2008年10月31日金曜日

日本株は底か?すっぴんに耐える日本経済へ・・・

●米モトローラ、3.97億ドルの赤字に転落-第3四半期(10/31WSJ)
●アメリカンエクスプレス、人員7000人削減-全職員の10%相当(10/31WSJ)
●グーグルとヤフー、検索エンジン提携協議を中断へ(10/31WSJ)
●エクソンモービル、四半期利益148億ドル-過去最高を更新(10/31WSJ)

今週月曜日にフェニックス証券オンラインセミナーを収録したあと、弊社の株式部長から質問を受けました。
「社長のおっしゃる『米国発』の皮肉は株価指数についても言えませんか?日本(の金融システム)だけが避難場所と言われる割りには日本株が売られすぎている。米国株以上に売られる意味が判らない・・・

・・・株仲間と話をしていたら、日本の弱さは食料自給率の低さにあるのではないか、と。米国は金融バブルがずたずたになっても飢え死にはしないが日本は違う、と。社長はどう思われますか?」

過去7回のセミナーでも食料自給率の問題はしばしばとりあげて参りました。ウチの株式部長のお友達の視点は一理あると思います。

勿論、テクニカルには、
①日経平均の銘柄入替が果たして良かったのか?
2001年の銘柄見直しでIT関連株に大幅に見直した直後のITバブル崩壊だけではない。 浮動株比率を最重視しているMSCIや時価総額ベースで低位大型株にウェイトが置かれるTOPIXに比べ、円高時や相場急落時に実態以上に売られてしまう。

②ドル建て日経平均はそれほど売られていない。
円高だから(輸出関連株が売られ)株安。円高なのに(日本に資金が戻っているのに)株安。ドル建てで見れば当然のこと。

より本質的な問題として、
③日本の金融システムが消去法的に選ばれていることの幻想
しばしば申し上げているように、邦銀の融資先株式の政策保有、その含み損は、外国銀行の不良債権問題と五十歩百歩である。

そして③の裏返しとして
③´個人投資家が育たず、外国人投資家に翻弄されている日本株
政策保有株式の下落による資本毀損は公的資金で助けられるが、損をした個人投資家には税金すら帰ってこない。モラルハザードが続けば個人にとって株式投資は馬鹿馬鹿しくてやってられない。本来、サラリーマン投資家よりも適正水準を意識して売買できる個人投資家の参加が進んでいないことは日本株にとって悲劇。

お待たせしました。最後に食料自給率です。

指数の話ばかりしましたが、個別株で言えば、何が買えるでしょうか?食品に限らず、生活必需品(基礎財)に関連する銘柄ではないでしょうか?

ここでクイズです。今週ある業界の方から「わが業界の企業売り上げは、ただひたすら広告宣伝費のみに比例するんだ」と豪語しておられました。曰く、売上原価にも技術開発にも比例しないと。さて、この業界とは何でしょう。答えは夕刊でお知らせしますが、勿論、生活必需品でないことは明らかです(必需品だと思い込んでいる人も少なくないかも知れないけれど・・・がヒント)。

食料自給率低迷、減反政策、食糧管理政策、食の安全の問題。。。これら全てを農水官僚の仕業だと決め付けるのは全く筋違いです。思えば、何故小学生時代の給食がコッペパンだったのか?何故、農水省は禁止農薬の範囲を広げ、結果的に事故米の定義を拡大させたのか?事故米や事故米焼酎などは、食料としての流通を差し止められただけでなく、バイオ燃料としても再利用されず、単なるゴミとして破棄された事実をご存知ですか?

心ある農家の皆さんが日夜努力されている一方、既得権益に固執するだけの農業団体、その票田に固執する政治家、既得権益への固執となれば日本一の地上波テレビなど大手マスコミ。これら悪の枢軸が農水官僚を集団暴行した結果、食料政策が脳死状態になったと私は推定します。
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2008年10月30日木曜日

米国利下げ。FF金利は1.0%

同日、中国やノルウェイも利下げ。ECB、BOEも来週利下げが濃厚と、WSJ紙。

更なる利下げも臭わせたFOMC。「ゼロ金利政策が近づいていることのジレンマ」という表題でFT紙は90年代の日銀の政策が景気浮揚に成功しなかったことと今回の米国の事態を比較しています。

デフレ下で名目金利をゼロにしても、実質金利(注)は高止まってしまうわ名目金利はマイナスには出来ないわで万事休す。これが90年代の日本だ、と。現在の米国は(ヘッドラインインフレこそマイナスに転ずるリスクが濃厚だが、生鮮食料品とエネルギー価格を除いたコア)インフレは(元々の水準が)高いので大丈夫。金融政策の余地はある、と。

(注)実質金利=名目金利-期待インフレ率

しかし、中途半端な経済学者がよく間違える罠なのですが、只今現在のインフレ率と、その将来の予想とは意味が異なります。加えて、現在の米国金融の最大の問題は名目金利が一物一価になっていないこと、つまり銀行間市場の機能不全は依然続いているため、政策金利を引き下げても銀行間の(無リスク金利である筈だった)金利が高止まり、結局は実質金利を制御できない事態に陥り続ける恐れがあるということです。

