この藤井裕久財務大臣の発言に対して2ちゃんねるではお祭り騒ぎになっているようです。
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1254871259/
http://www.mof.go.jp/kaiken/kaiken_my20091006.htm
そもそもマクロ経済の実態というのは経済学を勉強しさえすれば把握できるような性質のものなのかどうか七転び八起きには疑問。「子どもは親(の所得水準、生まれ育った地域が都会か田舎かなど)を選べない以上、憲法も保証している教育の機会均等、なによりも子どもにとっての将来の夢に向けての公正な競争は、財源問題よりも遥かに高い次元で実現を目指さなければならない」ただその一言で良いのではないでしょうか。
これは週末のNHKスペシャルを視ての感想。「格差の是正が課題であり、格差の原因は、『非正規労働者』の増大であり、またそれは日本が『市場原理主義』を受け入れてきたからだから、『グローバル資本主義』は遮断しなければならない」という目下人気の議論と連動しがちではありますが、大衆迎合の政治上のテクニックを別とすれば、これらの議論こそ遮断すべきでしょう。
競争の行きつく先が戦争であるとも或る意味言えるので、競争は激し過ぎても緩すぎても社会は綻びます。(人類を除く?)生態系は生存競争の結果としての進化(論)を受け入れているというのは定説。しかし原則に対する例外の存在があるから小選挙区制度のようにWinner takes all(独り勝ち)とはなりません。海を泳ぐ魚にとって動物プランクトンが増殖するのは短視眼的には喜ばしいように見えますが、“赤潮”は植物プランクトンを全滅させるので結局巡り巡って魚の餌がなくなってしまうからです。
NHKスペシャルを視たあと、同じくNHKで「ほっけ(𩸽)柱」の話をしていました。海を泳ぐ魚にとって、“浮き袋”が発達していることは自由に色々な深さのところを泳いで餌を探すことができるわけで競争上有利に違いありません。ほっけ(𩸽)にはこの“浮き袋”が殆どないことを解剖で示していました。一年の半分は動物プランクトンの死骸が海底に沈むのを食べている一方、動物プランクトンが元気に海面近くで泳いでいる季節には、ほっけ(𩸽)は群れをなして、“浮き袋”がない分、他の種類の魚よりも断然一生懸命に尾びれを震わせ上昇を目指すのだそうです。この異例の推進力が(空気中の上昇気流が竜巻を生むのと同じ理屈で)渦潮を産み出す。これがほっけ(𩸽)柱であり、回りからどんどんとプランクトンを引き摺りこむので効率的に餌にありつけるというわけです。ほっけ(𩸽)柱が渦潮を伴うので、鴎など天敵も近寄りがたいようです。
これまたかつてNHKのラジオで聴いた話ですが、海底を這うことしか出来ないナマコには天敵が殆どいない(敢えて言えば中華料理好きの人類くらい)そうです。動きが鈍く逃げ足が遅いナマコの類が生き残っているのは、かぶりついたところで皮の部分が分厚い割には“身”が少ないので、わざわざ海底まで潜って捕獲しにいくには値しない獲物だというのが海の中の生き物の間でコンセンサスになっていること、動きがどうせ鈍いのでエネルギー消費量は少なくて済むため、海底の砂を食べてその中に僅かに含まれる栄養分だけを摂取するという非効率的でのんびりした食生活には競争相手がいないことが理由だそうです。
ナマコのような清貧の思想は、無資源国である日本が細く長く繁栄するために重要なヒントを含むような気がします。
競争上有利なものだけが生き残るという進化論が原則に過ぎないことを示す例は、
①有性生殖が絶対有利なのに無性生殖が残っている(前掲のプランクトンなど)こと、
②生存競争におけるモラルハザードを排除した結果が体内受精だとしても、体外受精の魚類は人類が幾ら進化論上遅れていると軽蔑したところで絶えるわけではなく、逆に絶滅してしまえば、巨大赤潮と一緒で、人類そのものまで巻き添えを食ってしまうこと、
③進化論上もっとも進化していると自画自賛の人類は、自然界を制覇しているように見えて、ウィルスとの戦いは半永久的に続きそうであること、
など枚挙に暇がありません。
(グローバル)競争が善か悪かという二項対立からは社会問題の是正への糸口は見えてこないでしょう。第一歩としては競争の結果責任は親の世代は或る程度負うのは仕方が無いにしても、子どもの世代には負わせないという哲学を浸透させることでしょう。
今朝のFT紙は、資源通貨の代表格豪ドルの(予想外の?)利上げ(=リーマンショック後、G10諸国では初)と金相場が(ドル建てで)記録的高値を更新し、世界経済の回復が軌道に乗りつつあると報道する一方、モルガンスタンレーのスティーヴン・ローチ氏の論稿「2008年から2009年にかけての世界的経済危機は国内および国家間のマクロ不均衡が原因。その不均衡が再び危険水域に近づいている」を同時に取り上げています。
http://www.ft.com/cms/s/0/5f02e83e-b2a3-11de-b7d2-00144feab49a.html
http://www.ft.com/cms/s/0/bee43992-b27b-11de-b7d2-00144feab49a.html
マクロ不均衡は人類における“赤潮”そのものでしょう。