2009年10月15日木曜日

老眼鏡がたった100円

週末、ホッチキスの芯を買いに100円ショップに行きまして、以前から必要だった老眼鏡を衝動買い。その性能と安さに驚きました。その店が仮に「100円ショップ」という看板を掲げておらず、1000円の値札であったとしても七転び八起きは迷うことなく買っていたと思います(この場合の、1000円と100円の差900円は一消費者にとっての「消費者余剰」であると経済学では呼ばれます)。

昨日、NHKの長寿番組「クローズアップ現代」でコンビニの苦境が報じられておりました。FC本部の営利追求の結果、コンビニチェーンは飽和状態に達する(1店舗当たりの商圏人口が3000人程度という限界点にまで低下している)ほど店舗数が増えてしまい、同系列のコンビニ同士の食い合い(カニバリゼーション)も顕著になってきています。そこで、われわれの記憶に新しい「セブンイレブンの弁当値引きに関するFC本部の抑制(規制)に対する公正取引委員会による『排除命令』」。皮肉なことに公取委の介入はフランチャイジー(コンビニ店主たち側)の要望や利害を代表した結果であるにもかわららず、FC本部(フランチャイザー)の言い分通り、既に食い合いが始まっている同一商圏の同系列コンビニ同士の足の引っ張り合いをより酷くさせ、フランチャイジーの利益もフランチャイザーの利益も共に激減するという“両者リングアウト負け”状態に至らしめました。

この結果として、富は劇的に再配分され、昨今特に低賃金に喘ぐ倹約好きな消費者たちに多大な「消費者余剰」がもたらされているのです。

自称ケインズ信奉者の経済学者はマクロ経済学と称してこの現象をデフレスパイラルと呼び、デフレ≒景気低迷(景気悪化)という常識を庶民に植えつけてきました。与野党を問わず政治家の多くも右に同じ(“左に同じ”と言うべきか)でしょう。

しかし、赤字国債を乱発し国家予算を膨張させたところで、100円ショップの老眼鏡が1000円以上に戻るでしょうか?コンビニ弁当が百貨店のデパ地下並みの値段を維持出来るでしょうか?ダイエーが「価格破壊」という流行語を産み出したのは90年代前半でした。100円ショップやユニクロ、しまむら、そして今コンビニ競争と、デフレ“スパイラル”が止まらないのは、我が国が20年もかかって未だに政府や日銀がデフレ対策の有効打突を決めていないからではなく、余りにも競争がなかった状況から、競争が導入されて(これでもまだ)間もないからという視点も必要です。

日本=デフレ(スパイラル)=不景気低成長はコンセンサスです。七転び八起きの言説は少数意見です。ですから、高成長=高金利(高インフレ)=新興国投資は正しい、いずれは円安だ、という意見に人気が出ます。物価上昇率や購買力平価の算定は完璧に客観的に行うのは不可能ですが、多くの証券会社が外貨投資をそそのかしている新興国の多くが、名目の高金利からインフレ率を差っ引いた実質金利はゼロ近傍であることは無視できません。かたや、日本では、お弁当の値段をはじめ衣食住すべてにおいて、とくにインターネットを通じた私的なコミュニケーションから商取引まで、またその土台となるハードウェアや通信回線に関するコストを考えても、当局が出す統計より遥かに実質的な価格破壊を実感出来ています。実質デフレの年率は、とある有名な海外メディアの算定では5%から10%だそうです。消費財バスケットは世帯それぞれで人生いろいろですが、納得される読者の皆さまも少なくないのではないでしょうか?

もしそうだとすれば、銀行の普通預金は金利ゼロのようで、実は実質年5%~10%で運用出来ているのです。日本の銀行が儲からない理由はここにもあります。少々論理は飛躍していますが、適度な規制で潤ってきたリアルの産業が、インターネット分野から競争を挑まれた結果、デフレが起きると、既存産業を支えてきた商業銀行は行き場をなくすという現象は、日本だけでなく米国でも起こっていることが昨今証明されています。

以上の天邪鬼な分析は為替にも示唆を与えるものです。新興国通貨、例えば南アフリカランドを売りから入る人は殆どいないでしょう。多くのリテール証券会社が、南アフリカランド建ての“ぼったくり”外国債券を必死に不招請勧誘しているようです。名目のキャリー損失が精神衛生上嫌なので判っていてもなかなかできないことですが、実質金利が低い通貨【南アランド】を(調達して)売り、実質金利が高い通貨【日本円】を買って(運用する)、この投資戦略に一理あることはいずれ実証されることになるでしょう。

名目金利が高い通貨を売る。これが出来るのもFXの魅力です。“ぼったくり”外国債券で過去何世代にもわたって大量損失のばら撒きがリテール証券会社によって繰り返されてきました。その仕返しが出来るのはFXを通じてしかありません。
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2009年10月9日金曜日

アンドロイドとスカイプは黒船か?どこでもドアか??


