★せっせと蓄えてきた日本 VS 大らかに遣い込んできた米欧
米国休場で、案の定、世界中のメディアは日本のマイナス成長が年率二桁に陥ったことを大きく取り扱っています。
米国(▲3.8%)、ユーロ圏(▲5.7%)、英国(▲5.9%)を上回る減速(▲12.7%)について、ウォールストリートジャーナル紙の記事への素人コメントの中に「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」というものがありました。他にも「80年代後半、貿易相手国から内需拡大を迫られたのに日本はその対応をしてこなかった。そのつけが回ったのだ」というのも載っています。
本題から逸れますが、日本の地上波テレビ局、例えば東京放送のニュース23のように、末期症状という点で政権与党と五十歩百歩の報道番組は、画面の下三分の一を開放して、視聴者の意見を2ちゃんねるのように流しっ放しにすれば視聴率が上がるのでは。尤も、報道機関として何の努力もしていない実情を暴露する、自らの墓穴を掘る決断をすることなく番組は最期を迎えるのでしょうが。
昨夜の、中川昭一財務相の映像⇒おきまりの新橋の酔っ払いへの街角インタビュー⇒GDP年率二桁マイナス⇒内容の精査にこだわらず、思い切った財政出動を素早くやるべきとの無名エコノミストによる締めくくり。。。ワイドショーと報道番組の違いって何ですか?と東京放送の報道局長を問い質したい。
さて、日本の年率成長率二桁マイナスは、前回が1974年。石油価格が一気に4倍となった、第一次石油ショックのこの年、私は小学校3年生でした。この年の思い出は、
★中日ドラゴンズ、巨人軍のV10を阻止し、20年振りのセ・リーグ優勝。
昨年、国民の総敵となった星野仙一氏が先発+抑えに大車輪の活躍。折しも、ブルース・リー主演の香港映画「燃えよドラゴン」が空前のヒット。坂東英二氏歌う「燃えよドラゴンズ」も大ヒット。
で、我が家庭は、と言いますと
★母の勤務先メリヤス工場が倒産
私が産まれる前から勤め続けていたメリヤス工場。何故かこの頃、給料袋を毎月チェックしていて、月々6万円、5万円、4万円と減っていったのをハッキリと記憶しています。
月々の目減りをカバーすべく、土日は家族全員で内職。股引(ももひき)の足首部分(伸ばせば長方形ですね)が長辺同士繋がってる形で大量生産されるロール状の塊(かたまり)を工場から持ち帰ってきて、これを一枚一枚外す。これが結構面倒くさいのですが、一枚外して1円。手先が不器用な私は家族から随分叱られたものです。
私に全く遺伝しておらず残念な母の数少ない長所は口が達者であること。6ヶ月間、失業保険を貰いながら探しあてた再就職先は、着物のセールス。職場は芸濃町から津市に変わりました。車の運転ができない母でしたが、ライバルセールスウーマンの車に乗せて貰いながらも成績はメキメキと上昇して、月収は20万円を超えました。収入が追い越された父は、文句ひとつ言わず、母の代わりに家事を一生懸命やっておりました。
★急激な変化である限り、交易条件の改善も悪化も、経済に打撃
韓国等との価格競争に晒されはじめていた当時の繊維産業は、ニクソンショックによる円高、石油ショックによる原材料高⇒スタグフレーションという“往復ビンタ”を食らわされました。この間、国内では田中角栄内閣による日本列島改造論。日本全国で一斉に行われた公共投資が、スタグフレーションを悪化させこそすれ、メリヤス工場の倒産回避にも、母の再就職にも、何ら貢献していないことは明らかです。
2008年10月-12月のマイナス成長の要因は、円高と輸出減です(ただし、円高要因だけで輸出減になったと言い切れないところが問題)。石油ショック直後のマイナス成長とは原因が180度近く異なりますが、外部要因の激変は内容がどうであれ、需要の内訳と供給の内訳に齟齬を生ずるという結果は同じです。
需要と供給の齟齬をハッキリと示しているのが、百貨店のフロア毎の混み具合。デパ地下だけが圧倒的に混んでいて、衣料品はガラガラ。欲しいものを作って売る以外に、需給調整の方法はなく、何十兆円も税金を無駄遣いしたところで、百貨店の地上階に客足は戻って来ません。
今朝の日経新聞のコラム、社説のコピーは「危機脱出、政治の責任重い」「追加景気対策は大胆に、賢く、遅滞なく」というのですが、、、国民の多くが政治に何も期待しない、天は自ら助けるものを助けるという意識であれば、そちらのほうが正しい。
最後に、日本のメディアも海外のメディアも、徹底的に無視している重要な事実を指摘させてください。
★日本の一人当たりGDPの伸び率は、世界で断トツ1位!
2007年の一人当たりGDPで世界19位に転落した事実だけは語り継がれ、その後の急激な円高はこちらの文脈では言及されない。大手メディアは、経済は悪いニュースを、スポーツは良いニュースを、報道したほうが売れるからに過ぎない。
円高要因だけでも、経済成長の年率マイナス二桁を打ち消して余りある。加えて、少子化(こちらの要因は僅かですが)。この豊かさの概念を実感するのは難しいことです。が、何も海外旅行や個人輸入などを試さなくても、悲観論を数字の通りに受け取ることは誤解を招くと警鐘を促すこともメディアの重要な役目なのでは。
これこそ冒頭のウォールストリートジャーナル記事への素人コメント
「せっせと蓄えてきた国が、大らかに遣い込んできた国より、経済失速が深刻というのはどういう理屈なのか、よくわからない」
という、素朴で、立派な、疑問への「七転び八起き」の、巨大メディアに代わっての回答です。
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