えっ、負債総額では、クライスラーよりは大きいが、リーマンブラザーズよりは小さいではないか。何がショックだ。。。と思われるかも知れません。
MF Globalとは、18世紀にイギリスで設立された老舗のヘッジファンド「マン・フィナンシャル」がデリバティブ専門のブローカー・ディーラー部門を会社分割+株式公開して出来た米国籍の会社です。我が国ではFXアジアという会社を買収して、MF Global FXA証券と社名変更して、FX会社を運営していました。
MF Globalのサドンデスのニュース(とMF Global FXA証券の業務停止までの短時間の紆余曲折と)相前後して、我が国の上場証券会社が殆ど何処も赤字転落、赤字拡大、という四半期決算を発表しました。
リーマンショックという大舞台の上の主役たちは、投資銀行と呼ばれつつも、実際は「投資する銀行」に過ぎなかったことを露呈したわけですが、それは以前からわかっていました。
今回の主役は、ヘッジファンドから切り離されたブローカーが、実はもっと桁違いの儲けを狙って自らもヘッジファンドに変貌したまま大失敗したということです。
フェニックス証券もブローカーの端くれですから、いかにこの事業が薄利多売であるか は身に沁みています。
御存知のFXの世界は勿論、株式のリテール市場も、インターネット取引と手数料の自由化で、従来のビジネスモデルは壊滅寸前です。
先日、長年お付き合いのある不動産業者さんと未公開の中古アパートを見に行きまして、その帰り道、西武池袋線の急行のなかで、「駅前の不動産屋さんの数は減りませんね。インターネット取引も限界があるし、手数料は守られているからでしょうか。広い意味での金融サービスのなかで対面分野が最後まで残るのは不動産仲介なんでしょうね」という話をしたら「いえいえ、楽ではありません。3%という手数料は、案件が決まる確率を考えると本当に僅か。いちど買取と転売に手を染めてしまうと、仲介だけでやっていくのが馬鹿馬鹿しくなってしまうのです。しかしキャピタルゲインを楽に得られる時期もあれば、逆もある。そのときは金融は引き締めですから、倒産する。長く地味にやっている会社は、如何に転売の(利益幅の)魅力というか誘惑と闘えている経営者がいるということですね」という意味深長な答えが返ってきました。
MF Globalのケースは、経営者ゴザイン氏が誘惑に負けたどころか、最初から古巣のゴールドマンサックを見かえすべく、自ら誘惑にのめり込んだ結果でした。
話があっちこっちに飛びましたが、わたくし個人にとって、MF Globalの倒産が、よりショックだったのは、ホールセール=自己売買も駄目、なのに加えて、リテール=自己売買も駄目、というのが、この時期、世界中を見渡して観察されることです。
ただし、ショックと書きましたが、実は嬉しい開き直りでもあります。いま、わたしは、リテール・ブローカー業務をはじめて、7年目になってしまいましたが、最初は勝手が判らず、また、中小のブローカーが大手のブローカーに対抗出来るかどうかという分析も十分できずに始めてしまっていました。
システム、ブランド、コンプライアンスコスト、お上とのパイプなど、スケールメリット(平たく言えば中小では太刀打ち出来ない要素)があるのではないかということです。
事実、リテール業務初心者の頃は、大手の決算と比べて、収益率がだいぶ違うので、自分の知恵の無さなのか、不可抗力なのか、随分悩んだものでした。
MF Globalの倒産や大手証券の赤字転落、赤字拡大は、「なあんだ、この人達には敵わないと思っていたのは、ビジネスモデルを企画立案実行出来る能力ではなくて、ミセス・ワタナベと大差ないキャリートレードの分だけだったのか?」ということを知らしめてくれた点では、良いショックでした。
しかし、悪いショックでもあります。MF Globalのケースで顧客資産の分別が出来てなかったことが尾をひいています。リーマンのケースでは、銀行間市場が機能不全となりホールセールの側か金融制度が崩落しました。今回は、リテールの投資家が、分別保管(我が国のFX業界で言えば信託保全も含まれます)そのものを疑うようなことが起きてしまっており、これはシステミックリスクがじわじわと現れ、さらなる市場縮小の覚悟をしなけらばならなくなるかも知れません。
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