2009年3月30日月曜日

解雇理由、正社員と契約社員の違い、

★米グーグル、人員削減計画発表もなお新規採用へ(日本語ロイター)

グーグルは26日、200人の人員削減を発表したばかり。また、1月には正社員100人を削減。さらに、2月にはラジオ広告事業からの撤退で40人を削減すると発表。

リストラ対象部門は、広告と営業。検索機能連動型の広告(アドワーズ)や、コンテンツマッチの広告(アドセンス)はWEB2.0の看板的存在でしたが、金融危機の影響を被った点では、紙媒体や地上波テレビと五十歩百歩なのか。無論、この50歩の差は大きいのですが。

さて、週初のテーマはWEB2.0とかネット広告の話ではありません。上記ロイターの記事に「正社員」という言葉が使われております。「正社員」とは何でしょうか?

話題のグーグルの検索窓に「正社員」と入れると、「正社員 契約社員 違い」という組み合わせが450万件と関連キーワードの中で検索件数がトップだと表示されます。世相が如実に読みとれます。そこで複数の上位サイトの解説をまとめてみると、正社員とは?

★雇用契約で雇用期間を定めない契約
★とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められ、また、辞めたいときにはいつでも辞められる

「とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められるんだ」と何となく認識しているが根拠は不明で心配だとおっしゃる大企業サラリーマンの方々に最近頻繁にお会いします。そこで今度は、同様に「解雇」でググってみますと、「解雇とは」「解雇理由」が合わせて470万件以上も検索されており再び世相が表れております。

就業規則違反の「普通解雇」や「懲戒解雇」については省略します。問題は「整理解雇」、すなわちリストラ目的の会社都合による解雇が、どの程度罷り通るのか、です。

我が国の大企業正社員は終身雇用制度に守られていると一般に思われている根拠は、恐らく1974年判例

「企業に人員整理の必要が高度に存するにも拘わらず、整理解雇という手段に訴えることを極力制約しようとする論理は、解雇に先立ち、出向・配置転換・任意退職の募集・一時帰休その他解雇回避のための努力を最大限に要求し、この点に不徹底がある以上解雇を許さないとするものである。」(S54.7.31岡山地裁「住友重機玉島製作所事件」)

で確立(!?)された『4条件』

①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)

ではないかと考えられます。ただし、判例“法”はこれだけではないようです。検索結果を遍く調べた限り、大阪労務管理事務所(所長 三嶋道明先生)の頁が最も充実しているように思えました。

さて、これら4条件が終身雇用の根拠だとすると、「年俸制採用企業や外資系企業は終身雇用ではない」との思い込みも怪しくなります。現に、最近では未曾有の整理解雇の嵐が吹く外資系金融機関においては本国の労務管理担当にとって想定外だった訴訟沙汰が多発しているそうです。

本題に戻すと、大企業サラリーマンは勿論、企業経営者の問題意識は、この判例“法”における「高度の経営危機」の解釈でしょう。破産等は良いとして、債務超過、部門閉鎖、営業所統廃合などでは多少疑義があります。まして、

赤字が巨額かつ構造的で業績回復の客観的な見込みが立たず「継続企業疑義」が注記される程だが、過去の内部留保のお陰で債務超過には至っていないケース

では、「高度の経営危機」だと太鼓判を押してくれる法律事務所は少ないでしょう。

構造不況の業種や企業のリストラがスピーディーに行われないことは、正社員天国=日本の底力を蝕むだけでなく、やる気のある正社員が無用の閉塞感に晒されてしまう。正社員VS契約社員という構造だけではないのです。

法律(強行法規)が弱者を助けているように見えても実態は無意味だという点で、旧法借地法借家法と似ています。借主(=弱者)の保護を目的としていながらも、貸主としては「簡単に追い出せないのなら、簡単には貸さない(=定期借地借家より高い家賃を取る)」気分にさせる程度の法律効果しか見込めなかったという厳然たる事実を、原則旧法踏襲に拘り借地借家法改正を骨抜きにした1992年当時の野党は真摯に反省すべきです。

今朝の日経新聞5頁の山田昌弘中央大学教授「大企業の採用は30歳からに-有能な若者は中小企業へ」という論稿も、同じような問題意識に由来するアイデアだと思われます。
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2009年3月27日金曜日

七転び八起きの欠点

私には重大な性格の欠陥があります。

ひとつは、頼まれた仕事を断れないこと。

さらに、ランキングを気にし過ぎること、です。

初出版の「“為替力”で資産を守れ」が書店に並んでからもう少しで2ヶ月となります。アマゾンの順位は今どうだろうか?八重洲●ックセンターや●善、ジュン●堂、紀●國屋では平積みしてもらっているだろうか?人事を尽くして天命を待っている筈の著者は、発売当初の勢いが無くなりかけたり、内容の無い似非経済学者が書いた本が大型書店の入り口に待ち構えるように平積みされていたりすると、ガッカリしてしまいます。よく考えてみると、嘆いても仕方がないことなのですが・・・

劇戦のビジネス書で高順位を保つのは並大抵のことではないそうですが、50位以下に何度落ちても這い上がって来るのもまた不思議。応援してくださっている読者の皆さまに心から感謝する次第です。

それにしても、「為替力」の産みの親となった「七転び八起き」ブログ。こちらのアクセス数はお陰さまで鰻登りです。驚くべき数値になっていますので、この記事の真下にある『ブログを応援』をクリックしてみて下さい。最初のページは所謂「社長ブログ」ランキングです。そこから、「好きなブログ新規登録する」バナーの真下にある「Myカテゴリー(公式・有名人)」の「全て」をクリックして下さい。我がブログが著名芸能人ブログに伍して頑張っている姿を垣間見ていただけますよ。
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オバマ大統領、ガイトナー財務長官への期待は過剰なのか?

