2020年3月10日火曜日

新型コロナウィルス感染症

トイレットペーパーだけでないフェイクニュース
わたくしどもアヴァトレードグループのイスラエルのオンラインマーケティングチームの俊英は、ヘブライ語がいささか苦手なイギリス人です。彼が、昨年日本に来たときに、夜中近所の焼肉屋で熱弁していたことが、ソーシャルメディアがどれだけ人類社会に悪い影響を与えているか、でした。

主要なソーシャルメディアはユダヤ人の創業によるものですが、イスラエル居住者であるわたくしの同僚の多くは、アメリカのビッグビジネスで成功したユダヤ人のことを悪く言うことが驚くほど多いです。会うたびに毎回その話になると言っても過言ではありません。

極端な例が、ユダヤ人であるマーク・ザッカーバーグ創業のフェイスブックが、決して創業者の思想信条ということではないにしろ、ただただ経済的成功のために、米国や欧州での反ユダヤ主義運動の再燃の温床になっている事実とそのメカニズムについて彼は力説をしていました。これは見方によっては、イエス・キリストやカール・マルクスやアドルフ・ヒトラーが思想信条として同胞の逆側の立場に立ったことよりも深刻です。


世に知られているソーシャルメディアの弊害は、2016年後半に絶頂を迎えます。米国でのトランプ政権の成立と、英国のEU離脱を問うた国民投票。両者へのロシア関与の疑惑についてはいまだに100%の証拠はないものの、フェイスブックなどの手助けは明らかとされています。グローバリズムに疲れ切った先進国の中間層にとって、反ユダヤ主義に加え、移民排斥や民族主義、保護貿易などを糾合するポピュリズムは、揮発性燃料として蔓延し充満した。この見立てによる金儲けこそがソーシャルメディアです。切手代の要らない郵便局、入場無料の公園よろしく、まるで公共財のようなその存在は、しばしば目を疑う不快な広告さえ無視すればこんな便利な道具はないと考えてしまいます。ビッグデータを掠め取り分析する、そしてターゲット広告を流す、そのような人工知能神話だけでごまかされたビジネスモデルでは、この規模の経済的成功は説明できません。

このような巨悪の温床となっているソーシャルメディアにおいて、
「トイレットペーパーはマスクと原料が一緒だから」
というフェイクニュースは、むしろかわいい部類です。もっともらしいフェイクニュースは、パニックやバブルを形成します。ジョン・メイナード・ケインズが美人投票や貯蓄のパラドックスで説いた経済恐慌の分析も、また立場は異なるものの、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス、フリードリヒ・ハイエクなどの切り口は、今で言う行動経済学的な慧眼と言えます。この人類社会の愚かさは繰り返し捉えられているものの、決して撲滅はできないのです。

一帯一路と一蓮托生
ここまでが、恒例、長すぎる前置き、フェイクブックもといフェイクニュースの巻、でした。

これらのエピソードは新型コロナウィルスにあてはまるでしょうか?

感染者や死者の統計が正しいのか?中国の発表を信用して良いのか?

WHO(世界保健機構)の声明は最新の医学生理学の分析結果を反映しているのか?あてにならない大本営発表なのか?

これらのありきたりの命題を論ずるには、ここのブログはあまりにへそ曲がりです。

まず、感染者と死者の統計を各国横断面で比較することの無意味さについて、です。こんなブログにまで目を通してくださっている賢明な読者の皆様はもうお気づきのことと思います。

前提として、新型コロナウィルスの根源は、中国湖北省武漢のじめじめした市場で食用として取引されたこうもりであるという通説に立つことにします。武漢の細菌研究所から故意または過失によって漏れ出た細菌(テロ)説や、イタリア北部とイランも武漢同様の「震源地」であるといううわさは一旦措きます。

そうすると、イタリア北部とイランの感染拡大のペースと規模は異常値だとなり、その説明として巷間言われているのは、

① イタリアとイランは、中国の一帯一路構想に組み込まれているから?
② イタリアとイランは、大気汚染が深刻から?武漢はエピセンターであるだけでなく大気汚染も感染拡大に一役買ったと言われている?
③ 生活習慣が不衛生だから?食事の前に手を洗わない。便所の後に手を洗わない。挨拶におけるハグの習慣など。

このうち、①は、確かにイタリアがG7のなかでは真っ先に一帯一路構想に参加合意した国であること。一帯一路構想の「一帯」つまり陸のシルクロードを具現化した「中欧班列」の根幹をなす中国ー英国ルートにとって、武漢はその最重要拠点駅であり、ミラノは終着点のひとつです。イランもまた敵対するサウジアラビアとともに「中立性」という謳い文句にほだされて一帯一路構想に参加、テヘランもまた鉄道網に組み込まれてはいます(上図には入っていません)。とは言え、一帯一路構想に参加している国は中央アジアにも東ヨーロッパにもいっぱいあって、このことだけでイタリアとイランの特殊性を説明するのは無理があります。

