作曲『愛の妙薬』について押し付けがましい紹介をさせていただきます。

みなさんは“妙薬”と聞いてどんなお薬を想像されますか?原題はイタリア語でElisir d'Amor。エリジールとは秘薬とか媚薬と言う意味です。しかし、このオペラが輸入された時代、「愛の“媚薬”」と訳するわけには行かなかったのでしょう(La Traviata【道を踏み外した女】の主人公がVioletta【すみれの花】なのに何故か『椿姫』だったりするのと同様、絶“妙”な訳出の一例なのかも知れません)。

ところで、このオペラは媚薬のお話かと、鼻の下を伸ばしてお待ちの皆さま。残念ながら、勃起薬が役に立つようなシーンは全くない、ハッピーエンドのドタバタ喜劇なのです。

とある田舎村。風采の上がらない青年ネモリーノは、自分より身分が高く聡明な女性アディーナに心を寄せています。村の中で老若男女から慕われているアディーナが、そんな村人たちに『トリスタンとイゾルデ』の物語を読んで聞かせるシーンでオペラは開幕します。惚れ薬を飲んでイゾルデ姫の心を掴んだトリスタン。そんな妙薬なんてあるのかしらとアディーナはせせら笑います。そこに現れた軍曹ベルコーレの雄姿に、アディーナは「悪くないわね」。ネモリーノは、突然の恋敵(?)登場に焦ります。

ネモリーノに挽回のチャンスを与えたのがイカサマ医師ドゥルカマーラが売りつけた妙薬ならぬ単なる安ワイン。これを呑めばアディーナが自分を向いてくれると信じて酔いしれるネモリーノ。そのご機嫌な姿をアディーナは面白くなく、さっさと軍曹ベルコーレとの結婚の日取りを決めてしまいます(二重唱「ラララ・・・」)。

逆効果となったのは、妙薬が単なる駄酒なのではなくて、薬が足りないからだと思い込んだ、おつむの足りないネモリーノは安ワインももう一本買いたいのですが、財布は空っぽ。忸怩たる思いで恋敵ベルコーレの軍隊に入隊を決意し頭金で安ワインに大枚を叩きます。

安ワインをオカワリし泥酔したネモリーノは、一部始終がドゥルカマーラからアディーナに伝えられ、彼女の心が自分に向けて開き始めたことも知らず、片思いの気持ちと一縷の望みを願って「一筋の涙が・・・(人知れぬ涙)」を絶唱します。

明日は、プッチーニ作『蝶々夫人』をご案内します。
CoRichブログランキング

何はともあれクリスマス・イブです

クリスマス・イブくらいは明るい話題で始めたい当ブログですが、天邪鬼の七転び八起きとしては期待に沿えず恐縮です。

●トヨタ渡辺CEO辞任(12/24WSJほか)
度重なる業績下方修正を経て、戦後初の営業赤字へ転落のニュースは、昨日英BBCでも、30分置きにNHKニュースの映像が繰り返されるほど世界に衝撃を与えた。

それは判りますが、「たった一期」の赤字で社長辞任というのは厳しすぎないかというのが私の勘繰り。数字を見る限りでは、過去何十年(特にこの十年)積み重ねてきた利益(特に内部留保)に比べ、今期の赤字は微々たるもの。

数字以外の「何か」があるのかどうか心配。

●元ナスダック会長のネズミ講詐欺、被害者のフランス人投資家が自殺(12/23FTほか)
500億㌦規模の詐欺は全容解明途上。このうち14億㌦を投じていたファンドマネージャーが自殺。65歳のフランス人で投資顧問会社の共同創設者。遺書は残されていないが・・・

銀行の不良債権を毒入り餃子と譬えてきた当ブログ。今回のネズミ講事件で毒入り餃子はヘッジファンドにも混入されてしまった。スイスのUnion Bancaire Priveeは「独立した監査人と常任代理人が選定されていないヘッジファンドについては運用残高を直ちに減らせ」と内部文書で指示。この名門プライベート・バンクは運用資産が560億㌦に及んでいる。

ヨーロッパでは第三者による監査が通常行なわれているが、米国では伝統的な大手ファンドも含めこのような慣習がない。UBPの今回の動きは、米国の「ヘッジファンド産業」の姿かたちを塗り替える可能性もあるとFT紙は指摘。

