対岸の火事だと放置しても良さそうなドイツで全原発一時停止が決定された頃、爆心地の我が国では浜岡原発ひとつ止めることが出来ていませんでした。反原発(わたしもそのひとり)の一部からは、菅首相のリーダーシップの欠如を指摘する声があった一方、一転して浜岡停止の勧告(命令ではなく「お願い」)に際しては、自民党や経団連から「根拠を示せ」という批判、地元自治体である御前崎の町長からは「相談がない」との恫喝がありました。
日本のリーダーは誰がやっても大変だというのは、いよいよ、国民のコンセンサスになってきていると、菅総理退陣「示唆」後の世論調査でハッキリとしてきています。
この前後、メルケル首相率いる与党は、(反原発へと政策転換したものの)地方選挙で緑の党など野党に惨敗したのに対して、我が国では統一地方選などでエネルギー政策が争点としてそれほど注目されずに民主党系は惨敗、むしろ原発推進派の首長の当選が目立ち、その究極が、昨日の青森県知事選挙でありました。
さて、ドイツと日本は、なんとなく、似ている国だという印象を持っている方々が少なくないのではないでしょうか。わたしもそのひとりでした。製造業を中心とした加工貿易立国、労働者の権利が強い終身雇用制度が残っている珍しい国であり、何と言っても、熱狂によって議会制民主主義が否定され全体主義が支持された結果、第二次世界大戦で共に闘い共に破れた「仲間」であります。
しかし、敢えて情けないと書かせていただきますが、青森県の結果は、ドイツと日本の大きな違い、地方分権の歴史がドイツは長く、日本はゼロであること、前者はそれにより統一の遅れ、植民地戦争への参加が英仏に遅れたことが、19世紀から20世紀前半の大きな不幸の原因でもあったわけですが、首都一極集中というイギリス、フランス、日本のようなことになっていない点は、反原発の草の根運動が広がりやすい要因のひとつだと思われます。
(ちなみに、どうでもよいことですが、ビール工場ひとつとっても、日本と異なり、ドイツは一極集中しておらず、地域分散、地産地消が原則である点、申し添えます)
もうひとつわたしが「珍説」として指摘したいのが、雇用制度です。前述の如く、雇用制度(≒労働法制)ではドイツと日本は何となく似ているのではなかったかと書きました。どうやらこれが最近大きく変わって来ているようです。
日本では、非正規雇用の割合が増えたことは、逆に大企業などの正規雇用された社員の既得権益を不健康にまで高め、同一労働同一賃金の必要性が今日問われているところです。
ドイツでも終身雇用が完璧に崩壊したわけではありません。が、もともと、「正社員」の解雇には、日本のような異常な制約はないようです。
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000115/0908R3.pdf
詳しく書く余裕はないですが、ホワイトカラーにはホワイトカラーなりの雇用の流動性が、ブルーカラーにはブルーカラーなりの雇用の流動性が確保されているようなのです。ただし雇用改革は道半ばとの声もあります。
ドイツの雇用改革が道半ばだとしたら、日本で、大企業正社員が既得権益を保持しつつ、派遣や請負など一部だけ自由化を進めてきたのは、改革に逆行していたと言わざるを得ません。
このようなことをわたくしが考えるきっかけになったのが、土曜日夜CSで放映されていた朝日ニュースターの「ニュースに騙されるな」のなかで慶応義塾大学の金子勝教授が「東京電力の社員でも経産省の役人でも若手中心に半分くらいは『原発は良くない』と思っていると思うが、立場上言えないだけではないか」と発言していたことです。
有能な(または自身のある)ビジネスマンやテクノクラートが言いたいことを(実名で)言い、その結果、そのときの雇用主と反りがあわなくなっても或る程度簡単に新しい雇用主を探せるようになれば世の中は大きく改善するでしょう。
雇用主からすれば、クビにしやすい制度ほど、雇いやすい制度なのです。
役所にせよ大企業にせよ、或る程度の学歴がないと入れない組織というものは、かつての秀才たちを、何十年か掛けて、転職しようとしても使い物にならない社畜にしてしまうところがあり、残念なことに未だにこんなことをやっているのは、世界広といえども日本だけになりつつあるようです。
地震や津波や原発事故の被災者や犠牲者のみなさんの苦労や魂に報いるために最も大事なことは、正しいことを、立場を問わず、主張できる社会の枠組みに日本の社会を大転換することではないでしょうか。
2011年6月6日月曜日
2011年5月27日金曜日
絵空箱-あるいは絶望と希望
わたしが好きなものは、美しい音楽と、美味しい飲み物と、すべらないFXです!
