2009年4月21日火曜日

ジャッキー・チェン発言とチェルノブイリ原発事故

ジャッキー・チェンの「中国人は管理されるべき」発言。波紋を呼んでいる割には、断片的な報道が多く、言論の自由について語っているのか、経済活動や金融ビジネスの自由のことを語っているのか良く判りません。もしかしたら両方なのかも知れません。

ブログや著書を長い間御愛読くださっている皆様は御存知の通り、「七転び八起き」は、必ずしも規制強化が弱者を保護しない限り、経済や金融は自由なほうが良いという考えです。「必ずしも」と書きましたが、「少なからず」と本当は言いたいところ。それでもなお、規制は或る程度必要だという考え方にも一理あることは認めます。

一方の言論の自由については、昨夜お邪魔したチェルノブイリ子ども基金主催フォトジャーナリスト広河隆一さんの最新チェルノブイリ報告会で、その大切さを改めて思い知らされました。

史上最悪の原発事故から25年が経過している現在ですら、甲状腺ガンや骨腫瘍等の被害者、放射能に汚染された土壌などの被害が収まらないどころか、むしろ増えている被害者。そのことを認めたくない国家権力(敢えてここではロシア、ベラルーシ、ウクライナを特定しませんが・・・)は被害者増大を訴える良心的な医師を更迭する。そして何よりも驚いたのが、放射能を大量に含んだ雨雲(所謂「黒い雨」)が人口密集するモスクアにまで襲いかかろうとしているとの予測で、せめて現在のベラルーシの人口閑散地域あたりで被害を喰い止めようとして人口雨を降らせたという事実。政治判断の是非は兎も角、そのことを証言できるパイロットは、インタビュアーであるフォトジャーナリスト広河さんに対し「録音テープを回すのはやめてくれ」と制止したとのこと。

北京オリンピック開会式直前の人口雨、はたまた四川大地震で子どもを失った親御さんが西側ジャーナリストに(学校倒壊は人災だと告発するも)「名前は出さないで」と制止したエピソードと相通ずるものがあります。

加えて、日本人として何とも情けないのが、ヒロシマで原爆からの直接の放射能照射は兎も角、「黒い雨」に打たれた被災者の病気は原爆症とは認められない。『病は気から』だ」と判断した広島出身の医師が、IAEAのチェルノブイリ調査団長に選ばれ、大本営発表を展開したという話。但し、IAEAが原子力に太鼓判を押させたい背景は、世界中の原子力産業を背景としており、旧東側特有の言論統制だけの問題ではないでしょう。

ドイツのように、原発政策で二転三転する国もあります。我が国で原発の是非を民主主義プロセスの中で健康に議論できるでしょうか?「生活水準をウンと下げてでも自然エネルギー依存の社会を作るべきだ。GDP信仰を捨てろ。経済成長なんて気にするな」という強烈なメッセージとリーダーシップを持った政治と行政が必要でしょう。これは必ずしも民主主義と無矛盾ではありません。

原発は安全か危険か?このような二項対立の問題として捉えるならば、広瀬隆さんの言うとおり「東京に原発を」という考え方が正しいでしょう。しかしチェルノブイリの酷過ぎた実態と、例えば東京電力の柏崎刈谷原発のようにあれほど苛烈な地震でも最小限の事故(反論はあると思いますが・・・)に留めた安全設計を、「事故は事故だ」と片づけ同列に扱うのは不当。原発を全面肯定するか全面否定するか、という衆愚的な結論を避けるためにも、言論の自由は必要です。但し、これは多数決が真理であることを必ずしも意味しない。民主主義が衆愚政治に陥り、定義上は否定していなかった筈の言論の自由を自発的に葬ることは歴史上しばしばあります。私は言論の自由の価値を民主主義よりも上に置きます。経済と金融の自由は、その中間?

上述の広瀬隆さんの本は、80年代、書店から消えた(消された)と噂されました。日本にも実は言論の自由がないのだという人に私はしばしば出会います。ところで、拙書“為替力”で資産を守れ!も最近書店で見ないと友人に言われます。そう言えば、「こんなことまで書いて良いの?」という内容を此処彼処に書いてしまったので・・・否、こちらは単なる返品かも知れません(笑)。
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なか見!検索

アスキーさんのご協力を得まして、発売後2ヶ月半経ちました『“為替力”で資産を守れ』「なか見!検索」アマゾン・ドット・コム上で可能となりました。

『為替力』の産みの親であるアスキー・メディアワークスの野口編集長殿、多大なる御手間に心より感謝致します。

「なか見!検索」の開始を祝うかのように、アマゾンの順位も急上昇しているようです。著作権保護コンテンツ「なか見!検索」がどのようなものか、是非ご覧いただきたいと思います。