完全雇用状態(デフレギャップが無い状態)を実現する金利を「中立金利」と定義づけ、中立金利の下落に対して政策金利の引き下げが後手後手に廻ると日銀が直面したゼロ金利のジレンマに陥ると論じたのがスタンフォード大学のテイラー教授です。金利政策に限定する限り(つまり、中央銀行の機能は金利政策だけではないということが言いたいのですが・・・)、米国の現況は既に90年代日本と同様の落とし穴に嵌っているといわざるを得ません。

ただし、ユーロ圏も五十歩百歩ですが。
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2008年10月29日水曜日

オンラインセミナー、ブログに更新!

今夜から明日にかけてのFOMCでの利下げ期待(FF金利1.5%⇒1.0%)で円安ドル高株高。国家破綻のアイスランドは今更ながらの通貨防衛で利上げを発表(12%⇒18%)。いまやFXは政策金利の予想だけで成り立つゲームではありません。

史上2番目の上げ幅を演出した昨夜の米国株。それでもショッキングなのは、我が国の上場証券会社の四半期決算。日本株も駄目。投信も駄目。外国債券も駄目。ついにやることが無くなった。でも「証券・金融は経済の血液だ。無くなるわけにはいかない」と言われます。本当にそうでしょうか?

レコード針のように、知らないうちに無くなってしまった産業はいくらでもあります。過去5年間で日本酒の蔵元や杜氏の数が激減していることも意外と知られていません。証券会社が経済の血液だというのなら、日本酒は会社組織の潤滑油ではなかったか、と反論したくなります。

日本酒については経験と技術の粋を極めた杜氏さん達の世代交代がうまくいかなかったという供給側の事情と、我が国の若い世代が米麹の香りを好まなくなったという飲む側の嗜好の変化という需要側の事情が相俟って市場が萎縮したと考えられます。しかし事情はどうであれ、一大産業の環境激変に伴い職を失った方々は、過去に培った経験や技術を多くの場合は活かせない新たな職業を自助努力で探すべく苦労されいているに違いありません。

たびたび証券村で村八分になることを恐れず繰り返すのですが、金融業界だけひとり景気や雇用を人質にとって公的な保護を求めるのは筋違いでしょう。加えて日本酒はインターネットでは醸せないけど、金融取引ほどネットに馴染むものはないという厳然たる事実があるのですから。
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2008年10月28日火曜日

出会い系サイトと居酒屋タクシー

昨夜、フェニックス証券オンラインセミナー第7回「ズバリ!売りか?買いか?」の収録後、ビジネスアスキーとマネージャパンの連載企画で大変お世話になったレストラン店主に御礼旁駆けつけました。時は夜11時過ぎ、スパゲッティを食べながら私の横にお座りになった初対面のお客さまと意気投合。実は財務省の官僚の方でして、「居酒屋タクシーが無くなったので、居酒屋バスが夜中の3時に出るんだ」という愚痴とも冗談ともとれる話で爆笑。ビールは出ないと信じていますが・・・

時計(持っていないので正確には携帯電話)を見たら、もう12時。「終電が無くなるので帰ります」と申し伝えたら、「タクシーがあるじゃないですか?お金は使ってナンボです。使われたお金が世の中をぐるぐる廻って景気が良くなり、また貴方も豊かになる」と引き止めていただいたのですが「そういうケインズ的思想が官僚組織を支配してきたから日本はこんなに駄目になったんですよ」とニコッと微笑みながら反論。「ケインズの乗数理論。“倹約は美徳ではない”というのは美しい詭弁だ。天然資源は無制限に人類が費消しうるという前提に従った点で、マルクスと同じ過ちを犯している!勿論、ケインズやマルクスが浅はかだった筈はない。ケインズ理論にせよマルクス主義にせよ経済政策への応用が急がれた余り判りやすく巷間流布させるべく、緻密な部分が端折られた。わたしが無礼にも批判しているのは海賊版ケインズ・マルクスに他ならないのですが・・・」。初対面の官僚のお客さまは「いやぁ、おっしゃる通り。我々財務官僚は宮澤喜一チルドレン。まさしくケインジアン集団ですよ・・・」

別れ際に名刺交換をさせていただいたら関税局の課長補佐さんでした。どうりで為替の話で盛り上がった筈です。

さて、昨日のセミナー、是非オンデマンド(再放送)をお楽しみいただきたいのですが、骨子としましては、
①金融膨張局面(レバレッジが利用しやすい投資環境でキャリー取引バブルが生じる)では為替相場は購買力平価から逸脱する。
②金融収縮局面(レバレッジが利用しづらい投資環境でキャリー取引バブルが萎む)では為替相場は購買力平価に収斂する。
③しかし、購買力平価は万能ではない。通貨には多かれ少なかれ「購買力平価に引き寄せられやすい」要素と「購買力平価を引き寄せる」要素とがある。小国の通貨、特に貿易依存度の高い(生活必需品等の基礎財を輸入に頼りがちな)独立通貨は後者の要素が極端に強い恐れがある⇒例:南アフリカランド、アイスランドクローネ・・・


