2008年9月16日火曜日

リーマン破綻への専門家コメント集

昨夜、帰宅してからニュース番組をハシゴ。リーマン破綻についての感想や日本経済への影響についてインタビュアーから聞かれて専門家の皆さんが色々なコメントをされていました。

【野村証券】木内氏:株式と米ドルから離れた資金は原油へと再び向かう。株安、ドル安、原油高で日本経済は苦難の道へ向かうだろう(東京放送News23)

(七転び八起きの感想)原油高?

【双日総研】吉崎氏:ベアスターンズには証券化のノウハウがあったため存続価値を認められた、リーマンには存続に値する中身が無かったから潰された(テレビ東京ワールドビジネスサテライト)

(七転び八起きの感想)これはユニークな見方で注目。多数説はベア・スターンズ救済方法の反省(拙速との批判を恐れず頭ごなしに1株2㌦と決めたこと。血税負担の規模が不透明であること。救済したが元ベア社員の活用・転用にJPモルガン・チェースの経営陣が頭を悩ませていること等々)の影響大と見ているのでは。

【MUFJ】五十嵐氏:CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)、リーマンから現物決済(フィジカル・デリバリー)で受け渡される債権がちゃんとしたものであれば、影響はない(日経CNBC特別番組)

(七転び八起きの感想)筆者の理解力を超えており、感想はありません。

昨日朝のブログの通り、フェニックス証券にはテレビが無いので、昨日日中は従業員はロイターとブルームバーグを中心に、筆者はウォールストリートジャーナルやヘラルドトリビューンなどの刻一刻と更新される記事を中心に、動静を見守っておりました。気になったのは、WSJの記事のテンプレート。バンカメ⇔メリルの救済合併成立やリーマンの連邦破産法11条申請に向けて度々更新されるものの、大枠は不動であった中、

朝イチ、「ことリーマンに対しては、ベア・スターンズやファニー&フレディと“一線を画した”米国政府」という表現だったのが、日本時間10時以降は「ベアやファンフレッドの時より“格段に厳しく対応した”米国政府」と表現を入れ替えているのです。

《英語では、draw a line in the sandからplay much tougher (with Lehman)となっている。前後残りは何度更新されても変わらず》

金土日と夜を徹した会議でGS、モルスタのCEOは「モラルハザードと血税投入を伴う軟着陸」案に断固として反対したのではないでしょうか?同業他社を徹底的に見殺しにするという文化は我が国では理解しがたいかも知れませんが、お家騒動で失脚したものの結局実力が評価され再登板した直球勝負のCEOマック・ザ・ナイフにはそういう哲学が感じられます。

「小説 日本興業銀行」という身内が読んでもつまらない経済小説(?)の巻頭に、山一證券の(一回目の)倒産に際し、日銀氷川寮で日銀特融を迫る中山素平当時頭取と最後に「よっしゃ」と言った田中角栄当時大蔵大臣の遣り取りがあります。中山素平氏とジョン・マック氏の考え方、バックグランドは如何にも対照的です。

そんな中、
AIGから緊急融資を懇願されていたたFED。GS、JPモルガンに代わりに出してあげてくれと(9/16各紙)

最後におまけ・・・
【筆者の家内】AIGに月々1500円払わされている筆者のがん保険。「安心を買うのが保険なのに、払えば払うほど不安になるAIG。明日にでも解約して、その分を私の小遣いとしてくれないか」と。

(七転び八起きの感想)どうせ掛け捨てだから、そのほうが良いかも(TT)
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2008年9月15日月曜日

ウォール街の事故米

今朝の休日出勤はFX業者の社長としては当然。でも出勤前に、CNBC、BBC、CNNと忙しなくチャンネルを動かす毎に米リーマン関連の速報が飛び出し、なかなかテレビの前を離れられない始末。会社にもテレビを一台くらいは置いておかねばと反省。ちなみに日本の地上波は何時も通りのワイドショー、事故米で騒いでいる。。。ウォール街の事故米のほうが日本国民にとってもより差し迫った猛毒であることはワイドショーの連中には理解できないのでしょう。

●バンカメもバークレイズも、米リーマンの救世主からイチ抜けた、ニ抜けた(9/15WSJ)
金曜日のWSJ紙は、米リーマンの救済シナリオを週明けまでに策定するため、財務長官、連銀議長、SEC議長のほか、ゴールドマンサックスとモルガンスタンレーのCEOが集められたと報じています。

そのとき何故、GSとモルスタなのか筆者はすぐにピンと来ませんでした。金曜日の時点で救世主候補だったのは、バンカメを筆頭に、バークレイズ銀行、HBOS(以上、英国勢)、野村證券、MUFJ(以上、日本勢)、BNPパリバ等々と記憶しています。

「6850億円ぽっちの公的資金導入を政局にしてしまう日本と異なり、巨額の公的資金を素早く決断できる米国は流石だ」という論調が息巻く一方、97年のLTCM救済や今年3月のベアスターンズ救済のように、「ヘッジファンドや投資銀行如きの救済に血税を使うか?モラルハザードだ!」というグリーンスパン流の論調が、破綻の連鎖が憶測される中で強まってきています。GS・モルスタは、「投資銀行業界の中で資金を捻出し独自のセーフティネットをぶち上げてくれないか?」という説得のために召集されたと考えられます。