楽しい舞台、滋味溢れる食べもの、すべらないギャグも、もちろん大好きです。
実は、、、先週末、そのうちのふたつ、舞台と飲み物の道を極めた男性との素晴らしい出会いがありました。
舞台俳優の方々のなかで、その舞台の活動だけで生活できている人は殆どいないと思われます。オペラの世界もほぼ同じです。わたしが出会った方は、バーテンダーの仕事が生活の手段であり、舞台演劇が人生のやり甲斐だったのです。のちにバーテンダーの仕事は手段からやり甲斐に昇格、昼夜働いて働いて自己資金を貯められて、一級品のバーと一体化した舞台空間を江戸川橋の地に作り、ふたつの夢を同時に実現されました。
そんな独特の小空間がオープンしたのが今年の3月10日。地震の前日です。
激しい揺れは、大切なグラスやボトルを無残に砕き、また先々まで埋まっていた筈の舞台の予約も軒並みキャンセルとなりました。夢が実現したと思った矢先の悪夢で、劇場支配人 兼 バーテンダーは毎晩近所の酒場で酔いつぶれていたそうです。
絶望の背景は、それだけではありません。舞台人として、多くの同胞が食べること寝ることという最低限のこともできずにいるなかで、舞台を楽しんでもらうという緊急性のないことをやる意味を自問自答してのことでもありました。
反吐が出るまで悩みぬいた劇場支配人が決断したことは、そのバー併設小空間を、9月まで(電気代以外)無料で開放するという内容です。
その劇場支配人(兼オーナーバーテンダー)のなまえは吉野翼さん。バー併設の舞台のなまえはパフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』です。
四川大地震・岩手宮城内陸地震のチャリティ・オペラ・コンサートから2年半が経ちました。わたしは、吉野翼さんと出会い、話し込み、意気投合し、即座にフェニックス証券(テアトロ・ラ・フェニーチェ)第二回チェリティ・オペラ・コンサート開催を決めました。
フェニックス証券の社名(イタリア語ではフェニーチェ)そのものズバリ、被災地の復興を確信し、音楽を奏で、歌声を届けます。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
曲目:ドニゼッティ「愛の妙薬」と「ドン・パスクワーレ」の名場面、ヴェルディ「リゴレット」の名場面
(わたくし以外)プロの素晴らしい歌声と演奏ということだけでなく、わたしが知る限り舞台に併設された施設としては初の本格的な内容のバーでのお客さま同士の歓談のひとときも充実していただくべく、プログラム(含む休憩時間や終演後の時間の確保など)を工夫して参ります。詳しい内容は、つぎつぎとこちらのブログで更新して参りますので、どうかフォローのほうをよろしくお願い致します。
なお、フェニックス証券(テアトロ・ラ・フェニーチェ)では、10月以降に、今回の第二回チャリティ・オペラ・コンサートの出演メンバーを中心に、
☆平日の開演時刻を19:00以降の遅めにし、仕事帰りのサラリーマンやOL(←この書き方にはたいへん問題がありますが慣用句としてお許し下さい)のお客さまにお越しいただきやすくする
☆バーカウンターでお客さま同士の語らいと一級品の飲み物も余裕を以って楽しんでもらう
ために、しばしば長すぎるというオペラ公演の欠点を克服すべく、
☆一本のオペラを毎日一幕ずつ上演する
という新しいコンセプトのオペラ公演を、同じく江戸川橋の「絵空箱」を一週間借り切らせてもらい、実行する予定です。今回の7/25(月)のイベントはそのプレ企画との位置付けです。
チケット代はドリンクチケット700円を含む3000円(6月1日発売開始)と設定させていただき、諸経費を除いた全額を義援金と致します。第一回チャリティ・オペラ・コンサートとときと同様に、実施後会計報告をさせていたきます。
2011年5月25日水曜日
ちょっと儲かった
残念ながらフェニックス証券のことではありません。
リーマンショック後、巨額の国庫負担で公的管理下となったAIGの発行株式の再上場のおはなしです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304520804576343203093719010.html?mod=WSJASIA_hps_LEFTTopWhatNews
AIGの株価は年初から4割程度下落したため、今回の売り出し価格(仮条件レンジの下限の29ドル)は、米財務省の取得減価をわずかに上回ったにとどまり、第一次売出後の政府持株比率も74%と、独立民営までにはまだいくつものステップが必要となっています。
さて、公的資金の注入と(配当と)回収による国民負担(税負担)と言えば、先月29日付の日経新聞の記事が気になっていました。
「政府が1990年代後半以降の金融危機で大手銀行や地方銀行の経営健全化のため資本注入した約12兆円の公的資金について、預金保険機構による回収の結果、今年3月末までに返済時の上乗せ分として累計約1兆5000億円の利益を得たことがわかった。」
米国のGMやクライスラー(やAIG)のように、本邦の預金保険機構も、(納税者にはプラス、公的管理前の株主にはマイナス、という意味で)ハゲタカディールで成功を収めてくれたのかと思いつつ、糠よろこびではないのか半信半疑でした。いまこの記事に検索を掛けても電子版からは消去されているようです。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0EBE2E2E68DE0EBE2E6E0E2E3E39797EAE2E2E2 ↑リンク切れ
