2008年12月10日水曜日

FXで運用して高配当を約束します!

●米イリノイ州知事をFBIが逮捕―オバマ次期大統領に票を売った疑いで(12/9WSJ)
昨夜深夜0時30分のウォール・ストリート・ジャーナル紙のスクープを、我が国の日本経済新聞も今朝の朝刊に間に合わせている程、重大な事象。オバマ次期政権に打撃とは、まさにその通り。

自由と可能性の国を象徴する黒人大統領の誕生でしたが、オバマ次期大統領の最大の武器はやはり資金力であったことは否定できません。私の調査不足のせいでしょうか、米国において例えばブッシュ現政権であればネオコンだとかキリスト教原理主義であるとかWASPエスタブリッシュメント等々が選挙基盤なり財政基盤としばしば言われます。ではオバマ氏の財政基盤は何なのか?具体的な顕著な谷町筋は見当たりません。

まさか、FXで大儲けしたわけではないでしょうから。

私は、我が国で小泉政権が「ある意味で」資金力勝負でなくて大衆の熱狂を活用して誕生したという経緯が、21世紀型の議会制民主主義の特徴だとも考えています。強力なリーダーの出現に対するアンチテーゼとしての議会制民主主義が、地域エゴイズムと族議員と財官の既得権益の総竦み状態をもたらした。冷戦終結後、外交上の立ち位置を見失うわ、バブル経済崩壊でも「口に苦し」と良薬を処方しないわ、台頭しつつあったネット社会が遂にしびれを切らしたという構造は無視できません。但し、小泉首相が自民党政権として誕生したことが皮肉にも我が国の構造改革を更に周回遅れにしたと薄々気づいている国民は、今や相当数にのぼるのではないでしょうか。

話を米国に戻しますと、勿論FBIが意図的にオバマ氏に打撃を与えるために遮二無二働いたのか、淡々と任務をこなした結果か、それは私には判りません。言えることは、やはり、現政権の支持基盤からの抵抗がこの期に及んでまだまだ根強いということでしょう。

おまけ
●FX“投資”会社が破綻、社長は音信不通(12/10読売オンライン)
自己責任が売り物のFX、ではなくて、「FXで運用して高配当を出しますから・・・」という無許可の投資運用業だったようです。これで14億円集めたというのですから、たいしたものだ・・・と感心している場合ではなく、淡々とやっているFX“取次”業者にはFXの名前を汚す迷惑な話です。全く、
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2008年12月9日火曜日

日本と北朝鮮は瓜二つ!

●米国議会、デトロイト救済のための150億㌦融資法案の決着に近づく(12/8FT、WSJ)

●ダウ=ケミカル、5000人削減(12/8FT、WSJ)
正社員の11%に相当。加えて契約社員も6000人首切り。米欧で20工場を閉鎖へ。

●S&P、ロシアを格下げ(12/8FT、WSJ)
ロシア通貨“ルーブル”からの資金逃避、原油価格の下落に加え、国内事業破綻回避のために外貨準備が直近5ヶ月で2000億㌦以上費消され、今年7月ピークだった外貨準備高は4000億㌦程度にまで低下したことが原因。BBB+⇒BBB(更に格下げの可能性あり)。

1998年のルーブル危機⇒ロシア国家破綻のときに比べれば、状況は全然ましであるとも注釈。

米系格付け機関に対する当ブログからの批判は、是非過去記事をお読み下さい。ここでは一言、米国のAAA~AAはどうなのかと言いたい。

●麻生太郎、1年以内辞任となる連続して3人目の日本の首相になる可能性大(12/8FT)
ちなみに、2世議員、いや2世首相(含む3世)も連続して3人目であることに皆さんお気づきですか?更にちなみに、2世議員(含む3世)となると、4人連続ですぞ。

日本と北朝鮮、国体は正反対だと皆さんお思いかもしれませんが、国家元首が世襲される点では瓜二つ。尤も、憲法上は内閣総理大臣は国家元首ではないですけど・・・
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2008年12月8日月曜日

スパゲッティ・ジャンクション

為替市場と株式市場の誰もが最も注目している米国ビッグスリー救済の行方。ウォール・ストリート・ジャーナルは意思決定へと向かう米国議会と同政府の揺れ動きを刻一刻と報じています。

まず、

●クライスラー、倒産は待ったなしとして、弁護士を雇う(12/5WSJ)
公的資金導入による救済は議会を説得できそうにないと、数週間前から動いていたとの憶測。

次いで、

●米ビッグスリー救済、米国議会の民主党首脳陣と共和党政府が暫定合意近し(12/6WSJ)
米国雇用統計が予想外に悪化。これが追い風になったか!?2009年初頭までは破綻を回避させるべく緊急の融資で「死刑執行猶予」reprieve?

