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2022年1月24日月曜日

言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない

文学としての行政処分

他山の石として、金融機関に対する行政処分(業務改善命令や業務停止命令など)の中身を熟読することは、私の日課です。

しかし、みずほ銀行に対する行政処分は、その厳しさの度合いよりは、行政処分の文書のパタンである、「事実関係→法令違反の指摘(法令へのあてはめ)→処分内容」からはみ出した、異例のものになっています。

異例と思えるのは、まずは文章が大容量であること。そして、官僚の文章(霞が関文学などとも呼ばれます)とは思えない、情念のこもったものであることです。関ヶ原の戦いのまえに、石田三成が徳川家康の悪事を書き連ねた弾劾状を諸大名に送り「是非西軍に参加してほしい」とやるわけですが、その18カ条にも及ぶとされる書状をも彷彿とさせます。ただし、石田三成は所詮官僚どまりだったわけですが。。。

「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という科白は、儲け主義の民間企業の役職員が、事なかれ主義の官僚を批判しているという文脈ならわかります(民間企業がみんな儲け主義だとか、公務員がみんな事なかれ主義だとか言っているわけでは、必ずしもありません)。言う側と言われる側が逆転していることが極めて屈辱的です。しかも、一般株主に対して責任がある上場企業ですらあるわけですから、なおさら言語道断です。

で、以上は、あくまで話の取っ掛かりであります。「言うべきことを言わない」≒「言うべきことが言えない」という企業風土では、優秀な人材は定着しないでしょうし、会社が経営不振に陥るのは時間の問題でしょうから、本来は、資本主義社会においてはみずほ銀行のような民間企業は淘汰されるはずです。しかし、国家権力となると、そう話は単純ではなさそうです。

「なぜ日本は無謀な対米対戦を決断したのか?」という話を、あらためて、2021年末にさせてもらいました。

学歴詐称の父-真珠湾「奇襲」80周年

昭和の選択・・・1941日本はなぜ開戦したのか

我々は(少なくとも私なんかは)戦後民主教育で、第二次世界大戦(終結)の意義のひとつとして、自由主義ないし民主主義の、全体主義(ファシズム)に対する勝利があげられると習ってきました。これが100%間違いだとは言いません。日本国憲法が事実上押しつけ憲法であることは間違いなさそうですが、その三つの柱は、日本の無条件降伏なくしては立てられなかったでしょう。

今日の本題はウクライナを巡っての世界大戦勃発リスク

しかし、明らかな間違いがひとつあります。例えば、スターリン政権下の当時のソ連は、ナチスドイツよりもひどいファシスト国家であったということです。

日本が、開戦前、昭和天皇もその取り巻き(例:木戸幸一)も対米開戦反対、近衛文麿も然り、東条英機ですら(※)この時点では開戦回避という考えで陸軍の下々を説得することが自分の役割であるという自覚があったわけです。よって、12月に書かせてもらったとおり、天皇に権力が集中しすぎていて、正しい考察や分析ができている有能な重臣や官吏が絶対権力者に対して「言うべきことを言えない」から間違った戦争を始めてしまう羽目になった、というのは間違いなのです。

※開戦前夜に至るまでの「軍拡」の流れ(日中戦争の推進や言論統制など)に責任はあるものの、と注釈すべきかも知れません。

戦前の日本の問題は、大日本帝国憲法や治安維持法をはじめとする非民主的な法規制のせいではなかったなどと言ったら、治安維持法の犠牲になった(ソ連共産党のスパイではない)良心の日本共産党員や反戦運動家の方々やそのご遺族からお𠮟りを受けることでしょう。申し上げたいのは、ファシズムという点で言うならば、ソ連やナチスドイツのそれらは日本とは比べ物にならない次元のものであったということと、米国にすらファシズムは存在していたということです。

米中に挟まれて極東情勢が流動化するなかで、日本としては、呑気に遠いところの話をしている場合ではないかも知れませんが、世界全体で見ると、いま一番緊張をしているのはウクライナ情勢です。

ウォールストリートジャーナルは、プーチンの出方次第では、ヨーロッパは1940年代以来の地上戦の舞台へと成り下がるかも知れないと報じています。

この記事、というか、長めの論稿には、面白い写真がフィーチャーされているのです。なんと、プーチンとゴルバチョフが額をくっつけてひそひそ話をしている写真です。


ゴルバチョフ元大統領とプーチン現大統領ー蜜月と批判

今年の3月で91歳になるゴルバチョフ元大統領は、現在では、権力集中へと邁進するプーチン大統領を批判するご隠居です。しかし、遡ること1991年、ゴルバチョフ氏の側近たちによる同大統領暗殺計画が企てられます。プーチンは、当時、ゴルバチョフ氏の民主化政策を助ける立場で、同氏夫妻を救出、クーデターは未遂に終わります。ゴルバチョフ大統領の政治改革は行き過ぎであり、このままでは、ソ連が崩壊してしまう、よって同大統領を失脚させなければならない、というのがこのクーデターの大義でした。

このクーデターが成功していたら、ソ連は崩壊していなかったのか?それはわかりません。事実は、クーデターは失敗したものの、ゴルバチョフ氏は大統領を辞任せざるを得なくなったというものです(この経緯は複雑)。

ウォールストリートジャーナルの記事は、ソ連崩壊は、モスクワから48.5%の人口と41%のGDP、そして米国とならぶ世界の二大国というステータスを奪ったという描写から始まります。

ゴルバチョフ氏が、ソ連という巨大組織の崩壊と自らの政治生命の終焉というリスクを賭してまで何故改革をあきらめなかったのかについては、ざっくりですが、

①自身の貧しかった少年時代に家族が体験した理不尽なスターリン粛清、

②スターリン批判を旗印としたフルシチョフ書記長の下での抜擢と昇進、そして

③昇進すればするほど身に染みたソ連共産党の「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」組織風土

と読み取れます。

ところで、ロシア通ではない私には実にピンとこないのですが、ロシアはもはや一党独裁ではありません。そのなかで、現在は、プーチン大統領による事実上の独裁が進んでいるわけです。エリツィン大統領退陣後の2000年代は、ゴルバチョフ元大統領が隠居するわけもなく、社会民主主義政党を立ち上げては失敗し、という繰り返しをしていました。その間、プーチン大統領との関係は良好で、発言力のある(とは言えソ連を崩壊させたということで基本不人気であるが)好好爺として基本はプーチン大統領を支援していました。添付の写真はそんなころのもののようです。

実はスパイとしては出来が悪かったプーチン氏???

