2008年10月2日木曜日

秋の夜長に欧米か

●ヨーロッパ各国の首脳、銀行救済案で意見が分かれる(10/1FT)
欧州全体に蔓延しつつある銀行破綻の嵐を食い止めるべく、各国首脳は10/4(土)パリに集結の予定。その前に、仏サルコジ大統領から「€3000億規模の銀行救済ファンドを立ち上げるべき」との提案が報じられたが、反発する声も多く、サルコジ氏も程なく撤回!?米国金融安定化法案の7000億㌦が主として「不良債権を切り離す」ことを目的としているのに対し、サルコジ案は銀行そのものを公的資金資本注入で助けるというもの。

ドイツ、イギリス、アイスランド、アイルランド、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、、、と銀行破綻と個別救済が相次ぐヨーロッパ。“市場原理主義”の米国と異なり公的資金の導入や国家権力の介入に抵抗が少ないから、、、との論調が多いが、EU統一精神には反する筈。産業界も「自分達は関税や補助金が撤廃され、のんびりしたヨーロッパをエンジョイ出来なくなって久しい。銀行(と農業)だけは例外、というのはもう我慢できない」という声が上がっても不思議ではない状態。

昨日、ベルギー当局に公的資金投入を受けることになったDEXIA銀行。わが国の公営公庫と似たビジネスモデルの同行のCFOが昔東京にいらした折お話する機会がありました。EU発足後、アイルランドが金融特区として金融機関の事業所税を極端に下げることで、欧州各国の金融機関のコールセンターを呼び寄せることに成功させたのはズルいゎ(怒)とおっしゃっていたのが印象的でした。

モラルハザード反対論者の小職としても注目せざるを得ない米国金融安定化法案のスケジュールは、現時点では、上院が将にこれから日付変更線に掛けて行なわれ、下院は《当初10/2(木)の予定が》10/3(金)にずれ込みと日本語ロイターが報じています。10/3(金)は注目(?)の雇用統計の後も秋の夜長となりそうです。
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2008年10月1日水曜日

金融安定化法案の否決で、主なコメント集

●NYダウの寄り付き反発-7000億㌦金融安定化法案に賛成の議員にとっては痛手かも(9/30CNBC)

ブッシュ演説もあり「修正案は通るだろう」という期待で米国株反発、第二の流血の月曜日の残忍な売り浴びせの半分を帳消しに、、、というのが一般の論調。

そんな中、日経CNBCは(フェニックス証券提供の)「夜エクスプレス」枠を柔軟に伸縮させ、ニューヨークからの生番組を取り入れつつ、時機を得た編成で視聴者の投資家心理に応えてくれました。

上記は、NYSE寄り付き中継中のCNBC本家の現場記者の皮肉たっぷりのコメント。彼は共和党右派の支持者でしょうか???

●「これは巨大な牛肉のパテの中に一欠片のマシュマロが混入されているようなもの。パテには目が無い俺も、このパテだけは御免だ」とジョージア州選出の共和党下院議員ブラウン氏(9/30NYTimes)

和食専門の筆者には判りづらい譬えですが、このブログで時々使わせてもらっている毒入り餃子だということがおっしゃりたいのでしょう。不良債権がマシュマロ程度なら問題ないような気もするし、日本だったらマシュマロ業界から失言騒ぎを起こされるかも知れません。これぞ「ごね毒」!
●法案否決で(米国株の時価総額という)国富が一夜にして1兆㌦失われた-ブッシュ大統領演説(9/30CNBCほか)

それに比べれば7000億㌦は安くて済む、というのが趣旨。これは非常に判りやすい説明、ブッシュ大統領のブレインは有能だ。。。

今朝の日経新聞の1面にも、「世界の株、ピークから1年で時価総額2000超円目減り」とセンセーショナルに扱われています。しかし、流通市場の時価総額が減るというのは人類全体が損をしているのでしょうか?国富、いや世界の富がドブに捨てられているのでしょうか?