●米国の住宅販売、新築も中古も大幅下落(12/23WSJほか)
11月の中古住宅販売は前月比▲8.6%(対前年比では▲10.6%)。新築は前月比▲8.0%で月402万戸。これは1997年7月以来最低水準。米国全体の住宅価格の中間値medianは、181,300㌦と一年前に比べ13.2%下落。1968年に統計をとり始めて以来最大の下落幅。

まだまだありますが、暗い話はこれ位に留めましょう。今日からは今週末日曜日に迫りましたフェニックス証券チャリティ・オペラ・コンサートの直前情報を更新して参ります。お蔭様で満席予定の同コンサートには私より遙かにオペラマニアのお客様から、オペラには関心はあるけど敷居が高くて近寄りがたかったので、今回のチャリティをキッカケにと考えてくださったお客さままで様々いらっしゃいます。このような多様なニーズになるべくお応えするのが司会の腕の見せ所ですが、何せ話下手なので、紙面で順次補わせていただこうというわけです(チケットご予約をいただいたお客様でメールアドレスを頂戴したお客様には配信済です。悪しからずご了承ください)。

12/28(日)プログラムの第一部は、

【第一部:中高生と中高年のための(?)オペラ入門法(!?)】

と銘打っております。その一曲目は、マスカーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』より「ママも知るとおり」です。

オペラファンやオペラマニアにとっては馴染み深い歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』。また映画ファンならコッポラの名作『ゴッドファーザーⅢ』で劇中劇で使われたのもこの『カヴァ』であることをご存知の方々もいらっしゃるかも知れません。オペラは興味があるけど、観たことはないとおっしゃるお客さまも、有名な「間奏曲」の旋律は聞き覚えがあるかも。この美しい旋律「だけ」を聴くと「穢れ無き純愛」や「一途な信仰心」などが思い起こされるのは私だけでしょうか。ところが、イタリア語て田舎の騎士という意味の題名の物語は、シチリアの貧しい若者を取り巻く痴情のもつれを生々しく描いたものなのです。

奇想天外な神話性を帯びた物語(要するに「あり得ねぇ~」という話)や歴史に題材を見出しつつ親子愛や恋愛を独特のスケールで描いたもの(同じく「あり得ねぇ~」・・・)というのも、オペラの大きな特徴。時代を少々遡り、イタリアオペラ史の“最高峰”ヴェルディが取り上げた題材には、シェークスピアの悲喜劇などのほか、第一部の後半にとりあげる『イル・トロヴァトーレ』(≒吟遊詩人)、『ドン・カルロ』など「あり得ねぇ~」系のオン・パレード。

これに対して『カヴァ』の題材は、其処彼処の社会の底辺のどうしようもない現実そのもの。長年貴族や富裕市民が目を瞑ってきたこのような現実を題材とする芸術上の運動(イタリア語ではヴェリズモ)の端緒にあたるのがマスカーニのデビュー作『カヴァ』だなどと言われております。

「ママも知るとおり・・・」は、主人公サントゥッツァが、一度は愛を誓い肉体的にも結ばれた元許婚が、兵役前に愛し合っていた現人妻と逢引している現状を、姑だったであろう“マンマ”に嘆く悲痛なアリアです。

サントゥッツァは同様の“告発”を、逢引相手の旦那にもしてしまいます。結果、決闘を経て、元許婚は殺されます。

オペラファン以外の皆さん、ハッキリ言って、どうでも良い話だと思いませんか!?

本日夕刊にて、続いての演目、ドニゼッティ『愛の妙薬』についてお話します。こちらは打って変わって楽しいオペラなので、どうぞお楽しみに。

CoRichブログランキング

2008年12月23日火曜日

忘れてはならない四川大地震

●四川大地震の犠牲となった小学生の親が中国政府に対し訴訟を提起(12/22IHT)
今年5月から始めた当ブログでは、同月12日に発生した四川大地震について「大正12年の関東大震災が事実上の昭和史の始まりであり大正デモクラシーと戦争への道の分水嶺であるのと同じように、中国経済における市場原理の導入と急速な経済成長の曲がり角となる出来事かもしれない」と喝破する一方、北京オリンピックが平和の祭典としての意義を如何にひけらかそうとも、その莫大な予算を震災の復興に充てるべきであるとも説いて参りました。

