2010年2月5日金曜日

悪貨は良貨を駆逐する(第一回-後編)

デフレとインフレ・・・“まし”なのはどっち?

「悪貨は良貨を駆逐する」シリーズ第二回に入る前に、きのうの第一回で書き足りなかったことを追記させていただきます。

きのうの江戸幕府後期~末期の記事を読んでいただくと、何故幕府が財政難に陥ったのかというそもそも論にぶち当たります。鎖国を脅かす海外船に対峙するための防衛費が嵩みつつあったことも一因ですが、最大の原因は幕府政治の放漫経営。今流に言いかえれば、政官の腐敗だったのです。

大御所政治を別としても将軍在位で歴代トップの徳川家斉は、寛政の改革を進めた松平定信を罷免、質実を捨て、大奥に入り浸る豪奢な「政治」にのめり込んで行きました。それをファイナンスしたのが、通貨発行権(シニョレッジ)の濫用、即ち昨日の「悪貨は良貨を駆逐する」シリーズ第一回の、金銀交換比率が世界の実勢相場よりも3倍程度も歪(いびつ)になるような名目銀貨を大量鋳造し発行させたことだったのです。

妻妾の数は16人とも、40人とも、、、「オットセイ将軍」徳川家斉の食生活

「『デフレは悪だ。インフレが、善とは言わないまでも、デフレよりはましなのだ』という昨今猛威を奮っている似非ポピュリズムには、くれぐれも注意しなければならない」という教訓が、この歴史事実からもうかがえます。デフレかインフレかという極端な選択ししか与えられない状況にしているのは、今も昔も、大きくなりすぎた腐敗した政府なのです。

政治家と官僚という対立軸を見せようとかつての自民党も現在の民主党も躍起になっていますが、いずれも公務員である点では同じであることを忘れてはなりません。

そして、公務員が腐敗しないためには、政治権力が世襲なのと民主主義なのとどちらが良いのか、これが難しい問題です。少なくとも、これまでの自民党政治も、目下の民主党政権も、世襲と民主主義の悪いところどうしをくっつけた状況に陥っていることは確かです。

ところで、前述の徳川家斉将軍と大奥の関係ですが、妻妾の数が、特定可能なだけでも16人いたらしく、これを聞けばタイガー=ウッズも腰を抜かすのではないでしょうか?家斉がどのような食生活を送っていたのか気になる殿方は、こちらを参考にしてください。
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2010年2月4日木曜日

悪貨は良貨を駆逐する(第一回-前編)

FX会社の経営を任されて、間もなく丸5年となります。為替、すなわち通貨(の交換比率)は、人間の欲望の最も醜いところが極端に現れるものであり、それが人類の歴史の大きな転換点に繋がってきた、、、というエピソードを、暫くの間綴ってみたいと思います。

第一回 江戸幕府を崩壊させた金流出とハイパーインフレ
第二回 ヘルムート=コールの「英断」、1西独マルク=1東独マルク
第三回 スペインの価格革命「銀の大量輸入は国富の増大なのか?」
第四回 ブレトンウッズ体制の弱点をついたシャルル=ドゴールの金⇔ドル交換

ご覧の通り、時系列ではありません。

さて、さっそく第一回。折しも、龍馬伝で幕末ブームは衰えることを知りませんが、尊王の志士という生身の人間の生きざまとは距離を置き、或る種の「唯物史観」で大政奉還と明治維新を説明する流儀は流行らないでしょう。確かに、幕末の最初のトリガーはペリー来航(黒船襲来)であり、武器商人でもあった坂本龍馬たちの暗躍が「政権交代」の触媒となったことは事実に近いでしょう。しかし、ここのところはマルクスが経済こそ社会関係の土台(下部構造)と喝破したことに倣えば、(外貨準備としての)金の流出(略奪≒搾取)こそが、不平等条約の結果として最重要な倒幕への致命傷であったと指摘せざるを得ません。

グローバルには、同一質量の金と銀はおよそ1:15の比率で交換されていた(この比率は、古典古代の時代と大きくは変わっていません)にもかかわらず、幕末近辺の江戸幕府は、銀貨に、その本質的な(貴金属としての)価値の約5倍もの額面を割り当てていました。銀貨の質を落とした理由は、幕府の財政難に他なりません。ペリー後、初代駐日公使となったタウンゼント=ハリスは、彼自身が全権として締結した日米修好通商条約に基づき、同一質量の銀貨どうしの交換を日本に押し付けます。これによって、メキシコ銀貨(本源的価値=流通額面)を準備した貿易相手(米国などなど)が、悪貨である銀貨(金本位でありながら管理通貨としての名目貨幣)との交換を経由して、もとの3倍もの金貨を手に入れることを許したわけです(3倍という数字は、上記グローバル交換比率の15倍と国内の規制交換比率5倍の割り算です)。

