2019年1月28日月曜日

DupliTradeの使い方

世の中の技術進歩についていけないと嘆いていてはいけないのですが、

それにしても、ZOOMという道具、便利です。



無料枠もじゅうぶん活用できて、GAFA並に、ただより高いものはないという恐怖も感じるところですが、四の五の言わずに使い始めております。



以下は、1/25(金)収録分。一週間まえよりもかなり使い慣れてきました。



本日月曜日は、ファンダメンタルズ分析の曜日のところ、Youtubeにあげるのが適当かどうか迷いつつ、いまいまの問題意識を整理しますと。。。



①日本の貯蓄率の長期激減

土曜日の「池上彰のニュースそうだったのか!!」では、日本人は貯蓄好き、日本の貯蓄率は世界のトップレベルと思い込んでいたパネリスト(もちろん番組の演出でしょうが 笑)の予想を裏切る現実を暴露。

その主たる要因として高齢化があげられています。

ものごとの本質をあまり毀損することなくわかりやすさを追求する池上彰さんの真骨頂のあらわれですが、それでももうちょっと公平に分析している良いサイトを見つけました。

主要国の家計貯蓄率の推移

レーガノミックス時代の米国を、やれ双子の赤字だ、三つ子の赤字だと馬鹿にしていたバブル経済前夜の日本がかつてあったところ、いつのまにか日本がそんな状況に陥ってしまっているとも読めてしまいます。注意しなければならないところはいくつかあって、



(1)フローとストックを混同してはならない

日本経済全体で毎年の可処分所得以上に消費をしてしまっている(過去の貯蓄を食いつぶし(はじめ)ている)ことと、家計部門全体で他の部門(例えば海外とか国庫←ありえないですが 爆)から借金状態に陥っていることとは異なります。

2010年代の日本は年によっては前者。

1980年代の米国は年によらず後者。



(2)「だから高齢化(少子化)はゆゆしき問題だ」

子供の数を増やさないといけない。貯蓄まで失われてしまったら、世界に誇れる日本の資源は何一つなくなってしまう。。。という言論は果たして正しいでしょうか?(←池上彰の番組でそこまでの意見を引き出しているわけではありませんので念の為。)



(3)なぜここまでもドイツとの差がついたのか?

第二次世界大戦後の経済成長の奇跡と並び要された日本とドイツで、1990年以降の貯蓄率の推移を比較するのは、なかなかに悲しいものがあります。この現実をわたくしたちはどう整理すると良いでしょうか?



(4)貯蓄率と金利の関係???

そんなこんなで、週末は貯蓄率とその推移、各国比較などをテーマにネットサーフしておりました。リンクを貼らせてもらった本川裕(ほんかわゆたか)さんの記事以外は、客観性の点でも包括性の点でもどうかなと思うものばかりでした。特にそのなかで、近年の日本の貯蓄率低下の原因として高齢化以外に後押ししているものとして低金利、ゼロ金利があるという記事がありました。なるほどと思われてしまうかも知れませんが、金利が低いまたは無いから貯蓄しないというのであれば、需給によって金利が上がって、そこそこのところに貯蓄率も戻れば良いようなものです。



なんとなく、貯蓄率と金利水準と物価水準は深い関係があっても良さそうなものなのに、日本では、貯蓄を食いつぶし(はじめ)ながら、金利も物価も抑制できて(!?)いるというわけです。



そこで、インフレと言えば、添付のYoutubeでも最後にちょっと触れたベネズエラとジンバブエ(ほかにもトルコやアルゼンチンなどなど実は枚挙に暇がないのですが)について現状報告したいところです。



②ベネズエラ経済を混乱に陥れたマドゥーロ大統領の反対勢力を、米国および米国同盟国が支持

新しい冷戦の舞台が、米国大統領選やBREXITなどの情報(諜報)空間だけではなくなってきました。アラブの春の終着点としてのシリア、チェルノブイリ原発事故とならぶソ連凋落のきっかけであったアフガニスタンでは、イスラム過激派を巻き込み複雑化している戦闘状況でしたが、ここ中南米においては、旧冷戦さながらの外交対立がはっきりと見えてきてしまいました。



実は、冷戦後半の1970年代には、世界の人口の三分の一、国の数で四分の一が社会主義(陣営)という状態でした。西側はこれをドミノ現象と警戒し、東側はこれは現象ではなくマルクスの唯物史観どおりの歴史展開である(?)と絶賛していました。



