2008年9月22日月曜日

モルスタとGS、銀行へと業態転換【号外】

●モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス、投資銀行から伝統的銀行持株会社への業態転換をFEDが承認(9/22WSJ)

ウォール街の歴史に終止符と、ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えるのは皮肉。しかし、感傷は兎も角、銀行免許でFEDの融資枠も確保されました。日本時間10時40分頃のWSJ電子版で、この臨時ニュースが流れるのと平仄を合わせるかの如く、一部のカウンターパーティで、スワップ水準が正常化に動き始めております。先週、木端微塵に崩壊したFXのフォワード市場、修復に向けて大きな一歩。キャリー・トレード派のお客さま、いま暫くお待ち下さい。
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銀行にお金を預けるな、とは言いたいが・・・

●リーマン倒産、メリル身売りから一週間―商業銀行も危険な住宅ローン債権を抱えていることを忘れてしまうのは簡単なことだが・・・(9/22WSJ)

先週末金曜日の筆者ブログ夕刊でお伝えした指摘がWSJ紙に見事に“逆流”。何故、シティグループやUBSは標的にされない理由は、単に、規模の大きさと(保険付きの銀行預金という)退屈ho-humだが頼り甲斐のある調達手段だ、と。投資銀行に対する商業銀行の優位性は零細預金をビジネスに使えることだ。あのワシントンミューチャル(WaMu)ですら、今年に入ってから預金レベルは殆ど増減していない(驚き!)。

それでもなお、単純な銀行業務plain-vanilla bankingがウォール街危機の万能薬cure-allとはならないだろう、と同紙。「株式を売る横で自動車ローンも取り扱う」金融版スーパーマーケット、その典型例がシティコープとトラベラーズグループが合体したシティグループだが、約10年間の実績が示すようにパッとしないと手厳しい。

但し、WSJ紙は「退屈な調達手段に頼れない」投資銀行が可哀想だと主張しているわけではありません。レバレッジの負の側面がモルガン、ゴールドマンを傷つけていると語っています。具体的には、レバレッジ比率(純資産に対して金融機関のリスクが何倍になっているか)は、メリルリンチで28(5年前は15だった)、モルスタは33、GSは28(以上UBS調べ)。
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2008年9月19日金曜日

カインの末裔であってはならないモルガン家【夕刊】

米国発住宅バブル崩壊(リーマン・ショック?ブラッディ・マンデー?)が第一次大戦後の世界大恐慌以来の深刻なものだとの声が高まってきています。

1929年10月24日の「暗黒の木曜日」。その後3年間で米国は工業生産が37%減。銀行の破産は4500行を超え、失業者数は1930年には300万人、33年には1500万人に達したそうです(山川出版社「詳説世界史研究」463㌻)。このような状況のもとで成立したのが1933年銀行法、いわゆる「グラス・スティーガル法」です。

我が国の証券取引法第65条(現 金商法第33条)の範となったこの法律は、銀行と証券の分離を規定したもの。この規制強化により、JPモルガン(現JPモルガン・チェース・“ベアスターンズ”)からモルガン・スタンレーが分離独立することになります。

現在、銀・証分離が残っているのは日本くらいで、版元の米国は既に規制緩和されており、JPモルガンはかなり前から証券業務に参入しています。破綻寸前のベアスターンズを(2㌦で)買収できたのも、規制が緩和されていたからです。

昨日のブログ、♂♀性の起源♀♂で「単細胞生物も危機が迫ると合体する」ことを書きました。現在の米国の銀行大手と証券大手。財務がどちらが悪いのか?定量的な判断は出来ません。情報の正確な開示は事実上不可能でしょうし、格付機関も当てに出来ませんから。しかし、実態の評価とは関係なく空売りに仕掛けられやすいのは証券のほう。「有権者の支持を得やすい血税の使い方」という物差しでは証券救済は劣後してしまうと売り方は考えるのでしょう。

かくして破綻を逃れるには証券は大手と雖も、銀行に跪かなければならない風潮になってきました。
今回の騒動の比較対象として言及される大恐慌では銀行と証券が分離させられたのに、今回は結果的に再融合が奨励されてしまわざるを得ないのは、良し悪しは別途論じるとして、皮肉な現象だと感じます。

実際には内容の良し悪しは判別できない“兄弟分”のJPモルガンとモルスタ。本日昼過ぎのWSJで「モルスタCEOのジョン・マック氏が『JPの株式営業がモルスタやGSの株式の客に対して、《証券会社に預けておくと危険だからJPに移し変えましょうよ》という営業手法。これは許されない。今すぐやめてくれ』とJPのCEOに殴り込み」との記事がありました。JPはマック氏の懇願を聞き入れ、「今後このようなことが発覚したらJPを首にする」と社内を粛清。以降はトラブルはないそうです。

