2020年3月23日月曜日

アジア人は「コロナ耐性遺伝子」を受け継いでいるのか



各国比較ーあてにできない感染比率から何を読み解くか???
新型コロナウイルス感染症のメインステージが中国(・韓国・日本)から欧米へと急速に遷移しました。

欧州に関しては、前回ブログを更新していた時点ではイタリアが断トツであったのが、2週間も経たずに、欧州全域に広がりを見せ、ほとんどの国々で国境閉鎖、原則外出禁止(食料品と薬品の買い物を除く)状態になっています。

 イタリアだけが(欧州で)例外的な特徴があったわけではなかった理由???

 中国が震源地でありながら、東南アジア、南アジアの諸国では感染者や死者について(今のところ)深刻な統計が上がってきて来ない理由???

欧米と同様に、国境閉鎖、外出禁止の政策がとられている南米諸国では、実は、上記同様、統計上はまだ欧米やほんの少し前までの中国ほど深刻ではないように見えます。

週末三連休で急に箍が緩んだ感のある日本人の多くに、なんとなくアジア系、厳密にはモンゴロイドは今回のウイルスに対しては強いのかもという楽観が蔓延してはいなかったかと???そして、前回のブログ更新時の課題であった、

 各国統計で、感染者数の数値は当てにならないという問題。つまり、死者の数は正確だったとしても、感染者数となると陽性だが無症状にとどまる人をどれだけ補足できているかが検査態勢で違いすぎる問題を克服できないか???

きょうは、新型コロナウイルス感染症についての続報として、を掘り下げると同時に、について、新型コロナウイルスが中国以外で騒がれ始めた2月、対応の悪さについて欧米諸国から批判されたクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の統計もあわせて検討してみます。


この数表は、本日2020323日現在の、主な国々の感染者数、死者数に、参考目的で人口を加えたものです。さらに参考として、イタリアにはサンマリノ共和国ロンバルディア州を、米国にはューヨーク州を加えました(出典:日本経済新聞社、Wikipedia、国立感染症研究所など)。

フィルターの掛け方で様々な示唆が出てきます。初期状態としては、死者の数を感染者の数で割った数値で悪い順に並べています。

さすがにまだフェイクニュースにすらなっていない《モンゴロイド大丈夫説》の観点からは、非常にざっくりと、モンゴロイドの比率が高そうな東アジア~東南アジア(インド周辺と島しょ部を除く)と南米の一部について黄色でハイライトしています。良い加減で楽観にもほどがある仮説を棄却するほどではないものの、結論付けられるにはほど遠い状態であると言えます。

むしろ警戒すべき要因として《ソーシャル・ディスタンス》との関係で人口密度と都市化率を取り上げたいところです。

イタリア就中ミラノを州都とするロンバルディア州の医療崩壊が話題となっています。ニューヨークやロンドンの首長たちが言う通り、医療崩壊の閾値の問題は深刻です。トーマス・ロバート・マルサスの「食糧は算術級数的にしか増えないが人口は幾何級数的に増える」を捩れば、「ワクチン未開発の感染症患者と死者は幾何級数的に増えるが医療機関は算術級数的にすら増えない」という現実があるからです。

そのうえで、行政区分(厳密には国家)で行くと、サンマリノ共和国のほうがロンバルディア州よりも数値が悪いのです。注目されていない事実の背景として、医療環境に加えて、人口密度要因が考えられそうです。

米国はおろか、日本であろうと、行政単位が大きすぎると人口密度だけではこの問題には太刀打ちできません。ここでは「都市化率」という概念が役に立ちます。日本だけを見れば、時系列で、人口が増えていないなかでも、中山間地などの過疎化と東京など都市部への集中は同時に進んでいるところ、その都市部の全人口に占める割合が「都市化率」と言われるものです。日本の都市化率は世界と比べてどうでしょうか???

出典は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ「我が国の「都市化率」に関する事実整理と考察」20097月)という古い論文です。

都市化過疎化の問題は人口集中の問題と必ずしも同義ではありません。市町村単位の集中過疎、都道府県単位の集中過疎、そして地方中核都市と大都市、大都市間の人口の奪い合い(東京VSその他など)など、階層的でフラクタルな問題です。そこを思いっきり捨象すると、日本の都市化率は、G7の中では低いのです。東海道新幹線に乗って、東京または新大阪から何十分経っても、車窓から地平線まで田園風景にはお目にかかれません。必ず民家集落が視野のどこかにあります。G7の他の国ではこんなことはありえない、というくらい、日本と比べて都市化が進んでいる。。。これがグラフが意味するイメージです。

経済効率から言えば、集中のメリットのほうが集中のデメリットより大きいと考えられてきました。

が、パンデミック(や戦況次第で戦争)となると形勢が逆転します。「東京は人口も集中しているが病院も集中している。お茶の水の近くに住めばどの病院に行くか迷うくらいだ」なんてのは平時の話です。

ほんの一か月前には、「東京でオリンピックができないならロンドンが代わりにやってあげる」みたいな侮辱をうけていたわけで、黄色人種として反撃したい気持ちもありますが、ここは謙虚に、東京は、ミラノやマドリッドやロンドンを笑えないことを自戒する必要はあります。

