2009年4月2日木曜日

シティグループ株に群がる米国個人

★落ちてくるナイフを拾うな!

というウォール街の古い諺を無視しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている現象とは、シティグループ株の人気の過熱振り。昨年10月末から80%下落した同銘柄は、去る3月5日に底(1.02㌦)を打ち、昨夜の引け値は2.68㌦(↑5.9%)。

某ネット証券一社だけの数字ですが、同株式の出来高は、3月が9.3百万株と、2月の3.4百万株から倍以上に人気化しているとのこと。

★値が飛ぶから面白い。

株価下落で「小口化」したことだけでなく、その「投機性」が魅力なのだとWSJ紙。値段が飛ぶから面白いのだと。外国為替証拠金(FX)取引で、かつて英国ポンドが人気だったのと同じ理屈で根拠なき熱狂ということか。

シティグループ株がどれくらい値が飛ぶのかと言いますと、月曜日が11%下落、火曜日が9.5%上昇。で、昨日は上述の通りですから。

ちなみに、(最初で最後の!?)三角合併のお陰で、シティグループ株は東京証券取引所にも上場しており、我が国の普通の証券会社でも取引可能です。しかし、七転び八起きとしては読者の皆さまに銘柄推奨はしません。オバマ政権のモラルハザード政策は国内でも人気を失いつつあるだけでなく、今週末のG20でも叩かれそうです。金融システムの安定とモラルハザード回避と両立は大変難しいうえ、イベントリスクと情報格差に挑戦してこの種の投機に向かうのはリスクリターンのバランスが悪すぎる。

★お勧めは??

それでも何か宝くじ的な適当な投資対象は無いですか?と聞かれたら、同じシティグループでも半値近くまで下落した社債(ユーロ円債やサムライ債)がお勧め。完全国営化で株券が紙くずになっても預金と債権は保護される可能性が高い。

これでも十分なモラルハザードですが、預金債権保護まで否定すると世界は修羅場となります。それから、我が国のREIT

残念ながら、いずれも出来高が少なく、シティの普通株ほど短期売買には向きません。ただし、REITについては倒産したパシフィック・ホールディングス系の二投資法人が例外的に出来高が多くまた極端に割安なため、シティ株と同じ現象が起きています。REIT分野は銘柄が多すぎて、今後規制緩和により合従連衡は必定と考えられています(合併時の負の暖簾代を配当に回さなくても法人税が掛らないように税制改正は既に決定済)。
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2009年4月1日水曜日

過去最悪の日銀短観、国家破綻危機に学ぶ

朝8:50に発表された日銀短観。特に注目されていた大企業製造業の業況判断指数は▲58。予想以上の悪化で1974年以来の短観の歴史で最悪の数値。

為替は直ちに円安に反応するも、一瞬にして買い戻され、その後は短観発表前に比べ寧ろ若干の円高水準。

日経平均は朝からプラス圏。

エイプリルフールねたに落とすつもりはありません。それを言ってしまえば、四回に一度は短観は四月馬鹿になってしまいますから・・・

大企業製造業の閉塞感と、物質には満ち溢れているが雇用不安から逃れたい=年金が出るまでクビになりたくないという怯え。これは大いに関係があるようです。

松下幸之助氏が二股ソケットを開発し、安藤百福氏が即席めんを開発したころ、意欲ある日本人は「こんなものがあったら便利だな・・・」というヒントを探しまくり、夢をひとつひとつ実現していったのだと思います。ドラえもんの人気は衰えないにもかかわらず、もう一歩上の物質文明のステージにあがることが死活問題だという意識は日本人にもなければ、これまでのメイド・イン・ジャパンの御得意様諸外国にもないという事実から目を背けるわけには行きません。

児童ポルノで摘発された問題のアフィリエート広告。先ほど、アフィリエートのASP会社のご担当と話をしたら、最近伸びている分野は化粧品と健康食品を始めとするEコマースだそうです。

「歴史は繰り返す」という諺と対立するのが「人類はその叡智によって果てしなく発展し豊かになれる」という歴史観。しかし、英国産業革命に端を発する工業文明は、繰り返しもなければ、際限なき発展も有り得ないのではないかという、上記ふたつとも異なる歴史観もあるのではないでしょうか。

ところで、国家破綻危機の事例として、七転び八起きブログではアイスランドを徹底的に取り上げて参りました。これは似非金融立国の熟れの果て。金融が(原則として)虚業であることを忘れていい気になる国・企業・役職員にとっては他人事ではありません。問題は工業立国、貿易立国もまた他人ごとではない事例があることです。

それはウクライナ。19世紀まではヨーロッパの穀倉地帯と呼ばれ、20世紀はソ連の穀倉地帯と呼ばれた、大農業国という印象の強かったウクライナは、21世紀に入り急速に工業化します。昨今の失業率、自国通貨下落、経済成長率のマイナスは、世界の最悪水準であり、10年弱の工業化の恩恵を逆回転させるほどの勢い。混乱の陰には、殆ど常に、積年のロシア関係という外交等の要因が控えているとは言え、それ故、我が国には参考にならないとは言えません。ちなみに、我が国の貿易依存度は10%程度と決して高くないことは以前より当ブログで強調して参りました。対するウクライナは、50%近くにのぼっており、穀倉地帯の印象とは大きく異なります。

当ブログでは、ウクライナ問題を定期的に取り上げていくことにします。
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2009年3月31日火曜日