無料で公開しているのは、目次に続く数ページで「リーマン破綻直後の有名エコノミストの意見」や「金融安定化法案(7000億㌦⇒その後“TARP"という略語が定着)の下院否決」に関する記述。実は『為替力』のなかでは、最もとっつきにくく、最も風化されやすい部分で、この先に面白い箇所が出て来始めるのですが、そこはやむを得ません。

本日、休刊前の最終号として発売のMoney Japanでも大々的に広告宣伝をしていただいております。是非これを機に書店でお手にとっていただくか、アマゾン等オンライン書店でお求めください。
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2009年4月20日月曜日

アメリカ投資銀行の興亡

昨夜は、多くの読者の皆さまの予想通り、NHKスペシャル

マネー資本主義 第1回
“暴走”はなぜ止められなかったのか
~アメリカ投資銀行の興亡~

を視聴。その感想は、当ブログの過去記事の至る処に散らばっていますが、特に番組の感想というと、

☆一生懸けても使い尽せないほどの年収を貪り、寄付するでもなく、立派な豪邸を建てたところで、わざわざ訪ねて来てくれるのは泥棒か“打ちこわし”デモくらい。蓄財することが家族や子供の幸せに繋がるとも思えない、というのが常識人の感覚。

☆逆に言えば、非常識な人間に“暴走”させ、GDPの牽引役を果たさせたところが、米国の凄いところだったのか。日本のメガバンクは、アメリカ投資銀行の真似を出来なかったが、真似をし損なったにもかかわらず、“怪我の功名”にすら預かれていない。

☆ポールソン前財務長官(ゴールドマンの元CEOでもある)がリーマンを破綻と決めたのは感情的に当然。GSに対して身の程知らずの競争を挑んだファルド氏が「優れたCEO」ランキングでポールソン氏を抜きん出たという経緯。

☆リーマン破綻を選べば、出身“母体”のゴールドマンも致命的な返り血を浴びる(公的資金と銀行持株会社化で過度なレバレッジを利用できなくなる・・・等)というシミュレーションと、リーマン破綻という劇薬を提示することで以降は(公的資金利用による無難な金融機関救済策に対して)モラルハザード批判をかわせるというもう一つのシミュレーション。そのような深慮遠謀で米国金融当局の中枢が動いているというのは買い被りかもしれません。

それにしても、レバレッジ競争をやれば良いというものではないというのは現在の我が国FX業界にも当て嵌まるというのは、無理矢理のこじつけか。
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2009年4月17日金曜日

ウクライナ大使館を初訪問

昨日は、ウクライナ大使館の通商貿易代表部ヴァデム・シジャチェンコ通商貿易代表長とお会いすることが出来ました。日比谷線六本木駅から歩くこと10分少々、ウクライナ大使館は西麻布の閑静な住宅街の中にありました。瀟洒な邸宅ですが、広い応接も電気は消えていて、エコというよりは節約していらっしゃるご様子が伺えます(失礼ながら、当方客人であるとは言え、全く皮肉ではありません)。

つい数週間前に来日されたティモシェンコ首相は、麻生首相、与謝野大臣、財界人と殺人的なスケジュールでの面談をこなされたとのこと。その最大の目的は代替エネルギー、特に太陽光など自然エネルギー技術の供与。太陽光パネルの主要メーカーはこぞって興味を示してくれたが、最後はやはり投資やお金の話になると前に進まないと、通商貿易代表長は嘆いておられました。

日本におカネがないわけではない。寧ろ、世界的に見れば、日本には投資余力は集中しているほうだが、それが一部の個人層に偏在していることと、金融機関、事業法人を問わず、サラリーマン組織は信用収縮トレンドを断ち切ってでも投資に前向きになることができないことが問題だと指摘。眠っている個人資産を目覚めさせ、ウクライナの強み(農業・アウトソーシング)を掘り起こすことは、「株屋」改め「直接金融」の役割だと、大見得を切りました。

天下太平の世であれば、このような大それた仕事は、公的にはIMF、私的には大手金融機関の仕事だと思います。わけあってそのようなタイプの法人組織が機能しないのであれば、フェニックス証券がしゃしゃり出ようというわけです。

世界金融危機で加速した新興国からの資本引き揚げで最も被害を被ったのがウクライナ。ロシアとの関係で天然ガスが工業経済の隘路になっている点も泣きっ面に蜂。それでも、ヨーロッパ一恵まれた黒土(チェルノーゼム)と教育水準の高さ故の情報技術分野のアウトソーシング(実にフェニックス証券のFXのシステムも間接的にお世話になっているのです)等々、足腰のしっかりした産業は比較的悪影響が少なかったとのこと。太陽光発電だけで輸入依存のエネルギーの隘路を打開出来るとは言いません。が、耕地(可能)面積が絶望的に狭い我が国とWIN-WINになりうる分野という予感に頼り、“海外投資のパイオニア”フェニックス証券のFX業務の付随業務として、取り組んで行きたいと決断した一日でした。
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