世界を代表する商業銀行が次々と名乗りを上げては撤収するのは、ベアスターンズ救済時に用意された瑕疵担保条項(不良債権の将来損失も公的資金でカバー)を今回(以降!?)は付けられないがそれでも買ってくれないかという説得を拒否した結果でしょう。

我が国の失われた90年代(筆者は決して「失われた」とは思っていないのですが、、、)、銀行業界は、
①名ばかりの共同債権買取機構
②住専破綻処理で「母体行責任⇔貸し手責任」の不毛な論争の末6850億円の税金投入
特別検査⇒一時国営化⇒公的資金導入という破綻処理の確立
④破綻前でも公的資金を入れざるを得ないデフレスパイラル
という運命に翻弄されます。現在、リーマンを取り巻くウォール街の議論からは上記④⇒③⇒②or①に逆戻りせざるを得ない状況を感じます。

そんな中、
●メリルリンチとバンカメ、合併観測-株式交換で(9/15NBC、WSJほか)
ただし、最後の最後で破談になる可能性もあるとの報道。
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2008年9月12日金曜日

寝た子を起こすな!

●米リーマン、複数の金融機関に身売りを打診(9/12WSJ)
バンカメが筆頭候補とも。しかし、買収後の追加損失への懸念が根強く、(我が国で長銀・日債銀の一時国有化後のファンドへの売却の際に用いられた)瑕疵担保条項のような、追加損失は政府が補填する形でのバックストップを潜在的買い手は求めているとWSJは報じている。

米リーマンの株は、連日の暴落を演じつつあったところ、WSJのスクープで一挙に反騰。買い手候補の筆頭と報じられたバンカメ株も高い。

●ファンフレッド救済で米財務省が異例の説明-邦銀・生保に対し債権継続保有を個別に懇願(9/12日経)
普通株や優先株の損失は自己責任。でも、ファニーメイとフレディマックの債権は、もともと暗黙の政府保証付きで、米国債よりちょびっとだけプレミアムが乗っているということで、我が国のサラリーマン投資家には魅惑の金融商品であり続けていた。

しかも国家管理に置かれるのだから、却って益々安心していたところ、
「大丈夫ですから、売らないで_m(..)m_^^;~~;**;」
と言われると、寧ろ不安を書き立てられるのではないでしょうか?

米財務省に藪蛇(やぶへび)だと教えてあげたい。
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2008年9月11日木曜日

投資銀行って、いったい何ですか?

●北朝鮮の独裁者、健康状態に重大な疑問(9/10WSJ)
核無能力化交渉は予断を許さず、と同紙。

ここ数日の金正日氏に関する報道をどんなに一所懸命チェックしても、多くの読者の疑問

「金正日氏が亡くなったら(既に亡くなっていたら)北朝鮮はどうなるか?極東情勢はどうなるか?」

に答えてくれる報道は殆ど見当たらないのではないでしょうか?

「天皇に戦争責任は無い」とは先日引用させていただいた中曽根康弘氏の著書の通り。戦後教育に毒された世代も含め、我が国が日中戦争の泥沼に入り込み、日米開戦を余儀なくされ、そして無条件降伏したことが天皇の責任だと信じている人は今では殆どいない筈。明治以降、戦前の我が国は、形式上の権力=カリスマを目に見えない実態上の権力が取り巻き利用するという構造を作り上げていたと考えられます。

恐るべきことに現在の北朝鮮にこれは当て嵌まるのではないかと。金正日氏というカリスマを取り巻く本当の権力者による外交戦術は残念ながら見事としか言いようがありません。

企業の場合だとトップが世襲するような組織や風土では、有能な取り巻きは離散し、日本の場合でも2代、3代と事業が継続繁栄することは稀になってきています。現代の企業制度においては名ばかりの社長というのは難しくなっており、競争しながらの営利追及、重大なリスクを伴う経営判断、従業員のヤル気を引き出す人間力、、、等々の激務は社長に集中してしまわざるを得ないからでしょう。国家の場合は、この権能を象徴的カリスマと目に見えないが有能な権力者=執行部に分けることができる。そういう不透明な構造をぶち上げることが出来る。北朝鮮に限らず、見た目は透明性が確保されていそうな民主国家でも法治国家でもこれは可能。どこかの国の、三権分立とは名ばかりの立法府⇔行政府の凭れ合いは格好の例です。

国家と企業の違い、、、亡命や脱北は転職や離職ほど楽ではない。

我が国の恐らく多くの人々は、正日氏に何かあれば、周りが放っておいても現政権が自ずと瓦解すると期待するでしょうが、以上の理由によりこれは当然には難しいでしょう。ローマ帝国を潰した傭兵オドアケルのような人物が出てきて北朝鮮正規軍を崩壊させれば別ですが。

●米リーマン、39億㌦の赤字-6月~8月(9/10WSJほか)
20年前、社会人1年目だった筆者たちが屯していた独身寮に遊びに来た副支店長さん。日曜日の夕方からビール片手に「投資銀行だ、投資銀行だ、って頭取は言うけど、投資銀行って一体何だい?要は“株屋”になれってことだろぅ?」とおっしゃっていたのが記憶にあります。

事業を分解して、決済リスクを伴うビジネスと、投資リスクを伴うビジネスを分離してくれることは零細ブローカー社長としては手放しで歓迎。
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