クーデターから救出してくれた恩人を一転して批判しはじめたのは2010年代からのようです。これはプーチンがロシア憲法における大統領の3選禁止規定を潜脱した(首相になったり大統領に戻った)り、選挙不正(?)をしたり、というのが元凶のようです。それでも、ウクライナ問題では、むしろ悪いのは米国でありNATO側であると一貫しています。

あらゆる戦争がそうであるように、結果的に勝ったほうも負けたほうも「義」があるわけで、われわれはだいたいは日本語か英語の報道しか見ないので、ウクライナを火薬庫として第三次世界大戦が起こるとするならば、きっと独裁者プーチンに対して誰も「言うべきことを言わない」ロシア側が悪いのだろうと考えてしまいます。

プーチンの粛清が、ゴルバチョフ大統領時代よりも前に(とは言え、スターリンほどひどくはなくてブレジネフ程度か?)逆戻りした感はあり、それがリスクであることは間違いなさそうです。

実はさきほど、ウォールストリートジャーナルの記事は、ソ連崩壊が20世紀最大の地政学上のカタストロフであるとして国民所得と人口の半分を失ったところから書かれ始めていると言いましたが、正確には、プーチンがベルリンの壁崩壊の瞬間は東ドイツにKGBのスパイとして駐在していたわけだが、スパイとしての評価は「リスクを過小評価する」出来の悪いスパイだったという記録がある、というところからはじまっています。要するにこの記事は、プーチン大統領が、もともとリスク感覚の疎い出来の悪いスパイ出で、ジョージア、アゼルバイジャン、ウクライナ(南オセチア、クリミア・・・)と紛争をしかけていくなかで、米国やNATO陣営のリアクションがそれほどでもないという経験値を積み重ねて、今日の危機に至っているのだという分析なのです。

確かに、司馬遼太郎先生も、デビュー作にして忍者小説の決定版「梟の城」で、主人公葛籠重蔵の描写において、忍者の辞書には「まさか」という語彙があってはならない、ということを書いておられた気がします。もしかしたら「関ケ原」の島左近だったかも知れません。


2012年3月15日木曜日

ゴールドマンサックス退職社員の捨て台詞

チャールズ・チャップリンの自己評価としては最高傑作だったという「殺人狂時代」という映画。不世出の映画監督 兼 喜劇俳優 兼 ・・・・ が「赤狩り」に遭い、ハリウッドを追い出されるキッカケになったともされる作品の最後の部分で、死刑台に登る主人公が発する言葉が、

「一人殺すと殺人犯、百万人殺すと英雄、、、」

One murder makes a villain; millions a hero.

というものです。

いまでは代表的な構造不況業種となってしまった証券業界や商品先物業界ですが、かつては大儲けした時代もありました。その時代に巡り逢っていたかったとは必ずしも思わないし、またその時代も、方法も、業種、規模、個社によりけりで、決して一括りにしようとは思いません。

が、ある時期、あるカルチャーを共有していたグループは、証券と先物共通の「方法」を濫用してきたこと(で資本蓄積に成功したが、いまはそれを食い潰しているだけであること)を多くの経験者や内部者が認めていると思われます。今様に格好良く言えば、ビジネスモデルの一種なのかも知れません。

良くもあしくも投資家の自己責任というカルチャーが根を下ろしていない我が国では、自称人権弁護士の動きもあり、立法行政の対応も早く、このようなビジネスモデルは殆ど死に絶えています。

それはそれで良かったのだと思いますが、何故それが世界規模で行われていると無罪放免なのか、否、それどころか就職人気ランキングも含めた超セレブ企業と崇め奉られるのか、ここ5~6年腑に落ちない状態でした。

そこに来て、今朝飛び込んできたニュースが、題意の告発文。悪徳資本主義批判はニューヨーク・タイムズの真骨頂です。
http://www.nytimes.com/2012/03/14/opinion/why-i-am-leaving-goldman-sachs.html

この内部告発か外部告発かの端境とも言える動きに対して、ゴールドマンサックスの対応の状況をウォール・ストリート・ジャーナルが報道しています。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304692804577281252012689294.html?mod=WSJ_hp_us_mostpop_read

日本のメディアもこの時間帯それぞれ取り上げていますが、一番早かったのはコチラのブログか。
http://markethack.net/archives/51808686.html
きょうのブログのテーマである「マペット」とは何ぞやを動画で解説してくれています。

ちなみに、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中でも、「マペット」の解説がありまして、

"Muppet" is a British slang term for "idiot" and is sometimes used on Wall Street trading floors to denigrate an opposing trader.

英国の俗語で「馬鹿な奴」を意味し、しばしばウォール街のディーリングルームで売買相手となるディーラーを指して(つまり自分が売りたいものを買ってくれる相手に対して)使われる

とのことです。
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2011年12月21日水曜日

オリンパスの次ぎは野村証券か

粉飾、損失飛ばし、株価急落、、、という話では必ずしもありません。

某スポーツ新聞の見出しみたいで恐縮です。

日本のメディアが、何故か、躊躇して取り上げなかったオリンパス問題を白日のもとに曝した月刊「ファクタ」が、次にメスを入れた巨大金融機関の話です。

http://facta.co.jp/article/201201020.html

いまでこそ、新聞・テレビ等、旧来型メディアも大きく取り上げるようになってきていますが、蟻の一穴をこじ開けたファクタに対する評価は、内外から著しく高まっています。

その鋭い舌鋒が向かった先が野村証券などであることは、日本だけではないにせよ、ディーラー・ブローカーのビジネスモデルの劣化がいかにすさまじいかを物語っています。単に、リーマン買収が失敗だった云々という、時の運の話ではないのです。

それにしても、オリンパス問題、例えば日経新聞もかなりキャッチアップしてきているとはいえ、①財テク失敗による損失額、②M&Aを使った損失繰延規模、③現時点での粉飾額が、どう読んでも整合的に理解できないのは、きっと鋭意書いていらっしゃる新聞記者の方々としても忸怩たる思いに違いありません。

つまり、まだ奥のほうに、開き切っていない扉があると推定されるのです。
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2011年11月25日金曜日

FX攻略.com2012年1月号が好評発売中

先月のいまごろ、このブログで嘘をつきました。

「ことりFX」サービススタートを記念して、連載開始からのコラムを毎日このブログで御紹介して参ります、、、と書きましたが、続けるのを忘れていました。

お詫びついでに方法を変えまして、発売と同時に半年前の記事をブログで振りかえりたいと思います。

ただいま発売中の1月号では、自動売買が特集されています。そのなかでわたくしのコラムはしつこく欧州危機をフォローしています。

それでは、7月下旬に発売された9月号のコラムから・・・

「ブログの更新と異なり、雑誌への寄稿というのは、1ヶ月後に書店に並ぶときまで鮮度を保っていたいと思うと、何を書いていいのやら、たいへん頭を悩ませるものであります。


永田町の政局も、菅総理への不信任決議否決の前後あたりからは、1ヶ月先はおろか、1日先のことすら、内部の人間ですら読めなくなりました。

FX業界でも、この1ヶ月で、随分多くの会社が廃業、身売りを発表しました。わたしは数年前からじわじわと業者の数が減るだろうと予想していたので、この時期になっての業界再編の加速は、やや予想外だったと言わざるを得ません