しかし、この「社会主義」国のなかには、リビアやジンバブエやその後のベネズエラのように、軍人(将軍)による長期独裁政権が多く含まれておりました。それを言うなら、本家本元のソ連(スターリンやブレジネフ)、中国(毛沢東)も同類かも知れません。彼らは反米でまとまるために、「社会主義」を宗教的イデオロギーとして悪用したところが本質であり、労働者や農民を搾取するという点では、なまじ独占資本主義よりももっとひどいことをしていたのかも知れません。



先週末、「マドゥーロは大統領としてもはや承認しない」という動きが、中南米の多数を含む米国同盟国によってこれまたドミノ倒し的に出てきましたが、ウォール・ストリート・ジャーナル誌(かなり親米、親トランプ)によれば、これらによってもマドゥーロ(前?現?)大統領を現実的に引き下ろすのは難しいのだそうです。中南米の多くの国々がそうであるように、過去の政変において軍事組織が果たしていた役割が非常に大きく、昨年来、いろいろと謀反の動きや反逆の動きが出ていたにせよ、同国軍によるマドゥーロ大統領への支援体制は盤石なのだそうです。



③ジンバブエ

これは法定通貨とは何か、仮想通貨とは何か、そもそも通貨とは何かを考えるうえで見逃すことが出来ない現実を突きつけてくれています。ここもまた、

(1)反政府運動を軍隊が実力で弾圧している、とか、

(2)南アフリカ共和国に金融支援を要請したが断られた、とか、

(3)PayPalに似た「EcoCash」というジンバブエ生まれのスマホ決済の会社が様々な話題を振りまいているようである。

さすがに長くなってきましたので、ベネズエラとジンバブエは回をあらためたいと思います。

2019年1月11日金曜日

@VAチャンネルを開設!平成最後の新年のごあいさつ

読者の皆様、

寒中お見舞い申し上げます。平成最後の今年もどうかよろしくお願いいたします。

平成最後は皆様すでに聞き飽きたかもしれませんね。このブログは平成年間の最後三分の一をカバーしつつ、毎年、更新頻度が低くなっていると自戒しております。

そのせいで、米国金融については、歴代FRB総裁のグリーンスパン、バーナンキ、イエレン各氏のことは書き綴ってきたものの、現総裁のパウエル氏についてはひとことも説明できていませんでした。

相場について言えば、ここ二、三年は、大きな変動があろうとなかろうと、相場のことは相場に聞くしか無いという相場格言が圧倒的に正しくて、ファンダメンタルズ分析をしても詮方ない。テクニカル分析がすべてという思い込みや諦念がありました。

これは極端すぎる考え方だったと反省しています。昨年、途中までは主要通貨のボラティリティが低下するなか(とくにドル円、ポンドやユーロは爆弾を抱えたままです)、トルコリラ危機を始めとするエマージング通貨や、ビットコインなど仮想通貨は絶望的な相場下落を経験しました。仮想通貨やブロックチェーン技術の本質やそれらの虚実については、素人目線で(決して上から目線で素人目線という言い方をしているのではなく、わたくし自身がプロックチェーンを作れない素人なのです)、相場操縦に安易に帰すことなく真相を追求できたような気もしますが、同様の洞察はトルコリラや人民元やイギリスポンドなどにも働かせるべきものでした。

そこで、、、というのは強引ですが、、、昨年こっそりデビューされてもらったわがアヴァトレード・ジャパンのグループのDupliTradeという日本初の少数精鋭型シストレの「エヴァンジェリスト」というか「テレヴァンジェリスト」を自ら務めたほうが良いかなということで、、、ひそかにユーチューバーデビューを図らんとする所存です。

新年の計としては、DupliTradeのなかでもとくに成績の安定したもののご紹介が最終目的とはなりますが、ぶっちゃけ、目的を達成するだけでは物足りないところもあるので、目標として週に一度はそれらの手口だけでなくファンダメンタルズ分析もできればと思っています。

こちらはその新年一回目の初収録分です。昨年来のトルコ(リラ)問題については、米国との深刻な対立から一転してシリア内戦からの米兵撤退までという国際政治のダイナミズムもまた、米中貿易戦争と並行して、日本人として相場人としてしっかり腑に落ちるところまで理解しておきたいという気持ちで駄弁を弄しております。

毎年、年のはじめだけでも少なくともテレビ朝日の「朝まで生テレビ」を観ています。これら国際情勢だけでなく、少子化問題、沖縄問題(ひいては国防問題、対中国、ロシア、北朝鮮などなど)と、くどいですけど日本に平和に住んでいつづけられるかという観点だけでなく、貯蓄率やマクロ経済を通じてそれこそ為替相場や金利にも影響を与えるアジェンダを勢揃いさせてくれているからです。

