2008年7月17日木曜日

毒入り餃子

前職のBNPパリバ証券時代の元上司、安田雄典在日代表のお招きで、昨日金融庁元長官の五味廣文さんのお話を拝聴する機会に恵まれました。五味さんは97年から98年の金融監督庁設立、山一、三洋、北拓、日長銀、日債銀の破綻という渦中で金融行政の舵取りに奮闘された経験を熱く語ってくださいました。

五味さんのお話で印象に残ったのは、「資産バブル当時の銀行は担保偏重主義に陥り、人に貸すという観点、つまり審査とか信用リスク管理を疎かにした」という指摘。もうひとつは、「信用秩序の崩壊は中国産毒入り餃子とそっくりだ」という譬え話。「不良債権-債務超過」という名の猛毒が何処にあるか判らない疑心暗鬼がパニックを引き起こす姿は、毒入りではない全ての冷凍食品、全ての中国産が売れなくなってしまう状況と同じ。98年の夏から冬にかけて日銀信用機構局と合同で集中検査を行い、日長銀と日債銀に駄目出し、残りは健全行のお墨付きを与えたと。

FX会社の社長の立場では言い辛いのですが、FX業界にも猛毒があることは、今月初めに発表された集中検査結果からも深読み可能。猛毒入りの安物(=低スプレッド!)のせいで業界全体が疑心暗鬼に晒されるという事態だけは是非とも回避したいと思っている今日この頃。

話を戻すと、金融再生法(当時も捻じれ国会でこの法案も野党側の議員立法だったのだが、当時の官房長官の野中広務氏が野党案の丸呑みを即断してくれた、いまでも野中先生のような懐の深い政治家がいてくれたらと五味さん)で一時国有化された日長銀と日債銀以外は健全行として安心マークが貼られたのだがその後のデフレ経済で銀行の伝統的貸出先の経営も不安定になり(2000~01年そごう、マイカル等の倒産)、公的資金の予備的注入という別の枠組みを作らざるを得なくなったと。

金融行政の難しさが痛い程わかるお話でした。

毒入り餃子以外の健全行を風説やシステミックリスクから守ることが金融行政の使命、それでもその数年後には相場や景気次第で健全行の安心マークすら疑わしくなってしまうという苦悩から、やはり銀行のバランスシートが全てのリスクを背負い込む「間接金融偏重」に無理があると達観、今日の「貯蓄から投資へ」という金融行政に至ると締めくくられました。

ところで、昨今金融庁から出されている文書からは、今日のサブプライム問題を深刻化されているのは証券化が発達したために何処の金融機関にどれだけ毒入り餃子があるかわからないこと。プロ同士とは言え、毒入り餃子を売ったものにも責任がある、という趣旨のもの。

間接金融も駄目、証券化も駄目なら、どうすれば良いのでしょうか?

信用リスク管理がしっかりしていれば不良債権問題は発生しなかった(再発防止になる)とは必ずしも言えないと思います。
●中国、過去4年間で最悪の電力不足に(7/16FT)
●シティグループ、中国でデビットカード業務認可へ(7/17WSJ)
これまで外資系クレジットカードは、中国国内企業との合弁事業に限られる等、制約が多かった。
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2008年7月16日水曜日

裸の空売り

●米SEC、空売り規制を緊急導入(7/15WSJ、FT)
ファニーメイ、フレディマック、リーマン・ブラザーズなどの株式を濫用的に空売りしないよう緊急措置をとりたいとクリストファー・コックス会長が議会で発言。この新しい規制は巨大金融機関以外の株式市場全体にも広げていく計画もあると。

日本株の「空売り規制」と比較しておかなければなりません。米SECが今回義務付けるのは、売りから入るにはちゃんと借株をしなさい、裸の空売り so-called "naked" short selling は駄目、と。現在日本では貸借銘柄を証券金融会社経由で借りて売るという制度信用または一部貸借銘柄以外の銘柄も含めた貸借市場(含む相対)経由(一般信用)が使われています。加えて、2002年以降は直近値段を下回る価格での信用売りも禁止(アップティックルール、実際はもうちょっと複雑)となり、空売り規制先進国の米国のルールを真似して更に厳しくしたものになっています。

米国の規制が緩過ぎたのか、日本の規制が厳し過ぎるのか。FX市場に流出した個人マネーを回帰させるためにはアップティックルールを緩和するしかないのではないかというのが筆者の意見。アップティックルールで株価の売り崩しから発行会社を守ろうという意見に対しては、売り崩しが不当なら自社株買いで応戦すれば事足りる(自社株買いについては一層の規制緩和が必要)。