(ただし最後に申し上げるように、わたしはFXは「成長産業」だと思っています)。

しかし、多くの日本人の心の内側を正直に問えば、ここ最近で最も予想外だったことは、政局の不透明でも、FX業界の不透明でもなく、日本で発生した深刻な原発事故で、かつての同盟国であるドイツとイタリアで相次いで、原発の撤廃が決定したことではないでしょうか。特にイタリアでは、電力輸入国ながら、国民投票で定足数を満たしての多数決可決という点に重みがあります。

ファシズムの敗北というレッテルを貼られた日独伊のうち、特にイタリアでの現象について「集団ヒステリー」と呼んだ自民党の二世議員がいました。百歩譲って、世界史上で最も進んだ民主国家という形跡を持ちながら全体主義に陥ったドイツとイタリアに「集団ヒステリー」の気質が全くないとは言いません。しかし、震源地であり爆心地でもある日本で、どうせ不透明な政局なら、原発を政局にしない道理はあるでしょうか。

既存の大政党や大企業に与して仕事を続ける以上、この国では、どんなに優秀な人間でも、自分の何処かを誤魔化し続けて不完全燃焼のまま人生を終えるしかない構造なのです。その腐りきった構造とて、守ることの利益のほうが壊すことの利益より大きいと集団的に盲信している限りびくともしないことを「失われた20年」は証明しました。が、今回の地震はそれを許さないと思っています。金融界の端くれであり、それほどの政治力を持たないFXの世界ではありますが、わたしは次世代の金融産業の柱になるべく、これから先大きな進化を遂げていくと確信しています。フェニックス証券は、「この時期、これほど前向きな投資をする会社が他にあろうか?」と思える程の企画をFX分野でもこれから進めて参ります。」

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2011年11月11日金曜日

讀賣新聞、オリンパス、大王製紙

TPP協議に参加か否か、イタリアやスペインの国債は何処まで暴落するのか、プロ野球日本シリーズもいよいよ明日開幕じゃないか、ということで、一億総国民が固唾をのんで見守っている中で、くだらない内輪もめの話がとんだ邪魔ものとして闖入してきたものです。

それにしても、オリンパスや大王製紙で論点となっている「ガバナンス(企業統治)」とか「内部統制(インターナル・コントロール)」とか「コンプライアンス(法令順守)」という言葉、企業社会ではこの20年で随分使われやすくなりましたが、わかりやすく説明するのは容易ではありません。

読売巨人軍の清武代表が、讀賣新聞主筆で同球団の取締役会長でもある渡邊恒雄氏の言動が内部統制とコンプライアンスの観点から許されないとする単独会見(@文部科学省)が、多くのメディアをにぎわし、またネット上でも瞬間沸騰の話題となっています。

わたしは渡邊氏については、日本共産党出身の改憲派であり、権力闘争が得意な大連立支持者であり、TPP賛成のリバタリアンである程度の知識です。そもそもがアンチ巨人なので、特段好感を持っているわけではありません。しかしながら、清武代表が涙を流して行なった言動は、わざわざ大手メディアや一般大衆の耳目を集める価値のない、上司に梯子を外されたことによる愚痴に過ぎません。

プロ野球がどうあるべきかというのは価値観の問題です。落合監督続投支持という意見を持ちながら現場(≒部下)の意見に譲歩した中日ドラゴンズの白井会長の態度が「ガバナンス」なのか、資本の論理または人事権に基づいて有無を言わさない渡邊会長こそがむしろ「ガバナンス」なのか、、、これだけ考えても、上述のように「ガバナンス」とは何かを論じるのは簡単ではありません。

オリンパスと大王製紙は、株主から委任を受けている筈の経営者、実は同じような関係にあると考えるべき(だとわたしは思っている)少数株主と大株主との間の利益相反の問題で第一義的には処理すべきなので、これは金額の問題はさて措くとしても、立派な「ガバナンス」問題であり「コンプライアンス」問題であります。

上司部下の関係のいざこざという、サラリーマンが新橋の立ち飲み屋で憂さ晴らしする程度のことを、やれガバナンスだ、やれコンプラだと言って、霞が関から全国ネットで憂さをまき散らすというのは大新聞の企業文化を引き摺る奢りであると言えます。

ただ、そのような非常識な大人を育ててしまう組織にはやはり理由があります。読売新聞社の歴史をひも解くと、資本主義下の民間企業とは思えないようなスターリン粛清を彷彿とさせる権力闘争が連綿と続いているのです。オリンパスの巨額粉飾と同様、冷戦終結とIT革命から20年以上経って、大手メディアの伏魔殿にやっとサーチライトが照らされたということになります。

・・・いや、そういうことではなくて、野田総理による「TPP協議参加決定」というニュースの取り扱いを小さくさせて目立たなくさせてあげよう、という配慮のために、讀賣グループの首脳陣が演じた猿芝居だというのが真相だ、、、、というのであれば、民主党のガバナンスは見上げたものだと思います。
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2011年11月9日水曜日

オリンパス問題とTPPで、日本はますます良い国になる!

オリンパス社内で歴代経営者の申し送り事項とされてきた粉飾決算というパンドラの箱を勇敢にも開けてしまい解任された外国人社長と、その腐った木箱の蓋が崩れて座る場所を失った歴代日本人経営者たち。

どちらが賢くて、どちらが馬鹿であるかという二者択一では真実は見えてきません。どちら側も等しく合理的な行動の結果であるという前提に敢えて立って考えるべきです。

「経営者」とか「社長業」という職種が転職可能な労働市場インフラが整備されていれば職業能力に自身のある人は、オリンパスの例に照らせば、過去の不正を暴く行動に出るでしょう。

幹部候補生が社内の競争に勝ち抜いて経営幹部へと出世していったとしても、そこで証明された彼らの能力が、転職可能性を必ずしも押し上げないという事象は、何もオリンパスだけに限ったことではないでしょう。日本的経営の要素が色濃く残っている上場企業の殆どで起こりうる問題であると考えられます。

このブログでは「失われた20年」とは言うが、失われて良かったことのほうが多いと繰り返し申し上げて参りました。オリンパス如きに20年も掛ったのは失笑物ですが、大手金融機関の法人営業とは何だったのかということも含めて、獲物は決して小さくないと思います。

そこから一挙に飛躍して、TPPに反対を(すべくして)している農協や日本医師会などは、映画「ラストエンペラー」に出てくる清朝末期の宦官の有象無象であるとまで言い切るつもりはありません。が、どのような業界に属するにしても、自分自身の行動指針に自信を持ち、それにしたがってきっちり競争するという真摯なプレーヤーにとっては、開国(「Open the door!!」)を叫ぶほうが、ガラパゴス状態に甘んじるよりも、メリットが大きいのです。
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2011年11月4日金曜日

パパンドレウ首相が開けたパンドラの箱

いまから2年前、2009年の流行語大賞は「政権交代」でした。1955年の結党以来となる自民党の大敗は、その当時は必然であり、民主党は、高速道路無料化や子ども手当や農家への戸別補償を持ちだすまでの必要はなかったのではないかと思っています。

