きょうは、お読みいただく前に注意していただきたいことがあります。
わたくしが為替相場のフェアバリュー(≒値ごろ感)とか、購買力平価(≒ビッグマック指数)を語るとき、過去何度も相場予想を外しているという実績です。
特に酷かったのは、2008年のリーマンショック前後のオーストラリアドル、ニュージーランドドルについて、2018年のトルコリラについて、です。
いっぽう、大当たりしているのはロシアルーブルについてです。
これまた注意が必要です。
(1)わたくしが占い師として有能なわけではなくて、「購買力平価で見て割安すぎる通貨を(対米ドル)で(押し目)買いするとうまくいく」というのが成り立つのは、世界広しと雖もロシアルーブルくらいだという残念な現実
(2)ロシアルーブルが原油相場との相関関係が強いため、原油相場の循環的な性質が、たまたま購買力平価説を後押ししているというのが現実
ではさっそく、アヴァMT4で原油CFD(画面上半分※)と米ドル・ロシアルーブル(USDRUB 画面下半分)を比べて見てみましょう。
赤い楕円で囲んだ3つは、いずれも、ロシアルーブルが史上最安値を更新した局面です。
2014年は早や2月からクリミア半島(+ウクライナ東部)を巡るロシアとウクライナの事実上の戦争で、ロシアルーブルは年初からじりじりと史上最安値を更新する展開でした(青の楕円)。『じりじり』と表現しましたが、その後の原油暴落で追い打ちを掛けられた「底」(上記チャート上では「天井」)が余りに高く、いまからふりかえると『じりじり』なのですが、当時は多くの外国為替市場参加者が押し目買いの誘惑に駆られ、原油暴落による追い打ちは想定外だったと嘆かれたものでした。
青の楕円の部分は、原油相場下落手動の、原油≒ロシアルーブルの正の相関相場ではないことがわかります。
この先、2016年初頭までの一番底と二番底については、とくに前者は、クリミア半島のロシアによる併合を認めない旧西側諸国によるロシアへの経済制裁の影響と、原油相場下落の影響が混然一体となっています。
この頃、原油相場は、地政学的なリスクより、需要と供給の均衡に翻弄されはじめました。
需要≒世界経済全体の景気-廃プラ問対策-温暖化対策、、、
供給≒OPEC+ロシア(のカルテルの首尾)+米シェール(+加オイルサンド)+代替エネルギー(含む再生可能エネルギー)の価格競争力、、、
需要も供給も、一日や二日で、相場を何割も変えるような性質のものではなさそうなのに、何割も下落して1バレルがマイナスの30ドル以下になったというのが一週間前でした。先物取引(≒デリバティブ取引)の怖いところでもあり、またそのようなオーバーシュート(※)が異常値であると見切った投資家にとっては千載一遇のエントリーチャンスを与えてくれるのも先物取引(≒デリバティブ取引)であるということになります。
このように、例外的な局面(=青く囲った楕円)もあるものの、基本は原油市場の鏡となっているロシアルーブルのビッグマック指数を見ていきましょう。
英エコノミスト誌のビッグマック指数は、毎年1月と7月が基準なので、今回の原油相場とロシアルーブル相場の史上最安値更新(3月19日の81.89!!!)はチャートに反映していません。それでも、ロシアルーブルがビッグマックの値段で見ると、対ドルで61%も割安で、これは調査対象通貨のなかでは南アフリカランドをブービーメーカーとするブービー賞(ワースト二位)であるとのことです。
ロシアルーブルのビックマック指数としての過去最悪値は2015年1月調査の72%割安という記録が読み取れます。いっぽう、2020年1月の実際のロシアルーブルはUSDRUB=61.43とのことなので、現在のUSDRUB=74.70で計算し直すと、対ドル割安度合いは75%となり、記録を更新してしまっていたのです。
さて、冒頭に、、、謙遜も含めてですが、、、「購買力平価で見て割安すぎる通貨を買いとうまくいく」というのが成り立つのはロシアルーブルくらいだ、と豪語しました。
本当でしょうか?
英エコノミスト誌のビッグマック指数の特設サイトは、記事本体を読むためにはメアド等の登録が必要ですが、上記スクリーンショットのグラフィック上で遊ぶだけなら、登録すら要りません。そこで、ロシアルーブルと並ぶ下位集団の通貨をいくつかマウスオーバーしてみてください。
トルコリラ、
中国人民元、
最後に、チリペソ。
アヴァMT4で投資が可能な通貨のみをピックアップしました。
これだけ見ても、押し目買いチャンスがはっきりしているという点で、ロシアルーブルは特異な存在なのです。
他の新興国通貨と比べて、
「購買力平価で見て極端に割安になると、是正される」
性質は、ひとつにはやはり、原油相場の鏡であるという性質、原油は通貨や金(ゴールド)や暗号資産と異なり(交換価値だけでなく)使用価値がある財であるという点に負うところが大きいのですが、
もうひとつ再訪したいのが、各国の一人当たり国民所得との関係なのです。
ほとんどの場合、購買力平価で割安すぎる国は、割高すぎる国に比べて、一人当たりGDPが低すぎるのですが、
この点でもロシアは例外であるという事実です。
2016年2月のこの投稿は、そうは言っても結局のところは原油相場がどうなるかであろうという落ちで終わっていますが、購買力平価を扱う際に、一人当たりGDPには注意を払うべき理由をくどくどと書かせてもらっていますので、是非もう一度お読みいただきたいと思います。
以上、どう読んでも、原油を買うかわりにロシアルーブルを買いましょう、みたいな記事に読めてしまうところですが、過去の経済危機で起こったことは今回の経済危機でも繰り返されるわけではない点にもまた要注意です。世界同時株安=円の独歩高、では今回はありませんでした。そして、原油先物当月限最終取引価格マイナス、これも誰が予測できたでしょうか。
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