2020年3月26日木曜日

新型コロナの致死率と、トランプの我田引水


手洗いと、、、

米国のトランプ大統領が、24(火)の会見で、「新型コロナウイルスに打ち勝てる道筋が見えてきた」として、復活祭で「教会を満席にして祝えるように」4月12日までには、自宅軟禁~隔離政策を解除させたいと述べたことが物議を醸しています。

人気のトランプ大統領のツイッターを覗いてみました。報道機関が引用しているのは、

会見同日のこちらのツイートです。反響も大きく、アンチ・トランプ勢からは、「ホワイトハウスにとっては、米国民の命よりも、ダウ平均株価のほうが関心事項であることが暴露された」みたいなリツイートが多いです。



トランプ大統領自身も、他人のいろんなつぶやきや報道をリツイートしています。最初に引用したCNNなどアンチ・トランプの記事については偏向報道などとコメントをつけて、、、ですが。

注目は、

新型コロナウイルスに関してはトランプ大統領が正しい。世界保健機構は間違っている。

というイスラエルの疫病学者の記事です。これが、トランプ大統領の、一転、自宅軟禁~隔離政策を早期解除へと駆り立てた理論的支柱になっていると考えられます。

非常に長いインタビューの形式になっています。

トランプ大統領の変節の理由は?

わたくしの前々回前回のブログと、分析結果の8~9割が一致します。

重要な点から並べると、

①新型コロナウイルスの致死率は0.45%と推定される。世界保健機構の言う3.4%よりも著しく低い(留保付き賛成)

②新型コロナウイルスのRo(ひとりの感染者が何人を感染させるか?)は2.0である。だとすると、ワクチンが開発されるまでの間に収束する=筆者注)感染者の世界人口に対する割合は50%(留保付き賛成)

③医療資源に制約があるときは、(治る見込みの高い)軽症の若者よりも、(治る見込みの低い)重篤な高齢者を隔離入院させたほうが良い。
  (1)エボラ出血熱で現場を指揮したときの教訓
  (2)急性の重篤な症状の患者のほうがウイルスをたくさん持っているから+死に際に大勢の見舞い客が来て感染するから
(上記②Roが、(a)重症患者>(b)陽性だが軽症>(c)陽性だが症状なし、、、という傾向であるという点で、エボラ出血熱と新型コロナウイルスが同様であるとは言い切れないし、イスラエルの疫病学者もその点は断言していない)

まず、①について。前回、前々回のブログの通り、国や地域(そして極端な事例としてのクルーズ船)で検査態勢が異なること、検査の精度自体の問題もあることから、多かれ少なかれ、感染者の統計が(b)と(c)を取り逃がしているわけで、ゆえに、巷間言われているよりも感染者は多く、致死率は低いというのは間違いないです。

ですが、イスラエルの疫病学者が主張するように、0.45%ぽっきりかというと完全同意は出来ません。

致死率を計算した今週23(月)のエクセルシートを再掲します。きょうは、その1週間前のデータと比べて、《実績値としての致死率》がどれくらい変化したのかが見られるようにしました。

今週の時点で、致死率が、世界保健機構の期待値をも大きく上回っているイタリア、スペインなどは、ほんの1週間で悪化度合い自体も酷いことがわかります。

《実績値としての致死率》からアプローチすると時系列分析が必要で、平均の潜伏期間、発症するしないの確率、発症した場合の回復に要する期間、発症したが回復できず、、、の期間等の平均・分散を知りたいところです。これらが入手困難だとしても、各種タイムラグが(おそらく1週間ずつくらいは)あると考えられるので、致死率が安定しないのです。

そしてこれにさらに、医療崩壊の要因と、年齢構成や、他の持病との併合の要因が重なります。

クルーズ船からのデータの貴重さは強調しすぎることがありません。これまた年齢構成や他の持病など、母集団にありすぎる特徴の考察は保留させてもらうとして、本日ブログを書いている時点で、月曜日から死者が3人増えてしまい、《実績値としての致死率》は不幸にも1.4%と上昇しました。

クルーズ船の《実績値としての致死率》の微妙な高さや変化と比較して、イスラエルの疫病学者の0.45%はさすがに楽観的すぎる気がしてなりません。彼の記事を見る限り、クルーズ船のデータを顧みている形跡がありません。彼に、国立感染症研究所の論文を英訳して送ってあげるのが、人類のために役立ちそうです。

全人類に感染するのは所詮?時間の問題だという事実?

