2022年6月17日金曜日

円安もウクライナ戦争もみんなユダヤ資本の陰謀だった

件名にあるような陰謀論や、歴史上の登場人物や国家権力を善玉悪玉へと単細胞的に分類する愚考に抗ってきたのがこのブログです。

そんなわたしも、30年以上にわたる社会人生活を振り返ってみると、限りなく陰謀論に近い、しかも似たような内容の書物を不定期的に読んできたものだなと思います。

二十歳代の頃(1990年代初頭)

宇野正美「ユダヤが見えると世界が見える」「ユダヤと闘って世界が見えた―白人支配の崩壊と「二つのユダヤ人」」

三十歳代の頃(2000年代初頭)

広瀬隆「赤い盾」「世界金融戦争」「世界石油戦争」

そしていま

西鋭夫・岡﨑匡史「占領神話の崩壊」

渡辺惣樹・茂木誠「教科書にかけないグローバリストの近現代史」

結論を急ぐなら、最新の書籍がお勧めです(Kindle版あり)。時代が下るほど情報公開が(いまのところは)進んでいること。それと、たとえとしてはわかりづらいですが「個体発生は系統発生を繰り返す」という面もあるというのが理由です。

共著者のおひとり茂木誠先生は、先月投稿したおすすめYouTuber(前編)でご紹介した

歴史>むすび大学

というチャンネルで、ちょうどウクライナ情勢の悪化と同期するような形で、その淵源のひとつがユダヤ人(問題)であるという仮説を思わせるようなシリーズを展開されています。

ユダヤ人の歴史

旧約聖書からはじまり、いったんウクライナ問題に焦点を当て、現在はニューヨーク(イスラエルに次ぐユダヤ人人口を抱える場所)の成り立ちについて動画をアップしておられ、まだまだ続きそうでこの先も楽しみです。

件名にあるような陰謀論は、国際金融資本=ユダヤ資本でなおかつユダヤ社会は一枚岩であるという分かり易過ぎる前提に立ってしまっていることが多いのですが、茂木誠先生のユダヤ人の歴史は極めて公平です。

フーヴァーを襲ったルーズヴェルト

それでも、「教科書にかけないグローバリストの近現代史」(脱稿時点ではロシアのウクライナ侵攻はまだはじまっていなかったように思われます)は取り扱っている時代から、イギリスやフランスのロスチャイルド家の影響力をやや過大視している感じはあります(それをさらに極端にしたのが、ご存じ「赤い盾」と言えるでしょう)。

いまだに日本には戦後教育のせいで(経済学で言えばケインジアンが多いことと呼応して?)、フランクリン・ルーズヴェルト大統領は、平和主義者で民主主義者だと洗脳されたままの「知識人」もいるようですが、わかりやすく言えば、わたしは同大統領に取って代わられたハーバート・フーヴァー大統領のファンです。

同書の共著者のもうひとりの渡辺惣樹先生は、まさにそのフーヴァー大統領が退任後(というかさらに第二次大戦後)フランクリン・ルーズヴェルト大統領(とその一味「ニューディーラー」)がやらかした国内の経済政策と外交軍事政策を嘆いて書いた力作「Freedom Betrayed」の日本語訳をされた方です。フーヴァー大統領が母校のスタンフォード大学に作った研究所で仕事をしつつ「釈明史観」に異を唱える研究をされたのが、上記占領神話の崩壊の共著者のおひとり西鋭夫先生です。

西先生と渡辺先生はいずれもフーヴァーフォロワーであることは間違いないわけですが、おふたりの目線が一緒かというとそうではないかも知れません。西先生の本には、戦前の日本共産党に対する治安維持法という悪法による弾圧(拷問致死など)について激高されています。おそらくこれは共産党員の多く(とくに下っ端)や支持者の多くは、貧富の格差や軍国主義に対して善意から抵抗しようとした弱者だったからという前提があるのだと思います。実際、党組織が治安維持法により解体されるまでは、日本は中国と並びコミンテルンにとって最優先の戦略国として金銭面での支援がなされていたという情報もあります。党指導者層の少なくとも一部はソ連のスパイであったことは間違いないと考えられます。ただ、お亡くなりになった宮本顕治元日本共産党委員長のスパイ事件(殺人事件)は有名ですが、ここで言うスパイは、日本共産党本部に潜入していた特高警察のスパイのことです。

ぐじゃぐじゃ書きましたが、わかりやすいたとえをすると、ローマカトリック協会の中枢がどれほど極悪で腐敗しきっているにしても、布教活動が滞っていた近世日本の極少数派のキリシタンのほとんどは純粋にイノセントに入信したわけであり、豊臣秀吉や徳川家康の禁止令は気の毒というしかないという一方で、キリシタン大名についてはある程度は利害と打算があったと考えても可笑しくないということなのではないかと思います。

中央銀行員は公務員なのか?

最初の宇野正美さんについては、ある朝、職場の入口のまえで、同氏の後援会のチラシが配られていた記憶があるのと、相前後して、私が営業担当としてお世話になっていた某総合商社関西支社の財務部長さん(彼も私と同様でどちらかというとマルクス主義に偏った教員が多かった大学の卒業生)からのおすすめもありました。ざっくり言うとその反動で目から鱗を落とすための読書を精力的にやっておられたのではないかといまでは思います。

ざっくり言えば似た系統の書物と著者を並べてみたのですが、全般に、真珠湾攻撃に関する(フランクリン・ルーズヴェルト大統領の)陰謀疑惑を始めとして、戦後歴史教育(戦後の日本の「正史」とされているもの)への修正を迫る論客のものが多いのははっきりしています。これは、論説を、単純に右か左かで分類する流儀に従うと、はっきり言って右になるわけです。そのなかで、どう見ても反原発一筋の広瀬隆氏は「左」です。それでも、今日の脱炭素(地球は温暖化しているという言明、その原因は二酸化炭素であるという言明)運動は、現在も世界を動かしている黒幕による陰謀であると考える点で、立場が異なる渡辺惣樹先生と意見が一致しているところは妙に面白いと言えます。

最後の最後に本当の本題です。「件名に円安だのウクライナなどあるのに、ブログの本文中なんにも触れていないではないか!?」とお怒りの読者の皆さまへ。ここをまとめるのが非常に難しいところだったのですが、この近現代史の本の真骨頂だと私が思っているのは「中央銀行」の歴史を、簡単ではあるが、独特の視座でまとめてくださっているところなのです。経済学でも、中央銀行はまるで最初からあったかのごとく説明されることが多いのですが、そうではないどころか、われわれが学校教育なのか常識なのかよくわかりませんが何となく叩き込まれている通貨の番人としての中央銀行の存在などというものはもともとなかったことがよくわかります。

現在の円相場は、そんな各国中央銀行の先祖返りというか「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の逆で政府からも民間金融資本からも独立した中立的公共的機関にして枯れ尾花的存在だと思っていたら実は化け物だったという文脈でとらえる必要があるのではないか、というのが本題でした。


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