2009年6月9日火曜日

クライスラー売却処分、米控訴院が正式に停止措置

先週から取り上げてきましたクライスラー=フィアット問題。暗礁に乗り上げた事案について、過去記事に振り返っていただく際の“道標”として、些か強引ながら、「ステーク・ホルダー勝ち負け表」を作ってみました。
               担保付債権者  無担保債権者  株主  労働者(組合) (参考)同業他社
私的整理(既に却下)     ×       ×       ○      ○        ×
法的整理(更生案)      △       △      ×      △       △
法的整理(清算案)      ○       ×       ×       ×       ○

同業他社を(参考)としたのは、ステークホルダーとは通常言われないからです。この「勝ち負け表」で○を2点、△を1点、×を0点とすると、どの案でも合計点は4点になるので、要は分配の問題だということがハッキリわかります。社会厚生とモラルハザードのバランスを取るには、どれが相応しいのか?GM問題も視野に入れつつ、米国は政治と司法の鬩ぎ合いという局面に移りました。

その中で、米FRBには利上げ観測も浮上。「七転び八起き」のドル高調整説は間違ったか?
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2009年6月8日月曜日

クライスラーへの暗雲と雇用統計の好転?

先週、お伝えしたフィアット=クライスラーに「ちょっと待った」を掛けたインディアナ州の年金基金。米国控訴院は、「不良債権を安く買い叩いた筈だったのに、足が出た」ために、怒り心頭の同投資家の主張、(営業権のフィアットへの売却)処分禁止の仮処分を認めるという判断をしました。

既報の通り、フィアットは6/15(月)まで処分禁止仮処分が続いていれば、クライスラー購入を敬遠することが出来ます。世界中で54,000人(うち米国内で38,000人)を雇用するクライスラーの受け皿が消えてしまっては、クライスラー清算による雇用へのインパクトは部品メーカーを含め深刻で、オバマ政権が描いた処方箋を脅かす試金石だとWSJ紙は改めて報道しています。

同紙は、クライスラーで発生した「しゃっくり」はGMにも移る可能性があり、事態がより複雑になると予測すると同時に、リストラおよび財務立て直し先行のおかげで旧ビッグスリーのなかで唯一生き残ったフォードは、思わぬ「国営自動車」(Government Motors)の出現で競争上劣勢に立たされる恐れありとも論じています(但し、ゴールドマンサックスの分析は、フォードはGMが喪失したシェアの25%を獲得すると見込む)。

ドライバーを振り回した結果、どんなに左右の深いラフに打ち込んでも、ボールがフェアウェイにまで転がり落ちてくるゴルフ場では、飛距離だけでなく球を真っ直ぐ飛ばす技術を磨いた真摯なゴルファーは馬鹿を見るでしょう。雇用のセイフティネットを声高に叫ぶのは、米国の政権も、日本の野党も似たようなものですが、果たして自動車産業以外の衰退産業と公平に扱おうとしているか冷静に問う必要があります。

ところで、金曜日の雇用統計。NFPRは予想ほど悪くなかった、減少幅が縮小しているということで、ドル高、株高。しかし、雇用主申し出ではなく個人家計から集計した失業率のほうは9.4%と1983年以来の最悪数値。どちらが真実か?というよりも、減少幅縮小で喜んでいる市場参加者は、速度と加速度との区別がつかない人達か?(不動産は動きだしましたが)ドルと株式は一旦売りを推奨。
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2009年6月4日木曜日

FXレバレッジ規制と「ベター・レギュレーション」そして『大証FX』

明日、大証FX参加のための「登録の種別の変更」の申請に行って参ります。取引所FXを取り扱うには、第一種に加え、第二種の金融商品取引業者でなくてはならないのです。

金融庁と言えば、先日の佐藤長官の記者会見
http://www.fsa.go.jp/common/conference/com/2009a/20090601.html

FXについてだけでなく、今日の我が国金融の様々な綻びを走馬灯のように味わえる秀逸なオムニバス。レバレッジ規制に対して、「ベター・レギュレーションという観点から如何か?」という記者の質問への回答の中に、金融ビッグバン(特に、証券会社の登録制と外為法改正)以来の“正流”と逆流、そして国会議員と民間金融ブローカーという登場人物との舞台のうえで狂言回しを演ずる監督当局の思いがジワジワっと読みとれます。
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2009年6月3日水曜日

フィアット=クライスラーに「ちょっと待った!」

一昨日の「七転び八起き」ブログで、クライスラーがフィアットへの事業売却で早くも連邦破産法11条保全命令が撤回される見通しだとお伝えしたばかりでしたが、フィアットにとって飛んだ邪魔者が現れました。WSJ紙の臨時速報によると、「『伊フィアットへの事業売却』を軸とした連邦破産法11条によるクライスラー再生案」に異議申し立てをしたのは、インディアナ州年金基金のグループ。教職員の退職金の運用その他を預かっている大口債権者曰く、「自分たちの額面42百万㌦のクライスラー向け債権は担保付なのに、配当が額面比たった29%とは。。。無担保債権者の代表格、UAW=全米自動車総連が債権カットの見返りに新生クライスラー株を割当られるくらいなら、担保付債権者の配当を増やすべきだ」と。

この事案は、プレパッケージ型(受け皿フィアットを事前に用意しておく)倒産ですら、モラルハザード回避という点では万能ではないという、倒産法の難しさを抉っています。

我が国で言えば、倒産法には、破産法、民事再生法、会社更生法や会社法(特別清算)等、数あれど、担保付債権者が倒産手続きとは独立して担保物件を任意に売却できない(別除権が認められない)のは会社更生法だけ。(共益債権その他の問題を無視すれば)、担保付債権者の配当が100%に満たない限り、無担保債権者の配当は0%。その原則を曲げてでも、関係者協議により破綻企業の再生課題を優先するだけの社会的な意義があるかどうかは一概には断定できない問題です。

尤も、こちらのインディアナ州教職員組合のハゲタカ様、「クライスラーには再生の価値が無い、破綻による清算にすべきだ」という正論を吐いておられるというよりは、2008年7月に誰かしらから購入した債権(@額面の43%)が、29%に留まる配当だと大損が確定するので往生際悪く抵抗している、ということのようですが・・・

伊フィアットは、今月15日までに“更生終了”することが受け皿(スポンサー)になってあげる条件だとしているので、本件異議申し立てでゴタゴタが長引けば、GMのごとく、“法的な無法状態”になりかねません(尚、無法状態とは言い過ぎ。11条申請が受理されており、債務者クライスラーの占有の下、米国財務省が資金供給を行なっているわけですが、同ハゲタカ教職員組合は「金融機関でもないクライスラーへのDIPファイナンスにTARP(金融安定化法案の7000億㌦)を流用するのは違法だ」とまで罵っているようです)。

ところで冒頭、「フィアットに思わぬ邪魔者が・・・」と書きました。実は、邪魔者のお陰で再生計画が“御破算”になって、それでもクライスラーを買いたくてしょうがないという状態であれば、暖簾代は寧ろ安く収まるのかも知れません。本当の邪魔者は、「トヨタならもっと高い暖簾代を払える。プレパッケージは不公平だ」と待ったを掛けること。今更それはないでしょうが、或る程度はブラフが可能。我が国では東ハト倒産の事例で、プレパッケージされていたユニゾン・キャピタルが再入札の結果、事前譲渡価額より48億円をも上回る負担を強いられるという珍事がありました。否、資本主義たるもの、それが普通で、長銀(⇒瑕疵担保条項で悪評のリップルウッド)のときには誰ひとり「ちょっと待った!」が現れなかったのは何故でしょう?
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