しかしいちばん気になるのは、平成の30年間を振り返っても、これらのアジェンダのリストはほとんど変わっておらず、というかまったく未解決のまま変わっていないというところです。

もはやそれらを政治家の責任や高級公務員の責任になすりつけでも仕方がないレベルなのでしょう。で、どうしたら良いの?というのは実はないのです。その答えは、国防問題、とくに核や情報(諜報)能力、さらに派生してGAFAのような創業能力のあるなしにかかわる国防問題に帰すことになるのかも知れません。

実は、かつて、わたくしのブログの読者が急増したタイミングや記事がいくつかあるのですけれども、そのうちのひとつが、インフルエンサーとしての金子勝先生(本業は経済学だと理解しています)のブログ(?)への引用でした。

わたくしはかつては金子勝先生の古ぼけたリベラリズムに違和感を感じた時期がありましたが、今年元旦の朝まで生テレビで感じた氏の近年のインプット、国際感覚には、もはや過去のリベラリストのままではこの国を改造できないという信念を感じ取ることができました。もういちど録画を見返したい気持ちです。

キーワードはDARPA(米国防総省高等研究計画局)でした。

もうちょっと勉強を進めてまいりまして、充実したブロガー&ユーチューバを目指して参ります。

2018年9月21日金曜日

Zaif=テックビューロ、仮想通貨67億円分流出

Zaifハッキング問題については、まだまだ調査の余地があり予断は決して許されません。

しかしながら、被害金額の桁の違いを別にして、コインチェック事件とは異なる不自然さが気になってしかたがないという利害関係者や傍観者も大勢いらっしゃいます。

金融市場や資本市場に遠からず身を置く立場として、客観かつ公平に、何が起こっているのか、可能な限り調べておく必要はあります。



古今東西、企業の規模や公開非公開を問わず、様々な企業不正が起きています。

企業不正の多くは、経営者や大株主の強欲に起因するものかも知れませんが、そうでないものもあるとわたくしは勝手ながら思います。

多くの経営者にとっては、従業員をリストラしたり、新しいビジネスモデルを築くというのは簡単なことではありません。内外の環境のせいにすることが許されないなら、単に往生際の悪い無能な経営者と呼ばれるしかないですが、それはしばしば酷すぎるものです。

やむにやまれず、悪事に手を染めてしまうというインセンティブに惹かれる経営者は少なくないと思います。

フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン試験データ不正なども、上記の前者の要因か後者の要因が、よくわかりません。両方かも知れません。


ところで、上場株式では、今もなお相場操縦やインサイダー取引に該当するかどうか微妙な事案も含めて仕手戦がさまざまな規模で繰り返されているとも聞きます。今回はコインチェックのときの投稿と異なり、ブロックチェーン技術におけるセキュリティの問題とは違う角度で考察をはじめてみたいと思いました。 くれぐれも、繰り返しますが、Zaif問題はまったく余談を許さず、本件はさらなる調査、場合によってはインタビューやヒアリングを行って分析すべきところ、まずは私的メモということで、整理をしていきます。


親子上場を認めている資本市場は世界中で日本だけともいわれるが、フィスコ>ネクスグループ>カイカ(旧 SJI)は親子孫上場
(ア)  ただし2018年は通年で(1-3月期から)ネクスグループ、カイカとも連結決算からは外されている(どうやって?)
(イ)  ついでに、フィスコ仮想通貨取引所も連結から外れている(なぜ?)
フィスコの財政状態からは50億円の金融支援の現実性
(ア)  営業キャッシュフローと現金同等物の推移

(イ)  のれん代と商標権(資産計上)依存

(ウ)  借入金依存(ただし新株予約権付社債の行方は?無事償還?転換(予約権行使)は残念ながらなされていないものの?)

http://www.fisco.co.jp/uploads/20150213_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160216_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20170217_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180214_fisco_tanshin.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_1Q.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180814_fisco_2Q.pdf.pdf

2005.06に発生したフィスコによるカイカ(当時SJI)の買収は赤字会社の「負ののれん代計上」を狙ったものか?
(ア)  http://www.fisco.co.jp/uploads/20150630_sji_ir.pdf

(イ)  ほかにも同様の事例が?