次に、②について。大気汚染(や煙草)と新型コロナウィルスの感染、発症、重症化の関係についてはかなり根拠のある研究があるようです。イタリアはモータースポーツが文化に根付いている国柄からハイブリッド車などが普及していないというのはあるかも知れませんし、ゆえに空気が汚いかも知れないのですが、これは他の欧州のほとんどの国も同様です。同じように、イランを大気汚染で区別するのも無理があります。

最後に、③は、清潔好きな日本人との対比では信憑性のある微笑ましい話ですが、上記②と同じように、イタリアとイランをほかの欧州諸国、中東諸国と区別させるに十分な要素ではありません。

くだらない俗説は枚挙に暇がない今日このごろです。上記①~③のなかで、敢えて殊更くだらない③について掘り下げてみましょう。

新型コロナウィルスは、その国際的な略称(Covid-19)にあるように、昨年すでに発生しているのですが、日本で大きく話題になったのは、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号がきっかけでした。その時点で、中国に次いで感染者?発症者?死者?が多い、危機管理のなっていない国という烙印をおされていたのが、あれよあれよと思ううちに、韓国に抜かれ、イタリア、イランに抜かれ、米国その他にも抜かれようとしているわけです。

この現象を、日本人の清潔さや危機意識の高さに帰すひともいるでしょうが、再び、賢明な当ブログの読者は、「群盲象を撫でる」で安易な真実めいたものに飛びつくことはないと思います。

トイレットペーパーだけでなくパニック症候群
現時点で知られている限られた事実に基づくしかないですが、それでもはっきり言えることは、

感染者数には、(1)検査を受検し陽性だったが発症はしていない「静かな保菌者」と、(2)発症して診断により陽性が確認された発症者(含む重症患者、死者)の両方が含まれるところ、(1)の受検率は各国でバラバラであるので、(1)と(2)の合算結果を横断面で比較する意味がもともとない。

為政者による故意か過失かはともかく、日本では(1)の受検率が少なくとも韓国に比べると著しく低いことが確かです。この点、イタリアとイラクで何故高い(らしい)のかはわかりません。為政者による云々と書きましたが、個人的には不要なパニックを避けるために、また臨床現場での不要な感染を避けるためには、このままで良い(※理由は後述)と考えます。

いっぽう、(2)について。臨床現場のもうひとつの事情、実は頼まれても検査が出来ないのだが、かと言って患者を不安のまま帰らせないということで、かなり典型的な新型コロナウィルスの症状で受診しても、新型コロナウィルスとは異なるが今流行の別の風邪だから安心しろとして、解熱剤と胃薬を処方されておしまいというケースが多発しているものと思われます。これまた、低レベルの井戸端会議を公共の電波で垂れ流している地上波ワイドショー的には許されない事実かも知れないのですが、上記(1)と同様、同じ理由※でこのままで良いと考えます。

フェイクニュースの話に戻ると、おそらく最大級の嘘は、WHO以下の、「飛沫感染と接触感染」だけ説ではないかと推測します。つまり、空気感染もあること、その分、各国統計(とくに日本の数値)を大きく上回る感染者がいると推測されること、さらにその分、感染しても発症はしないサイレントキャリアの割合が公表されている統計よりもかなり高いこと。このあたりの分析が、パンデミックレベルでない典型的なインフルエンザとの比較でなされると有意義ですが、ニューヨーク・タイムズの一部の記事でやや触れられているくらいで、なかなか入手困難です。

現状ではざっくりしたことしかわかりませんが、通常のインフルエンザと比べると、感染未発症の人の割合は同様に高いが、重症化率、致死率については、もとより年齢差があるところ、新型コロナウィルスのほうが加齢要因による重症化が大きい、、、感じはします。

もう少し、なけなしの事実についてお話します。また非常に面白くも深刻な話だと思ったのが、同じくニューヨーク・タイムズが報じているところですが、今回のワクチンの量産化には少なくとも18ヶ月掛かると言われていますが、米国の大手の製薬会社は、過去のパンデミックでワクチンの開発を迫られた際のトラウマがあって、開発に乗り気ではないという話。感染症のワクチンの副作用や後遺症に関する訴訟リスクが、売上に比べると大きすぎてビジネスにならないと考えられるのだそうです。こうなると社会主義の一面も持つ中国に期待するしかないのかも知れません。

このような状況においては、日本の受検率の低さ、受診率の低さ、意図的誤診率の高さは、嘘も方便と言ったところかも知れません。ただしこれが真実ならば、新型コロナウィルス関連各国統計横断面比較の無意味さについて再度強調に値します。