大地震直後は、犠牲者家族が中国政府の怠慢や不作為を罵る声を米欧メディアも取り上げてはいました。しかし、中国政府(軍隊や警察を含む)からの反撃や虐めを恐れた彼等の声は、皆、匿名で小声でした。同胞への殺戮として脳裏に刻まれる天安門事件に象徴される非民主国家の嘆かわしい一面。ところが、半年経過し、犠牲者家族の声が中国政府に対して真っ向勝負を挑むことになったことをインターナショナル・ヘラルド・トリビューンは伝えています。

中国政府の手抜きが指摘されているのは、学校建築の手抜きそのものと、活断層の調査の手抜きの二つ。

一方、

●米国経済のメルトダウンは、中国の経済モデルに光を与えた(12/22WSJ)
ウォールストリートジャーナル紙のコラムが、凋落する欧米型モデルと比較優位に立つ中国型モデルを対比するForeign Affair誌の分析を取り上げ、米国発金融危機は自国の経済失速だけでなく、これまで地球規模だったワシントンの影響力をも減衰しかねないとしている。

さて、四川大地震と言えば、フェニックス証券チャリティ・オペラ・コンサート。いよいよ開演まで一週間を切りましたが、お蔭様で日本橋公会堂は殆ど満席となる予定です。チケットの予約をしてくださったお客さま、チャリティの趣旨に賛同してくださり無理な条件で出演を快諾してくださった豪華キャストの皆さまに、重ね重ね感謝申し上げます。
CoRichブログランキング

2008年12月22日月曜日

サンタクロースは居る筈が無い

●持ち家を奨励したブッシュ大統領こそ住宅バブルの犯人(12/21IHT)
米国版財投機関であるファニーメイやフレディマックのあり方が問題である点についてちゃんと理解していたブッシュ大統領だったが。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙はブッシュ大統領就任の年(2002年)の演説「我々は暗闇に灯を点すことが出来る。庶民全員が家を持てるように、国家一丸となって働くことは希望の灯火の重要な一要素である」を引用。

●「副大統領の役割」で、チェイニー氏とバイデン氏に大きな隔たり(12/21IHT)

「無秩序な破綻はよろしくないが管理された破綻なら・・・」とのブッシュ大統領の発言から半日も経たずして、GMとクライスラーの救済策が発表され、日米メディアは暫定的とは言え急転直下発表された救済決定に週末振り回されていました。私が救済案骨子のなかで最も注目しているのは、無担保債権のうち三分の一を株式に交換するという要件Debt-Equity Swap。大口債権者と噂されるシティやバンカメにとって形だけでも資産の額面が維持されるかどうかが死活問題である中、DESは苦肉の策。GM、クライスラー救済と自動車産業が全面に出ているものの、米国大手商業銀行の救済というのが本筋であることを滲ませる内容だったと理解しました。

ところで、個人的に最も気になるニュースは、ウォールストリートジャーナル紙オンライン版がアラートメールで伝えた、
●ワーナー・ブラザーズ、YouTube上の全ての音楽・映像を引き上げることを決定(12/21WSJ)
著作権に絡むGoogleとの交渉が決裂。これを受けて、WB社CEOが発表。

都心の大手楽器屋でもアマゾンでも手に入らない御宝ソフトが、音質や画質は兎も角、無料で手に入るYouTubeは、やはりあり得る筈のないサンタクロースだったのか。

最後に宣伝!毎月、独り善がりなコラムを連載させていただいておりますマルコポーロ社『月刊FX攻略』。本日発売の今月号はFXZERO遠藤取締役との対談が巻頭を“飾って”おります。リーマンショック以降、円高の影に隠れて主要メディアが注目して来なかった不気味なドル高(対日本円を除く)。米国で予想される急速な利下げの下、不気味なドル高は不安定なドル高だと警戒しています。雑誌の対談やコラムは締切が早く、毎度毎度苦労しているのですが、今回も11月10日の収録だった割には、先を見通せたことが言えていたなと胸を撫で下ろしています。

当ブログでも時々取り上げたFX業界の問題や規制のあり方について、かなり危ないことも口走っておりまして、きっと編集過程で削除されるだろうと思いきや、しっかり残っております。是非是非書店でお求めください。

私の対談はさておき、リーマンショック後の世の中を様々な角度から分析している、質の高い記事群。『・・・攻略』という題名からは想像出来ないほど、真面目で為になる雑誌だと思います。
CoRichブログランキング