ところが、

●デトロイト救済、一転足踏み(12/7WSJ)
自動車業界のリストラを監視する"auto czar"(自動車界の皇帝?)の採用とその役割について議会と政府で揉め始めたと。

同紙は『スパゲッティ・ジャンクション』と題する囲み記事で、デトロイトへの処置策として考えられる5つのオプションとそれぞれに立ちはだかる障害について整理しています。
①暫定的に2009年初頭まで破綻を回避するために申し出予算を絞って資金提供する⇔長期的かつ構造的な病理を何ら解決するものではないと共和党が反対
②エコ自動車開発のために250億㌦融資枠を開放する⇔融資枠の本来の趣旨に反すると民主党議員が反対
③「金融安定化法案」の予算枠を活用(財務省の裁量で温存するのではなく、議会があれこれに使えと命令出来るようにする?)⇔財務省はそれなら予算枠をそれなりに増やせと議会に要求するだろう・・・
④FRB連邦準備銀行が直接ビッグスリーに融資をする⇔FRBは猛烈に反対
プレパッケージ型倒産処理を米国が支援⇔デトロイトと民主党は反対

ちなみに『スパゲッティ・ジャンクション』とは、首都高の箱崎ジャンクションや阪神高速の阿波座ジャンクションより更に入り組んだ英国バーミンガムのジャンクションに付けられたあだ名。航空写真で上から見ると、冷めかけたスパゲッティがフォークに絡んだようでなかなか解(ほど)けない姿にも見えます。

さて、上記報道にも引用されていた12/5(金)の米国雇用統計。非農業部門雇用者数が1ヶ月で533,000人も減少したのは1974年以来。この年は、我が国でも店頭からトイレットペーパーが消えた第一次石油ショックです。戦後初めてマイナス成長を記録した日本は、石油ショックからの立ち直りでは米国を遙かに凌ぐスピードで、1985年のプラザ合意までの間に、日本的経営の卓越性、すなわち米国と異なり労働組合が産業別ではなく企業別なので不況期に労使交渉(労資交渉)が柔軟に行なわれる点が優れているという論説が支配的でした。労働組合が企業別で柔軟であることと終身雇用と年功序列の両制度は表裏一体をなすものです。では、今逆に、石油ショックからの立ち直りを遅らせたとも非難される米国の産業別労働組合というのは何処にあるのでしょうか?勿論、自動車や映画業界にはあるのでしょうが、ITやハイテク業界にあるという話を聞きません。

世界金融危機に米国発という枕詞が付こうが付くまいが、日本的経営の卓越性などは遠の昔に無くなっています。非正規労働だけを景気変動のバッファーにするべく、中流正社員が見た目だけ労使に分かれ既得権益にしがみついているだけという現象が、かなりの大企業や官僚的組織で観察される限り、超長期的にはやはりこの国は円安株安は免れないと考えられます(短期的には米中のダーティフロート前夜にあり極端な円高があり得ますが・・・)
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2008年12月5日金曜日

世界金融危機でも忘れてはならない四川大地震

昨日付のウォール・ストリート・ジャーナルが、四川大地震による学校倒壊で子供を失った親達の今を精力取材。その成果を報道していました。

一人っ子政策の中国では、一子を授かった後は男親がパイプカット(注)することが頻繁(注)なのだそうです。四川では“震災による一人っ子政策の例外措置”と国からの義捐金を活用して、パイプカットを原状回復する手術を受けようという男親たちが病院に殺到しているとのこと。

(注)ひんぱん。はんざつではない。
(注)パイプカットはどうやら和製英語で、英語ではvasectomy。「パイプカットを元に戻す」はreverse vasectomy。以上、役に立たない英語講座でした。

何故そこまでして四川の人たちは子供を欲しがるのか?自発的に少子化社会を選択している我が国の常識では思いつかないその理由とは、中国の中でも特に貧しい四川省の農家で良く見かける「頬の赤い子供と財宝」の絵と、「凶作に備えて穀物を蓄えておくのと同じように、老後に備えて子供を産むべし」という諺にあります。この教訓、中国共産党が路上のあちこちに広告を出しているプロパガンダ「晩婚と高齢出産は国家と人民を利する」「少子化は(国や家族の)繁栄を早める」と真っ向対立するもの。年金制度が無いに等しい中国では、老後の財政的な支援は子供に頼るものだという考え方が伝統的に継承されてきたのだと言います。

