2021年2月17日水曜日

中国共産党の権力闘争に翻弄されたアリババの実像

大河ドラマと半沢直樹の使用上の注意

わたくしのアヴァトレード・ジャパン勤務も、今月で丸8年となってしまいました。これまでのところ、日本証券業協会の壁も厚く、また昨年10月、ちょうどわたくしの誕生日に暗号資産デリバティブ業務からは撤退をしたので、正真正銘、法定通貨関連店頭デリバティブ(早い話がFX)専業となっております。

その割には、法定通貨と関係のない、ビットコインやリップルなどお騒がせ気味の暗号資産貴金属や原油などのコモディティ、株式、はたまた政治・経済・歴史と、役に立たないブログ感がいよよ満載となっております。

以上は、ビットコイン50,000ドル突破の話の前置きというわけでもありません。


今週注目したニュースをふたつご紹介したいと思います。

ひとつは、

アリババ創業者ジャック・マ氏の裏には、上海市場への上場時に必要な「目論見書」のうえでは不鮮明な影の大株主が実は存在。それら影響力のあるステークホルダーのなかには、習近平国家主席の(元)ライバルもいる

もうひとつは、

フェースブックとアップルの鍔(つば)迫り合い

いずれもウォールストリートジャーナルの記事で、前者はスクープっぽいですが、後者はそうでもありません。

ご紹介したいと思ったのは、共通点として、テクノロジー関連のニュースなのですが、いずれも、米中のテクノロジー覇権争いという、聞き慣れた「枠組み」で、取材・記述されたものではないこと。慣れ親しんだ工業社会を情報処理技術の発展が変容させてきた過去・現在・未来を展望するうえで、有効な視座を与えてくれること。この二つが理由です。

まったく話が飛んでしまうようですが、、、わたくしはテレビドラマというのを余り見ないほうです。決して、忌み嫌っているわけでもないですが、ノンフィクション志向ゆえかも知れません。それでも、前回日本とミャンマーは紙一重でご紹介した松ちゃんこと松村邦洋さんのように、ただ観るだけでなく、背景を別途独学し、出演者の芸能歴まで徹底して学習するという態度があれば、見えてくるものも異なってきます。

しかし、注意すべきは、、、

ノンフィクション(だとわたくしたちが考えたい現実)とドラマ(が描きたい理想なる虚構)の違いは、ドラマには善人と悪人が登場することです。ノンフィクションには悪人しか登場しません(主役級に限っての話です)。

「勧善懲悪に仕立てなければ視聴率は稼げない」とまでは言い切らないものの、正義と非道を対立させないことには、平均的なリテラシーのオーディエンスにはなかなかあらすじを理解してもらえないという現実はあるのだと思います。

ただ、質(たち)がわるいことに、このような高視聴率ドラマで飼い馴らされた思考回路は、現実の歴史や政治の登場人物を、正義の側か否かという二項対立に直結してしまうことです。

トランプ、バイデン、習近平、プーチン、菅義偉、森喜朗、小池百合子(敬称略)、、、どうでしょうか???

これはポピュリズムやプロパガンダの原点であって、古今東西、ありとあらゆる政治権力とマスメディア(4th Estate)が(しばしば結託して)利用してきた枠組みです。古代ギリシャの僭主政治や議会制民主主義から独裁を勝ち得たナチスドイツなど枚挙に暇はありません。

しかし、

時期的に言うと、

①米国でトランプ政権が出現した前夜、

②アフリカ・中東からヨーロッパにかけてはアラブの春とその不時着地シリアからの難民問題激化(イスラミック・ステート問題)、とくに、

③ヨーロッパ各国での極右勢力の台頭、

④中国のほんとうの大躍進(一帯一路によるヨーロッパ・アフリカへの取り込み、米中対立激化)

このころから、「米国と中国とはたしてどっちが(より一層)悪玉か?」「さて、ロシアは?」「イランや北朝鮮は論外なのか?」みたいな、雑過ぎる議論が罷り通るようになってきたのではないでしょうか???

習近平は現代中国の源頼朝か?金正恩も?

