2008年10月17日金曜日

モラルハザードとファイアーウォール

●スウェーデン・クローナ、対ユーロで史上最安値(10/16FT)
バルト海沿岸諸国への貸出“Baltic exposure”の多さ、失業率の急増が懸念されていると。

●ハンガリーとウクライナ、IMF等に支援要請-アイスランドの二の舞を演じたくない?(10/16FT)
ハンガリーに対してはECB(欧州中央銀行)が50億ユーロの信用枠を設定。過去15ヶ月の信用収縮“credit crunch”のなかで、IMF(国際通貨基金)のような多角的機関“multi-lateral agency”が大陸欧州の国家を救済する動きは初めて。信用に餓えた市場“credit-starved markets”から資金繰り難に陥っている債務国の危機の深刻さを象徴しているとFT紙。ウクライナの株式は年初来80%値を消している。

資本を輸出している国だから投融資が焦げ付いて駄目。資本を輸入している国だから投融資が引き上げられて駄目。というのでは、為替の下落の説明にはなりませぬ。世界金融危機という言葉。米国発という枕詞がしばしば付けられております。その米国自体は、通貨ドルが日本円以外では最も堅調であるという皮肉な現象。リーマンショック以降1ヶ月間書き続けた私の捻くれた貿易理論でないと説明がつかないのでは。

多角的multilateralの反対語が一方的unilateral。自分勝手な、とも意訳されるこの単語。ブッシュ大統領率いるネオコン政権の形容詞として随分頻繁に使われて来ました。昨日ブログに書いたスイスの公的資金案はunilateralの局地でもあります。

unilateralな周辺国の政策にspeedyに対抗したイギリスのブラウン首相は、支持率が急回復しているとのこと。世界中の報道機関や経済専門家は略一様に「米国発の危機なのに、米国の対策が一番遅くて中途半端だ」という論調。いまさらモラルハザードが、何て言っているのは地球上で私だけかも知れません。が、ヨーロッパ諸国がモラルハザード問題を強引に無視してunilateralな政策を競うように公的資金をばら撒く最大の理由はuniversal bankingの国(銀行と証券の兼営が堂々と許される国)においては、自己投資で失敗しても自業自得である筈の事業部門が社会インフラとしての商業銀行部門を人質に取っているからです。銀行と証券の兼営を禁じた米国1934年及び1935年証券法(いわゆるグラス・スティーガル法)が撤廃されグラム・リーチ・ブライリー法に切り替わったもののインフラ整備が対応し切れていない米国との決定的な差になっています。

こんなことを言うと、証券村のなかで村八分にされるでしょうが、私は旧証券取引法65条(現金商法34条)には20年間一貫して反対です。しかし、投資銀行業務と似て非なる自己投資部門で穴を開けた責任を取らせず、血税に責任を取らせるためでは全くありませんファイアーウォールを置くべき場所は、銀行と証券の間ではなく、銀行証券(投資サービス業)と自己投資業との間であるべきだと考えるからです。
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