ましてや、普天間問題をや、であります。今となっては懐かしい鳩山当時首相の「故人献金」は身から出た錆として、普天間問題にスポットライトを当てたのは、政治家にしては正直過ぎて馬鹿をみたとも言えます。

自民党の悪政の責任をボランティアとして引き受けてしまった問題という意味でも、原発問題と普天間問題は同列です。

原則として世襲政治家(の割合の多さ)を徹底批判してきた七転び八起きブログですが、逆にしばしば重要な例外的存在があることを御紹介して参りました。ポリティカル・ダイナスティ(政治王朝とでも訳すべきか)の末裔でしか出来なさそうな、教育、資力、正義感の三拍子が揃ってはじめて出来るリーダーシップというものもあるのでしょう。

実は、いま渦中のパパンドレウ首相も、親子三代に亘るギリシャ首相経験者の、その三代目です。

ウィキペディアの日本語サイトが不完全であり、また翻訳も酷いので、ここには英語サイトを掲載します。上から、祖父、父、御本人です。
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou_(senior)
http://en.wikipedia.org/wiki/Andreas_Papandreou
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Papandreou
余りに長い話となり、映画で言えば「ラスト・エンペラー」や「ゴッド・ファーザー」を超える上映時間を要するようなものですが、無理矢理要約すると、

★祖父は第一次世界大戦前後に親ドイツの皇帝に反逆して暗殺されかかった首相経験者、

★父もその反骨精神を受け継ぎマルクス経済学者としても優れた功績を残したやはり首相経験者、

★そして渦中の本人は全ギリシャ社会主義運動という野党党首(2004~)として2009年の総選挙で政権交代を果たし、その直後に全政権の負の遺産である財政赤字の粉飾を摘発、このことがギリシャ危機の発端となり、下野した新民主党と有権者たちの信任を失って今日に至るというわけです。

すべてのケースで等しく同情するわけではないですが、鳩山民主党の普天間、菅民主党の福島第一原発、だけでなく、オリンパスも然り、古く(もないが)を辿れば日本長期信用銀行や日本債権信用銀行にしても背任的なレベルまで不良債権を作りだしたり粉飾したりしたときの経営者ではなく、それが発覚したときの経営者が刑事罰に問われた(現在は無罪の差し戻し判決が確定済)ことをも彷彿とさせます。

パパンドレウ首相が、6割の債務カット案の条件として突きつけられている緊縮財政案を国民投票に問うという行為に対し、「いまさら何を馬鹿な」とついつい反応してしまいがちですが、申し上げた経緯と切り口からは、また違った感想が浮かび上がると思います。

それにしても、かつてはイタリアやフランスなどでも一世風靡したユーロ・コミュニズム(西欧版共産主義)が一律大きな政府を目指したのに対して、パパンドレウ首相がギリシャというボロ車の運転席に就いた途端に、小さい政府を目指して不人気を買わざるを得なくなっていたというのは、皮肉なものです。
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MF Globalとギリシャは根っこが同じ!?

MF Globalが、倒産する2年も前から、債務の残高を偽って公表していたことが判明したと、ただいまウォールストリートジャーナルが臨時ニュースで伝えました。

同様の粉飾をしていたことが明るみになって欧州から世界を震撼させているのがギリシャです。

その粉飾のお手伝いをしていたのがゴールドマン・サックス。ブローカー・ディーラーの域を超えて、博打で利益を嵩もうとしていたMF Globalの社長も同社の出身。

決してわたしはユダヤ系金融が諸悪の根源だという理論に与する立場ではありません。我が国の大手金融機関の体たらくを見ていると、いまだに彼らに学ぶ点が多いことに驚かされるからです。

しかし、失敗事例を研究すると、リーマンブラザーズもMF Globalも、利益作りの中身は、ミセス・ワタナベ流の初歩的なキャリートレードと本質的な違いがない ことがわかります。
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2011年11月2日水曜日

MF Globalの倒産が、リーマンショックよりもショックだった理由

えっ、負債総額では、クライスラーよりは大きいが、リーマンブラザーズよりは小さいではないか。何がショックだ。。。と思われるかも知れません。

MF Globalとは、18世紀にイギリスで設立された老舗のヘッジファンド「マン・フィナンシャル」がデリバティブ専門のブローカー・ディーラー部門を会社分割+株式公開して出来た米国籍の会社です。我が国ではFXアジアという会社を買収して、MF Global FXA証券と社名変更して、FX会社を運営していました。

MF Globalのサドンデスのニュース(とMF Global FXA証券の業務停止までの短時間の紆余曲折と)相前後して、我が国の上場証券会社が殆ど何処も赤字転落、赤字拡大、という四半期決算を発表しました。

リーマンショックという大舞台の上の主役たちは、投資銀行と呼ばれつつも、実際は「投資する銀行」に過ぎなかったことを露呈したわけですが、それは以前からわかっていました。

今回の主役は、ヘッジファンドから切り離されたブローカーが、実はもっと桁違いの儲けを狙って自らもヘッジファンドに変貌したまま大失敗したということです。

フェニックス証券もブローカーの端くれですから、いかにこの事業が薄利多売であるか は身に沁みています。

御存知のFXの世界は勿論、株式のリテール市場も、インターネット取引と手数料の自由化で、従来のビジネスモデルは壊滅寸前です。

先日、長年お付き合いのある不動産業者さんと未公開の中古アパートを見に行きまして、その帰り道、西武池袋線の急行のなかで、「駅前の不動産屋さんの数は減りませんね。インターネット取引も限界があるし、手数料は守られているからでしょうか。広い意味での金融サービスのなかで対面分野が最後まで残るのは不動産仲介なんでしょうね」という話をしたら「いえいえ、楽ではありません。3%という手数料は、案件が決まる確率を考えると本当に僅か。いちど買取と転売に手を染めてしまうと、仲介だけでやっていくのが馬鹿馬鹿しくなってしまうのです。しかしキャピタルゲインを楽に得られる時期もあれば、逆もある。そのときは金融は引き締めですから、倒産する。長く地味にやっている会社は、如何に転売の(利益幅の)魅力というか誘惑と闘えている経営者がいるということですね」という意味深長な答えが返ってきました。

MF Globalのケースは、経営者ゴザイン氏が誘惑に負けたどころか、最初から古巣のゴールドマンサックを見かえすべく、自ら誘惑にのめり込んだ結果でした。

話があっちこっちに飛びましたが、わたくし個人にとって、MF Globalの倒産が、よりショックだったのは、ホールセール=自己売買も駄目、なのに加えて、リテール=自己売買も駄目、というのが、この時期、世界中を見渡して観察されることです。

ただし、ショックと書きましたが、実は嬉しい開き直りでもあります。いま、わたしは、リテール・ブローカー業務をはじめて、7年目になってしまいましたが、最初は勝手が判らず、また、中小のブローカーが大手のブローカーに対抗出来るかどうかという分析も十分できずに始めてしまっていました。