発行市場と車の両輪をなす流通市場は確かに重要なインフラではあります。しかし、もし読者の皆さんが企業家だとして、元手300万円で事業を始め、幾多の苦難を乗り越え事業が成功し、2007年7月株式公開を実現、(極端な譬えですが)読者の皆さんは創業者株全株を売却して3億円を手に入れていとします。創業から株式公開までの間、配当はなかったとすれば、読者の皆さんは流通市場から2億7000万円という巨額の富を手に入れたことを意味します。勿論、努力の結晶であることは言うまでもありません。1年強経過した只今現在の時価総額は2億円になってしまっているとしましょう。流通市場は1億円の富を失っています。これは逆に言うと、株式公開が現時点であれば、読者の皆さんの富は1億7000万円に留まっていたという意味でもあります。

時価総額の目減りは、流通市場で売り逃げた投資家だけでなく、発行市場を良い時期に活用できた事業家にとっても、言葉は悪いですが流通市場からの富の収奪にほかならないのです。

これは住宅価格を含めた不動産相場にも当て嵌まります。不動産は「空売り」が出来ない資産だから、世界中の人たちが程度の差こそあれロングポジションだ⇒だから不動産相場の下落は世界全体の富の目減りだと信じ切っているひとが大勢いますが、これは全く詭弁です。

FXをやっていらっしゃる読者の皆さんなら、円安だから円資産が目減りしただの、円高だからデフレだデメリットだと評論家に悲観論を叩き込まれても、もう誰も騙されないでしょう。

ブッシュ大統領の「1兆㌦」発言も、モラルハザード政策を導く見事な詭弁ですが、これ以外にインターバンク市場の復活の方法がないのなら、まぁ良しとするか、、、
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2008年9月30日火曜日

根回しと造反

●7000億㌦金融安定化法案、下院で否決(各紙)
共和党からの造反が相次ぎ、大差で否決。米国株はダウ平均の102年の歴史上最大幅の下げ(下げ率では9.11テロ以来最大)。

昨夜、フェニックス証券オンラインセミナーの“結論”として申し上げたのは、「7000億㌦のパッケージが完全燃焼しようと不完全燃焼に留まろうと、米ドルは“絶対評価”で売り!」という内容。

「ばらまき政策」を肯定⇒ハイパーインフレ⇒米ドル暴落

「ばらまき政策」を否定⇒デ・レバレッジ⇒デフレ・スパイラル⇒米ドル長期下落

国際協調介入という雑音の可能性は寧ろ大きくなりますが、米国の現政権が孤立するならば、通貨防衛のために打つ手は殆どないという見方です。

先日の中曽根康弘氏の著書引用にあります通り、一般の日本人の認識に比べて、わが国の改革総理大臣の権限は大きいのですが、逆に名実共に国家元首である米大統領の権限は意外なほど大きくないのです(いわゆる拒否権はあるが、否決された法案を覆す権利はない)。法案は修正して一から出し直すしかないということです。

自らが率いる党の造反で異例の否決を目の当たりにしたブッシュ政権は終わりの日が近いから良いようなものの、民意を読み違えて同法案に乗っかってしまった両大統領候補にとっては更に深刻な致命傷なのではなかろうか。今後の具体的な見通しについては、調査+考察の進展に応じて更新して参ります。
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2008年9月29日月曜日

ビール会社のようには売れないベルギーの銀行

●ベルギー系大手銀行Fortis、破綻処理間近?(9/29WSJ)

19世紀設立の伝統ある大手銀行、ベネルクス3国主導で救済か。

週末、同行に関する報道は二転三転。厳しい財政規律を求めているEU憲法。加えてユーロ圏の各国中央銀行はECBの出張所になりさがっており、勝手に同国政府発行の国債を引き受けられる筈がない。それ以前に、民間企業、とりわけ民間金融機関を公的資金で救済するためには世界中で最も高いハードルをクリアする必要がある。

したがって、Fortisについても、資産売却、営業譲渡、身売り(オランダ系INGやフランス系BNPパリバの名前があがっていた)のいずれかしか選択肢は無いと一旦は報じられていた。が、生命線を維持するにはベルギー、ルクセンブルグ、そして恐らくはオランダが国家レベルで関与するしか無いと急展開。

米ドルの機軸通貨性に疑いが持たれつつある今日この頃、ユーロを参考にして、東アジア圏も統一通貨を導入すべきと論ずる“専門家”が出現しています。天変地異でもない限り、中国、韓国、香港、フィリピン等をまとめるのは無理。残念ながら、日本自体が中央銀行の独立性や裁量的かつ柔軟な財政出動を放棄することはあり得ないのでは。

今回のFortisの事案、ユーロという通貨の難しさを改めて思い知らす、多分ユーロ通貨統合以来初めて試練ではないかと考えられます。

●米国金融システム救済法案、暫定合意は達成?(9/28WSJほか)
今夜20:00からフェニックス証券オンラインセミナー第6回で今後を占います。どうぞご覧下さい。
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