タケコプター(ヘリとんぼ)、どこでもドアがあれば、という夢はドラえもんの愛読者でなくとも抱いてきたのではないでしょうか。人類全体の幸福度を高め、温暖化効果ガス削減にも貢献しそうです。

しかし、これらの夢の実現が不都合だという立場の人たちもいます。それは料金収入を前提に経営をしている陸海空運業者です。

碓氷峠に新しいトンネルが掘られ、長野新幹線が出来て東京~軽井沢の時間が随分短くなって久しいですが、リゾート好きの多くの人たちに満足感をもたらしたインフラの改善も、峠の釜めしを売っていた人達には新たな活路を探すという試練を与えたものでした。

一昨日、米国時間に報道された二つのAT&T絡みの特報

★米国でiPhoneのキャリアを担うAT&Tが同機でのSkypeの使用を認める。従来の方針を180%転換へ (WSJほか)

★デルが携帯電話端末に参入。キャリアはAT&T。基本ソフトはGoogleのアンドロイドを採用(WSJほか)

夜、電車で帰宅するとき、社内の大半の乗客が携帯端末を見て、メールかゲーム等のブラウジングかに夢中になっているというのは、世界広しと雖も、日本だけの風景だと、大手携帯キャリアの方から聞いたことがあります。パソコンはさて措き、携帯端末で世間や友達と繋がることが生活に占めるかなりの部分だという日本人の多くは「パケット通信料は高くても、まあ仕方が無い」と観念してきたと思われます。SkypeやGoogleやDellが各々の層(Layer)で携帯分野に攻め入り、それを甘受する旧態メディアAT&Tという図。このメディアを日本に置き換えると「日本人の皆さん、何故パケット通信料なんか払い続けるのですか?」という民族系キャリアを震撼させる話になります。

一昨日、進化論という原則には重要な例外【𩸽(ほっけ)やナマコなど】があるという話をしました。ダーウィンが進化論のヒントにしたと言われるガラパゴス諸島は、技術水準が高いにもかかわらず世界のデファクトになっていない日本の携帯業界の譬えとしても使われる“用語”です。通信の無料化は我が国のガラパゴスにとって無条件降伏しなければならない“黒船”でしょうか?

私は必ずしもそうだとは言えないと思います。まず、Skypeの夢は順調には具現化していないという話を以前にお伝えしました。またGoogleにしてもDellにしても世界戦略の中で、少子高齢化で且つ過当競争の我が国携帯市場をどの程度重視するか疑問です。日本市場のためだけに、特別にカスタマイズまでして、絵文字(顔文字)やおさいふケイタイを導入するでしょうか?勿論、ドコモにとっていつまでもi-mode的な成功に酔いしれている余裕はないでしょうが、これまでパームやブラックベリーの席巻を喰いとめたガラパゴス=パワーは馬鹿にならないと思われます。

ちなみに、最近のNTTドコモの株価はコチラです。10年来の安値圏を急落中の株価は果たして割安でしょうか?
http://minkabu.jp/stock/9437/timeline
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2009年10月7日水曜日

「子ども手当をばら撒きというひとはマクロ経済がわかってない」

この藤井裕久財務大臣の発言に対して2ちゃんねるではお祭り騒ぎになっているようです。
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1254871259/
http://www.mof.go.jp/kaiken/kaiken_my20091006.htm
そもそもマクロ経済の実態というのは経済学を勉強しさえすれば把握できるような性質のものなのかどうか七転び八起きには疑問。「子どもは親(の所得水準、生まれ育った地域が都会か田舎かなど)を選べない以上、憲法も保証している教育の機会均等、なによりも子どもにとっての将来の夢に向けての公正な競争は、財源問題よりも遥かに高い次元で実現を目指さなければならない」ただその一言で良いのではないでしょうか。

これは週末のNHKスペシャルを視ての感想。「格差の是正が課題であり、格差の原因は、『非正規労働者』の増大であり、またそれは日本が『市場原理主義』を受け入れてきたからだから、『グローバル資本主義』は遮断しなければならない」という目下人気の議論と連動しがちではありますが、大衆迎合の政治上のテクニックを別とすれば、これらの議論こそ遮断すべきでしょう。

競争の行きつく先が戦争であるとも或る意味言えるので、競争は激し過ぎても緩すぎても社会は綻びます。(人類を除く?)生態系は生存競争の結果としての進化(論)を受け入れているというのは定説。しかし原則に対する例外の存在があるから小選挙区制度のようにWinner takes all(独り勝ち)とはなりません。海を泳ぐ魚にとって動物プランクトンが増殖するのは短視眼的には喜ばしいように見えますが、“赤潮”は植物プランクトンを全滅させるので結局巡り巡って魚の餌がなくなってしまうからです。