システム、ブランド、コンプライアンスコスト、お上とのパイプなど、スケールメリット(平たく言えば中小では太刀打ち出来ない要素)があるのではないかということです。

事実、リテール業務初心者の頃は、大手の決算と比べて、収益率がだいぶ違うので、自分の知恵の無さなのか、不可抗力なのか、随分悩んだものでした。

MF Globalの倒産や大手証券の赤字転落、赤字拡大は、「なあんだ、この人達には敵わないと思っていたのは、ビジネスモデルを企画立案実行出来る能力ではなくて、ミセス・ワタナベと大差ないキャリートレードの分だけだったのか?」ということを知らしめてくれた点では、良いショックでした。

しかし、悪いショックでもあります。MF Globalのケースで顧客資産の分別が出来てなかったことが尾をひいています。リーマンのケースでは、銀行間市場が機能不全となりホールセールの側か金融制度が崩落しました。今回は、リテールの投資家が、分別保管(我が国のFX業界で言えば信託保全も含まれます)そのものを疑うようなことが起きてしまっており、これはシステミックリスクがじわじわと現れ、さらなる市場縮小の覚悟をしなけらばならなくなるかも知れません。
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2010年5月31日月曜日

リーダーの賞味期限

みずほ、JAL、そして日本
このようなタイトルの論説が各種メディアを賑わすのもそう遠くない日かも知れない鳩山首相の周辺であります。勿論、このブログの趣旨は、鳩山首相の退陣を煽ることではありません。「“政権交代”があったにもかかわらず、、、」という言い方を敢えて控えましょう。“出身政党”は違うのに(元は同じ?)、安倍、福田、麻生、そして或る程度の確率で鳩山と、賞味期限が1年の内閣(総理大臣)が4回も続くかも知れないという《絶望的既視感》は、もはやリーダーひとりひとりの個性や、政党の組織や人材の問題など、特定の原因に帰することが出来ない段階にまで来てしまっております。

メガバンクで言えば、みずほグループ。事業会社で言えば、日本航空。これらの病理が経営者一人の力ではどうしても治癒も切除も出来ないのと同じように、この国の政権中枢もまた、そこ自身の問題だけでなく、選挙制度や国民の気質、そのどうしようもなく低い民度に迎合することでしか生き延びることが出来ないビジネスモデルを知っていて続ける大手マスコミの揚げ足取りと出る杭を悉く打つ戦略、これらのドロドロとした総竦み状態に陥っており、これを断ち切らなければ日本航空と同様に国家が墜落するという危機感と実行力を持つ人材は、そういう性格故に、たとえ政治家を志したとしても、なかなか首相の座までには至ることができない構造にあるわけです。

大統領制、または首相公選制、なら、、、否、少なくとも全国区かつまたは比例代表制を重視すれば、と単純に主張するものではありません。

絶大な支持率を誇っていた英国ブレア首相とポンド相場
拙書“為替力”で資産を守れ のなかでソフトブレーン創業者の宋文洲さんが「安倍さんも福田さんも1年で辞めても日本は大丈夫だ。と思われるから、平気で辞められるんだ。。。日本は世界でも稀な『鼓腹撃壌』を謳歌している住みやすい国だ」という趣旨の発言をしておられます。いつまでそんな天下泰平が保たれるかという問題はありますが、宋文洲さんとの対談の内容には一理あります。圧倒的かつ持続的な人気を背景とした強力な個性のリーダーが、一見眩(まばゆい)い政策を続けた結果、取り返しのつかない禍根を残すという話が、ここのところ私のブログでご紹介した舞台演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」で描かれておりました(英国の「新」労働党政権下で進められた「歪んだ」市場原理主義と金融依存、、、それに、演劇の範囲外ですが、イラク戦争も無縁ではありません)。

議員内閣制の英国ですらそうです。トニー=ブレアとゴードン=ブラウンの組み合わせで「17年連続の経済成長を果たした」(上掲「ザ・パワー・オブ・イエス」)英国は、ピーク時のポンドが対円で250円にも達し、円貨換算でロンドンの地下鉄の初乗り運賃が1000円を超えるという、常識で考えれば何か変という状態から、現在為替は「半値」近くになっているのです。英国経済の実態は、南欧経済が他人事と言えない深刻な状況です。

まして、米国の大統領制を真似て、力強いリーダーシップを、と単純に唱えれば良いというものではありません。

鼓腹撃壌と古代ギリシャ
日本の民主主義は、その最も醜いところ、リーダーの支持率下落で御祭騒ぎをすることしか脳のない「衆愚」と大胆な政策が一切取れない「事勿れ主義」が竦み合っている状態であるが故に、致命的に間違った政策も実行されない・・・世界で何か激震が起こると必ず円高になることと無関係ではありません・・・日本円は政府がこれだけ借金をしていても、金利を生まない金(ゴールド)と同様、金融ショックでは最も好まれて買われる「通貨」の位置を確実にしています。

日本はこれから先も、没個性のリーダーを一年毎に更迭し続け、衆愚と事勿れ政治にどっぷり漬かって天下太平をエンジョイして行けるのかどうか?これが難しいところです。今話題のギリシャは、言わずと知れた古典古代に於ける民主主義の原点です。つまりそれは衆愚政治の原点でもあり、それゆえ共和制の崩壊と多民族による支配を経験したのち、近現代のヨーロッパ大陸の中でも、国家の独立と民主政治を勝ち取るまでに最もエネルギーを要した国のひとつに陥ったと言えます。この因果関係は些か強引ですか、現在の日本に住む我々が最も重視しなければならない教訓のひとつでしょう。
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2010年5月7日金曜日

ザ・パワー・オブ・イエス

平均寿命が3年乃至4年との説もあるインディーズ系オペラの主催者たちに翻弄されている(?)身分としては、設立30周年が間近という劇団「燐光群」の気骨に感銘を覚えます。その「燐光群」が来週5月10日(月)から東京・下北沢ザ・スズナリで(追って大阪~名古屋とロードショー)、先月まで英国National Theatreで好評を博していた演劇「ザ・パワー・オブ・イエス」を上演します。

http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next.html

劇団「燐光群」からのメッセージの一部を御紹介します。

「2008年9月、リーマン・ブラザーズ破綻から始まった未曾有の経済危機は、世界中に広がりました。日本でも企業倒産、失業者増加など、今なお私たちの生活に影響を及ぼしています。・・・アメリカの投機家ジョージソロス、元金融庁長官ハワード・ディビス等、劇作家デイヴィッド・ヘアーに直接取材を受けた金融界の大物たちが劇中人物として続々登場、「世界金融危機で何が起こったか」が語られます。またヘアーの助手としてナショナル・シアターに雇われた女子大生を通じて、英金融サービスの誕生と成長、崩壊の過程を辿ってゆきます。・・・ヘッジファンドの投資を熱狂的に支えた「ブラック・ショールズ方程式」についても知ることが出来ます。経済危機について視覚的、感覚的に捉えることを可能にした、ジャーナリズム演劇の新しい成果と言えるでしょう」

