★米グーグル、人員削減計画発表もなお新規採用へ(日本語ロイター)
グーグルは26日、200人の人員削減を発表したばかり。また、1月には正社員100人を削減。さらに、2月にはラジオ広告事業からの撤退で40人を削減すると発表。
リストラ対象部門は、広告と営業。検索機能連動型の広告(アドワーズ)や、コンテンツマッチの広告(アドセンス)はWEB2.0の看板的存在でしたが、金融危機の影響を被った点では、紙媒体や地上波テレビと五十歩百歩なのか。無論、この50歩の差は大きいのですが。
さて、週初のテーマはWEB2.0とかネット広告の話ではありません。上記ロイターの記事に「正社員」という言葉が使われております。「正社員」とは何でしょうか?
話題のグーグルの検索窓に「正社員」と入れると、「正社員 契約社員 違い」という組み合わせが450万件と関連キーワードの中で検索件数がトップだと表示されます。世相が如実に読みとれます。そこで複数の上位サイトの解説をまとめてみると、正社員とは?
★雇用契約で雇用期間を定めない契約
★とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められ、また、辞めたいときにはいつでも辞められる
「とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められるんだ」と何となく認識しているが根拠は不明で心配だとおっしゃる大企業サラリーマンの方々に最近頻繁にお会いします。そこで今度は、同様に「解雇」でググってみますと、「解雇とは」「解雇理由」が合わせて470万件以上も検索されており再び世相が表れております。
就業規則違反の「普通解雇」や「懲戒解雇」については省略します。問題は「整理解雇」、すなわちリストラ目的の会社都合による解雇が、どの程度罷り通るのか、です。
我が国の大企業正社員は終身雇用制度に守られていると一般に思われている根拠は、恐らく1974年判例
「企業に人員整理の必要が高度に存するにも拘わらず、整理解雇という手段に訴えることを極力制約しようとする論理は、解雇に先立ち、出向・配置転換・任意退職の募集・一時帰休その他解雇回避のための努力を最大限に要求し、この点に不徹底がある以上解雇を許さないとするものである。」(S54.7.31岡山地裁「住友重機玉島製作所事件」)
で確立(!?)された『4条件』
①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)
ではないかと考えられます。ただし、判例“法”はこれだけではないようです。検索結果を遍く調べた限り、大阪労務管理事務所(所長 三嶋道明先生)の頁が最も充実しているように思えました。
さて、これら4条件が終身雇用の根拠だとすると、「年俸制採用企業や外資系企業は終身雇用ではない」との思い込みも怪しくなります。現に、最近では未曾有の整理解雇の嵐が吹く外資系金融機関においては本国の労務管理担当にとって想定外だった訴訟沙汰が多発しているそうです。
本題に戻すと、大企業サラリーマンは勿論、企業経営者の問題意識は、この判例“法”における「高度の経営危機」の解釈でしょう。破産等は良いとして、債務超過、部門閉鎖、営業所統廃合などでは多少疑義があります。まして、
赤字が巨額かつ構造的で業績回復の客観的な見込みが立たず「継続企業疑義」が注記される程だが、過去の内部留保のお陰で債務超過には至っていないケース
では、「高度の経営危機」だと太鼓判を押してくれる法律事務所は少ないでしょう。
構造不況の業種や企業のリストラがスピーディーに行われないことは、正社員天国=日本の底力を蝕むだけでなく、やる気のある正社員が無用の閉塞感に晒されてしまう。正社員VS契約社員という構造だけではないのです。
法律(強行法規)が弱者を助けているように見えても実態は無意味だという点で、旧法借地法借家法と似ています。借主(=弱者)の保護を目的としていながらも、貸主としては「簡単に追い出せないのなら、簡単には貸さない(=定期借地借家より高い家賃を取る)」気分にさせる程度の法律効果しか見込めなかったという厳然たる事実を、原則旧法踏襲に拘り借地借家法改正を骨抜きにした1992年当時の野党は真摯に反省すべきです。
今朝の日経新聞5頁の山田昌弘中央大学教授「大企業の採用は30歳からに-有能な若者は中小企業へ」という論稿も、同じような問題意識に由来するアイデアだと思われます。
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