この歴史事実を、「隣の大国がアヘン戦争で蹂躙されたので、(金流出という)みかじめ料を払うことで西洋列強の植民地に成り下がらないのなら御の字」という見方も出来る一方、「財政再建によるデフレを恐れて、銀貨の良質化を選択できなかった(追加生産による銀貨供給は不可能だった)江戸幕府の往生際の悪さ」と見ることも出来ます。交渉力に乏しい江戸幕府は、大量に金を流出させたあと、金貨自身を3倍に薄める吹き替え(金の本源的価値の3倍の額面を割り当て)を行なうことで、西洋列強への流出はとめたものの、当然の帰結として、ハイパーインフレを招き、これが倒幕への最大のモメンタムとなったのです。

このエピソードには色々な含意があります。金本位制度を長く続けてきた国々も戦争の泥沼化で一時的に金本位を停止したことは歴史上頻繁にあります。そして、戦争終了後も金本位制に戻れないこともあり、それが国力の衰退や覇権国家の地位を返上する事態に繋がることもありました(特に、第一次世界大戦後のイギリス)。

前回のブログで、オバマ政権が、突然にボルカー前々FRB議長の具申を聞き入れ、財政健全化と金融規制の方向を打ち出したことを、政権テコ入れのための取り繕いだと矮小化すべきでない と書きました。もとより米国では大衆の間ですらリバタリアニズムは根強いうえに、政権交代に翻弄されつつも歴代FRB議長は通貨の番人としての矜持を失わない実績があります。イラク、アフガン両戦争の後始末をさせられているという同情に、昨今のオバマ大統領が値するか否かはさて置き、通貨防衛≒覇権維持という観点では米国はいよいよ徳俵に足が引っ掛かったという認識をシェア出来るようになったと考えることも出来ます。
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2010年1月29日金曜日

米国にボルカーあり、日本に白川総裁あり

これが七転び八起きの1月締めくくりとなる雑感です。

ケインズ自身が実は「ケインジアン」ではなかったのではないか?ケインズという天才が「ケインジアン」に陥る程、頭が悪い筈がないのではないかというのが持論です。

風邪をひいて肺炎寸前の患者に向かって、今日から乾布摩擦を始めなさいという医者は居ないでしょう。それでも、乾布摩擦をやっておくべきだったし、いつかは始めておいたほうが良いという真理と矛盾するものではありません。オバマ大統領の金融規制や財政健全化を、政権テコ入れのための取り繕いと矮小化すべきではないでしょう。

これを突き詰めると、固定相場制、金本位制に行き着きます。現時点での非現実性は兎も角、それに、何と言っても筆者自身はFX会社の経営者なので、自らを失業に導きたくはない(笑)ですが、今日のような変動相場制は、とりわけ各国の中央銀行の衆愚政治からの独立性がマチマチであること、中央銀行とは別の、ソブリンウェルスファンド(そのもののような政治体)の相場操縦が無視できないという前提のもとでは、想定外の危険性を孕んでいることを指摘せざるを得ません。
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2010年1月22日金曜日

チャリティコンサートのちらしが出来上がりました♪♪

とは言え、まだ曲目が載っていないという画竜点睛を欠く内容ですが、チェルノブイリ子ども基金の事務局の皆さんの渾身のお力で、レイアウトの美しいちらしになりました。

チラシの表
チラシの裏

曲目不掲載のままアップしましたのは、肝心の(????)、ウクライナ出身の“コロラトゥーラソプラノ”、オクサーナ=ステパニュックさんと私丹羽の重唱曲が決まっていないからです。以前、当ブログにて、予定と書かせていただいたヴェルディ作曲歌劇「椿姫」から第一幕ヴィオレッタのアリア「あゝ、そはかの人か?~花から花へと」および第二幕ヴィオレッタとジェルモンの二重唱「天使のように清らかな娘を」が廃案となり、同じくヴェルディ作曲の歌劇「リゴレット」からアリアと重唱となるかも知れません。

いっぽう、内定しましたのが、我が国を代表する若手女流ヴィルトゥオーゾ、印田千裕さん のヴァイオリンの独奏曲です。難曲の定番とも言えるサラサーテ作曲「序奏とタランテラ」 および、印田千裕さんが若くしてライフワークとして取り組んでいらっしゃる日本の女流作曲家の作品の発掘と普及の活動の一環として、幸田延(こうだのぶ)のヴァイオリンソナタ(日本人初のクラシック音楽の作品と言われています)を取り上げます。

オペラ以外の作品で、出演者全員が演奏する曲目として、カッチーニ作曲「アヴェ・マリア」を準備中です。カウンターテノール(=男声の裏声)の名曲として現代に蘇ったイタリア古典歌曲ですが、キーをオクサーナさんに合わせるため、残念ながら私の気持ち悪い裏声(←謙遜です&笑)は御披露できない予定です。また、サラ=ブライトマンとアンドレア=ボッチェリの重唱で大ヒットした「君と旅立とう」も、バリトンとしてはややきついキーですが、頑張ります。

チケットのお問い合わせは、フェニックス証券広報係長丹羽広まで、連絡先ご明記のうえ、お気軽にお問い合わせください。
h.niwa@phxs.jp
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