リーマンショックは良くも悪くも「七転び八起きブログ~為替力」の原点です。これをメインテーマに据えるという難しくも丁寧な作業を施した戯曲が、金融依存経済の治癒に手を拱くロンドンでロングランを成功させ、劇団「燐光群」の創設者であり演出家でもある坂手洋二さんの手により日本語上演されるのが、奇しくも、ギリシャショック、否、シティショックの直後の来週からというのも不思議な縁であると思われます。

私も来週、出張等の合間を縫って、下北沢まで観劇に赴くつもりです。感想は改めてブログにアップさせていただく所存です。

チケットのおもとめは、まず会員登録から。
https://www.e-get.jp/rinkogun/howto/rule.html

または、お電話にて、、、
燐光群/(有)グッドフェローズ 〒154-0022 世田谷区梅丘1-24-14 フリート梅丘202
TEL03-3426-6294 FAX03-3426-6594
rinkogun@alles.or.jp
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2010年3月5日金曜日

【おまけ】宋文洲さんとツイッター

「大」への決別、「大」の敗北

拙書「“為替力”で資産を守れ!」で対談のお相手として御参加くださいったソフトブレーン創業者の宋文洲さんが、かの田原総一郎さんとの“共著”で「中国人の金儲け、日本人の金儲け。ここが大違い」という本を上梓されました。

宋文洲さん御本人は、出版社側に押し切られた営業目的のタイトルが少々お気に召さないようですが(笑)。

今朝、配信された宋文洲さんのメルマガによると、このような内容の本です。

「売上げにこだわると必ず利益率が悪くなる。規模にこだわると必ず顧客視線が薄れる。AIG、シティバンク、GM、JAL、そしてあのトヨタでさえ。第二位の経済大国にこだわる限り産業構造の転換が難しい。」

「100年に一度の金融危機が多くの人々に反省の機会を与えてくれました。当然私も例外ではありません。3年前の自分が信じていたことの多くはすっかり変わってしまいました。その反省を込めて「より大きな会社、より大きなシェア、より大きな儲け」という「大」へのこだわりに警鐘を鳴らしたいと思っていました。」

更に、田原総一郎さんのまえがきより・・・

「中国は人口13億以上の大国、しかも歴史的な常識からすれば頭が固いはずの共産党が独裁を続ける国である。にもかかわらず、国や企業の決定に至るプロセスが恐ろしく速く、変化への対応がきわめて機敏だ。何事も後手後手に回る日本とは大違いである。」

「なぜ、日本人と中国人は、かくも違うのだろうか。そんな疑問を抱き、答を探しているとき、私は宋文洲さんと出会った。・・・ソフトブレーンは、2000年に東京証券取引所マザーズ上場、04年に東証二部上場、05年に東証一部上場と、祖国の発展を先取りする急成長ぶりだ。しかも宋さんは、一部上場を果たした翌年1月1日付で取締役会長になり、同年8月末にはそれも退いてマネージメント・アドバイザーになっている。こんな発想をする日本人経営者は、ちょっと思い当たらない。」

「宋さんの主張の一つは、日本あるいは日本人は「大」にこだわりすぎていないかということだ。」

タイトルに御不満の宋文洲さんの「つぶやき」

「皆さん、どう思います?。このタイトル→「中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い」。田原総一朗さんと出した本ですが、タイトルが出版社の拘り。営業しやすいという。」

この宋さんのつぶやきに対して、あるフォロワーは「品が悪い」と一言返事していましたが、七転び八起きの返事は以下の通りです。

「大(企業の終身雇用)にこだわるのは中国人との違いというよりは、いまや日本(の中途半端なホワイトカラー)だけに残された痕跡器官なのでは。とくに、公務員、金融、組立加工業のような分野で、その弊害は臨界点に達していると思います。」

一回あたりの文字数が140字までなので・・・

「 スミマセン。もうひとつ重要なのを忘れてました。記者クラブという既得権益に縋る巨大メディアも、です。 」
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2009年11月6日金曜日

我が国のMVP

松井秀喜選手のワールドシリーズMVPと並んで、日本人を元気にさせるかも知れない記事が英エコノミスト誌にあります。

「見えづらいが不可欠-かけがえのない部品を世界中に供給しつづけてきた日本の中堅中小メーカー」
http://www.economist.com/displayStory.cfm?story_id=14793432
日本の強みは「もの作り」だなどと永年言われてきましたが、ブランド力で世界に勝負してきた東証一部上場の巨大企業の多くが、その組み立て加工技術の陳腐化に悩み続ける中、一般人には殆ど知られていない部品の性能の高さ、そして多くの場合驚くべきシェアを誇りつつも社名すら知られていないケースが多々見られる中堅中小の「サプライヤー」にこそ、日本の強さがあったという記事。しばしば日本を取り上げてきた同誌ですが、日本関連の記事のなかでこれまでで最も優れているという論評もあります。緻密なフィールドワークに快哉。

さて、モラトリアムやら商工ファンドの相次ぐ倒産で、中小企業金融はこれからどうなるのでしょうか?
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2009年7月29日水曜日

リーマン売却の“立役者”が野村証券を去る

昨年9月に破綻したリーマン・ブラザーズ。そのアジア部門の最高責任者を永年務め、野村証券への売却をアレンジした(注)のち、野村アジアの会長として野村の経営陣の一角を担ってきたジェシー・バタル氏が辞任すると英FT紙が報じました。

FTによれば、実態は野村証券によるリーマン系役員の排除の動きだとしています。

同じ話題に基づき、米WSJ紙は「野村証券、世界戦略でまたしても躓き」と題して、次のように野村とリーマンの文化の違い(の統合の難しさ)を揶揄しています。

「4月に始まった野村ホールディングスの新人研修は、男性と女性に分かれて行われる。女性組の中には、破綻前のリーマンで採用されたハーバード卒も含まれるが、髪の毛の束ね方や、お茶の出し方、季節ごとの制服の着こなし方なども教えられている・・・」

昨秋、野村が買ったモノは、リーマンの8150人に及ぶ人材だったとすれば、その後の数多のバンカーの離職、給与水準の違いにおける野村社員の憤慨(部門長レベルで野村は年収2500万円に対し、リーマンは何十億円との説も・・・中日ドラゴンズのブランコ《推定年俸2700万円》と読売ジャイアンツの李承ヨプ《同 6億円》以上の理不尽な開き!?)などに起因する大規模リストラへの転換は、任期切れを迎えるどこかの国の首相答弁よろしく、ちぐはぐの一言に尽きます。

昨日以降、米国発のM&Aのニュースには実は事欠かないのです。IBMがSPSSを買収、Sprint NextelがVirgin Mobile USAを買収、そして極め付けが今朝のMicrosoftとYahoo。こちらは昨年来七転び八起きブログでしつこく追い回しております通り、敵対的買収は失敗だったわけですが、焦点であった検索エンジン分野での統合(Googleへの対抗軸形成)へ向けて大きな一歩を踏み出したようです。

我が国大企業による内⇒外M&Aが一部の例外を除きうまくいかない理由は何でしょうか?
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(注)FTの原文はArchitect of Lehman salesリーマン売却の“建築家”