さて、どうしても1時間では説明ができないもうひとつの骨子として、米国発の金融収縮が銀行間の米ドル貸借機能不全を経て、皮肉にも米ドルが(日本円に次いで)世界で最も強い通貨になってしまっているという話を冒頭致しました。

私のブログでは銀行の不良債権問題を「毒入り餃子」としばしば譬えています。「毒入り餃子」が短期金融市場、すなわち各国中央銀行が自国通貨について日々裁量で金融調節を図っている銀行間市場に突然に混入されてしまったのがリーマン破綻です。

短期金融市場における銀行間の日々の資金繰りの決済と貸し借り。その仕組みは、わたしたちが銀行などの店頭でお金を預けたり借りたいと申し入れたりする相対取引とも異なり、また証券取引所を通じてマッチングされる上場株式の売買と異なる点が実に肝です。短期金融市場は、昔なら短資会社さんを通じて電話で、今ならオンラインで資金需給のマッチングが行なわれます。個人の常識では考えられない天文学的数字が短い間に遣り取りされ、それでも貸し借りの条件、すなわち金利についてはお互い五月蝿いから、まずは条件があったもの同士がセットにされ、その後お互い相手の銀行の名前を知る。という仕組みです。ちなみに、わたしが昔短資会社さんとお付き合いしていたときは私が属する銀行が“常に資金不足”だったので毎日手形を売り、その買い手を短資会社さんが見つけてくれて、金利(と期間)が合えば取引成立。っで、「ちなみに相手はJA何処何処さんでしたよ」、という具合に事後的に伝えられて納得するという商習慣でした。

例えが悪くて恐縮ですが、出会い系サイトで、事前に登録しておいた条件に合致した人が見つかったというだけで紹介料を取られて、会ってみたらガッカリ、みたいなスピード感でないと、残念ながら短期金融市場は機能しないのです。したがって、そのためには銀行というのは倒産しないものだという常識が徹底していないとマズいわけです。

リーマン破綻で、この前提が崩れてしまったために、銀行同士が資金を提供し合わず、タンス預金を溜め込んでしまった。先ほど「わたしが属していた銀行は“常に資金不足”だった」と書きましたが、「資金不足」=「資本不足・経営危機」ではありません。今は亡き長期信用銀行の場合、「金融債や短期金融市場での調達+長期での貸出で運用」というのはビジネスモデルの根幹だったのです。これを極端にやってしまっていたのが米国の商業銀行であり投資銀行(未曾有の長期-短期の金利差が米国の銀行を住宅ローンビジネスに走らせた背景については9月セミナーで紹介したリチャード・クーさんの本に詳しい)。フェデラル・ファンド・レート(FF金利)の近傍で調達できる格安資金を駆使して、サブプライムローンを含む長期金利(+信用プレミアム)を享受してきた枠組みが一挙に壊され、米ドル資金が枯渇してしまったのです。

さて、FXをやっておられる読者の皆さんにとって、スワップ金利は概ね各国の政策金利の近傍であるというイメージだった筈。キャリー取引等の前提も、したがって、

日本円の金利<米ドルの金利<ユーロの金利

リーマン破綻という毒入り餃子が奇怪な現象を起こし始めます。「誰にも貸したくない」と言わんばかりの高金利になってしまった米ドルの銀行間金利。ユーロと交換に借りようとしても誰も貸してくれない。これが銀行間でユーロドルのフォワード市場が崩壊した原因です。多くのFX業者もリーマン破綻直後からユーロドルのスワップを「ゼロとマイナス●●」と提示せざるを得ない状況に陥りました(ただし、フェニックス証券も含め、業者によって頑張って出しているところもありました)。

たびたび酷い譬えで恐縮ですが、ホームレスにはなりたくないと思えば、家を買うか借りるかいずれの方法しかありません。米ドル資金を短期調達して長期運用をしまくっていた米銀は、ドルを借りれなくなった以上、買うしかないということになります。為替の売買を行なう市場(スポット市場)は過去の苦い経験から現在では同時履行が確保されており、信用収縮の悪影響を受けないのです(過去の苦い経験とは、わたしが属していた某銀行が中東の某銀行に倒産直前に日本円を受け渡し対価の米ドルが時差で戻って来なくて大損した事件-銀行名からBCCI事件と呼ばれました-です)。

以上端折れば、出会い系サイトがリンク切れになったのだがホームレスにはなりたくないので米ドルが高騰しているという話です(ここだけ聞くと何の話だ!となりますが・・・)。

お時間のある方は、以上を踏まえ、是非またセミナーのオンデマンドをご視聴ください。最後に素敵なプレゼントもご紹介しております(オンデマンド視聴者の皆さまもプレゼントの対象となりますので奮ってご応募ください)。
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