次に、②のRoは、見た目より難しい概念です。Roは各種の病原菌に固有の値ではないらしいのです。そのうえで、馴染みのある病原菌の各数値をご紹介すると、

新型コロナウイルス  1.4~3.9(上記記事では2と紹介されているところ)
はしか        12~18
HIV/AIDS      2~5
季節性インフルエンザ 0.9~2.1(1918年のスペイン風邪や2009年の新型インフルエンザはまた数値が異なるようです)

はしかについては、昨年欧州で深刻な疫病として「復活」したことは別としても読者の皆様に馴染みが深いと思います。

筆者は子供のころなかなか罹らなかったので、近所でより小さい子供が罹ったと聞くと、オカンに連れられ「罹りにいかされた」ものでした。それでも罹らなかったので、「これだけやって罹らないのだから、一生罹らないのではないか?」とご近所巡りに抵抗を示したらたいへん怒られました。

結局ワクチンを打つことになりました。

ワクチンを打つ段になって、ワクチンを打つことで軽い症状は出るんですよね?と聞いたら、いや出ないですよとお医者さんに言われ、横から看護婦さんが、えっ、先生、普通にはしかに罹ったのと同じですよ。何言ってるんですか!?みたいな会話で、どっちでも良いから早く打ってくれと思ったのを覚えています(以上の会話はすべて伊勢弁でなされております)。

日本酒(ビール)と同じく、生酒(生ビール)と、火入れ(加熱処理)されたものがあることを知ったのはずいぶんあとのことです。

新型コロナウィルスは、はしかと違って、2019年12月の時点ではまだ誰も免疫を持っていなかったうえに、ワクチン開発と運用まであと1年6か月掛かるということがありますから、、、

Ro>1

であれば、全員が感染するのは時間の問題で、4の5の言っても仕方がないのではないかと素人考えが頭をもたげてしまいます。

日常会話で「時間の問題」と言い回しが使われるのは、遅かれ早かれとか、どうせ駄目になるのだから手間かけて対応しても意味がない、みたいな文脈が多いです。感染症ではここが大いに異なります。対応することに意味があるからです。

しかし、

対応、つまり具体的には現在世界人口の25%が経験している自宅軟禁が、感染のスピードをいくら遅らせたとしても、最終(※)的には、全人類が感染し、一定割合(※※)は無症状のまま免疫を取得し(この集団のことをHerd Immunity(集団免疫)と呼ぶそうです)残りは症状を経て回復するか残念ながら死に至るかという定常状態(新生児要因は無視しています)になるというロジックにおいては、筆者はこのイスラエルの疫病学者に賛成をせざるを得ません。

※生ワクチンかどうかにかかわらず、
《無症状のまま免疫を取得できるワクチン》
が開発され運用可能になるのが、この定常状態に間に合わないことが前提です。

※※このイスラエルの疫病学者によれば、一定割合は50%らしいですが、新型コロナウィルスのRo=2.0から、この50%という数値がどうやって導かれるのか、記事を読んでも筆者には理解できませんでした。

わかりやすく譬えて言うと、日本は、来年7月までに、新型コロナウィルスの終息(収束)宣言を出さなければいけなくなったのですが、これに間に合わせるためには、自宅軟禁などの隔離政策をとらないほうが安全であるという逆説的かつ不都合な事実を突きつけられているわけです(上記※の前提で)。

医療崩壊と経済崩壊。守るべきはどちらか?

もちろんここで「医療崩壊させないことのは重要ではないか!?」という《物言い》がつきます。イタリアやスペインそしてフランスの惨状を追っているニューヨーク市のアンドリュー・クオモ市長(民主党)が強調しているところです。

これに対して、トランプ大統領は、《経済》を犠牲にしてまで、治療と隔離を押し通すのは馬鹿げていると言い始めたというわけです。

トランプ大統領にとっての経済は、再選を実現するための、ダウ平均株価と雇用統計だけではなさそうです。トランプ大統領が経営するテーマパークの売上という死活問題があるという指摘があります(25(水)のテレビ東京WBS)。

トランプ大統領の公私混同、我田引水の疑惑を追及するのがブログの目的では実はありません。どこの国の政策担当者(※)にとっても、ワクチン開発スピード(※※)を所与とせざるを得ないならば、医療を崩壊から守るのか、経済を崩壊から守るのか、この二者択一を迫られていること。この究極の選択のどちらに傾いても、ワイドショーのような「報道」では批判票を集めて井戸端会議しておけばよいわけで、番組の構成や視聴率の面では手頃なテーマとして弄ばれてしまう点、注意を要します。

※米国に加え、英国(ボリス・ジョンソン首相)と日本において、そのブレの激しさが目立っています。

※※ワクチン開発スピードと、病原菌の突然変異(体のうち過去の免疫が機能せず新たな病原となる「株」の出現)のスピード、病原菌の感染のスピード、、、これら3つの変数が鍵を握ります。












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