2009年6月2日火曜日

【東京証券取引所】第三者割当に対する新たな規制案

「七転び八起き」が前々職で大変お世話になった弁護士の吉村龍吾先生が、“第三者割当増資”規制案(by東証)を送ってきてくださいました。
東京証券取引所における第三者割当に対する新たな規制案の概要
このレポートのなかで、特に印象に残ったのが、「大規模希釈化や支配権の移転が取締役会レベルの判断でこれまで容易に行われてきたことに対する重大なメッセージ」とのコメント。ハゲタカなどの強欲こそ、米国発金融危機の戦犯だと溜飲を下げている場合では、少なくとも株主の利害を無視した保身の取締役会にとっては、ないことを意味しております。
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2009年5月26日火曜日

米大統領、韓国防衛の「絶対的コミットメント」保証

日本語ロイター
米大統領、韓国防衛の「絶対的コミットメント」保証

「コミットメントを“保証”する」というのは、婚約を破棄しないと約束するみたいで、頭痛が痛い日本語ですが、それは措き、絶対的ではないコミットメントとは何でしょうか?

「“相対的”コミットメント」なる言葉は熟していないでしょう。ところが、銀行取引の世界では存在したのです。前々職、モルガンスタンレーで社債引受営業の頃、仕事の実態は企業財務の皆さまへの御用聞でしたが、或る日、仲良くしてくださった事業会社の財務の御担当から御相談。曰く、「とある邦銀からコミットメントライン(いざとなったら金を貸すので、日頃より手数料を払え!という契約)の不招請勧誘(要りません、買いません、と抵抗しているのに、しつこく営業すること)を受けているんです。しかもそれが『いざとなっても金を貸さないが、手数料は払って欲しい』という“商品性”らしい。こんな商品はあり得るのか?丹羽さん、契約に応じるべきだと思いますか?」という問い合わせを受けました。

暫く、貸出営業から遠ざかっていた私は、恥ずかしながら直ぐに返事が出来ず「そのような偽装コミットメントラインは金融庁も許さないと思いますが・・・調べて折り返します」と、時間を頂きました。調べれば直ぐ判ることですが、『いざとなっても金は貸さないが、“名前”は貸すんだから、見ヶ〆料(みかじめりょう)は寄こせ』という優越的地位の濫用ビジネスは有り得たのであります。

お客様のためどころか、寧ろ自分が勉強になった「“相対的”コミットメントライン」のお陰で、この事業会社さんからは爾後沢山の主幹事案件を頂きました。

「“相対的”コミットメントライン」の存在を、銀行業界の優越的地位の濫用の問題だと矮小化してはなりません。このような偽装コミットメントラインを有価証券報告書等に開示することは粉飾であり偽計であります。銀行以外のステークホルダーからの調達を低廉安定化するために、銀行は経済的対価を得て、粉飾偽計を教唆または共犯していることになります。証券会社が教唆する仮装払込と一緒の罪。
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2009年4月22日水曜日

フレディマック現役CFOの自殺

複数の米紙の報道によれば、自殺であることは明らか(自殺偽装の他殺ではない)らしいですが、動機原因については究明途上とのこと。

CFOに就任したのは、(ファニーメイと並んで)事実上の不正融資や尋常ではない額の不良債権が発覚して連邦政府管理下に置かれた後の9月の話。ただし、外部から招聘されたCFOではなく、同公社の財務経理の生え抜きであった点は、自殺原因と大きく関わるのかも知れません。

理由が何であれ自殺は良くない、とは倫理上の正論。しかし、自殺する人に悪い人は居ない、悪い奴ほど良く眠るというのもまた真理であります。「七転び八起き」同様、アラフォーの早すぎる死に、足元の根拠なき円安株高では読み取れない米国金融の恥部を垣間見た気がします。
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2009年3月30日月曜日

解雇理由、正社員と契約社員の違い、

★米グーグル、人員削減計画発表もなお新規採用へ(日本語ロイター)

グーグルは26日、200人の人員削減を発表したばかり。また、1月には正社員100人を削減。さらに、2月にはラジオ広告事業からの撤退で40人を削減すると発表。

リストラ対象部門は、広告と営業。検索機能連動型の広告(アドワーズ)や、コンテンツマッチの広告(アドセンス)はWEB2.0の看板的存在でしたが、金融危機の影響を被った点では、紙媒体や地上波テレビと五十歩百歩なのか。無論、この50歩の差は大きいのですが。

さて、週初のテーマはWEB2.0とかネット広告の話ではありません。上記ロイターの記事に「正社員」という言葉が使われております。「正社員」とは何でしょうか?

話題のグーグルの検索窓に「正社員」と入れると、「正社員 契約社員 違い」という組み合わせが450万件と関連キーワードの中で検索件数がトップだと表示されます。世相が如実に読みとれます。そこで複数の上位サイトの解説をまとめてみると、正社員とは?

★雇用契約で雇用期間を定めない契約
★とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められ、また、辞めたいときにはいつでも辞められる

「とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められるんだ」と何となく認識しているが根拠は不明で心配だとおっしゃる大企業サラリーマンの方々に最近頻繁にお会いします。そこで今度は、同様に「解雇」でググってみますと、「解雇とは」「解雇理由」が合わせて470万件以上も検索されており再び世相が表れております。

就業規則違反の「普通解雇」や「懲戒解雇」については省略します。問題は「整理解雇」、すなわちリストラ目的の会社都合による解雇が、どの程度罷り通るのか、です。

我が国の大企業正社員は終身雇用制度に守られていると一般に思われている根拠は、恐らく1974年判例

「企業に人員整理の必要が高度に存するにも拘わらず、整理解雇という手段に訴えることを極力制約しようとする論理は、解雇に先立ち、出向・配置転換・任意退職の募集・一時帰休その他解雇回避のための努力を最大限に要求し、この点に不徹底がある以上解雇を許さないとするものである。」(S54.7.31岡山地裁「住友重機玉島製作所事件」)

で確立(!?)された『4条件』

①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)

ではないかと考えられます。ただし、判例“法”はこれだけではないようです。検索結果を遍く調べた限り、大阪労務管理事務所(所長 三嶋道明先生)の頁が最も充実しているように思えました。

さて、これら4条件が終身雇用の根拠だとすると、「年俸制採用企業や外資系企業は終身雇用ではない」との思い込みも怪しくなります。現に、最近では未曾有の整理解雇の嵐が吹く外資系金融機関においては本国の労務管理担当にとって想定外だった訴訟沙汰が多発しているそうです。

本題に戻すと、大企業サラリーマンは勿論、企業経営者の問題意識は、この判例“法”における「高度の経営危機」の解釈でしょう。破産等は良いとして、債務超過、部門閉鎖、営業所統廃合などでは多少疑義があります。まして、