テックビューロとの技術提携と資本提携はフィスコ仮想通貨取引所(当初はフィスココイン)設立当初からなされていた。
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160112_fisco_pr.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160316_fisco_ir.pdf (フィスココインはフィスコ本社に引っ越すまでのあいだ設立時の住所が岸和田市)
http://www.fisco.co.jp/uploads/20160509_sji_ir.pdf  (テックビューロの2015年度決算概要も出ている。2016~2018年途中までが最も興味深いがそこはわからない。ただしフィスコ仮想通貨取引所については下記5.)

絶好調のはずの仮想通貨セグメントは、2017年通年で、
(ア)  「8)仮想通貨・ブロックチェーン事業」フィスコ仮想通貨取引所が運営する仮想通貨取引所においては、
①     未だ取引手数料が実装されていないため、主にサンダーキャピタルなどの仮想通貨に対する自己勘定投資によって売上と収益を計上
②     仮想通貨・ブロックチェーン事業の売上高は900百万円、営業利益は750百万円
(イ)  一転、2018年にはいると、フィスコ仮想通貨取引所を「フィスコデジタルアセットグループ」という中間(?)持株会社に移行、フィスコから連結外しされる!!
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180110_fisco_pr.pdf

仮想通貨評価損、仮想通貨売却損の計上により経常損失は997百万円(前年同期は経常損失368百万円)

関連IR
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180413_fisco_ir.pdf
http://www.fisco.co.jp/uploads/20180514_fisco_ir2.pdf



このグループがやっていることはいわゆる「会社ごっこ」(M&A+会計操作)?
制度信用による信用売りが出来ないJASDAQ銘柄(赤字会社)を傘下に3社抱えることにより、相場操縦で煙のないところに火をおこしている?

ライザップも同様だとの報道が
https://facta.co.jp/article/201810026.html

このような疑問を解決することこそ、ハッキングされた仮想通貨たちのゆくえの大きなヒントになるのではというところです。

2018年8月15日水曜日

トルコリラは押し目買いのチャンスと言えるのか?

新興国通貨危機のたびに、売り込まれている通貨がその購買力平価に対して割安すぎるという議論が出てきます。

多忙と充電を言い訳にしてめっきり更新をサボっているブログでも、通貨危機ごとに、購買力平価説とそのもっともわかりやすいたとえであるビッグマック指数で「分析」と「予想」を行ってきました。

ブログを始めた2008年はリーマンショック前から割安だったオーストラリアドルやニュージーランドドル、そして何と言っても南アフリカランドは(主要国通貨を売ってでも)買うべし(?)と予想し、大外れして、笑いものになりました。

この経験も活かしつつ、英Economist誌のグラフィックインターフェイスの進化もあり、2014年と2016年のロシアルーブル危機では、軒並み割安になりがちな新興国通貨のなかでも、一人あたりGDPが比較的低いとは言えないロシアの通貨の「売り込まれ過ぎ状態」は数少ない事象だという指摘をさせてもらい、珍しく押し目買い推奨大当たりとなりました。

さて、では今回のトルコリラ危機はどうでしょうか?

購買力平価説は長期的にも成り立たないのか!?

笑福亭鶴瓶さんが出演している医薬品だったか医薬部外品だったかのテレビCMで、「膝が痛いから太るのか?太るから膝がいたくなるのか?」というのがありました。インフレと通貨安も同じような関係で、どちらもどちらの原因であり結果です。

実は、トルコは慢性的にインフレに悩まされていて、米ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストの個人的統計によると、インフレ(年)率は年代毎の平均で1970年代= 22.4%、1980年代=49.6%、1990年代=76.7%、そして2000年代=22.3%だったとのことです。

完璧に客観的な物価統計というのは難しいものなので、ほんとうにこれが実態だったのかどうかは良くわかりません。それにしてもこんなものだったとしたら、これを知っていてトルコリラ建ての外国証券を買わされていた日本人リテイル投資家はたまったものではありません。

ここで、話の順番はめちゃくちゃですが、購買力平価説とは何だったかを、やはりビッグマック(照り焼きバーガーでは比較できないため)を例にとって簡単におさらいしておきますと、

”イスタンブールでビッグマックが10.75リラで買えるのなら、そしてUSDTRY=4.71(先月の話です 爆)なら、ビッグマックを2.28ドルで仕入れられることを意味するので、それをニューヨークに持ち込めば、現地相場(1ビッグマック=5.51ドル)との差額3.23ドルが無リスクで稼げる。このような裁定取引(アービトラージ)は差額がプラスマイナスゼロになるまで続くはずなので、いつかはイスタンブールのリラ建てビッグマック価格が値上がりするか、かつまたはニューヨークのドル建てビッグマック価格が値下がりするか、USDTRYが下落(トルコリラが対ドルで上昇)するかが起こるはずである。“