NHKスペシャルを視たあと、同じくNHKで「ほっけ(𩸽)柱」の話をしていました。海を泳ぐ魚にとって、“浮き袋”が発達していることは自由に色々な深さのところを泳いで餌を探すことができるわけで競争上有利に違いありません。ほっけ(𩸽)にはこの“浮き袋”が殆どないことを解剖で示していました。一年の半分は動物プランクトンの死骸が海底に沈むのを食べている一方、動物プランクトンが元気に海面近くで泳いでいる季節には、ほっけ(𩸽)は群れをなして、“浮き袋”がない分、他の種類の魚よりも断然一生懸命に尾びれを震わせ上昇を目指すのだそうです。この異例の推進力が(空気中の上昇気流が竜巻を生むのと同じ理屈で)渦潮を産み出す。これがほっけ(𩸽)柱であり、回りからどんどんとプランクトンを引き摺りこむので効率的に餌にありつけるというわけです。ほっけ(𩸽)柱が渦潮を伴うので、鴎など天敵も近寄りがたいようです。

これまたかつてNHKのラジオで聴いた話ですが、海底を這うことしか出来ないナマコには天敵が殆どいない(敢えて言えば中華料理好きの人類くらい)そうです。動きが鈍く逃げ足が遅いナマコの類が生き残っているのは、かぶりついたところで皮の部分が分厚い割には“身”が少ないので、わざわざ海底まで潜って捕獲しにいくには値しない獲物だというのが海の中の生き物の間でコンセンサスになっていること、動きがどうせ鈍いのでエネルギー消費量は少なくて済むため、海底の砂を食べてその中に僅かに含まれる栄養分だけを摂取するという非効率的でのんびりした食生活には競争相手がいないことが理由だそうです。

ナマコのような清貧の思想は、無資源国である日本が細く長く繁栄するために重要なヒントを含むような気がします。

競争上有利なものだけが生き残るという進化論が原則に過ぎないことを示す例は、
①有性生殖が絶対有利なのに無性生殖が残っている(前掲のプランクトンなど)こと、
②生存競争におけるモラルハザードを排除した結果が体内受精だとしても、体外受精の魚類は人類が幾ら進化論上遅れていると軽蔑したところで絶えるわけではなく、逆に絶滅してしまえば、巨大赤潮と一緒で、人類そのものまで巻き添えを食ってしまうこと、
③進化論上もっとも進化していると自画自賛の人類は、自然界を制覇しているように見えて、ウィルスとの戦いは半永久的に続きそうであること、
など枚挙に暇がありません。

(グローバル)競争が善か悪かという二項対立からは社会問題の是正への糸口は見えてこないでしょう。第一歩としては競争の結果責任は親の世代は或る程度負うのは仕方が無いにしても、子どもの世代には負わせないという哲学を浸透させることでしょう。

今朝のFT紙は、資源通貨の代表格豪ドルの(予想外の?)利上げ(=リーマンショック後、G10諸国では初)と金相場が(ドル建てで)記録的高値を更新し、世界経済の回復が軌道に乗りつつあると報道する一方、モルガンスタンレーのスティーヴン・ローチ氏の論稿「2008年から2009年にかけての世界的経済危機は国内および国家間のマクロ不均衡が原因。その不均衡が再び危険水域に近づいている」を同時に取り上げています。
http://www.ft.com/cms/s/0/5f02e83e-b2a3-11de-b7d2-00144feab49a.html
http://www.ft.com/cms/s/0/bee43992-b27b-11de-b7d2-00144feab49a.html
マクロ不均衡は人類における“赤潮”そのものでしょう。
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2009年10月2日金曜日

雇用統計とCFDガイド


本日日本時間21:30発表の米国雇用統計。予想(コンセンサスは非農業部門雇用者数で17.5万人減少、ちなみに前回は21.6万人の減少)より更に減少すればドル安、予想ほど減少しなければドル高、・・・




と教科書通りに動くかと言えばそんな保証はありません。予想より余程悪ければ、一方向のドル安はありうるでしょう。しかし、予想ほど悪くなかったとしても、ドル高は一時的かも知れません。七転び八起きが引き続き注目する通貨ペアは相変わらずの過大評価に加えて中国の外貨準備政策とロシアの為替介入




で余談を許さないユーロ/ドルです。雇用統計が予想ほど悪くなかったとしても、1.46台、1.47台は極々一時的でユーロ安方向に極端に反転する動きが大いに考えられます。

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