わたくしたちFX業者、ひいてはFX投資家の皆さまにとっては、銀行・証券の区別なく、世界の大手金融機関は業績の浮沈とは無関係に必要不可欠なインフラ。毒入り餃子のような風説の流布や相場操縦を乗り越えて欲しいと願っています。

最後にFXの話。弊社に限らず、またカウンター・パーティとしては、モルスタに限らず(ここ重要)、フォワードのマーケットは木端微塵に崩壊しており、非“常識”なスワップレートをお客さまに返さざるを得ない状況が続いております。改善を期待しつつも、良くも悪しくもインターバンク市場に直結し依存しているフェニックス証券のビジネスモデルとしては出せる条件をお出しするということに徹しさせてください。

不動産不況でマンションが売れないのは自己責任かも知れないけれど、登記簿が信用できなくなる(ってことはないと思いますが、極端な話・・・)等の混乱で誰しもが売買を手控えるような惨状は自己責任の範囲を超えて、業者にとっても投資家にとっても不可抗力であり、あってはならないこと。FXも同じ。インターバンク市場のインフラがまさしく“極端な話”になっているところ健全を取り戻してもらい、銀行自らが箪笥預金しないように、早ければ来週初には立ち直って欲しいものです。
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AIGは留守番電話

昨日は日本証券業協会「代表者セミナー」~「全国証券大会」。全国の証券会社の社長が一同に会する年に一度の会議は、毎年9月中旬に開かれます。証券業協会の支部長さんに「大変な時期の開催になりましたね」と挨拶すると、「毎年この時期は鬼門なんだよ。9・11直後だったこともあるし。期末前で相場が荒れていることも多い。ようこそお越し下さった」と。

証券業界の大先輩にも挨拶。聡明で何事にも一家言を持っておられる尊敬する社長さんから「丹羽くんの為替の相場観を聞きたい。休憩時間にちょっとコーヒーでも」と誘われ、10分間の集中討議。

「リーマンが助けられなかったことも驚きだったし、AIGが助けられたことも驚きだった。」と大先輩に告白。「しかし大事なことは、

☆『公的資金⇒金融システム救済』=ドル買い材料

★『自己責任原則⇒金融機関倒産』=ドル売り材料

という経験則を鵜呑みにすると危険ではないか。」

時間的制約から政治上の意思決定が間に合わない金融支援は、財政政策と金融政策が一体不可分となって行なわれる。平たく言えば、ドル紙幣が好きなだけ輪転機で擦られるのと同じこと。インフレによる生活水準低下という経路での実質増税が米国民に強いられる方向は、明らかにドル安材料だ。

ご質問くださった大先輩の証券会社は外貨建て債券を売りまくってらっしゃったらしく、円高要因を心配しておられたが、私の説明に納得。市場は私の捻くれた論理に直ぐには与しないだろうが、時間の問題だろうと。

こんな話をしていたら、北浜で親しくさせていただいている社長さんから、「丹羽さん、日銀がFRBとドルのスワップ6兆円を発表して、一気に円安ドル高になったよ」と携帯を見ながら教えてくれた。

分不相応のデカい家を買った借り手と貸し手の責任を問わずに究極のディープポケット中央銀行が自ら印刷したお札で代位弁済してあげたら、第一次大戦後のドイツよろしくリヤカーに山済みされた紙幣の束を想像してしまうのは私だけでしょうか?金が一瞬反発したのは理解できます。原油も通貨機能はありますが、金地金のように箪笥において置けないのが難点!?しかし「すべての金融活動=信用創造は不毛で虚業だ。金本位制に戻して一から出直しだ」という議論も万能ではありません。何故、ニクソン大統領が金⇔ドル交換を停止せざるを得なかったのか?覇権国家だったスペインが銀本位制を悪用し、アステカ文明とマヤ文明を蹂躙して安い銀を還流させることで(当時はハイパワードマネーじゃ無かった筈の)マネタリーベース自体を膨張させ、インフレを起こし、自国の製造業の競争条件を優遇。「価格革命」は15世紀のダーティ・フロートに他ならず、これにより北ドイツ経済圏は衰退してしまったのです。バブルの起源はその後短期間で覇権を奪うオランダのチューリップより遡るのです。

政治経済の教科書だけでケインズの乗数理論とマネーサプライの信用想像を理解するのは高校生にとっては頗る難しいこと。高校生の皆さん、センター試験のうえでは不利かも知れませんが、是非とも政治経済と世界史を選択してください(教科名、変ってますか???)

最後に、AIG。やっと電話が繋がったかと思ったら、応対は録音テープだけ。「親が潰れても、子は大丈夫ですから、契約はそのままで」ですって。潰れても潰れなくても良いから、もうガン保険は解約したいんだけど、どぉすりゃ良いんだろうぉ(TT)
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