温故知新のために、こんな雑なカタチから入るのもアリかも知れませんが、そこでとどまってしまっては、見えるものも見えません。

ビットコイン50,000ドル突破にしたって、世界の一握りのお金持ちヤクザの陰謀だと片づけてしまったら楽ですが、たとえ一握りだったとしても、お金持ちヤクザ間で抗争がないはずはないのです。どんな相場にも、買い方と売り方の熾烈な綱引きがあって、その一瞬の結果として最新約定価格があるだけのことです。

アリババ(≒ジャック・マ?)の話にもどりましょう。わたくしもこの記事に目を通すまでは、アントフィナンシャルの株式公開延期(とそれに伴い?ジャック・マさんが表舞台から姿を消した問題)は、アントグループがもたらす金融・資金決済の技術革新が、国営銀行による旧態依然としたシステムや既得権を脅かすこと、技術革新(による新たな超過利潤減)は国家権力が主導し独占すべき公共財であるという(共産主義に限らない)「理念」から来ているものと思っていました。ゆえに、アントフィナンシャルVSデジタル人民元という構図です。

実際のところ、アントフィナンシャルがやろうとしていることは、決して中華思想に特有の「反米のプラットフォーマー志向」(この点、ファーウエイはどうでしょう???)なのだと思い込まないほうが良いのだと思います。このような技術が、例えば、イスラエルや、米国のシリコンバレーから出てきてもまったく不思議ではないこと。実際、日本の銀行決済やクレジットカード決済は、アントフィナンシャルのそれに比べて周回遅れであることを思い知らされます。

そこに来て、アントグループ株式公開延期が、習近平に蹴落とされ続けてきた中国共産党のなかのライバルのなかで最後までしつこく踏みとどまっていたアリババの影のスポンサーの振るい落としであると読み解く記事がでてきたわけです。

えっ?さっき、大河ドラマ脳になってはいけないと言っていたばかりではないか?習近平がやっていることは、いまはじまったばかりのその次の、NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」みたいな話ではないのか?と突っ込まれそうです。そう突っ込まれても、まだあらすじもわかりませんので反論しようもないですが。。。

では、続いて、フェイスブックとアップルの対立について。こちらも、この記事によって、ざっとリーマンショック前夜あたりから、iPhoneが登場し、対してGoogleのandroidも登場し、そのころからアップルとGoogleは熾烈な競争をしていたが、途中で、両者は、中国に譬えると(わたくしの勝手な解釈です)国共合作みたいな構図になって、フェイスブックへと(とりわけアップルは)矛先を向けた。その論点は、

①個人情報の監視と取得、それを悪用~濫用しての、

②広告出稿や世論を操作するだけでなく、

③国政選挙にも関与するようになる(ケンブリッジ・アナリティカ事件)

この点、②③はフェイスブックグループ独自の極端な問題も考えられますが、注目したのは①についてです。これは、今世紀最大級の内部告発者エドワード・スノーデンによれば、米国の大手IT企業、インターネットメディア企業は、巧みなマネーロンダリング操作(※)を経由して得た、NSA(CIAと一体ではないが)からの巨額報酬の対価として、個人情報を共有させている(情報機関に売り渡している)。GAFAはその最たるもの、ということなのです。

この記事自体は、どちらかというと、アップル寄り(他のWSJの記事で、アップルとGoogleの癒着を追求したものもあり)である点は留意すべきですが、アップルの現在のCEOであるティム・クック氏は、この①の点について、アップルは潔白である。それに対してFacebookは滅茶苦茶である。よって、アップルとしては、iPhoneなどでのFacebookのアプリに制限を掛けることは正当である、と繰り返していることが書かれています。マイク・ザッカーバーグ氏の反論や怒りも書かれてはいます。


※マネーロンダリングが米CIAの自家薬籠中のモノであることは、先日のブログでご紹介した児玉誉士夫 巨魁の昭和史(有馬哲夫著)につまびらかに描かれています。


で、結論はいったい何なの?という話ですが。。

結論がないのが結論です。結論を急ごうという思考回路のなかに、右が正しい、左が間違いみたいな短絡を招く病理があります。アリババ対習近平の逸話と、フェイスブック対アップルの逸話は、この病理を癒す冷湿布かと思い、紹介しました。予想どおり、前者にはソフトバンクの孫正義さん、後者にはエドワード・スノーデン氏が、登場しています。

(本日は、敬称が略されたりされなかったり、社名がカタカナだったりアルファベットだったり、一貫性がありません。ご容赦ください。)

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