●米ドル、対ユーロなどで史上最安値更新(7/15WSJ、FT)
月曜日の筆者の相場予想「ユーロドルは1.55~1.60の硬いレンジ」が早くも3日目にハズレ、昨夜は反省で居残り。しかし、WSJ紙面トップは

●ユーロゾーン、景気後退はハードランディングに向かっている(7/15WSJ)
世界的な景気後退と考えられてきたヨーロッパだが、、、と。
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2008年7月15日火曜日

監査法人と格付機関

昨日月曜日はフェニックス証券の4-6月期決算のために監査法人の公認会計士の先生方にいらして頂きました。四半期監査は一日で無事終了。夕方ご挨拶をさせていただいた際に、筆者から質問、「NHKのドラマ『監査法人』をご覧になってますか?」答えは、異口同音に「勿論見てますよ!」。

同業者である先生方からの番組評は味わい深いもの。橋爪功さんが証券取引法違反で逮捕される理事長を演ずる旧監査法人のモデルは空中分解した例の監査法人だ。その監査法人が加担した粉飾決算の舞台となった都市銀行は、旧UFJ銀行か、りそな銀行のいずれか(いずれも)だ、等々。

筆者の感想はと言えば、詐欺紛いのドーナツ屋フランチャイズチェーンを拡大させ上場を焦るベンチャー企業の社長役を演ずる阿部サダヲさんのテカテカの丸顔が堀江貴文氏に酷似している、という下世話なもの(汗)。ちなみにこの詐欺商法【定年退職世代からFC加盟金を掻き集めるべく商品先物営業的コールド・コールを朝から晩までチーム全体でやらせる】のモデルは実在していないのではないかというのが筆者と先生方の共通の見方です。

ちなみに、「家庭を顧みない、過労でぶっ倒れる、法律違反の誘惑に駆られやすい、という職業だと思われ、公認会計士の人気が落ちるのではないか」と先生のひとりが嘆いておられましたが、筆者は「それは無いでしょう。弁護士や医師を正義の味方という風にテレビドラマが描いても素直に信じて職業選択するほど現在の若者は柔ではない」と反論。

ところで、筆者が一番気になったのは、ドラマで金融監督当局が監査法人の合併を促そうとする場面。「華麗なる一族」の頃の銀行行政ならまだしも、金融ビッグバン後しかも監査法人に対してこのような行政の介入がありうるのか?先生方の意見は、さすがにここはフィクションなのでしょう、ということでした。

投資家や債権者という第三者の利益を保護するための仕事なのに報酬は依頼人から貰うという屈折構造は、監査法人同様、(殆どの)格付機関についても当て嵌まります。レイクをGEから買収した新生銀行を格下げしたムーディーズ。それは結構ですが、新生銀行を格下げするまえに、ファニーメイフレディマックのトリプルAは見直すつもりがあるのかないのか、先ず答えて欲しい。
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2008年7月14日月曜日

暗黙の保証

●FRB、米財務省、一転して救済の用意あると-ファニーメイとフレディマックに対して(7/13NYT、WSJ、FT)
金曜日の夜、株式市場から期待されていた国有化発言を否定。両社の株は一日で半減。日曜夕方、資本注入に吝かでないと発言を一転させたと臨時ニュースを各紙報道。

米国サブプライム問題は、サブプライムに留まらず、ホームエクイティローンを含めた全ての住宅ローンに波及する筈だと、昨年8月以来、メルマガその他で申し上げて参りましたが、いよいよクライマックスか。

バランスシートを復習しておきましょう。

ファニーメイとフレディマック、両社の借金を合わせると1540億㌦。但しこれには住宅ローンに対する保証、つまり両社にとっては偶発債務となる5000億㌦が含まれていません。合わせると約520兆円の資産規模となっています。当局からの緊急融資枠はたったの22.5億㌦。それもその筈で、40年前に設定された当時のファニーメイの借金は150億。現在はその50倍以上に膨らんでいます。問題はこのように膨らんだ借金に対して政府が行なっている保証があくまで暗黙ベースであるということ。

2001年に日本で敢行された財政投融資改革でも、日本版GSEが政府の明示的保証を受けずに債券を発行するという習慣が始まりました。この財投機関債に対して格付け機関は企業開示を含め厳しく対応したものです。これらの格付け機関はファニーメイ、フレディマックの最高格付けに対してどのような反省を行なうのでしょうか?

もうひとつ、不動産危機は米国に限られたものでは絶対無く、英国、大陸欧州、日本の順に同様の危機を孕んでいると考えられます。FXに則して言えば、ユーロドル相場は要人のマッチポンプ発言を挟んで1.55~1.60の硬いレンジの中で乱高下し続けると予想しますが、基本は長期でユーロ安という見方を一切変えておりません。
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↑ 梅雨明け間近?今週もよろしくお願い致します