2009年2月17日火曜日

年率12.7%のマイナス成長-GDPショック

★せっせと蓄えてきた日本 VS 大らかに遣い込んできた米欧

米国休場で、案の定、世界中のメディアは日本のマイナス成長が年率二桁に陥ったことを大きく取り扱っています。

米国(▲3.8%)、ユーロ圏(▲5.7%)、英国(▲5.9%)を上回る減速(▲12.7%)について、ウォールストリートジャーナル紙の記事への素人コメントの中に「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」というものがありました。他にも「80年代後半、貿易相手国から内需拡大を迫られたのに日本はその対応をしてこなかった。そのつけが回ったのだ」というのも載っています。

本題から逸れますが、日本の地上波テレビ局、例えば東京放送のニュース23のように、末期症状という点で政権与党と五十歩百歩の報道番組は、画面の下三分の一を開放して、視聴者の意見を2ちゃんねるのように流しっ放しにすれば視聴率が上がるのでは。尤も、報道機関として何の努力もしていない実情を暴露する、自らの墓穴を掘る決断をすることなく番組は最期を迎えるのでしょうが。

昨夜の、中川昭一財務相の映像⇒おきまりの新橋の酔っ払いへの街角インタビュー⇒GDP年率二桁マイナス⇒内容の精査にこだわらず、思い切った財政出動を素早くやるべきとの無名エコノミストによる締めくくり。。。ワイドショーと報道番組の違いって何ですか?と東京放送の報道局長を問い質したい。

さて、日本の年率成長率二桁マイナスは、前回が1974年。石油価格が一気に4倍となった、第一次石油ショックのこの年、私は小学校3年生でした。この年の思い出は、

★中日ドラゴンズ、巨人軍のV10を阻止し、20年振りのセ・リーグ優勝。

昨年、国民の総敵となった星野仙一氏が先発+抑えに大車輪の活躍。折しも、ブルース・リー主演の香港映画「燃えよドラゴン」が空前のヒット。坂東英二氏歌う「燃えよドラゴンズ」も大ヒット。

で、我が家庭は、と言いますと

★母の勤務先メリヤス工場が倒産

私が産まれる前から勤め続けていたメリヤス工場。何故かこの頃、給料袋を毎月チェックしていて、月々6万円、5万円、4万円と減っていったのをハッキリと記憶しています。

月々の目減りをカバーすべく、土日は家族全員で内職。股引(ももひき)の足首部分(伸ばせば長方形ですね)が長辺同士繋がってる形で大量生産されるロール状の塊(かたまり)を工場から持ち帰ってきて、これを一枚一枚外す。これが結構面倒くさいのですが、一枚外して1円。手先が不器用な私は家族から随分叱られたものです。

私に全く遺伝しておらず残念な母の数少ない長所は口が達者であること。6ヶ月間、失業保険を貰いながら探しあてた再就職先は、着物のセールス。職場は芸濃町から津市に変わりました。車の運転ができない母でしたが、ライバルセールスウーマンの車に乗せて貰いながらも成績はメキメキと上昇して、月収は20万円を超えました。収入が追い越された父は、文句ひとつ言わず、母の代わりに家事を一生懸命やっておりました。

★急激な変化である限り、交易条件の改善も悪化も、経済に打撃

韓国等との価格競争に晒されはじめていた当時の繊維産業は、ニクソンショックによる円高、石油ショックによる原材料高⇒スタグフレーションという“往復ビンタ”を食らわされました。この間、国内では田中角栄内閣による日本列島改造論。日本全国で一斉に行われた公共投資が、スタグフレーションを悪化させこそすれ、メリヤス工場の倒産回避にも、母の再就職にも、何ら貢献していないことは明らかです。

2008年10月-12月のマイナス成長の要因は、円高と輸出減です(ただし、円高要因だけで輸出減になったと言い切れないところが問題)。石油ショック直後のマイナス成長とは原因が180度近く異なりますが、外部要因の激変は内容がどうであれ、需要の内訳と供給の内訳に齟齬を生ずるという結果は同じです。