というものです。

ちなみに筆者は2週間前に仕事でイスラエルに行き、帰りの乗り継ぎ地イスタンブールで、空港内という特殊な場所ではありましたが、ハンバーガーを食べました。ドル建てユーロ建てリラ建て表示のあるレシートを持ち帰ったつもりが紛失してしまいましたが、ざっくり10ドル=50トルコリラくらいで、赤坂のバーガーキングよりも割高な感じでした。
もうおわかりのとおり、購買力平価は、自国物価と外国物価を所与(固定)とすると《ある程度》この二国間の為替相場の予想に役立つのですが、前提が固定ではないので、思ったほど役立たないのです。購買力平価だけをもちだして割安(すぎる)云々抜かしている大手金融機関系のアナリストの記事を見たら、そういう金融機関に投資信託や外国債券などを買わされて損をさせられていないかどうか振り返る必要があります。

さて、《ある程度》というところの注釈は、重要ですが後回しにして、ロシア危機後のルーブル反発のような可能性をトルコリラは秘めていないのかどうかについて触れます。

いよいよ時機良く出版してくれた英エコノミスト誌のビックマック指数です。

下のグラフに描かれている赤丸は割安通貨(Undervalued)、青丸は割高通貨(Overvalued)、米ドルが基軸になっています。計算によると、トルコリラは対米ドルの相場が58.5%も割安に放置されているということになります。


これを時系列で追ったのが下の折れ線グラフです。現時点(正確には直近ビッグマック指数発表の2018年7月)でトルコ(リラ)よりも更にひとつ割安国(通貨)にとどまっているロシア(ルーブル)に筆者がマウスオーバーすることでブルーグレイの折れ線グラフと対比して、トルコ(リラ)の割安割高推移をご覧いただくことができます。

トルコリラは2013年から割安度合いが深まっているが、それでも(いまでも)ロシアルーブルの最割安時期の割安度合いにまでは到達していない(良い線行っているが)ということがわかります。

しかし、これだけで、トルコリラの底入れは近いとは言えないのが、ひとつには既述の《パラメータは為替水準だけでなく、自国物価、他国物価と複数ある》および、次のグラフでご説明する上記《ある程度》という購買力平価説留保条件です。

為替相場だけでなく購買力平価にもサポレジがある!?

一人あたりGDPを考慮に入れてしまうと、景色が一変します。この理由はちょっとむずかしいですが、先程引用した筆者ブログを参考にしていただけると助かります。

英エコノミスト誌が、読者からの批判を取り入れて、購買力平価に、一人あたりGDP要因を勘案したもの「も」出すようになったのは、2011年からなので、こちらの時系列は、一人あたりGDPを勘案しない上記のグラフの半分の長さしかありません。注意して比較してみてください。

記事によると、トルコ共和国の一人あたりGDP(の小ささ)をも勘案すると、トルコリラの割安の酷さは緩和されて、さきほどの58.5%から30.7%となる。

そしてまたもしつこくロシアルーブルと比較してみたのですが、過去最も酷かったロシアルーブルの割安時点と比べると、トルコリラの割安はまだまだ底まで言っていないと見えます。

自国通貨の暴落と自国物価の上昇につられて、名目賃金も完全に比例するような状態であれば、この連立方程式体系は解が定まらないということになります。トルコの状況がどうなのか、数年前のロシアの状況がどうだったか、名目賃金がどの程度硬直的な労働市場なのか(実質賃金が可愛そうなくらい下がっているのかどうか)は正確な統計がまだ手に入っていません。察するにハイパーインフレや自国通貨の自由落下状態においては名目賃金はもはや硬直的ではいられないという一般的な傾向があると思います。それまでは名目賃金(自国通貨価値)は(レジスタンス)サポートされるが、いったん名目賃金変動の閾値を超えるとこのサポレジは破られてしまうということが言えます。

《ある程度》という購買力平価説留保条件とは、ペン効果とかバラッサ=サミュエルソン効果(仮説)とか言われるものです。さきほどのハンバーガーの裁定取引(アービトラージ)なんて、かさばるし、日持ちはしないし(防腐剤をどの程度使っているのか知りません)、実際問題運べないだろう。それに比べると、貴金属や高級時計やスマホなど小型軽量高性能電化製品だと、ビッグマックとは違う指数が出てくるよねという話です。