赤字が巨額かつ構造的で業績回復の客観的な見込みが立たず「継続企業疑義」が注記される程だが、過去の内部留保のお陰で債務超過には至っていないケース

では、「高度の経営危機」だと太鼓判を押してくれる法律事務所は少ないでしょう。

構造不況の業種や企業のリストラがスピーディーに行われないことは、正社員天国=日本の底力を蝕むだけでなく、やる気のある正社員が無用の閉塞感に晒されてしまう。正社員VS契約社員という構造だけではないのです。

法律(強行法規)が弱者を助けているように見えても実態は無意味だという点で、旧法借地法借家法と似ています。借主(=弱者)の保護を目的としていながらも、貸主としては「簡単に追い出せないのなら、簡単には貸さない(=定期借地借家より高い家賃を取る)」気分にさせる程度の法律効果しか見込めなかったという厳然たる事実を、原則旧法踏襲に拘り借地借家法改正を骨抜きにした1992年当時の野党は真摯に反省すべきです。

今朝の日経新聞5頁の山田昌弘中央大学教授「大企業の採用は30歳からに-有能な若者は中小企業へ」という論稿も、同じような問題意識に由来するアイデアだと思われます。
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2009年2月3日火曜日

BNPパリバ・ショック、再び

●資金流出の懸念-中国(2/2ITH)
中国国民が海外送金で資産を逃避させる動きや、中国国内に投資していた海外資本が一転引き揚げる動きが加速していると報じています。

●出稼ぎ農民の7人に1人が失業-春節後の中国(2/2FT、IHT、WSJ、日経)
暴動が起きてもおかしくない状態だとFT紙。社会不安が、資本逃避の一因だとは上記IHT紙。

資本逃避の最大の犠牲者は、東欧や中央アジアかも知れません。

●カザフスタン、国内最大の銀行を国営化へ(2/2FT)
国営化後、ロシアの国営貯蓄銀行への売却も検討だとか。本件で解任される銀行の会長は、野党立ち上げに関与したり、汚職の疑惑で、7年前に逮捕された経験を持つ。銀行会長復帰後も、政治活動は禁止されていたとか。

いわゆるBNPパリバショック(2007年8月)の時点では、カザフスタンの銀行全体で450億㌦以上もの海外資本を調達していたそうです。理由は、国内の預金や借入よりもコストが安かったから。昨年12月ひと月だけで、海外資本の引き揚げと預金の取りつけ騒ぎ、そしてやむを得ず進んだ貸し剥がしで、カザフスタンの銀行全体で1.54億㌦の純損失を招いたとされます(上記国営化のために投与される公的資金は20.6億㌦)。

BNPパリバと言えば、

●不正利益没収へ-アーバン問題で日証協、過怠金10億円超も(2/3日経)
業務改善命令に留めた金融庁よりも自主規制機関の処分のほうが厳しくなった点に、日経は着目。

ちなみに、私の着目点は「外部検討委員会という仕掛けまで作ったのに、金融庁の業務改善命令を免れなかったのは、●●●●の力不足だ」とトップを批判する下々の金融リテラシーの低さ。過怠金云々ではなく、かつてのシティバンク同様、日本から退場命令が下される程度の悪質な事犯だという認識は、証券六法を読んだことがあるかないかの問題ではなく、証券会社の役職員として肌で感じなければいけない常識。実行犯本人は論外として、そこに牽制すべき法務、監査のイノセンスこそ、セレブな勤務環境や報酬に値しない。
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2008年12月8日月曜日

スパゲッティ・ジャンクション

為替市場と株式市場の誰もが最も注目している米国ビッグスリー救済の行方。ウォール・ストリート・ジャーナルは意思決定へと向かう米国議会と同政府の揺れ動きを刻一刻と報じています。

まず、

●クライスラー、倒産は待ったなしとして、弁護士を雇う(12/5WSJ)
公的資金導入による救済は議会を説得できそうにないと、数週間前から動いていたとの憶測。

次いで、

●米ビッグスリー救済、米国議会の民主党首脳陣と共和党政府が暫定合意近し(12/6WSJ)
米国雇用統計が予想外に悪化。これが追い風になったか!?2009年初頭までは破綻を回避させるべく緊急の融資で「死刑執行猶予」reprieve?

ところが、

●デトロイト救済、一転足踏み(12/7WSJ)
自動車業界のリストラを監視する"auto czar"(自動車界の皇帝?)の採用とその役割について議会と政府で揉め始めたと。

同紙は『スパゲッティ・ジャンクション』と題する囲み記事で、デトロイトへの処置策として考えられる5つのオプションとそれぞれに立ちはだかる障害について整理しています。
①暫定的に2009年初頭まで破綻を回避するために申し出予算を絞って資金提供する⇔長期的かつ構造的な病理を何ら解決するものではないと共和党が反対
②エコ自動車開発のために250億㌦融資枠を開放する⇔融資枠の本来の趣旨に反すると民主党議員が反対
③「金融安定化法案」の予算枠を活用(財務省の裁量で温存するのではなく、議会があれこれに使えと命令出来るようにする?)⇔財務省はそれなら予算枠をそれなりに増やせと議会に要求するだろう・・・
④FRB連邦準備銀行が直接ビッグスリーに融資をする⇔FRBは猛烈に反対
プレパッケージ型倒産処理を米国が支援⇔デトロイトと民主党は反対

ちなみに『スパゲッティ・ジャンクション』とは、首都高の箱崎ジャンクションや阪神高速の阿波座ジャンクションより更に入り組んだ英国バーミンガムのジャンクションに付けられたあだ名。航空写真で上から見ると、冷めかけたスパゲッティがフォークに絡んだようでなかなか解(ほど)けない姿にも見えます。

さて、上記報道にも引用されていた12/5(金)の米国雇用統計。非農業部門雇用者数が1ヶ月で533,000人も減少したのは1974年以来。この年は、我が国でも店頭からトイレットペーパーが消えた第一次石油ショックです。戦後初めてマイナス成長を記録した日本は、石油ショックからの立ち直りでは米国を遙かに凌ぐスピードで、1985年のプラザ合意までの間に、日本的経営の卓越性、すなわち米国と異なり労働組合が産業別ではなく企業別なので不況期に労使交渉(労資交渉)が柔軟に行なわれる点が優れているという論説が支配的でした。労働組合が企業別で柔軟であることと終身雇用と年功序列の両制度は表裏一体をなすものです。では、今逆に、石油ショックからの立ち直りを遅らせたとも非難される米国の産業別労働組合というのは何処にあるのでしょうか?勿論、自動車や映画業界にはあるのでしょうが、ITやハイテク業界にあるという話を聞きません。

世界金融危機に米国発という枕詞が付こうが付くまいが、日本的経営の卓越性などは遠の昔に無くなっています。非正規労働だけを景気変動のバッファーにするべく、中流正社員が見た目だけ労使に分かれ既得権益にしがみついているだけという現象が、かなりの大企業や官僚的組織で観察される限り、超長期的にはやはりこの国は円安株安は免れないと考えられます(短期的には米中のダーティフロート前夜にあり極端な円高があり得ますが・・・)
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