預金保険機構の広報を見ますと、確かに、資本注入という分野で見れば、注入額12.7兆円に対し回収額10.8兆円(残金1.9兆円)のところ取得原価との差額が1.5兆円と発表されており、記事の内容と合致しています(2011年3月11日現在)。
しかし公的資金というのは資本注入だけではありません。金銭贈与(18.9兆円)、資産買い取り(9.8兆円)など他の巨額分野があり、前者の金銭贈与のうち10.4兆円分については国民負担が確定しているとあります。
http://www.dic.go.jp/katsudou/katsudou1-4-20101224.html
リーマンショック後、巨額の国庫負担で公的管理下となったAIGの発行株式の再上場のおはなしです。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304520804576343203093719010.html?mod=WSJASIA_hps_LEFTTopWhatNews
AIGの株価は年初から4割程度下落したため、今回の売り出し価格(仮条件レンジの下限の29ドル)は、米財務省の取得減価をわずかに上回ったにとどまり、第一次売出後の政府持株比率も74%と、独立民営までにはまだいくつものステップが必要となっています。
さて、公的資金の注入と(配当と)回収による国民負担(税負担)と言えば、先月29日付の日経新聞の記事が気になっていました。
「政府が1990年代後半以降の金融危機で大手銀行や地方銀行の経営健全化のため資本注入した約12兆円の公的資金について、預金保険機構による回収の結果、今年3月末までに返済時の上乗せ分として累計約1兆5000億円の利益を得たことがわかった。」
米国のGMやクライスラー(やAIG)のように、本邦の預金保険機構も、(納税者にはプラス、公的管理前の株主にはマイナス、という意味で)ハゲタカディールで成功を収めてくれたのかと思いつつ、糠よろこびではないのか半信半疑でした。いまこの記事に検索を掛けても電子版からは消去されているようです。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0EBE2E2E68DE0EBE2E6E0E2E3E39797EAE2E2E2 ↑リンク切れ
預金保険機構の広報を見ますと、確かに、資本注入という分野で見れば、注入額12.7兆円に対し回収額10.8兆円(残金1.9兆円)のところ取得原価との差額が1.5兆円と発表されており、記事の内容と合致しています(2011年3月11日現在)。
しかし公的資金というのは資本注入だけではありません。金銭贈与(18.9兆円)、資産買い取り(9.8兆円)など他の巨額分野があり、前者の金銭贈与のうち10.4兆円分については国民負担が確定しているとあります。
http://www.dic.go.jp/katsudou/katsudou1-4-20101224.html
2011年5月20日金曜日
スペインの痛み
タイトルのFT紙の記事によれば、スペインの若年失業率は、約45%だそうです。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/408cb194-8242-11e0-961e-00144feabdc0.html#axzz1Mf8MyXSm
我が国でも新卒採用については超がつく氷河期と言われていますが、二人に一人が失業というスペインの状況には、ユーロ圏ならではの財政金融政策の制約も背景にあるでしょう。同じような資産バブルの崩壊後にもしも日本も同じように放置されていたらスペインなどの南欧ユーロ圏と同様になっていたのかも知れません。
しかしわたしはケインズ政策が必要悪だという論者ではありません。もうひとつ、大小の違いはあるものの震災に見舞われた両国に共通するのは、過保護で歪んだ労働市場と、かつての出稼ぎの時代にはあったハングリーさの喪失による労働者の質の低下ではないかと思います。
記事の表題の
Pain in Spain drives young people’s protest
は、もちろん、ミュージカル映画マイフェアレディのなかでエリザ役のオードリー・ヘプバーンが口パクで歌った
Rain in Spain stays mainly in the plain
を踏んでいます。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/408cb194-8242-11e0-961e-00144feabdc0.html#axzz1Mf8MyXSm
我が国でも新卒採用については超がつく氷河期と言われていますが、二人に一人が失業というスペインの状況には、ユーロ圏ならではの財政金融政策の制約も背景にあるでしょう。同じような資産バブルの崩壊後にもしも日本も同じように放置されていたらスペインなどの南欧ユーロ圏と同様になっていたのかも知れません。
しかしわたしはケインズ政策が必要悪だという論者ではありません。もうひとつ、大小の違いはあるものの震災に見舞われた両国に共通するのは、過保護で歪んだ労働市場と、かつての出稼ぎの時代にはあったハングリーさの喪失による労働者の質の低下ではないかと思います。
記事の表題の
Pain in Spain drives young people’s protest
は、もちろん、ミュージカル映画マイフェアレディのなかでエリザ役のオードリー・ヘプバーンが口パクで歌った
Rain in Spain stays mainly in the plain
を踏んでいます。
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