一目均衡表は相場の鬼に棒

昨夜のオンラインセミナーは絶好のタイミングとなりました。テーマは、先月に続き、一目均衡表。より詳しく掘り下げるために、フェニックス証券セミナー初の特別ゲストとしてテクニカルアナリストの手塚宏二さんをお招きしました。時将にGM問題で、オバマ大統領の態度硬化が伝わり、株式と米ドルは急落中。GM問題には昨年から悲観的だった当ブログですが、何故今のタイミングかというのはファンダメンタリストは教えてくれません。ではテクニカルだとわかるのか?答えを是非、昨夜のセミナーをオンデマンドでご覧ください。
http://ondemand.nice2meet.us/?log_key=phoenix-1-905f_50c5ee8eb33bb99b7fa2f8bbb1631d76
ちなみに、ファンダメンタリストとは七転び八起きのこと。過去10回のセミナーのうち殆ど当たったというのでは自慢にならない。謙遜ではありません。セミナーをやった次の日に当たったこともあれば、1ヶ月経ってから大当たりということもある。これでは真剣な投資家の皆さんのお役に立てていないと反省。
http://ondemand.nice2meet.us/?log_key=phoenix-1-905f_50c5ee8eb33bb99b7fa2f8bbb1631d76
次の交差点が青信号か赤信号かは居眠り等していなければ判ります。問題は、交差点到達直前に信号が変わりそうかどうかの判断。歩行者信号機がヒントになるように、当ブログの一目均衡表も、総合得点(▲4~+4)以外にも目配せポイントがあります。
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2009年3月30日月曜日

解雇理由、正社員と契約社員の違い、

★米グーグル、人員削減計画発表もなお新規採用へ(日本語ロイター)

グーグルは26日、200人の人員削減を発表したばかり。また、1月には正社員100人を削減。さらに、2月にはラジオ広告事業からの撤退で40人を削減すると発表。

リストラ対象部門は、広告と営業。検索機能連動型の広告(アドワーズ)や、コンテンツマッチの広告(アドセンス)はWEB2.0の看板的存在でしたが、金融危機の影響を被った点では、紙媒体や地上波テレビと五十歩百歩なのか。無論、この50歩の差は大きいのですが。

さて、週初のテーマはWEB2.0とかネット広告の話ではありません。上記ロイターの記事に「正社員」という言葉が使われております。「正社員」とは何でしょうか?

話題のグーグルの検索窓に「正社員」と入れると、「正社員 契約社員 違い」という組み合わせが450万件と関連キーワードの中で検索件数がトップだと表示されます。世相が如実に読みとれます。そこで複数の上位サイトの解説をまとめてみると、正社員とは?

★雇用契約で雇用期間を定めない契約
★とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められ、また、辞めたいときにはいつでも辞められる

「とくに問題がなければ(問題を起こさない限り?)定年まで勤められるんだ」と何となく認識しているが根拠は不明で心配だとおっしゃる大企業サラリーマンの方々に最近頻繁にお会いします。そこで今度は、同様に「解雇」でググってみますと、「解雇とは」「解雇理由」が合わせて470万件以上も検索されており再び世相が表れております。

就業規則違反の「普通解雇」や「懲戒解雇」については省略します。問題は「整理解雇」、すなわちリストラ目的の会社都合による解雇が、どの程度罷り通るのか、です。

我が国の大企業正社員は終身雇用制度に守られていると一般に思われている根拠は、恐らく1974年判例

「企業に人員整理の必要が高度に存するにも拘わらず、整理解雇という手段に訴えることを極力制約しようとする論理は、解雇に先立ち、出向・配置転換・任意退職の募集・一時帰休その他解雇回避のための努力を最大限に要求し、この点に不徹底がある以上解雇を許さないとするものである。」(S54.7.31岡山地裁「住友重機玉島製作所事件」)

で確立(!?)された『4条件』

①企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと(人員削減の必要性)
②解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと(解雇回避努力)
③解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること(人選の合理性)
④人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと(労働者に対する説明協議)

ではないかと考えられます。ただし、判例“法”はこれだけではないようです。検索結果を遍く調べた限り、大阪労務管理事務所(所長 三嶋道明先生)の頁が最も充実しているように思えました。

さて、これら4条件が終身雇用の根拠だとすると、「年俸制採用企業や外資系企業は終身雇用ではない」との思い込みも怪しくなります。現に、最近では未曾有の整理解雇の嵐が吹く外資系金融機関においては本国の労務管理担当にとって想定外だった訴訟沙汰が多発しているそうです。

本題に戻すと、大企業サラリーマンは勿論、企業経営者の問題意識は、この判例“法”における「高度の経営危機」の解釈でしょう。破産等は良いとして、債務超過、部門閉鎖、営業所統廃合などでは多少疑義があります。まして、

赤字が巨額かつ構造的で業績回復の客観的な見込みが立たず「継続企業疑義」が注記される程だが、過去の内部留保のお陰で債務超過には至っていないケース

では、「高度の経営危機」だと太鼓判を押してくれる法律事務所は少ないでしょう。

構造不況の業種や企業のリストラがスピーディーに行われないことは、正社員天国=日本の底力を蝕むだけでなく、やる気のある正社員が無用の閉塞感に晒されてしまう。正社員VS契約社員という構造だけではないのです。

法律(強行法規)が弱者を助けているように見えても実態は無意味だという点で、旧法借地法借家法と似ています。借主(=弱者)の保護を目的としていながらも、貸主としては「簡単に追い出せないのなら、簡単には貸さない(=定期借地借家より高い家賃を取る)」気分にさせる程度の法律効果しか見込めなかったという厳然たる事実を、原則旧法踏襲に拘り借地借家法改正を骨抜きにした1992年当時の野党は真摯に反省すべきです。

今朝の日経新聞5頁の山田昌弘中央大学教授「大企業の採用は30歳からに-有能な若者は中小企業へ」という論稿も、同じような問題意識に由来するアイデアだと思われます。
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