久しぶりに「FX“深化″論」を更新しました。第5回のお題は、

2009年の為替相場はこう動く。米新政権への過剰期待は禁物。

原稿の締め切りが2月中旬でしたので、その後の紆余曲折、特に今月のFOMCや先日の官民投資プログラムについて全く反映されておりません。今回の原稿が新鮮さを多少残している部分を自画自賛すると、ガイトナー財務長官のWSJ紙への論稿にある

×リーマン的処置も駄目

×AIG的処置も駄目

という宣言が、米国新政権自らを苦しめるジレンマになりかねないという視点。このような悲観論を相当程度携えて、今後の相場に臨む必要はあるでしょう。

一方、楽観論の象徴が、今朝のREIT市況。日経朝刊「REIT支援へ官民基金」で爆騰。しかし、一部の銘柄を除くと板が薄く出来高もまだ低調です。黒字かつ資産超過の不動産ファンドなのに資金繰り理由だけで理不尽に低迷しているケースは、今朝の記事(リーク?)が救済要因になるでしょう。
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2009年3月25日水曜日

WBC、敗者復活戦の妙

天邪鬼で鳴らす「七転び八起きブログ」としてはWBCネタは取り上げないつもりでしたが、V2は目出度し。「韓国とは最大で5回も戦うことになるんですよ」、と事前に聞かされたものの、、いまだに仕組みを理解していない筆者は、案の定最悪の5回も戦わされた韓国軍に「お疲れ様」も言いたい気持ちです。

敗者復活の仕組みが随所に活かされたトーナメント形式。一度負けたら御仕舞いの厳格なトーナメントが当然の我が国高校野球に応用されたら?と昨夜想像してしまった筆者は相当な捻くれもの。敗者の涙と甲子園の砂はキラーコンテンツ。そんなことは議論すら起こり得ないでしょう。

しかし、社会には厳格なトーナメント形式の中にもっともっと敗者復活のメカニズムが入れ込まれたらどうでしょう。失われた10年やらリーマンショックなどを通じて、自他ともにエリート組織人と思われてきた方々の中にも、有名な学校、有名な企業や官庁、そして大組織の頂点を目指すことだけが社会的な成功の証だとは既に言えない世の中になってきることを自認出来ている心ある方々が加速度的に増えていると御見受けします。

このような方々は定義上は「正社員」。つまり不況下で非正規労働者に雇用調整を押し付け、立場上は大組織にしがみ付くことが出来る方々です。この日本独特の理不尽は、正社員にとって守るべき既得権益でしょうか?

受験のためだけに勉強をし、大企業ブランドを身につけるためだけに面接技術を磨いた腰抜け正社員にとってはそうでしょう。しかし、「定年とやらまで会社で(会社が?)喰って行けるのか?」と疑問を募らせ、危機に直面しても大企業病を無視する組織の中で閉塞を感じつつも、言いたいこと、やりたいことを主張するよりは我慢することを選んだほうが取り敢えず賢明かと、不承不承、無難な選択を余儀なくされている方々のほうが大多数なのではないでしょうか?

正規雇用に限って会社事情による解雇が困難である我が国独特の制度(判例)では、正規雇用労働者を雇う側も定年までの固定費を心配して転職者の受け入れに慎重になることや、既に正規雇用労働者を雇った場合には当該企業でしか使えない技能の教育に力を入れる等々、様々な「社畜化」メカニズムを働かせている現実があります。これらは、既得権益である裏側として、既に当ブログで問題視してきた「非正規雇用が雇用全体のバッファーを押し付けられていること」と「バブル期と就職氷河期とで馬鹿馬鹿しいほど理不尽な世代間不平等が発生すること」と併せて認識されなければなりません。

終身雇用と年功序列は意外と日本の伝統芸能ではありません。論功行賞で俸禄が決められた封建制度の縦社会においても、主君を何十人と変えて最後は外様大名としては異例ながらも家康の最期に接見するに至った実力主義者藤堂高虎のような例もあります。儒教の浸透で、その後の我が国では藤堂高虎のようなジョブ・ホッパーへの評価は必ずしも高くはありません。しかし、「実力があれば、くだらない上司や閉塞的な組織から飛び出せるんだ」という希望を、潜在能力が眠っているエリート組織人に撒き散らすのだとすると、一見しがみ付くべき既得権益に思われる終身雇用と年功序列は意外にも権利放棄すべきもののように思われ、藤堂高虎のような武将は今日こそ再評価されるべきだと思います。

決して、高校野球に、WBCのようなややこしい敗者復活ルールを入れるべきという論旨ではありませんので、よろしくお願い致します。
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