需要と供給の齟齬をハッキリと示しているのが、百貨店のフロア毎の混み具合。デパ地下だけが圧倒的に混んでいて、衣料品はガラガラ。欲しいものを作って売る以外に、需給調整の方法はなく、何十兆円も税金を無駄遣いしたところで、百貨店の地上階に客足は戻って来ません。

今朝の日経新聞のコラム、社説のコピーは「危機脱出、政治の責任重い」「追加景気対策は大胆に、賢く、遅滞なく」というのですが、、、国民の多くが政治に何も期待しない、天は自ら助けるものを助けるという意識であれば、そちらのほうが正しい。

最後に、日本のメディアも海外のメディアも、徹底的に無視している重要な事実を指摘させてください。
★日本の一人当たりGDPの伸び率は、世界で断トツ1位!
2007年の一人当たりGDPで世界19位に転落した事実だけは語り継がれ、その後の急激な円高はこちらの文脈では言及されない。大手メディアは、経済は悪いニュースを、スポーツは良いニュースを、報道したほうが売れるからに過ぎない。

円高要因だけでも、経済成長の年率マイナス二桁を打ち消して余りある。加えて、少子化(こちらの要因は僅かですが)。この豊かさの概念を実感するのは難しいことです。が、何も海外旅行や個人輸入などを試さなくても、悲観論を数字の通りに受け取ることは誤解を招くと警鐘を促すこともメディアの重要な役目なのでは。

これこそ冒頭のウォールストリートジャーナル記事への素人コメント

「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」

という、素朴で、立派な、疑問への「七転び八起き」の、巨大メディアに代わっての回答です。
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2009年2月16日月曜日

小泉の乱、中川の酒乱

ほぼ24時間ワイドショー化しつつある民放が土日に小泉純一郎元首相、中川昭一財務相の映像を繰り返し流しました。

しかし、民主党の小沢代表は、「自民党の空中分解」を大衆に知らしめてくれたと民放の報道姿勢に感謝しているとは思えません。

★脚本、演出、そして役者。

「自分だったらどう動くか?」というシミュレーションを頼りに、伏魔殿のごとき自民党の役者達の動きを分析するに違いない小沢代表にとっては、小泉元首相の怪気炎にテレビカメラを入れたこと、本当に体調が悪ければ日銀総裁独りに任せておけば良かったG7会見、ついでに森元首相のブチ切れ映像、これらすべてが演技。酔っ払いを世界中に発信した中川財務大臣こそ大石内蔵助なのでは、と疑っているのでは。

「自民党をぶっ潰す」というキャッチコピーで自民党を守り、郵政民営化を争点にしたことで改革野党の筈の民主党を思考停止状態に陥れた小泉元首相(またはそのブレーン)が、再び脚本家兼演出家として登場することを民主党は恐れているという構図です。

GDP年率換算マイナス12.7% 10~12月期
8:50に内閣府が発表したGDP速報値は、市場予想よりも悪い数字。NHKの日曜討論で石原自民幹事長代理が、テレ朝のサンプロでは菅選対副委員長が、いずれもGDPの市場予想値に言及され、(数十兆円規模の)大胆な追加対策の必要性を語っていました。

★郵政民営化とは何だったのか?
冒頭の「小泉の乱」に関して、舛添厚労相が「すべてtoo late」と言い捨てていましたが、実に銀行業界にとっては郵政民営化こそtoo lateだった。

90年代においては、国営銀行は民業を圧迫している、民間銀行が“いまひとつ”儲からないのは郵貯のせいだ(クラウド・アウト)という銀行業界の声がありました。

バブルの第一の原因は銀行の数、銀行員の数が多すぎることだと、当ブログで繰り返してきた私としても、(
預金保険との関係は微妙ですが)貸し倒れリスクを反映しない預金金利の設定や、財政投融資のあり方を反省すれば、クラウド・アウトの指摘は正論だったと言えます。