WSJ紙は、特例を認められたものの、高齢過ぎて時既に遅しという夫婦の嘆き(知人達は「子供が居ないとなると自分達を(借金などを)頼ろうとすると身構え、付き合いがめっきり遠のいた、など)や、以前当ブログでも取り上げた倒壊建築の問題を匿名で訴える親御さんたちのインタビューなども取り上げています。

90,000人近くの犠牲者を出した四川省を中心とする悲劇に対して、中国政府が何も対策を講じていないわけではないが不十分だということ、悲惨な天災が沿岸部の繁栄とは裏腹に、貧困から抜け出せない典型的な地域を襲ったものだったということがWSJ紙の報道の主眼であることは間違いありません。この点、私も一貫して同感であり、国境を越えて助け合う気持ちを持たなければ、そして出来る範囲で実行に移さなければという気持ちでいます(四川大地震等被災者支援チャリティ・オペラ・コンサート【12/28(日)】には大勢のお申し込みを頂いております!本当に本当に感謝です_m(++)m_)。

今回、WSJ紙の切り口で考えさせられたことがありました。「曲がりなりにも」国民皆年金の我が国と、上記の通りの中国を比較することで見えてくるもの。どこの国に生を授かったとしても、人間である限り生産年齢以降は貯蓄を食い潰すか子供(現役世代)に頼るかのどちらかしかない筈。なのに、年金制度が無い中国では子供が居ないと老後が不安。年金制度がある日本では、子供が居ないほうが今もこれからも豊かさを継続できそうな予感。雇用不安に喘ぎながら家族を支える義務感に燃えるお父さん世代には所謂DINKs等は羨ましく映るものですが、これは中国とまるで逆。世代間の所得移転や特にデフレ期における理不尽な世代間格差は、年金制度が無いと家族レベルで生じるところが、年金制度が下手に充実しているとマクロで生じてしまうという、頗る当たり前のことながら、意外なほどタブーで深刻な事実。

子供を産み育てるのは愛玩のため(だけ)でなく投資だという考え方は一理あり、苦労して育てた子供が将来仕送りなどして報いるのは自然。日本の年金制度は、その自然な投資⇒回収という動機を撹乱させ、皆がそうではないにせよ、子供を作らないほうが負担なくして支給に預かれるという動機を起こさせます。ただし、私の持論では少子化は日本の宿命。先進資本主義国のなかでは異例の食糧自給率の低さと外需頼みの日本経済。太平洋に浮かぶ木の葉のような存在から脱却独立し、豊かさを辛うじて維持するためには、一人当たりの耕地面積または耕作可能面積を世界標準まで高めること以外に方法はないと考えています。皮肉なことに、現在の日本の年金制度は、政策意図とは別でしょうが、少子化という日本の宿命を誘(いざな)っているのです。高齢化は副産物ですが。これを年金制度導入という高級な手段でなく、強引な手段でやっているのが中国ということになります。

しかし、問題があります。年金記録云々の話ではありません。これまであらゆる経済事象に対してモラルハザードなど理不尽は許さないという立場で切り込んできた当ブログの立場としては、家族に子供が(沢山)いるかどうか?高齢者の扶養家族がいるかどうか?その扶養家族が独立して生活が出来るか要介護か?生産年齢の世代の人間は、これらすべての条件のうち多くは自助努力で選べずに、理不尽や格差を強いられている(結果は中国モデルと日本モデルとで逆)。こうした不可抗力こそ、政策により大胆に切り込んでいかなければならない(私個人の結論を急ぐと、年金制度を廃止し、生活保護を含む所得分配制度への一元化が答えなのですが、我が国では地球が壊滅するまでこんな天邪鬼な政策は通らないでしょうね)

ところで、我が国には「貧乏人の子沢山」という諺があります。この諺には子沢山だと貧乏から立ち上がれないという上記の中国共産党のプロパガンダと同意見という説と、全然関係なく、貧乏人は暇を持て余しているので●●●という説が拮抗しているようです。後者は「貧乏暇なし」と矛盾しますが・・・「貧乏人の子沢山」はマルサスの人口論に由来し、マルクスに批判されつつも、このように中国共産党の政策として採用されたり、また我が国でも戦前「蟹工船」の小林多喜二が活躍していたころの生物学者であり共産党系代議士の山本宣治も避妊具の普及に熱意を燃やしていたことが知られています。私は、地球環境の問題もさることながら、発展途上国の殆どが食糧自給率が低く経常収支も赤字体質に陥りやすいことを勘案すると、マルサスの人口論はもっと注目されて良いのではないかと思います。繰り返しになりますが、日本も食糧自給率という点では多くの発展途上国の仲間なのです。
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