対処療法についてはHIV薬などいろいろ情報が飛び交う中、ワクチンが上述のニューヨーク・タイムズ報道の通りだとすると、多くの識者が、封じ込め(containment)が最も有効と嘯く気持ちもわかります。いっぽう、個人的には、もはや世界中の空気中には普通感冒のアデノウィルスと同じように、新型コロナウィルスもうじゃうじゃいてもおかしくないと推測します。封じ込めは、経済活動への極端なブレーキになってしまっただけかも知れないとも考えられます。

「落ちてくるナイフを拾うな」
アヴァトレード・ジャパンのMT4では、ライセンス上、発注約定は出来ませんが、外国為替(の通貨ペア)のほか、株価指数や、国債、商品の代表的な店頭デリバティブのチャートが利用できます。ご覧の画像は、原油の日足です。昨日月曜日には、大きなギャップダウンを経て、2016年1月以来の安値1バレル=20ドル台を付けたのが確認できます。

新型コロナウィルスのパンデミック化による世界的な総需要の縮小、中国を事実上のハブとするサプライチェーンの寸断に、OPEC加盟国とロシアによる追加減産協議の決裂が泣きっ面に蜂となりました。

マクロでは減産合意こそが合理的な意思決定であるにもかかわらず、ミクロでは自らの売上を減らしたくないから、価格下落分を数量(≒シェア)で取り戻すという行動に出る。それが更なる価格下落をもたらすというネガティブ・フィードバックです。先述のジョン・メイナード・ケインズの貯蓄のパラドックスに象徴される合成の誤謬です。

※新型コロナウィルスの検査機会を増やすことも、事後的に受検や受診が不要だった非感染者、非発症者が、接触機会が増えたことで感染する、発症者を増やすということにつながり、医療機関へのストレスとなると、同様のネガティブ・フィードバックが発生します。これが「嘘も方便」を個人的に支持する理由でした。

では、1バレル=30ドル前後まで急落中の原油は値頃なのでしょうか?「落ちてくるナイフは拾うな」なのか?「人の行く裏に道あり花の山」なのか?

「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」かわからないように、諺や格言は何の助けにもならないわけです。前段の新型コロナウィルスの群盲象を撫でるの巻は、世の中が悲観的過ぎていないか、楽観的過ぎていないか、どちらだろうかという問いについて、疫学的にはもしかすると前者かも知れないとの推察です。しかし、その悲観論に基づいて各国で封じ込め政策が連鎖しています。わたくしは中国バブルは何かはきっかけとなって崩壊すると考えてきましたが、予想してから何年も経つので予想は外れたも同然です。そしてそのきっかけもまた予想外です。個人的には中国経済は国営企業の乱脈経営とその不良債権の逃げ道としてのシャドーバンキングの破綻がきっかけでバブル崩壊と見立てていました。きっかけが間違っていようが、またサプライチェーンが復興したとしても、総需要は回復しないと見ます。

ホモサピエンス小史とインフェルノ
ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモサピエンス小史」とダン・ブラウンの「インフェルノ」は、いま人類史上の先端で起こっている不幸に対して驚くほど啓示的、預言的です。

前者のメッセージの一部を自分なりに解釈すると、生態系と言うと、バランスのとれた食物連鎖のピラミッドのようなイメージがあるが、その頂点に立つ人類は部品として不要である(植物や菌類なくして動物は存在できないが逆は真でない。この動物のところを肉食動物や人類と置き換えることもできる)。人類がこのような他の生態系参加者にとって有害無益の存在になったきっかけは農業革命であり、温暖化の現況である産業革命やそれ以降の文明の有害性よりもより根源的である。農業革命をきっかけにした人類の地位向上は、それ以前の、例えばアンモナイト※だとか、恐竜だとかが大手を振るうようになったのとはスピード感がまったく異なったために、生態系に与えてしまった衝撃は甚大で他の生物の進化(突然変異の積み重ねによる緩やかな適応)のための猶予が与えられなかった。その悲惨さが、人類が各大陸に定住したと考えられる推定年代に集中する殺戮された巨大獣の化石からわかる等。です。

※アンモナイトには手はないですが・・・。

後者は、有名なダ・ヴィンチ・コードの続々編で、人口爆発に警鐘を促すカリスマが世界中の女性の一定割合を不妊にさせる空気感染する菌をばらまくという話で、物語は奇しくも北イタリアのフィレンツェから始まります。これは、ダンテ・アリギエーリの神曲(地獄篇)、中世の黒死病との関連で選ばれた舞台です。ダン・ブラウンはこのカリスマを巨悪のアンチヒーローだと単純に描いていないところが妙なのですが、いろいろ物議を醸してしまったようで、扱うトリックは非常に良くできているのに、ダ・ヴィンチ・コードほどの成功とは行かなかったようです。

限られた事実に基づく推測の域を出ない点、繰り返し強調しなければなりませんが、新型コロナウィルスそのものについては過度な悲観論には要注意であるものの、中国バブル崩壊のきっかけとしては十分過ぎたと考えられること。空気感染を覚悟しつつ、人類の宿痾について考えるきっかけにしたいです。


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