手続き途上にある郵政民営化が、too late(元来の趣旨は正しかったが今更やっても無駄)なのか、never late than never(遅すぎてもやらないよりはまし)なのかという判断は、オリックスの不正入札やら、ゴールドマンサックスなどの米銀に身売りさせ(日本国債を売らせて米国債など米国政財界の都合の良いように資産運用させる目論見だ)などという、偏頗な議論に紛らわされず、当初の趣旨をテーブルの中心において議論することが大切です。

★民営化と言えば、
ところで、地上派民放テレビ局各社の今後の経営にとって、これまで民業を圧迫していた筈のNHKの民営化はプラスでしょうかマイナスでしょうか?
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2009年2月13日金曜日

麻生首相だけではない身内の離反

●オバマ政権の次期商務長官、就任を辞退 共和党議員(2/13WSJ、FT)
7890億㌦の景気刺激策が可決間近を間近に控えつつ、超党派の経済チーム作りを掲げていたオバマ政権に痛手。

人気のある政策が、必ずしも正しい政策とは限らない。選挙に勝っても負けても、モラルハザード問題では妥協しない共和党の姿勢は正しい。イラク戦争が致命的だったのです。

昨日更新の「米国民が嫌いでも米国債を買わざるを得ない」中国は、議会制民主主義の国よりも大胆に人気のあるばら撒き政策をすることが可能でしょう。

リーマンショック以降の、人民元の対米ドル頭打ち⇒今後暫く下落基調、という「七転び八起き」の天邪鬼説の背景にはこのような考察があります。

今朝の日本経済新聞1面のコラム「公的資金ドミノ」も大変参考になります。「政府支援下の米クライスラーがイタリアのフィアットから出資を受ける」なら、公的資金による「融資を即刻返済させるべき」とオバマ大統領に釘を刺したのは、身内である民主党の上院議員。

●小泉氏発言、政権運営に“暴風”-「倒閣に発展」の見方も(2/13読売新聞ほか)
小泉氏の発言により、2次補正予算関連法案の採決で造反者が出る可能性が出てきた。政府・与党は来週にも、衆院の3分の2以上の多数で再可決する方針だが、「チルドレンが軽挙妄動する恐れはある」(副幹事長)といった懸念が生じている。16人反対すれば再可決できず、その場合、麻生政権の命取りになりかねない、と読売新聞。
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2009年2月12日木曜日

日興コーディアル証券とワークシェアリング

●米国債の購入は続けざるを得ない-中国の金融当局高官が語る(2/12FT)
米ドルの下落リスクは承知していても、世界危機において米国債購入継続は唯一の選択肢だ、日本国債や金よりはましsafe havenだと語った。

同高官は、グラス=スティーガル法が金融危機の火に油を注いだ一面を指摘。ただし、中国は商業銀行と投資銀行の分離政策を続けるとのこと。

金融危機と銀証分離を結びつけて論じたのは、要人クラスでは彼が初めてでは?ちなみに、要人以外では私?

2008年9月19日:カインの末裔であってはならないモルガン家
2008年10月17日:モラルハザードとファイヤーウォール

さて、銀証分離と言えば、旬の話題は、

●日興コーディアル証券買収、3メガ銀が週内名乗りへ(2/12読売新聞ほか)
米シティグループ傘下の日興コーディアル証券の売却問題で、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの大手3グループが買収の意向を週内にシティ側へ伝える見通し。

約25兆円のリテール(個人、小口)顧客資産を抱えた日興コーデは、「50年に1度の出物」とも言われる(読売新聞)らしい。

民事再生法の申し立てをしていた大阪万博跡地のエキスポランドは、新しいスポンサー(買収してくれるひと)が見つからず、再生処理を諦め、破産手続きに移行しました。

エキスポランドが「50年に1度の遊園地の出物」ではなくて、日興コーデが「50年に1度のリテール証券」だというのは、メガバンクの経営者が「やはり金融は規模が大切」と信じ切っており、また証券ビジネスは(遊園地事業と異なり)構造的に悪いのではなくて、今たまたま悪いだけだという考えで一致しているからなのか。

我が国に限っては、銀証分離の本音は、ワークシェアリングに過ぎない私は断じています。
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