京都大学山中伸弥教授の個人サイト

そのうえで、モンゴロイド(全員ではない)が農耕文明のなかで敢えて取り入れた酒に弱い遺伝子、つまりアセトアルデヒドを分解できない体質がある種の除菌には作用するというところが、上記数表の傾向と関係しているかも知れないなどなど、研究を進めていきたいところです。

前回の繰り返しながら、フェイクニュースに紛らわされないことが最重要です。現時点で、最もフェアでアンバイアスな情報整理がなされていると思われるもののひとつとして、京都大学山中伸弥教授が個人で運営されているサイトがおすすめです。「論文から見る新型コロナウイルス」というページに、

「武漢の3つの病院に入院した204名の解析。99人(48.5%)の種所(原文ママ)は消化器症状であった。消化器症状としては食欲不振83名、下痢29名、嘔吐8名、腹痛4名であった。7名は消化器症状のみで、呼吸器症状はなかった。消化器症状を示す患者は重症化する傾向にあった。」

という記載があります。読者の皆様のまわりにも、こういう傾向があったが病院に行かずに自然治癒したという方々もいらっしゃったりはしないでしょうか。さらには、前回ブログの繰り返しですが、検査していないため実は陽性だが症状はまったく出ないという人が少なくありません(それでも濃厚接触の度合いによっては人に感染させる能力を持つ)

山中教授によれば、「年齢にかかわらず感染者の約半分が無症状」ということで、この貴重な研究結果は、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号に関わった大勢の皆さんの犠牲のもとに得られたものです。

もう一度数表に戻ると、クルーズ船は検査が悉皆的であったため無症状陽性の感染者が全員カウントでき、これに近いのはだいぶ離れて韓国ということになります。クルーズ船での致死率が約1%、日本と中国の致死率が約4%ということは、「未検査陽性無症状」の人は「症状あり」の人()と同数程度というのでは計算が合いません。無症状陽性の人が同数以上いるか、軽い症状だからとかさすがに新型コロナウイルス感染症ではないと高を括って自然治癒を果たした人、さらには前回ブログで例示した病院にかかったが新型コロナウイルス感染症とは診断されず風邪薬と胃薬を処方されて回復したひとの合計が統計上の感染者数の1~2倍ほど潜在していることになりはしないでしょうか???

通院または入院実績あり、診断結果陽性、含む回復済み・死亡

日本の人口の三分の一を死に追いやった天然痘ー温故知新

ワクチンが手に入らないパンデミックが人口のどれだけを死に追いやるのか有史以来の情報をまとめたサイトがウィキペディアにあるのでご紹介します。

List of epidemic 日本語訳サイトなし
感染症の歴史 英語サイトなし

今回巷間でよく比較対象としてあげられる第一次世界大戦末期のスペイン風邪や、12世紀の中世ヨーロッパを襲った黒死病よりも、天平年間の日本を襲った天然痘735-737のほうがより壊滅的だったという驚きの事実があります。高校で日本史を選択して日本史で受験もしたという大学の同級生も、本件知らなかったとのこと。

では世界史はどうかというと、ローマ帝国の五賢帝の最後を飾るマルクス・アウレリウス・アントニヌス在位中に中近東出兵によりもたらされた天然痘(諸説あり、日本語サイトなし)で、直後のローマ帝国は、民間、兵士をあわせて、500万人もの人口を減らしてしまうこととなった。ローマ帝国の人口統計は、税金目的のおかげ(上記の奈良時代も同様)で、ある意味しっかりはしているのですが、身分別、属州別のデータは取りづらく、これが当時のローマ市民の何割なのか、属州を含めた帝国全体の何割なのかははっきりしません。しかしながら、教科書で書かれている五賢帝以降の愚帝が続いたことや、ゲルマン民族の大移動と比べても、このパンデミックは政権の流動化や帝国東西分裂(諸説あり)、キリスト教の取り込み(取り込まれ)などに与えた要因としてもっと注目されるべきでしょう。

そして、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの使節が、当時の中国すなわち後漢の皇帝に謁見したのはほぼ事実で(中国の史書に安敦と記載)、この一連の動きのなかでだれがだれとどのように濃厚接触したかはわかるよしもないですが、その後後漢は間断なく天然痘禍になやまされたそうです。天平年間に日本に天然痘を持ち込んだのは南蛮船説と遣唐使説があります。(後)漢と唐とでは時間に開きがあるものの、この東西交流と関係がないかどうかはわかりません。

国民の三分の一も殲滅する天平年間の天然痘禍を凌ぐのは、16紀メキシコのサルモネラ禍(全人口の8割!)くらいしかないのです(出典ウィキペディア、日本語訳サイトなし)が、これはスペインによる侵略と、500年に一度という規模の旱魃が重なったせいでもあると指摘されています。

ウイルス感染は、ワクチン未開発状態では、人類は、記録にあるだけでも、流行地域の何割もの人口を調整してしまう能力があることを思い起こさせる温故知新でした。


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