お陰様で、Daily WiLL Onlineのおカネに関する連載が6話完結したいま、人気記事ランキングのトップファイブを独占するに至りました。
もうこれ以上は記事が更新されないので、あとは、陥落のみです(苦笑)。
MMT(現代通貨理論)を皮切りに、金(ゴールド)・銀・銅を切り口とした異説日本史を経て、最終回はいま熱過ぎるビットコインなどの暗号通貨の話題で締めくくったことが、反響を倍加した感じです。
MMTをきっかけにしたのは、怪しい経済理論であるにもかかわらず、コロナ禍のもとで、先進諸国は議論する余裕もないまま、未曽有の財政赤字の急増がなし崩し的に意思決定され、ロックダウン(日本では緊急事態宣言に伴う時短などの自粛要請)とセットでの給付金対応を迫られているからです。
個人的には、給付金はフェアであってほしいですが、それそのものを否定したくはありません。
「コロナ勝ち組」、「コロナ負け組」などという、品(ひん)の無い言葉もあります。
人間たるもの、いまどちら(側)の産業に従事しているかには、運の要素が強すぎて、努力で克服できるレベルを超えていると思うからです。
それにしても、「コロナ勝ち組」の連中や、これまでしっかりと現預金を溜め込んできた世界のお金持ちが、いま、何を考えているかを想像してみることは重要です。2021年の相場を見通すために、十分ではないが必要な、考察です。
彼らの多くは、景気循環のひとつの局面である景気後退期から不況または恐慌の時期にあっても財政支出を支持しないものなのです。ましてや、とりわけ今回のようなショックは、資本主義に内在する景気循環の結果ではなく、外生的なものです。ならばなおさらのこと財政出動で和らげられる性質のものではないと考えます。
しかし、民主主義の政体は、「外生的ショックの緩和には財政赤字は有害無益」という《正論》では支持を得られません。次善の策として、資産防衛のために、インフレーションやスタグフレーションに耐えられる資産(アセットクラス)は何か無いものかと、死に物狂いで模索します。
この候補者選びもまた《正論》は存在しません。ケインズの美人投票のような過程で絞り込みがなされてゆきます。
「金(ゴールド)など貴金属には実体(としての価値)があるが、暗号通貨は実体が空っぽである」
という言説は誤りであると、連載全体の結論として締めくくりました。金(ゴールド)やビットコインなど、通貨(貨幣)の代替候補に人気が出てきている(法定通貨に対する相場が急騰している)のは、物体(使用価値)としての実態(実体)とはほとんど無関係の、決済手段としての信任です。
その信任には、《合理的な根拠》は不要ですが《緩やかな合意》は必要です。信任される通貨(の代替候補)は、どんな物体(ハードウエアとソフトウエアの両方を含む)でも良いわけではありません。《絶妙な程度の希少性》が必要で、地球上に少なすぎても多すぎても候補から漏れます。すなわち、
造幣する費用≦偽造する費用≦市場価値(流通価格)
これを満たしていて、過去~現在~未来も安定的にそうであると、通貨として採用するコミュニティ内で合意形成されるものでなくてはなりません。長い時代、それが一部の貴金属に限られていたこと、刑務所や強制収容所などではタバコが、貴金属が「絶妙な程度の希少性」を超えて希少過ぎた古代中国においては、コミュニティから十分距離の離れた海外で採れた貝殻が、使われていた事例などは、この《法則》を裏付けるものです。
コロナショック(2020年3月10日)の週【赤くて太い点線の長方形】は、条件反射的にリスクオフで軒並み急落した、以下の代替通貨候補が、波打つように、その後は(対法定通貨=チャートは対ドル)相場を回復させていること、そのピークは、例えば金(ゴールド)とビットコインとを比べると、特に理由はなく、有意にずれていることなどがわかります。
【金/ドル】
ビットコインのチャートは、Daily WiLL Onlineの記事では、第一波(2014年1月のマウントゴックス破綻まで)、第二波(2018年1月のコインチェック事件まで)、第三波(コロナショックから現在)の三つのピークがよくわかるように、対数表示にさせていますが、以下では、通常の表示で、過去1年分の動きをご覧いただいております。
【ビットコイン/ドル】
更に、年明け一層のモメンタムが出ている原油相場について。こちらは、コロナショックから1か月経ったところで、先物限月交代に伴う《買手が現物を受け取るタンクがない》問題で未曽有の価格がマイナスという現象がありましたが、気がつけば、コロナショック前の価格を回復しています。これも、貴金属、暗号通貨と並べて、代替通貨選択にノミネートさせてあげるべきです。原油の倉庫証券は立派な代替通貨候補です。しかし、引き取り手の倉庫がなくなるのは困るので繰り返されたくないところです。
大まかに振り返ると、コロナショック後、世界のインフレヘッジャーたちは、タイムラグを経つつ、金(ゴールド)、ビットコイン、原油を現預金の疎開先としてコンセンサスをうかがおうとしてきて、またそろそろ次は何か?不動産や株式は、ほんとうなら、コロナ禍で実体価値は減耗しているのだが、金やビットコインでの相場操縦の成功体験は、不動産や株式をも例外とさせない可能性は大いにあるのです。
最後に、暗号通貨関連でおまけ。ビットコインも第三波!?暗号通貨からマネーの本質を探るで、ブロックチェーンの歴史を超絶わかりやすく(?)振り返るために名脇役を演じてくれたのがステーブルコインでした。ドルなどの法定通貨とずっと(?)一対一で交換を発行体が約束する暗号通貨のことです。これを、米国の通貨監督庁(OCC※)が、米国内の銀行間の決済手段として(例えば、Fed Wireなどの代わりに←筆者注)利用して構わないというニュースが流れました。
こちらは、それを日本語に翻訳して紹介しているニュースですが、これだと、米国内の銀行が、日本でいう仮想通貨交換業(現行法の暗号資産取引業の一部)の兼営が許され、さらに日本では許されていないステーブルコインの取り扱いまで許されるのかとも読めるのですが、そのようなB2Cの話ではまだなさそうです。
米通貨監督庁(OCC)、国法銀行にステーブルコイン利用とノード運営を許可
これは、年末年始の暗号通貨界の話題としては、リップル疑獄に次ぐマグニチュードのものであると評価されます。
※暗号通貨に関与する米国当局には、SEC(証券取引委員会)、FinCEN(金融犯罪捜査網)があり、各当局の態度が異なるので、なかなか困った状況なのだと考えられます。
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