2013年6月13日木曜日

「バーナンキは何を考えているのか」問題とユダヤ系アメリカ人

5月の下旬以来、「日本の」金融市場で起こっていることは、株価の急反落とドル円相場の戻り売りだとまとめられることが多いです。そのきっかけを与えたのがバーナンキFRB総裁の量的緩和終結を示唆する発言だったともされています。

黒田日銀総裁の異次元緩和の直後の「日本国債の利回り低下、株価の急激な続伸、ドル円相場の更なる急伸」は矛盾を抱えるバブルであり、「日本国債の売り、日本株(とくに不動産株)の売り、ドル円の売りの、どれかをやっても、すべてを組み合わせても、合理的な投資戦略だ」という話を、このブログで4月5日に書いております。

予感が的中したことを自慢するのが本題ではありません(外れることのほうが圧倒的に多いので)。

なぜ、バーナンキ議長がアベノミクスに水を差したのか?という怒りや疑問に、臍曲がり七転び八起き的角度から答えてみるとすると・・・

そもそも、バーナンキ議長はアベノミクスに水を差そうなどという意識で「空気を読めない」発言をしたのでは全くなく、米国内のバブル退治を念頭に置いているだけであって、きょうのブログの冒頭の「ドル円相場の戻り売り」というのは為替市場全体から見たら副次的に過ぎません。

もっとたいへんなのは、南アフリカランドなど新興国の通貨やオーストラリアドルなど資源国の通貨に対して米ドルはむしろ劇的に上昇しているという現象です。

「金融緩和さえとことんやれば景気が良くなるのに」と無知蒙昧な批判に晒され続けて最後辞任に追い込まれた白川前日銀総裁よりも更に不人気的な言動を毅然ととるバーナンキ議長のセントラルバンカーとしての矜持の背景にある人となりを探ってみる価値はあると思います。

まず、彼は、同じくユダヤ系アメリカ人で、自由の国アメリカを代表する経済学者であるミルトン・フリードマンの信奉者でした。

大雑把に言えば、20世紀のアメリカ社会は、世界中で最も、ユダヤ人(の移民の受け入れ)に寛容だった国だと思われますが、それでもミルトン・フリードマンも、ポール・サミュエルソン同様、1940年代には大学社会で理不尽なユダヤ人差別を受けてきたという記録があります。

経済学界に限らず、アメリカですらあったユダヤ人差別と闘いながら、それぞれの分野で頭角をあらわしたユダヤ系がいかに多いかは、ウィキペディアの「ユダヤ系アメリカ人」の記事の末尾の写真一覧を御覧ください。

スポーツと政治(ロビー活動は措くとしても)はそれほどでもないですが、よく知られているように、映画・音楽・自然科学(理数系などと呼ぶべきか・・・もちろん経済学を含みます)・金融(投資・詐欺を含むorz)・コンピュータ製造・ソーシャルネットワークの世界での活躍ぶりは驚愕的でもあります。

わたしが尊敬している広瀬隆さんに言わせれば、これは偶然ではなく、陰謀ではないかと上手にこじつけられるかも知れません。それは話としては面白いのですが、すでに引用したユダヤ系アメリカ人の記述をお読みいただくと、(アメリカの)スポーツ界における黒人の台頭と同じで、貧困と差別から逃れるために人一倍努力した人が比較的多いと評価するのが妥当でしょう。

バーナンキその人についても然りで、「景気が悪い」「人々が全体的になんとなく不幸である」「プータロウの比率が高まっている」などなど世界中の先進国≒オールド・エコノミーで見られる現象が、通貨をばら撒くだけで治癒されるわけがないと、心の底では思っているはずなのであります。

こういうひとたちは、失業の原因は(ケインズが言うように)有効需要の不足ではなく失業者本人の努力の不足だと思っているのです。

これには重要な限定条件が付けられるべきではあります。

5月22日アベノミクスと貧困の連鎖をご参照ください。

この限定条件が無視されて、弱肉強食の思想だけが各経済圏で独り歩きしてしまうと、有史以来繰り返されてきたユダヤ人迫害の一因になってしまうのです。
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